地獄めぐり冥土の土産に
シグルはヨダレをたらしながら、夢にまで見た銘菓「地獄めぐり」に釘付けになっていた。
あの独特な甘味、香ばしい香り……間違いない。これは本物だ。
カジノのVIPラウンジの一角。給仕のお姉さんにシグルは駆け寄ると、子犬のような目で懇願した。
「ねえ、それ、ちょうだい!」
お姉さんは一瞬困った顔をしてから、やんわりと微笑んだ。
「……すみません、この銘菓は、特別な条件を満たした方にだけお渡ししているんです」
「特別な条件?」
「はい。VIPフロア責任者――リーウィー様と指しで勝負して、勝ったら差し上げます」
聞き終わるや否や、シグルは一も二もなく立ち上がった。
「よし、やる!!」
迷いも、恐れも、一切なかった。
シグルにとって、相手が誰であろうとどうでもよかった。
目の前の銘菓を手に入れるためなら、どんな賭けも――怖くない。
お姉さんは、さも言いづらそうに口を開いた。
「こちらからお誘いしておいて申し訳ないのですが……最上階へ上がるには、お召し物のお着替えをお願いしています。ドレスコードがございますので。レンタルドレスもご用意しております。もちろん、レンタル代はこちらが負担いたします」
シグルは、少し首をかしげると、お婆さんから譲り受けた赤いドレスを取り出して見せた。
それを見た瞬間―― お姉さんは目を見開き、深々と頭を下げた。
「……失礼いたしました。
こちらのカジノでも、それ以上のドレスはご用意できません」




