アカシックレコード
一件落着──の空気が流れかけたその時、
エルミィが突如としてシグルにぶっ込んだ。
「ねえシグル。……行為が終わったあとってさ、出産の栄養を補うためにパートナー食べたりするの?」
空気が凍りつく。
シグル:「…………えっ?」
ミリウス:「……流石だな、エルミィ。
片親が違っても、ぶっ込み方は兄妹ってわけか……」
エルミィは真顔で続けた。
「ほら、カマキリとかさ?
龍って恐竜に似てて、爬虫類にも似てて、場合によっては……昆虫にも似てなくはないじゃない?」
シグルは、しばし沈黙したのち、
(……どっからその連想持ってきたんだ……)と、遠い目になる。
「……えーと。ハテ……私、経験がないから分からない。」
と、シグルが戸惑いながら答えると、王子が唐突に青ざめた。
「……もし、行為のあとに“栄養補給”が発生するなら──
精霊娘が4人いる分、私が4人必要になる計算では!?」
精霊娘たち:「ちょ、王子、逃げないで!」
王子:「いや、命がかかってるので……」
その時、ノームが静かに手を掲げる。
「……アカシックレコード、開示完了。
──確認しました。龍族に“交尾後捕食”の習性はありません。
また、ハーフドラゴンにもその傾向は存在しないとの記録があります。」
一同:「おおおおお……」
精霊娘たちは安堵の息をついた。王子も、地面にへたり込む。
「……良かった……私、“胃液に溶ける王子”にはなりたくなかった……」
一方、シグルは目を細め、ぼそりと呟いた。
「……でもさ、みんな私に色々聞いてくるけど──私が知りたいことだって、たくさんあるんだよ?」
精霊娘たちはビクリと身を硬くした。
ミリウスは嫌な予感に額を押さえる。
「おい……それってどういう──」
シグルは、にこぉっと笑った。
「例えば──**“精霊って発情期あるの?”**とか、
**“お腹の膨らみ方って人間と同じ?”**とか、
**“産後の魔力変動って、どれぐらいなの?”**とか……」
今度は精霊娘たちが赤くなって後ずさった。
「「「「……やめてシグル、それ聞かないで!!」」」」
ノーム:「記録にない情報、欲しい……!」
ミリウスは頭を抱えた。
(終わったかと思えば……始まったな、この情報戦……)




