犯罪駄目絶対
シグルは、デビュー後も積極的にボランティア活動に参加していた。
一日警察署長、一日消防署長──。
どちらもボランティアとして、無償で引き受けている。
彼女のデビュー曲**「恋の炎は消せない」**は、一日消防署長として出向くたびに話題を呼んだ。
必ずと言っていいほど、子どもたちからこんな質問が飛んでくる。
「ねえ、炎を消せないなら、消防署はいらないんじゃない?」
シグルはにっこり笑って答えた。
「だからね、消防車が出動しなくてもいいように、みんなが火の元に気をつけるんだよ。」
優しく、温かく。
まるで春の陽だまりのようなその言葉に、少年たちは心を撃ち抜かれた。
そして、彼らの胸に小さな「恋の炎」が灯る。
いつしか、シグルは──
「恋の放火魔」
と親しみを込めて呼ばれるようになった。
警察署での活動も、順調……とは言いがたかった。
特殊詐欺撲滅キャンペーンのために作成されたシグルのポスターが、
署内から頻繁に盗まれる事態が発生したのだ。
しかも、
調査の結果──犯行は、ほぼ内部犯と見られていた。
警察上層部は頭を抱えた。
(──自浄作用が働かない……。)
それでもマルカ芸能事務所は、この件に関しては一切追及しなかった。
「不問」とすることで、逆に一日署長の依頼件数を伸ばすことに成功したのだ。
シグルは、社会に新しい風を送り込んでいた。
時に真面目に、時に愛らしく。
誰にも真似できない、たったひとつの方法で。




