ストーカー行為は犯罪です。
ドラマ制作に欠かせない、シグルの相手役──ロディ・フカサワ役。
だが、そのキャスティングは難航していた。
理由はただ一つ。
本人、ロディがなかなかゴーサインを出さなかった。
事務所はついに一般応募に踏み切った。
集まった応募者、総数──10万2562人。
書類選考、一次、二次、三次と厳しい審査を経て、
残ったのはたった10人。
最終選考は、
シグル、ロディ、ユマの三人によって行われることになった。
集まった男たちは、
どれも顔立ちの整ったイケメン、演技力も文句なし。
だが──
シグルは、独自の基準で質問を投げかけた。
「パンは好きですか?」
「ご飯は好きですか?」
面接官席で、ユマが頭を抱えた。
そして──最後の面接者。
彼を前にした瞬間、
シグルは奇妙なデジャヴーを覚えた。
面接者は、深く頭を下げたあと、こう言った。
「……シグルさんのことが忘れられなくて、ここまで追いかけてきました。
最終選考に選ばれるだけじゃない。
必ず、あなたの相手役になります。」
ユマは、即座に面接票に大きなバツ印を書いた。
「──ストーカーはお断りだ。」
だが、シグルは──
あの日、あのダンスホールで、
ひとりの男性と踊った記憶を思い出していた。
自然に、
手が動いた。
マル印をつける。
ロディは、候補者を一瞥して苦笑いしたあと、
ペンを走らせた。
「……私の方が、もっとハンサムだったけどな。」
そう呟きながらも、
マル印を書いた。
こうして、
運命のキャストが、決まった。




