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忘れられた神 2



忘れられた神は、空間のひずみに揺らめきながら、ゆっくりと語り出した。


「怯えるでない。お前らが接した土の精霊の娘――それこそが、本来の彼女だ。」


その声は静かだったが、空間そのものに染み渡るような深みがあった。

火も、水も、風すらも、ただ黙って聞き入っていた。


「彼女は無垢であるがゆえに、アカシックレコードに触れることができた。

 その記録の扉を開いたがために、我はこの世界に言葉を届ける“身体”を得たのだ。」


ノームの姿をした“それ”は、確かに“ノーム”だった。

だが、その背後に佇むものは――世界の根源に最も近い“記憶”の形。


「我は、かつての創造の原型にして、形なき神。

 だが、お前たちの時代は我を忘れ去った。」


ミリウスも、エルミィも、誰も言葉を発せなかった。


ただ、ノームとして過ごしてきた時間を思い出す者たちは、それが演技でも幻でもなく――

まさしく、“あのノーム”自身が選び取り、感じ、喜び、笑っていたことを知っていた。


だからこそ、“それ”が語る言葉は、否定ではなく継承として響いた。


忘れられた神は最後に、語気を強めるでもなく、そっと付け加えた。


「我は、ノームを乗っ取ったのではない。

 彼女の意志と記憶のすべてをそのままに、“在るべき形”として、今ここに在る。」


「彼女がアカシックレコードに触れられたからこそ、我はこうして、お前たちと語らうことができるのだ。」


静かに、神は全てを見渡した。

その目は責めでも怒りでもなく、ただ、真実を伝える者の眼だった。


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