王族や高貴な方のバーゲンセール。
シグルが一歩前に出て、どこか得意げに語り始めた。
「ある時は──伝説の神鳥、
またある時は──ただのデブで食い意地の張った食材、
そしてまたある時は──由緒正しき龍族、シグル科に連なる者……」
両翼を広げ、ビシッとポーズを決める。
「その正体──
龍族の王、シグル様なのだ! ババンヌーン!」
「皆の者、頭が高い! 控えおろう!!」
突如として、場の空気が一変。
一拍遅れて、冥界の王子が血相を変えて地に膝をつく。
「まさか……まさか……これは……王族の、王族のバーゲンセールか……ッ!!」
続けてセバスチャンもガバァッと土下座の勢いでひれ伏し、厳かに口上を述べる。
「シグル様──。
ご身分を存じ上げず、数々の無礼……平に、平にご容赦を!」
シグルは、どこか“やれやれ”といった表情で鷹揚に答えた。
「よい、よい。苦しゅうない、面を上げい。
旅の道連れよ、我もその方が堅苦しゅうなくてな──。」
我々はと言えば、あっけに取られて膝をつくタイミングすら逃していた。
「……え? シグルって、そんなスゴいやつだったの……?」
「なんか、もう“食材”って呼べなくなったね……」
そんな中、セバスチャンが鋭く振り返る。
「この御前における見苦しき態度──ッ!
私が身をもって、成敗いたしましょうぞッ!」
ミリウス:「待て待て!急に主君面して粛清体制に入るな!!」
だがシグルは涼しい顔で制した。
「やめよ、セバスチャン。旅は心のゆとりがあってこそ。
堅苦しいのは、そちの悪い癖じゃ。」
セバスチャンは再び深々と頭を下げ、言葉を震わせた。
「寛大なるお言葉……ありがたき幸せ──っ!」
(なんなんだこの劇場は……)
ミリウスは天を仰ぎつつ、膝をつくことすら忘れていた。




