実家に帰らせていただきます。
稚拙ながらしっかり前を向いて進んでおります。
カレンは静かに言った。
「実家に帰らせていただきます」
ユマはうつむきながら答える。
「不甲斐ない夫で悪かった。お義父さんには…顔向けできない。娘を幸せにする約束を破ったこと、謝っておいてくれ」
突然の展開に、カレンは目を丸くした。
「ユマ、何言ってるの?」
ユマは真顔で言う。
「だって、嫁さんが“実家に帰ります”って言うのは、お決まりの——旦那に愛想尽かしたってことだろ?」
カレンは吹き出しながら、クスッと笑う。
「違うわよ。ユマがまた忙しくなるの分かってるから、心配かけないように実家に帰るだけよ」
ユマはホッとした顔になり、
「よかった…」と胸をなでおろす。
だが、ふと何かを思い出したように、指を一本ずつ折りながら数え始めた。
カレンはぷいっとそっぽを向き、少し怒ったような口調で言う。
「ユマ、それ以上何か言ったら、私、本当に実家から帰ってこないからね?」
ユマはあわてて土下座し、地面に額をこすりつける勢いで謝る。
「ごめんなさいっ!!」
カレンはそんなユマを見て、また笑った。
「しっかり稼いできてよ、パパ。四つ子のお父さんになるんだから」
そして軽く手を振って、背中で続ける。
「仕事に、早く戻って」
ユマはようやく事の重大さを思い出し、慌てて立ち上がると、全速力でマルカ工房へと駆け戻っていった——。
ユマ
出来る男 だが 朴念仁。
因みにカレンの家系は多産です。カレンは沢山の兄妹がいます。実家はパン屋です。ユマはそのパンの味に惚れ込んで、カレンのお父さんに弟子入りしました。カレンの兄妹よりユマの方がパン作りの実力は上です。カレンの父はユマがパン屋にならない事を酷く惜しがっていました。マルカ工房が潰れても心配ないね。 ユマ。




