0012.川べりの道
きみと歩く川べりの道 まだ少し寒いけど 日の光は春の陽気
もう桜の花が咲いていて 春風が花びらを散らしていく
きみはお隣さん ひとつ違いだけど幼なじみ
なのになぜか きみはぼくに敬語を使う
今年も桜がきれいですね
そうですね
ぼくもつられて敬語になる
川沿いの桜並木 きみと一緒に見るのは何度目だろう
口数の少ないぼくたちは 何を話すでもなく ただ並んで歩いていく
これからしばらくは 気持ちいい季節
だけどこういう時期は すぐに終わってしまう
そうこうしているうちに 梅雨が来る
きみと歩く川べりの道 もう紫陽花が咲いている
灰色の空に薄い紫とピンク色が映えるけど 今日は朝から雨が降る
傘をさすと並んで歩きにくいね
相合い傘しますか?
はずかしいのでやめときます
学校までの通学路 晴れの日も雨の日もきみと歩いてる
雨の日は一段と無口になる
そうこうしているうちに 夏が来る
きみと歩く川べりの道 もう向日葵が咲いている
梅雨が明けて 今年の夏もやっぱり暑い
日差しが地表をジリジリ焼いて 川の水だけが涼しげに流れている
だけど先週はひどい雨だった
1週間おきに猛暑と大雨を 繰り返している気がする
今日も暑いですね
そうですね
夏と冬が長くて 春と秋が短い
季節は暑いか寒いかばかりで 気持ちのいい時期は一瞬で過ぎ去ってしまう
時間が経つのが早いのは
少年老い易くですよ
まだ若いし
学成り難しですよね
それはそうかも
お盆が過ぎてもまだまだ暑い それでも夜になると秋の虫が鳴き始める
長い残暑も終わり 秋分が過ぎればさすがに涼しくなってくる
きみと歩く川べりの道 もう秋桜が咲いている
気持ちいい風が 花を揺らして抜けていく
でもそんな時期はすぐに終わる
いいことはあっという間で 辛いことは長く感じるものです
きっと防衛本能によるものです
それはなんで?
より危険なものに対して より感覚を集中させるからですよ
秋が深まり紅葉の季節 川べりの道も赤と黄色の木の葉が舞う
それもすぐに過ぎていく もうすぐ冬がやってくる
きみと歩く川べりの道 木々の葉はすっかり落ちていて
吐く息が白い煙になるのを きみは楽しそうに見つめてる
今年もあと1週間ですね なんとなく感慨深げに話すきみに軽く頷く
1年経つのがどんどん早くなっていく気がするね
もう若くないんですよ
いやまだ若いし
歳を取るほど 時間が過ぎるのが早く感じるのは
それだけ長い時間を 過ごしてきたからだと思います
10年のうちの1年と20年のうちの1年は 感じ方が違うんです
きっと積み重ねた経験が 大きくなるからです
多くを生きてきたってことですよ
なんか人生を悟ってるね まだ若いのに
若いですよ
きみと歩く川べりの道 目に入ってくるのは青と白
雲は晴れて澄んだ青空が広がって 昨夜の雪が石畳の道を真っ白に覆っている
立ち並ぶ家々の屋根も みんな白色に変わっていて きらめく朝の陽光がまぶしい
すっかり寒くなりましたね これふたつ作ったのでひとつあげます
きみが編んでくれたお揃いのマフラー
2人揃って巻いていたら ほとんど恋人同士に見えるのでは
そのつもりだったんですけど
あそうだったんですね じゃあ仲良く巻いていきましょうか
うん
顔がほかほかするのは マフラーのせいだけではないですね
そうですね
きみはお隣さん ひとつ違いだけど幼なじみ
きみと歩く川べりの道 この1年も早かった
手袋の上からつなぐ手が ちょっとくすぐったい
きみといる時間は少しでも 長く感じていられるように
もう梅の花が咲いている
桜の花が咲くのは まだもう少し先
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