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王子はキチンとしていた。
ミリウスは、話し合いが終わったのか終わっていないのか、正直よく分からなかった。
だが、ここでひとまずの区切りをつけるしかない。
彼は王子の前に立ち、深々と頭を下げた。
「……本日は誠に有難うございました。
シグルの件につきましては、こちらで責任をもって──王子に返却いたします。」
周囲が「返却!?」とざわつく中、ミリウスは淡々と続ける。
「その後は、焼くなり、煮るなり、孕ますなり……ご自由にどうぞ。
責任あるご婚約者として──最低でも、男の子を4人はシグルとの間にもうけて下さい。」
王子の笑顔が崩れた──わけではなかったが、その笑顔の奥、
瞳にはどこか虚無のような影が揺れていた。
「……はい。約束は、守ります。」
そう静かに言った王子は、どこか遠くの“未来の地獄”を見つめていた。
シグルはにこにこと王子のそばに寄りながら、言う。
「龍界、ちょっとここから遠いけど──みんな、遊びに来てね!」
王子は無論 シグル様のご両親様に結婚の許可をいただきたく、シグル様の旅が終わり次第挨拶に行くとお伝え下さい。




