いざとなったらシグルを犠牲にして
シグルは、パーティーに残ることを選んだ。
──これで、龍の国への絶好の土産ができたな。
いざとなれば、シグルの身柄を差し出して、パーティー全員の命の保障を得ればいい。
自分の意思でついてきたのだから、文句はあるまい。恨むなら自分の判断を恨むことだな。
そう、ウインディーネが言った。
しかも、ミリウスそっくりの声音で。
「おいおい、俺そんなこと考えてないぞ……!」
ミリウスが慌てて否定するより早く、精霊娘たちがシグルをかばうように前に立つ。
マルカさんも、マークワンも加わり、完全な防御陣形が敷かれた。
エルミィが笑いながら、悪戯っぽく言う。
「お兄ちゃん、ひどーい。」
ミリウスは額に手を当てて、深いため息をついた。
「……全部、あいつの策略じゃねえか。」
「ウインディーネ……お前、一体何を狙ってるんだ……」
ミリウスは、心中で呟いた。
つい先ほどまで、自分はシグルを案じて、パーティーを抜けるよう提案していたのだ。
なのに、ウインディーネが言い放ったのは──まるで“追放系”のお決まり展開のような台詞。
しかも、自分の声を真似て、さも自分の策であるかのように。
(馬鹿な……シグルは俺にとって、大切な仲間だぞ……!)
そんなミリウスの苦悩などお構いなしに、精霊娘たちはくすくす笑って言った。
「ミリウス、深刻に考えすぎ。いざとなったら、みんなで龍に食べられようよ。」
突拍子もないその提案に、ミリウスはさらに頭を抱えた。
マルカは腕を組みながら、ふっと呟く。
「……やっと、リーダーの自覚が出てきたってとこかね。」
一方で、精霊娘たちはシグルをかばう姿勢を崩さない。
どうやら、シグルのおかげで恋人関係のドロドロが一気に清算されたらしく、その恩を感じているようだ。
「リゼリナも、そういうとこ……シリウスに似てて、素敵だよね」
誰かがそう呟くと、エルミィは──というと、すっかり緊張が抜けたのか、ニヤニヤと口元を緩めている。
(ライバル候補が、一気に片付いたからって……お前まで抜け殻になるなよ……)
ミリウスは、再び深いため息をついた。




