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芸能事務所始めちゃいました。
「女はね、いろいろ隠せるの」
そう言ってシグルは名刺を差し出した。
俺はそれを受け取り、何気なく目を落とす――
……ん?
「マルカ芸能」
そのロゴが、ど真ん中に印刷されていた。
俺は名刺を落としかけた。
「……マ、マルカ……?」
喉が変な音を立てた。
「マルカさんの関係者が……何かやってるぞォォォォ!!」
思わず叫ぶ。
全員の動きが止まる。
風の音さえ、今だけ消えたような錯覚。
エルミィが口を開きかけて止まり、ノームが硬直し、トーマスが「……マジで?」という顔でこっちを見ていた。
あのマルカだ。
噂じゃ、王宮すら操る、裏の仕掛け人。
命も情報も、指一本で動かす人間が――
「……芸能?」
なんだその業種。
俺がパニックに陥っている間、シグルはのんびりと笑っていた。
「ああ、それね。あの人、“私を売り出す”って言って、名刺くれたんだよね」
その瞬間――俺の背中に、ひやりとした気配が走った。
(マルカさん……知らないうちに、何を始めてるんだ……)
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