第八十話 BXD20Eの再生と雅子が練習会でバトルになって
予想通り、BXD20Eの再生が来てしまった
2か月間いた笠木さんたちと佐藤さんが自分のお店に帰って行って戦力ダウンの中、何とかDA90ベースのキャンパーを納車してホッとした。
それもつかの間、加藤運輸で使っているトラックとトラクターのミッション載せ替えと平くんのミッション換装が来た、僕んちの母親も総輪駆動を買って直してくれと大忙しになった。
その間、いきなり売りに出されたBXD20Eを買ったのは?
主な登場人物と所有車
佐野 雅子 ヒロイン 25歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、11勝目にトライ中。シーズンチャンピオン
家業の佐野自動車販売の中古車販売店副店長兼整備工場副工場長、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーの経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許、2級整備士免許、危険物乙4、玉掛、ガス溶接、救急救命士、巻き上げ機
レース以外の趣味:
オフロード走行:大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車
大型バス:
観光シャシ+観光ボディ
ルーシーちゃん
なごみちゃん
路線シャシ+路線ボディ
獅子丸くん
フーセンちゃん
短尺シャシ+路線ボディ
ニジュちゃん
エムエム君
大型キャブオーバーダンプ
4×4 藤子ちゃん
大型ボンネットダンプ
4×2 カービーちゃん
小型車
クーペ イチゴちゃん
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 28歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許 巻き上げ機、危険物乙4
カーキチ、スペックオタク、エンジンスワップ大好き
所有車
大型バス:
観光シャシ+観光ボディ
ゴーゴーくん
ロザン君
路線シャシ+観光ボディ
パン君
陽菜ちゃん
路線シャシ+路線ボディ
キューピーちゃん
ブイエムちゃん
大型キャブオーバーダンプ
4×4 サイバー君
小型車
セダン サンゴちゃん
三四郎君
佐野 康晴 僕の父親 56歳 佐野自動車販売の社長、総括責任者。趣味人 マニ割、エギマニ作りの名手 元整備工で板金も得意
所有車
バス:路線シャシ+路線ボディ
大型 ニイナちゃん
中型 アサイー君
ケーテン君
小型 いい子ちゃん
大型ボンネットダンブカー
4×4 タフさん
セダン
Q-LS131H改
佐野 康子 僕の母親 54歳 佐野自動車販売 副社長 佐野自動車販売店店長、営業、仕入れ担当
所有車
大型リアエンジン 路線シャシ+路線ボディ
錦くん
大型ボンネット
ダンブカー クレーン車改造済
4×2 デコちゃん
バス 移動事務所へ改造済
4×4 サナちゃん
小型車 ハードトップ
E-KE70
加藤 隆弘 28歳
悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染。2月生まれ。エンジン加工の名手、エンジンスワップ大好き
所有車両
大型キャブオーバーダンプ
4×4 ラッシー君
大型自家用バス 路線シャシ+路線ボディ
兎ちゃん
小型車:セダン
エスティーくん
加藤 隆文 25歳
隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。板金と排気系を作るのが得意
所有車
大型キャブオーバーダンプ
4×4 まゆかちゃん
大型ボンネットダンプ
4×2 きみこ
バス 大型短尺路線シャシ+路線ボディ
恋路ちゃん
クロカン4×4
ロックン
趣味:TSカーレース 今シーズン5戦目で1勝あげたが年間は4位
松尾 百合 25歳
雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。松尾運輸の副社長。普段はおっとりだがスイッチが入ると途端にせっかちとブチ切れになる 5月生まれ
TSカーレーサー 2勝あげ、シーズン3位
所有車
バス:観光シャシ+観光ボディ
武蔵君
ラムちゃん
大型ボンネットダンプ
4×4 パイ君
4×2 徳次郎君
小型車:クーペ
エスワン
松尾 譲 27歳 百合ちゃんの兄 丸松建設の副社長。マニ割マニア
所有車
バス
キャブオーバー トラックシャシ+路線ボディ
4×2 ビーフさん
4×2 レイ君
大型ボンネットダンプ
4×2 旦那さん
4×4 ゼットワン
小型車 クーペ
イーサン
松尾 隆 丸松建設の社長 百合ちゃんの父親 56歳 速い車大好き 悟瑠の父親の同級生
所有車
大型キャブオーバーダンブカー
4×4 サンデー君
大型ボンネットバス トラックシャシ+路線ボディ
4×2 なみちゃん
大型短尺バス 観光シャシ+観光ボディ
リングちゃん
小型車 セダン
E-GNY33改
松尾 友香 百合ちゃんの母親、丸松運輸の社長 54歳 旧車大好きながらもオリジナル主義
大型ボンネットバス トラックシャシ+路線ボディ
4×2 デビちゃん
4×4 てつしくん
大型短尺キャブオーバーバス トラックシャシ+路線ボディ
4×2 丸井ちゃん
大型ボンネットダンブ
4×2 でん六くん
小型車 HB
けいこ
小笠原 愛理沙 24歳 係長
TSカーレーサー 総合優勝を狙う 最終戦で3着に入ってぎりぎり総合2位になった
雅子の同じ学校の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長(7代目)2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務 大型免許所持 抜群の運転センス
所有車
小型セダン
TA-GXE10
大型リアエンジンバス 路線シャシ+観光ボディ
ババロアちゃん
大型キャブオーバーダンプ
4×4 フライヤーちゃん
小笠原 哲史 27歳 愛理沙の兄。別の会社に勤めていたが家業に転職、副社長 大型免許所持 旧車好きでオリジナル主義
所有車
小型車
セダン:E-AE70
クーペ:ましこ
大型リアエンジンバス 路線シャシ+路線ボディ
マーシーちゃん
中型総輪駆動トラック
美浜ちゃん
長野さん 30歳。 移動販売課 課長代理
バス会社に居たが欲しいバスが排ガスの関係で住んでいる地域で登録できなくて雅子がいたスーパーに転職。今は愛理沙ちゃんの上司 短尺バス好き
所有車
大型短尺系バス
路線シャシ+路線ボディ
伊那路 自家用1ドア
鬼丸君 路線用前中2ドア
観光シャシ+観光ボディ
五平君
小型車
クーペ:NE
狩野さん 30歳 業務課長
運送会社にいたが首都圏の事業縮小で地方に転勤になった。偶然募集していた松尾建設に転職
所有車
大型キャブオーバーダンプ6×4
V10:古武道君
V8 :福田屋君
小型車
EHT;ND
綿貫 洋平 スーパーの販売部 課長 37歳
バスに嵌って自分でも買ってしまった。
中型リアエンジンバス 路線シャシ+路線バスボディ 自家用
ロニー
橋爪 正治 スーパーの社長 61歳
ボンネットバス トラックシャシ+路線バスボディ
中型
ポニーちゃん
大型
丸ちゃん
平くん
矢代さん親子
ボンネットバス トラックシャシ+路線バスボディ
4×4 K-ZC121改 移動事務所仕様
4×2 BH15改 29人乗り仕様
DA90改 移動事務所仕様
「佐野さん、ありがとうございます。親父が無理言ってすみません」
「笠木さんのお父さんにはお世話になったんで」
「いやいや、わざわざ寄っていただいてありがとうございます」
対応してくれた笠木さんは、どうやら納車されたばかりに見えるバスを確認しているようだった。
「笠木さん、これって? 入庫したばかりですか? 西工ボディですよね。UAですか?」
「いいえ、このへんでは珍しいでしょ。これはU-LV218Mの西工58MCB1です。最初に使っていたところでPM・NOX法に引っかかって、西日本の地方に流れて行って、それからこっちに流れてきて送迎用で使ってたんです。こっちに来てからはずっとうちで面倒見てたバスです。29人乗りにしてます。オーナーがもう歳なので手放すんです。委託販売ですよ」
「いかほどですか?」
「お兄ちゃん? また?」
「うん、欲しくなった。これを8PDエンジンにするのもいいなあ。LV270Hがあるからなあ」
「はああああああ」
がっくりと肩を落としている雅子だった。
「佐野さんでしたら、バスのオーナーの希望する下限プラス販売手数料にてお売りできます。これの価格は、オーナーが赤字じゃないならいいということで10万円と言われてます」
「買います。契約します。ここで全額払います。現状渡しですよね」
「そうですね。佐野さんなら。今週の土曜日に親父と植木さんの荷物を取りに行くんです。その時にこのU-LV218Mをお持ちしますよ。お袋も行くんで、以前買った総輪駆動のワンボックスで荷物引き取って帰ります。親父はこっちに車がないと困るって言うんで、自分のは乗って行ってないんですよ」
「助かります」
「それから、うちに在庫で8PDエンジンエンジンとミッションがあるんですよ。今持って帰るなら積みますよ。この船底には充分載りますから」
「助かります。内金入れますね」
「現状渡しですね。それでは領収書と契約書出しますね」
「はい、ありがとうございます」
雅子が呆れているなか、僕は領収書とエンジン・ミッションを受け取って、雅子が運転する 2軸トラクターに乗って途中アジトに寄ってエンジンとミッションを降ろしてからお店に戻っていた。
お店でBXD20Eを降ろして工場の作業スペースに収めると、
「工場長、これもいい傷み具合ですね。笠木工房の車ですか?」
「そうみたいです。5年前まで前のオーナーが趣味車として乗ってたようなのと、笠木工房で車検とかメンテナンス全般の面倒見ていた車なのでフレームの傷みはないんですが、ボディは防錆鋼板の防錆力が落ちてきていたその分の傷みが出てます。オーナーの野上さんはルーフのベンチレータは取っ払ってエアコンをつけてほしいのと、エンジンのオーバーホールが必要とわかってるんです。前のオーナーはここ5年くらいはほとんど走らずにガレージで眠っていたようです。とはいっても大事にしてたんでしょうね、電子防錆がしっかりつないでありましたよ」
「それにしてもフレームがしっかりしているとは、いい個体ですね」
「ですね。あのBXD30が結構いい値段で売れたみたいで、うちにまた再生頼んで来ましたよ」
鈴木さんと引き取ってきたBXD20Eを見ながら修理の計画を立ててからアジトに帰ってきた。
アジトに帰ると先に帰っていた雅子が、
「お兄ちゃんったらまたバス買っちゃってえ。そうだ、あたしにどれか1台ちょうだいよ。できれば観光系がいいなあ」
「ええと、それならなごみちゃんはどうだい? 520ps出てるから速くて良いよ」
「うん、お兄ちゃんありがとう。なごみちゃんをもらっていいのね、ふへへへー楽しみじゃん」
次の日、雅子は嬉々としてなごみちゃんに乗って僕よりも早くアジトを出て会社に向かって行った。
僕は久しぶりに総輪駆動のサイバー君で会社に行った。
その日から平くんのエンジンを生にするのと、色の塗り替え、BXD20Eのエンジン降ろしをやっていた。
週末の金曜日、二ヶ月間うちの工場で応援してもらっていた笠木さん、植木さん、佐藤さんの送別会を社員全員でやっていた。
「先輩。助かりましたよ。うちの若い村上くん達の腕がかなり上がりましたよ。佐藤さん。佐藤さんの知恵と工夫は悟瑠たちが勉強してましたから」
「康晴よ。俺の腕を引き継いでくれるならこんな嬉しいことはないねえ。なあ、佐藤さんもそうだろ」
「そうですよ。俺も鈴木にはあんまり教えてなかったが、少しでも伝授できればだな。それにしても隆文君の溶接の腕は大したもんだよ。あんなに溶接跡がきれいにそろってるのは見たことない」
「どうもありがとうございます。兄の自分が言うのもなんか手前味噌なんですが、ほんとに手先が器用で僕も感心しますよ」
「そうそう、僕もですよ。板金やっても上手で」
「はい、僕もそう思います。隆文先輩って板金が上手すぎて、パネルが一発でピッタリ合うんですよ。僕がやると何回か修正がいるのに」
「俺は隆文君の手先が器用なのは天性のセンスだと思うぞ。多分だけど、隆義の奥さんがめっちゃくちゃ手先器用なんだろうな」
「そうですね。母親は手先がめちゃくちゃ器用です。包丁さばきが凄くて、お刺身でお花作ってますよ」
「そりゃ凄い。隆文君はお母さん譲りの器用さってことなんだな」
駅前のお店で飲んでいた僕らは、次の日の土曜日をお店休みにしていたので、2次会まで行って、笠木さんと植木さんは借りているウィークリーマンションに泊まって、僕と雅子は実家に、隆弘たちは加藤運輸の宿泊設備に、若手は紫陽花ちゃんの親が経営するホテルに泊まっていたし、お隣の市内の佐藤さんは奥さんが迎えに来ていた。
土曜の午後になって、ウッディパラソルから僕が買ったU-LV218Mが来た。笠木さんのお父さんはここに来る時、自分の車ではなく植木さんの車で来ていたので、迎えに来ないと足がなかったのだ。
植木さんは火曜日までお休みをもらっていて、普段はなかなか行けない南の方にいる子供たちの家に顔を出して帰るらしい。
月曜日から、僕らはスーパーマーケットの社長の平くんの塗り替えと、BXD20Eの再生をやっていた。
僕が買ったU-LV218Mは笠木さんのところで面倒を見ていた車両だけあって、外板、床下にも全く錆がなくとても程度がいい。やることは買って来た8PDエンジンエンジンをオーバーホールした後に載せ替えするだけで済みそうだった。
いいことに、ノーマルの8PDエンジンエンジンはオリジナルのエンジンと比較すると排ガスは同じU-で、出力が同一、トルクが低いので、公認は強度証明が不要で簡単にいくのだ。
公認を取った後にターボに変更することにしていて、しっかりと部品は準備しておいたのだった。
「悟瑠、平くんは静態保存になってるBXD50と同じカラーにするんだよね」
「そうだよ。愛理沙ちゃんに聞いたら、スーパーマーケットの社長が直接バス会社に行って社長と話して許可を取ったらしいよ。バス会社の社長は、自分たちのバスが静態保存になってるもんだから、走ることができるバスにこのカラーが使われるのはいいことだとか言って、二つ返事だって」
「そうか。後ろの形状も全く一緒だもんな。同じメーカーのボディだし」
「隆弘の言う通り。静態保存のBXD50とスーパーマーケットの平くんは長さが違うだけだよ。塗り直しだよね」
「それな。一旦磨き機に入れて白を捨て吹きしてだな。隆文。色塗りは鈴木さんたちにお願いして、僕らはBXD20Eの外板作りだ。良いことに譲さんのレイ君とボディのメーカーが一緒だからデータがある」
「うん、兄貴。ってことは平くんの色を塗り終わったら全員でBXD20Eの仕事に取りかかれるな。平くんのマフラーとエキゾーストマニフォールドはできてるから組めばいい。明日、矢代さんのDA90ベースの移動事務所を納車してしまえばスペースも大分楽になるな」
「そうだよ。明日納車だよな。社長が納車に行くんだろ」
「そう聞いたよ」
「悟瑠、鉄板を今のうちにダイレスで加工しようぜ。実車の寸法見ながら」
「隆弘。見る限りルーフの部分と窓の部分は一列違いって言えばいいのかな? その差で600mm短くしてるけど、ホイールベースとリアのオーバーハングで300mmずつ違うから、脇板の後輪まわりは一部が新形状だなあ」
「そこはデータ作りをやるよ。良いことにBXD20Eとレイ君の顔とお尻は全く一緒だから、打てるところはどんどん打とう」
「おう」
僕らは前に外板を作り直したことがあるBXD30Eのデータを用いて、形状が異なるボディサイドの部分を除いて鉄板を加工して交換する準備をしていた。
その間、鈴木さんたちに平くんの色塗りとマフラー交換をお願いしていて、僕らは突貫でBXD20Eをレストアしていた。
錆びた外板の全交換から始まり、エンジンとミッション載せ替え、吸気系と排気系の交換、エアコン追加など注文されたアップデートをしていたのだった。
平くんをスーパーマーケットの社長に納車して生エンジンの試乗してもらったところ扱い易くて社長の好みのトルク特性になっていたので大喜びだった。
平くんを納車した後、突貫でBXD20Eを仕上げた僕らは、車を引き取って約3週間後に納車していた。
BXD20Eの整備およびカスタム内容の詳細は、錆びた外板の全交換とボディカラーチェンジ、エンジンとミッションの載せ換え、錆で詰まっていたラジエターの新品交換、エアコン装着、念のためのオーバーヒート防止用に空冷オイルクーラー追加、クラッチとブレーキへのエアアシスト追加、パワステ追加、補助ブレーキの強化でリターダー追加、エアコンやエアコンプレッサーを駆動するための大容量角線タイプオルタネーターを2連装、減速時に運動エネルギーを回収するためのキャパシタ、内装全部の掃除、床材の張り替えをやっていた。
僕と雅子がミック君で納車に行ったのだ。
途中の急坂は、さすがに6.4リッターの旧型エンジンにとっては厳しく、ダイナミックバランスを取ってある強化品のクランクやコンロッドに交換して、メインジャーナルの倒れ防止対策をしてあっても、全開の連続は気が引ける。
納車に行くと、既に家の前で野上さんが待っていた。ドアを開けると、さっと乗り込んできて運転席に座り、各部の操作感を確認していた。
「佐野さん、直すの早すぎですよ。でも……あ、5MTにしたんですね。とても嬉しいです」
外装をひと通り眺めて、運転席に座って車内を見ていた野上さんが言う。
「気に入ってもらってよかったです。エンジンとミッションはうちの在庫に交換です。オーバーホール済で、クランクとコンロッドは強化品ですから回しても大丈夫と思います。フレームと脚のところは笠木工房が面倒見ていた車なので傷みがほとんどなく、点検と防錆塗料を塗り直しただけです。ご要望のパワステとクラッチアシスト、ブレーキのアシストつけて、エアコンもついてます。エアコンはコンプレッサーを電動で回すので、大容量オルタネーターが2個ついてます」
「これほど整備してこのお値段ですか? 安すぎでしょ」
「うちは鉄板加工や塗装設備の自動化が進んでいるので、このくらいでも十分に利益出ます。野上さんが以前乗っていたBXD30は、うちの地元のスーパーマーケットの社長が買って使ってますよ。このBXD20Eもぜひ可愛がってください。今後の整備は笠木工房にお願いしました。エンジン関係のトラブルはうちが面倒見ますが、普段の整備は笠木さんのところにお願いしました。補助ブレーキ強化でリターダーも入れました」
「はい、早くて安くて助かります。どうもありがとうございます」
野上さんにBXD20Eを納車して、帰りにウッディパラソルに寄って頼んでおいた加藤運輸のトラックに使うミッションを引き取ってお店に戻った。
「お兄ちゃん、加藤運輸のトラクターがまたミッショントラブルよ。社長からはミッション交換してくれって言われてるよ。隆文と隆弘さんが4軸総輪駆動レッカーで救援に行っちゃったって」
「ミッションをMTに交換しよう。こんなに故障頻繁ならAMTやめるのが一番いいよ。MTはうちの在庫にあるから交換だね。H/L付きの6速にすれば良いよ」
「ファイナルはそのままってことでいいのね」
「仕方ないね。最上段のギヤがトータルで若干ローギヤになるけど問題ないでしょ」
「地場用だもんね。高速トラクターじゃないからいいかもね。こと後の仕事の段取りは急ぎの加藤運輸にリースしているトラックとトラクターのミッション換装だよね。メンテナンス関係は?」
「うん、加藤運輸は予備車で運用してるから、早くこの車たちを復帰させないとやばいよね。メンテナンス関係は鈴木さんたちにお願いして」
「お兄ちゃんのバスのエンジン載せ替えはアジトでやって、村上君たちにはトラックのミッション載せ替えお願いかな?」
「うん、村上くんと石橋くん、小林くんにはトラックのミッション換装お願いするよ。鈴木さん達はリース車のメンテナンスかな? 万が一の事故車の修理と緊急トラブルの対応は鈴木さんたちに任せる」
「加藤運輸のミッション換装に使う部品はママが全部揃えたって言ってるから大丈夫ね」
「うん。雅子、前にも言った通り今度の日曜日、お隣の県のサーキットでTSカーの展示とエキシビションがあるんだよ。そこにTSカーの展示の依頼が来てるんだ。僕は積載車で4台を積んで行くから。僕と隆文は着いたら会場に4台並べるから」
「エキシビションで走るのかしらね」
「そうみたいだよ」
「じゃあ、百合リンと愛理沙も来るのね」
「2人とも来るって言ってた。愛理沙ちゃんのババロアちゃんで来るみたいなこと言ってたよ。お子さんも連れてきてコレクションホールとかで遊べるからとか言った。百合ちゃんは譲さんの訓練とか言って武蔵君で行くとか言ってるよ」
「いいわよ。それならこっちは積載となごみちゃんで行こうよ。隆文はどうするんだろ」
「隆弘と兎ちゃんで行くとか。なんか隆文は生のディーゼルにハマってなあ」
「そりゃそうよ。ビールも生でしょ」
「おいおい」
その週はBXD20Eの納車も終わって、僕らの忙しかった仕事がちょっと落ち着いていたころだった。
加藤運輸のトラックとトラクターのミッション載せ替えを金曜まで終わらせて公認取って納車するところまでいけたので、土曜日はお店をお休みにしていた。
土曜日、僕と雅子、隆弘、隆文はブイエムちゃんのエンジン載せ替えと、TSカーを積載車に積んで日曜日の準備をしていた。
「TSカーはF仕様だから、Tのサーキットじゃあギヤ比が合わないかも」
「直結ミッションと5.571デフかな」
「それで行こうよ。ミッション交換してデフ交換」
積載車にTSカーを乗せる直前に気がついた僕らは夜半近くまでかかったが、4台のTSカーのミッションとデフを交換した後に積載車に積んで、次の日の出発に備えていた。
翌朝、まだ薄暗い時間に僕らはアジトに集合していた。
積載車のエンジンをかけると、静かな山間に低いディーゼルの鼓動が響く。
「よし、積み込みは問題なし。ラッシングもOKだな」
隆弘が最後の確認をして、手袋を外しながら言った。
「お兄ちゃん、こっちも準備できたよ。なごみちゃんも暖機終わってる」
雅子がなごみちゃんのドアを開けて顔を出す。
朝からテンションが高い。雅子はこういうイベントごとが大好きなのだ。
「じゃあ出発しようか。サーキットまでは3時間くらいだな」
僕は積載車の運転席に乗り込み、シートベルトを締めると2速にギヤを入れて出発したのだった。
出発しておよそ3時間後、会場に着いて駐車場で僕と雅子、隆弘、隆文の4人で4台のTSカーを積載車から降ろしながら展示する準備をしているとドリュドリュドリュドリュドリュドリュというV8エンジンの咆哮を響かせて愛理沙ちゃんのババロアちゃんと百合ちゃんの武蔵君が入ってきた
「悟瑠さん、おはようございます。TSカー運んでくれてありがとうございます」
ババロアちゃんから愛理沙ちゃんが降りてきて手を振ってきた
「あ、愛理沙ちゃん。おはよう。今日は?哲史さんも来てるんだね。」
「お兄ちゃんも来てるし、ママも来てて子供たちと一緒に遊んでくれるの。上の子はお兄ちゃんとコレクションホール、下の子はママと一緒にカフェに張り付きかも」
「アハハハ、それもいいわねえ」
「お父さんなかなか一緒にこれないよね」
「パパはお出かけが意外に嫌いなんで、めったに一緒にはこないですよ。今日もお家で猫とべったりくっついてねてると思いますよ。猫が大好きで」
「良いじゃない。動物好きなんて」
「あははは」
僕らはイベント用に車を並べていた、雅子は年間チャンピオンだけが許されるカーナンバー1はちょっと要らないと言って、なごみちゃんとTSカーの型式から取った31番を付けていた。
隆文は51、百合ちゃんが52、愛理沙ちゃんは80だった。
隆文の番号は恋路ちゃんから取ったもので、百合ちゃんはラムちゃんから、愛理沙ちゃんはババロアちゃんから取った数字だったのだ。
午前中は展示会、午後の1時頃からはエキシビジョンだった。
その時の雅子と隆文の車はボディの歪みの修正をやったばかりで2台ともまだ防錆塗装してだけで全く外観からは誰が乗っているかわからなかったし、雅子と隆文はゼッケンを本番のレースとの時と変わっていた。
それがこのエキシビジョンで雅子と隆文がわかってない輩にか絡まれる原因になったのだ
フォーン、フォーン、フォンフォンフォン切れの良いエキゾーストノートを上げて雅子と隆文がサーキットコースを周回する、2台とも歪みを直したのでタイヤの接地性が上がっていて本人たちは飛ばしているつもりは全くないのだったが、一部のやつに言わせると速すぎらしい。それでクレームというか結構強い調子で絡んできた
「主催者にも言ってある、そのゼッケン31、俺と5周の勝負だ」
「いいわよ、2台の模擬レースを言うところかな?いつでもかかってらっしゃいよ」
メットを脱いで雅子が言うと相手は一瞬びっくりした顔になったが
「ふん、女なんかに負けてたまるか」
その言葉を聞いた雅子の目つきが獲物を見つけた空腹のライオンの用になった
「あ、ヤバ。雅子を本気にさせちゃったよ」
「そうそう、先輩って"女のくせに"とか言われるとブチ切れるんだよね」
「雅子はああなったらやべえよ。中学の時もそうだった。2年生で高校2年の男子を空手でぶちのめしてしまったからなあ。向こうはまさか中2の女子に負けたって言えないから」
隆文たちが言っていた
「あーあ、ってことは雅子に1番言っちゃいけ担い言葉言ったね」
会場では急遽2台の模擬レースという形で案内が始まった。
ポジションはコイントスで雅子がポール。隣に絡んで来たやつだった。
相手の車は雅子のと同じ310だ、エンジンをどこまでいじっているかは全く未知数の車だった
参加者で雅子を知ってるベテラン勢は呆れ返った顔でみていたのだ。
レースはスタンディングスタート方式で、フロロロローンと2台がアクセルをあおっていて、シグナルが赤から青に変わった瞬間、雅子の310がダッシュ、隣の310を簡単に一車身引き離していく。
おいていかれた方はシャカリキになって雅子を追っているようだが、そもそもエンジンパワーの差か?雅子の車に全く追いつく様子もない、それどころか腕の差も出ていて、各コーナーでもストレートでも全く歯が立たずにおいていかれる
「誰だ?あいつは。佐野選手に逆らって勝てるわけねーだろ。俺たちを簡単に抜いてあっという間にチャンピオン取っちまったんだぜ。まさか知らないとは」
「そう、佐野選手の速さは本物だ、車もいいけど腕もいい。あの車のエンジンのチューナーは恐ろしい才能だろ。11000rpm迄ブン回るなんて」
「そうそう、何だよあのざま。全然追いつかねー」
「もういい。レースにならん。終わりだ」
「俺が止めてくるよ」
雅子の310がスタート地点に戻って来たところでオフィシャルに言って終わりにしていた。たった一周で5秒以上も差がついてしまってこれではレースにならないということだった
「なんなんだ?あいつは。最初だけ威勢が良かったけど他は全然だめじゃん」
と言っていると能條選手がきて
「能條です、次年度から参加予定している平山ってやつですよ。どうやら大陸系のハーフみたいですね」
「なるほど、雅子に絡んで何が目的だろ」
「本来のカーナンバー1をつけてないのに先頭走っていたのが気にいらなかったんでしょうねえ」
「なんかざまあというか?オフィシャルにつまみ出されてどこか行っちまったぜ」
「佐野さんとの腕の差はいかんともしがないですね。車のパワー差はともかくも。次のシーズンもぶっちぎりになりそうですよ」
「能條さんよ。俺もそう思ったよ。佐野さんの車が多分今何も書いて無いのに先頭はしってて気にいらなかったみたいですから。キチガイですか」
「仕方ない、次年度のレースでコテンパンに伸しておけばいいでしょ。あの腕なら俺たちよりもはるかに遅いでしょ」
「あまり態度がひどいと久保田とか玉城みたいに出禁食らいますから」
「そうですね」
その場は収まって帰って来た
次の日の月曜日に会社に行くと、見慣れないボンネットバスが整備工場の駐車場に停まっていた。修理の依頼を受けた記憶がないのでおかしいと思っていると、どうやら雅子も同じことを思ったらしく、
「ママ、これ?どっから手に入れたの?こんなのあったっけ?お兄ちゃん知ってる?」
「T370改かなあ?えらく古いよなあ。ええ?これ“営林署”って書いてる。営林署の払い下げ?」
僕らの母親が、丸松建設から引き取ってきたという車を船底からおろしていた。
見ると、まさに激レアどころか、公道で走っているのは一台も残っていないと思われるボンネットの総輪駆動バスを改造した移動事務所だった。
外観はかなりボロボロで、この前再生したBH15改よりはまだフェンダー廻りの原形を少し多く保っていたくらいだった。
幸いというか、これもまた風通しのいい倉庫の中に仕舞ってあったらしく、フレームや足回りの錆がほとんどなく、フレーム、リーフ、ホーシングに真っ赤な防錆塗装がしっかりと残っていた個体だった。
「友香が“要らないか”って聞いてきたから買っちゃった、というか、ほんとはこのT370改を処分してほしいってことで引き取ったの。そうしたらグローブボックスに書類があったのを見つけちゃったの。書類あるなら復活させようかと思って。元から移動事務所になってたみたいなのよね。この車はいいことに材木置き場の建屋の中にあったの。材木を乾燥する倉庫を解体するから処分してほしいって言うんで見たら、フレームがしっかりしてるし、これなら良いなーって思ってね。ほら、うちって中古車屋さんだから、1000円でオーナーから買ったことにしたの」
「ねえ、これどうすんの?」
「これ?あたしが乗るの。それで悟瑠、お父さんのタフさん改みたいに普段使いできるようにしてね。できればマッドとか急な上り坂に行くことが多いからパワーは要らないから排気量を拡大できると良いなあって思って6D24エンジン勝ったから給排気を等長ロングデュアルにするのよろしくね。それから移動事務所のままの登録にしてね。このところお父さんも山の中腹に放置された大型トラック査定の仕事が増えちゃってその場所に行くのにタフさん改をしょっちゅう使ってるでしょ。あたしもいくことあるけど。錦くんとかAE70だと行くの難しいところがあるから。デコちゃんでもいいけど、総輪駆動の移動事務所の方がいいじゃない」
「ハイハイ。お袋、駐車場は?もう置き場ないよ。どこか借りたの?」
「直ぐお隣のお店のところよ。ほら、一月前に撤退したの知ってるでしょ、お店の建屋と駐車場のところを買ったの。お店の建屋を居抜きで中古車販売のお店にするの。屋外展示場は駐車場だったところ。ここの展示場は整備工場の駐車場にしてかな?ここは工場の専用事務所にするの。事務所間の繋ぎは作るから」
「ってことは、パパの方針は大型車の整備をもっとやるってことね」
「そうね。もっと笠木さんのところとも連携するのよ。そうだサナちゃんの部品は笠木さんのところに探すの頼んでおいたから、引き取り日程の調整よろしくね。あ、そうそうT370改のニックネームはサナちゃんにしたから。T370改の3と7から取って。雅子は工場の手配と受付関係、会計の副工場長を主務にしてね」
「はあああああ」
雅子の大きなため息と呆れた顔。それと対照的に、母親はサナちゃんの公道復帰を楽しみにしている顔をしていた。
「あ、雅子、スーパーマーケットの社長からよ」
「はい、何だろ」
雅子が会社の電話の受話器を受け取って髪の毛をかきあげると
「はい、雅子です。社長。ご無沙汰と言うか?はい?あああ、ギヤ比がもう少し下がらないかってことですか?」
『そうなんだよ。この前、ちょっと用があって北の方に行ったら、平くんのミッションはターボのギヤ比なんで登りの道に合わなくてと言うか』
「はい、承知しました。お兄ちゃんと相談しますね」
『よろしくお願いいたします。愛理沙に輸送を頼んだんで見てください』
「はい」
電話を切った雅子が
「お兄ちゃん、聞いた?平くんってターボのミッションって言えばいいのかな?ハイギヤでしょ。なんか合わないんだって」
「仕方ないじゃん。納期優先でミッションはそのままだよ。ワイドの5速じゃあ登りはきついでしょ。それならクロスの6MTにしてファイナルを一ランク落とせばいいよ」
「部品を頼むから何用のか教えてね」
「うん。うちの在庫に6BGエンジン積んだトラクター用ミッションがあるんだよ。クロスしているからそのミッションに載せ替えるよ。買わなくてもOK。ファイナルも在庫にあるから中身を入れ替える」
「なんだ。そうなのね。社長は早く納車してくれってせっついてたもんね」
「あ、雅子。あたしのサナちゃんの部品来たって。笠木さんのところといつ引取できるか話しておいてよ」
「はいはい。んもうママったらせっかちなんだから」
「はあああ、お袋も子供のようだよ。早く乗りたいらしい」
「まあ、そうね。笠木さんに連絡してみるよ。部品がいつ来るか。外板の交換もでしょ」
母親のせっかちさにあきれ果てていた雅子が気を取りなおして、笠木さんのところに母親が頼んでいたという部品の確認をしていた。するといきなりびっくりした声を上げた。
「え?お兄ちゃん、あのBXD20Eがもう売りに出されているって?ええええ?早い。百合リンのママが買っちゃった?一体どうしてまた?」
雅子が笠木さんのところからサナちゃんのエンジンとミッション換装のための中古パーツの入荷時期の情報をもらっている時のことだった。
雅子はスピーカーモードにしているので、こっちにも笠木さんの声が聞こえてきていた。
『佐野さん。オーナーだった野上さんも、せっかく直したBXD20Eをこんなにすぐに乗り換えていいものかどうか相当悩んで迷った末に決めたみたいですよ。野上さんは自分の車のメンテをある程度自分でやる方なんですよ、BXD20Eのメンテやってみたらキャブオーバーのバスはエンジンカバーを外すのがかなり面倒で、しかもオイルやフィルターを室内側から交換するのが大変と気付いたんです。リアエンジンならボンネットバスほどじゃないけどメンテしやすいのと、室内と完全に分離されているってことでリアエンジンのバスを選んだようです。それにバスは29人乗り一台しか持てないんですよね、2台持ちたいって言ってましたけど仕方ないですね』
「そうなんですね。メンテしづらいって言うなら平くんをどうして手放したんだろ」
『それも聞きましたよ。ボンネットバスはやっぱり前方視界が悪いので困っていたようです。平くんの時も前方を見るカメラとモニターをつけたんですけど、カメラだとどうしても距離感がうまく掴めなくて、“前を見やすいバス”ってことでキャブオーバーのBXD20Eにしたようです。ですけどエンジン周りのメンテしづらいのはいかんともしがたいってことです。それと覚悟はしてたんでしょうけど、BXD20Eの右手シフトはやっぱりどうしてもシフトミスして辛いので、オーソドックスなパターンの左手シフトのDR11にしたようです。このDR11はうちが新車のころからずっと面倒を見ていた個体なので、親父が張り切って防錆鋼板の効果がなくなってきたところの張替やってますよ。うちの祖父の友達が最初のオーナーだったとか聞きました』
「そうですか、それは確かにあるあるですね」
『野上さんからいきなりBXD20Eの販売を委託されて、うちの親父がバスを見てびっくりしてましたよ。あのBXD20も前のオーナーの時にはうちで面倒見てたバスなので、ここまで綺麗に直って、5MTになってるとは思ってなかったようです。親父はバスの外板交換の修理頼まれると、この前に入れた自動鉄板鍛え機と高所作業装置、新しい鉄板叩き台で嬉々として板金やってますよ。そう言えばデビちゃんはターボにしたようですが、DR11もターボにできますか?』
「悟瑠です。ターボはできますよ。ドライブ君でやってます。お父さんがバスを見ていたということは、笠木工房の完全復活ですか?」
『そうですね。農業は今や自動化で人手が半分で済むようになって、親父は道の駅で漬物が売れまくっていて行商も減ってます。それで暇なんで笠木工房を完全復活して、昔のようにどんどん修理の注文を受けてます。そうだ。うちのレッカー車のエンジンを直してもらえませんか?ちょい古めのKL-CW53YSH改です。エンジンのオーバーホールしたいんですけどうちはいかんせんDPFがついてからはエンジン整備の設備を減らして、その分ボディやフレーム修理と改造に寄せたのでエンジンのオーバーホールがなかなかできなくて。かつては外注でやってたんですけど、外注先の工場が今年になって廃業しちゃって古いエンジンを頼めるところが近くにないんです。ですのでできれば佐野さんのところで』
「はい、承知いたしました。レッカー車はエンジンオーバーホールと、他には?」
『できればデフロックも上手く付くといいんですけどね。冬の救援が大変なので』
「それは除雪車用を入れますよ。なんとかしますよ」
『お願いします。それから松尾さんはBXD20Eの整備を佐野自動車さんに頼むと言ってましたから。今後ともよろしくお願いいたします。DR11の板金終わったらエンジン整備お願いしますね。ターボとエアコンもつけて欲しいって言うことです。野上さんも天井のベンチレーター取っ払ってエアコンをつけるのは歓迎と言ってましたんで』
「はい。承知いたしました。ターボとエアコンですね」
電話を切ると雅子が呆れたように、
「百合リンのママがBXD20Eを買うとはね。ボンネットバスが好きとか言っていたんだよね」
「キャブオーバーも乗ってみたいってことかな。もしかするとBXD20Eを左手シフトのフィンガーシフトにして欲しいとか言ってくるかも」
雅子と話していると、グロウグロウグロウというDA640エンジンのアイドル音が聞こえたかと思うと、それがやんで、
「こんにちは、康子。悪いけど、あたしが買ったうちのBXD20Eの名変と色の塗り替え、それと是非何とかしてレイ君みたいな左手シフトのフィンガーシフトに変更したいの、よろしくね。乗って来たけど、このバスって右手シフトでむずいのよ」
噂をすれば影で、百合ちゃんとお母さんがお店に来たのだった。
BXD20Eは納車早々に売りに出されて?
一台しか持てない悩みは深い
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。
お気に召しましたらイイネや感想いただけると更新のモチベーションアゲアゲになります
次回は出来上がり次第投稿します




