シグルは生でも美味しんです。
王子は、まるで導くかのように語り始めた。
「龍の国に赴き、助力を仰いでは如何でしょうか。全能の神の異変は我々だけの問題ではなく、龍の国でも何らかの変調が起きているはずです。龍の国への扉の鍵は、シグルに預けましょう。シグルなら、きっと行き方を知っているはずです」
ミリウスは、疑わしげにシグルを見つめた。
「……本当に案内してもらえるのか、シグル」
「任せとけ!」シグルは胸を張って答えた。「龍の国への道なら、ちゃんと知ってる!」
王子は微笑を浮かべたまま、ひとつの懸念を口にする。
「ただし、ひとつだけ。龍の好物は、どうやらシグルさんらしいのです。ですから――私の花嫁を奴らの糧にしないよう、気をつけてください」
その言葉にミリウスは思わず問い返す。
「そんなに心配なら、助言なんかせずに、シグルを冥界に留めておけばよかったんじゃないですか?」
王子は何でもない風を装いながら、静かに答える。
「もちろん、私もシグルさんのことが心配です。ですが……ミリウスさんが身体を張って、彼女を守ってくださるでしょう?」
ミリウスは肩をすくめた。
「私はただの非力な一般人ですけど……まあ、ご期待に添えればいいのですが」
王子はますます笑みを深めて言う。
「ええ、期待していますよ」




