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女神の最後の祝福。
連日――俺は取り調べを受けていた。
ノームとシグルに、真顔で迫られる日々。
時に静かに、時に小芝居入りで、
「ねえミリウスくん、私たち、友達だよね?」
「俺はパンが好きだなー。でも、誰のパンが一番好きかは……言えないなー?」
そんな地獄を味わいながらも――
> 俺は、最後の一線だけは越えなかった。
誰の名前も、言わなかった。
絶対に、誰も、汚れ扱いにはさせなかった。
そして、ある朝。
扉が開いた。
「ミリウス君、釈放です」
呆気にとられていた俺に、書類が渡される。
「女神の祝福による特赦。ありがたく思えよ」
聞けば、ルカが“女神としての最後の権限”を使って俺に“恩赦”を下してくれたらしい。
トーマスの許可を得て。
トーマスの信頼を――背中に背負って。
彼女は、俺を出した。
俺は――トーマス夫妻には、一生、頭が上がらない。
あの女神が、恋する女として動いた瞬間に――
俺は、無言で、深く頭を下げた。




