俺はシグルの結婚は認めん
トーマスは俺の顔を見て、今までに見せたことがないくらいの笑顔で「ドンマイ」と言い、俺も負けじと「新婚なのにね」と返してやり、ふたりで顔を見合わせて「どうする、シグルを助けるか」「どうせ無事だろ」「それもそうか」と生暖かく結論を出しつつ、俺は王子の前に出て「冥界にご招待いただきありがとうございます、アトラクションは十分楽しませてもらっていますが、このままだと話が進まないので説明をお願いします」と頭を下げ、王子は微笑んで「そうですね、ミリウス殿がいつもシグルさんと旅ができて羨ましい、私は冥界の王子と言っても女性にモテるしか能のない、ただの男です、だからシグルさんとの仲を認めていただけませんか」と爆弾を投げ、俺とトーマスは無言で顔を見合わせて「シグルの所有権って誰だっけ、マルカさん? イフリート?」と確認し、マルカさんは「契約上の縛りはなく、結婚に関して問題なし」と即答、イフリートも「じゃあ私が今シグルを捌くから、その前に美味しいとこ持って行きなさい」と王子を勧めたことで、我々は本気で逃げ出そうとするシグルを女性陣の手から救出し、シグルは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにこくりと頷いたが、それはあくまで「ミリウスたちの問題がすべて片付いてから」という条件付きの返事だった。




