着けている開放感。
マルカ工房は、もともと化学と工業に特化した企業だった。
しかし代表のマルカは、グループ会社・マルカ科学が開発した新製品──コンドームのイメージアップを図るため、自社でタレントを育成して製品の広告塔にするプロジェクトを立ち上げた。
これが、マルカ芸能事務所の始まりだった。
マルカ芸能は、単なる芸能事務所ではない。
企業のコングロマリット化を見据えたマルカ工房グループ全体の宣伝機関であり、
芸能活動そのものが、製品プロモーションと直結している。
もともと製品開発部にいたユマも、兼業で芸能事務所運営を担当することになった。
代表のマルカからはひとつだけ、厳命されている。
──「潰しても構わない。ただし、半端なことだけはするな。」
今回、シグルに与えられる役割は、マルカ科学の新製品・コンドームのイメージキャラクターだった。
しかも、タイアップとして進行している学園ドラマのメインスポンサーがマルカ工房であり、
シグルはそのドラマにも重要な役で出演することが決まっている。
無垢な少女が、世界を変える。
そんな、誰も見たことのないストーリーが、いま動き出そうとしていた。
シグルの脱ぎっぷりは、圧巻だった。
年頃の少女らしい羞恥心は一切なく、
まるで風に身を任せるかのように、自然体で──堂々としていた。
その姿に、ユマは確信する。
(──これは、行ける。)
シグルの無垢な存在感と、自然な開放感。
それはマルカ工房の新製品にぴったりだった。
今回、マルカ工房が打ち出すコンドーム新製品は、
**「着けていることを忘れるほどの自然な使用感」**をコンセプトにしていた。
キャッチコピーはすでに決まっている。
「着けている、のに、開放感。──マルカ・フリー」
押し付けがましくない。
いやらしさもない。
ただ、自由さと、自然さだけが伝わる。
ユマは胸の内で静かに拳を握った。
この少女なら、できる。
マルカ工房の未来を、切り拓く存在になる──!




