ドラマ制作発表会
ドラマの制作発表会。
記者からの質問でシグルに会った感想は
ロディ役・王子は、堂々と答えた。
「──素晴らしい女性だと思います。」
さらに続けて、
「初めての出会いのシーンで、
シグルさんの胸に手が当たってしまいまして。
……案外、ボリュームがあるなと。」
会場がざわつく中、
シグルは、顔色ひとつ変えずに言った。
「──王子さんも、胸板、けっこう厚いです。」
プロの記者たちは、
ここぞとばかりに"盛り上がるため"の追求モードに入った。
「シグルさん。
王子さんの胸板が厚いって、ずいぶん親密な発言ですね。
どこか別の場所でお知り合いだったのですか?」
さらに──
「映画やドラマの共演をきっかけに、
そのままゴールインされる方々も多いですが……?」
一気に、会場の熱が上がる。
だが、王子は微笑みを絶やさなかった。
慣れた口調で、
今度は原作者のロディに水を向ける。
「──ワシなど、三度結婚しているぞ。」
ロディはどこ吹く風だ。
「人生は冒険だからな。」
会場に、軽い笑いが起きる。
記者も、すかさず切り返した。
「ロディさんのことは皆さんよく存じておりますので。
本日はシグルさんと王子さんの話を!」
さらに畳みかける。
すると、シグルが真顔で呟いた。
「──私、王子さんに焼いたパンを食べさせたい。」
場内が一瞬、静まり返った。
そしてすぐに、記者たちが色めき立つ。
「それは、プロポーズですか!?」
「子供は何人欲しいですか!?」
──もう、収拾がつかない。
もはやヤケクソになったユマが、
控えめにマイクを取った。
「そのような家族計画の場には……
ぜひ、我が社の新製品を……よろしくお願いします。」
報道陣、爆笑。
カメラのフラッシュが、
昼のようにまぶしく瞬いた。
こうして、
マルカ工房の新製品は、思わぬ形で全世界にPRされることになった。




