第七十八話 ボンネットバスの納車とTSカーカップ最終戦と新たな仕事
BH15再生のためにフレームを交換する悟瑠たち日本の車検制度をフルに使って
式典迄仕上げる
その間もTSカーカップ最終戦に参加していた雅子たち
BH15にかかりきりになっているうちにビルダーからK-ZC121改が戻ってきて?
主な登場人物と所有車
佐野 雅子 ヒロイン 25歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、11勝目にトライ中。
家業の佐野自動車販売の中古車販売店副店長兼整備工場副工場長、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーの経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許、2級整備士免許、危険物乙4、玉掛、ガス溶接、救急救命士、巻き上げ機
レース以外の趣味:
オフロード走行:大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車
大型バス:
観光系 ルーシーちゃん
路線系 獅子丸くん
フーセンちゃん
短尺系 ニジュちゃん
エムエム君
大型キャブオーバーダンプ
4×4 藤子ちゃん
大型ボンネットダンプ
4×2 カービーちゃん
小型車
クーペ イチゴちゃん
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 28歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許 巻き上げ機、危険物乙4
カーキチ、スペックオタク、エンジンスワップ大好き
所有車
大型バス:
観光系 ゴーゴーくん
ロザン君
なごみちゃん
路線系 パン君
陽菜ちゃん
キューピーちゃん
大型キャブオーバーダンプ
4×4 サイバー君
小型車
セダン サンゴちゃん
三四郎君
佐野 康晴 僕の父親 56歳 佐野自動車販売の社長、総括責任者。趣味人 マニ割、エギマニ作りの名手 元整備工で板金も得意
所有車
バス:路線系
大型 ニイナちゃん
中型 アサイー君
ケーテン君
小型 いい子ちゃん
大型ボンネットダンブカー
4×4 タフさん
セダン
Q-LS131H改
佐野 康子 僕の母親 54歳 佐野自動車販売 副社長 佐野自動車販売店店長、営業、仕入れ担当
所有車
大型リアエンジン路線バス
錦くん
大型ボンネットダンブカー クレーン車改造済
4×2 デコちゃん
小型車 ハードトップ
E-KE70
加藤 隆弘 28歳
悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染。2月生まれ。エンジン加工の名手、エンジンスワップ大好き
所有車両
大型キャブオーバーダンプ
4×4 ラッシー君
大型自家用バス
兎ちゃん
小型車:セダン
エスティーくん
加藤 隆文 25歳
隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。板金と排気系を作るのが得意
所有車
大型キャブオーバーダンプ
4×4 まゆかちゃん
大型ボンネットダンプ
4×2 きみこ
バス 大型短尺路線系
恋路ちゃん
クロカン4×4
ロックン
趣味:TSカーレース 今シーズン5戦目で1勝あげた。
松尾 百合 25歳
雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。松尾運輸の副社長。普段はおっとりだがスイッチが入ると途端にせっかちとブチ切れになる 5月生まれ
TSカーレーサー 1勝あげ、2勝目を目指す
所有車
バス:大型観光系
武蔵君
ラムちゃん
大型ボンネットダンプ
4×4 パイ君
4×2 徳次郎君
小型車:クーペ
エスワン
松尾 譲 27歳 百合ちゃんの兄 丸松建設の副社長。マニ割マニア
所有車
バス
キャブオーバー
4×2 ビーフさん
4×2 レイ君
大型ボンネットダンプ
4×2 旦那さん
4×4 ゼットワン
小型車 クーペ
イーサン
松尾 隆 丸松建設の社長 百合ちゃんの父親 56歳 速い車大好き 悟瑠の父親の同級生
所有車
大型キャブオーバーダンブカー
4×4 サンデー君
大型ボンネットバス
4×2 なみちゃん
小型車 セダン
E-GNY33改
松尾 友香 百合ちゃんの母親、丸松運輸の社長 54歳 旧車大好きながらもオリジナル主義
大型ボンネットバス
4×2 デビちゃん
4×4 てつしくん
大型ボンネットダンブ
4×2 でん六くん
小型車 HB
けいこ
小笠原 愛理沙 24歳 係長
TSカーレーサー 総合優勝を狙う
雅子の同じ学校の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長(7代目)2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務 大型免許所持 抜群の運転センス
所有車
小型セダン
TA-GXE10
大型リアエンジン観光系バス
ババロアちゃん
大型キャブオーバーダンプ
4×4 フライヤーちゃん
小笠原 哲史 27歳 愛理沙の兄。別の会社に勤めていたが家業に転職、副社長 大型免許所持 旧車好きでオリジナル主義
所有車
小型車
セダン:E-AE70
クーペ:ましこ
大型路線系バス
マーシーちゃん
中型総輪駆動トラック
美浜ちゃん
長野さん 30歳。 移動販売課 課長代理
バス会社に居たが欲しいバスが排ガスの関係で住んでいる地域で登録できなくて雅子がいたスーパーに転職。今は愛理沙ちゃんの上司 短尺バス好き
所有車
大型短尺系バス
自家用:伊那路
観光系:五平君
路線系:鬼丸君
小型車
クーペ:NE
狩野さん 30歳 業務課長
運送会社にいたが首都圏の事業縮小で地方に転勤になった。偶然募集していた松尾建設に転職
所有車
大型キャブオーバーダンプ6×4
V10:古武道君
V8 :福田屋君
小型車
EHT;ND
綿貫 洋平 スーパーの販売部 課長 37歳
バスに嵌って自分でも買ってしまった。
中型リアエンジンバス
ロニー
橋爪 正治 スーパーの社長 61歳
ボンネットバス
ポニーちゃん
デッサン
矢代さん親子
ボンネットバス
4×4 K-ZC121改 移動事務所仕様
4×2 BH15改 29人乗り送迎などで使用
DA90改 キャンパー仕様
「先輩はうちの工場の設備が欲しいとか言ってたなあ。でもなあ悟瑠。うちは大量にやって安めの工賃で修理する方向に舵を切ったんだけど、先輩には工房で丁寧な仕上げするショップのままでいて欲しいなあ」
「親父の言う通り。僕も佐藤さんにも同じこと思ってたよ。笠木工房や佐藤自動車再生所は今の設備で丁寧な仕上げで勝負してほしいよ」
「悟瑠、成長したな。俺も同じだ。佐藤さんのところはうちみたいな工場ではできない小回り効いたことをやっていて欲しい。俺も引退したら佐藤さんと一緒に自動車再生工房やってるのもいいかもな。先輩や佐藤さんが手に負えない仕事はこっちに振って悟瑠にもらってもいいかなっておもう。共同戦線だな。一台でもおおく古い大型車を救出して公道復帰させたいんだよ」
「うん。親父の夢は僕も協力するよ。さて、BH15を公道に送り出すぞ。まずはフレーム作ってだ。ボディは上手く合わせてやって行くよ。フレームもボディもカチオンもう一度やって」
「もちろんだ。20年は錆びないようにするんだろ。笠木さんたちも嬉々としてやるよ」
僕と親父はBH15を絶対に公道復帰させると決めたのだった。
矢代さんから依頼されたBH15はほとんど原形をとどめない位の傷み具合だったので、僕と雅子で現存する車の情報収集に当たっていた。
同時に隆弘と隆文はメーカーの博物館に行ってBH15のデータの収集にあたってくれていたのだった。
僕らが情報を取っていた間は、残っていたみんなでデビちゃんとBH15とDA90の計測と分解を勧めていてデータが来れば作業開始できるようになっていた。
僕らが情報を取って戻ってくると、笠木さん、佐藤さんにいろいろ聞かれていた
「悟瑠君、聞きたいんだけど、ここで直したバスって全部ルーフベンチレータないよね。取っ払うのが標準なのか?」
「はい、ルーフベンチレーターは基本的に取ります、お客さんに意向聞いて、取っていいという許可取ったら取っ払います。ルーフはベンチレーターから錆びることがほとんどなので」
「そうだよな、お客さんが残してくれと言ったらその時はのこすんだな」
「はい、エアコン入れるって言うとほとんどのお客さんがベンチレータは要らないって言いますね。古い車は窓からの風もいいんでしょうけど、このところ夏場はどこ行っても暑くてエアコンにかなうものはないです。それに前面のベンチレーターも塞いでエアコンの吹き出し口にするんです。前面のベンチレーターから風入れても真夏は暑くてたまんないって言ってます。ボンネットは熱気が来るので全くあけたことないと言う人もいました」
「なるほどね。今どきは旧車にもエアコンは必須だよなあ」
「はい、うちでエアコンを追加するときは冷媒蓄圧装置つけてコンプレッサーを電動でやります。そのほうがエンジンの負荷も少なくていいので」
「なるほど、非力な特に車はそうか。もしかしてどんなにパワーあるバスでもか?」
「そうですね。僕のゴーゴーくんはエアコンもエアーも電動コンプレッサーです、エアコンプレッサーにはバックアップつけてメカコンプレッサー廃止しました」
「やるなあ。発電負荷でかいだろ」
「そういったらそうなんですけど、220Aという大容量オルタネーターがあるので良いですよ。トリプルにして回してます。減速の時には車軸についてる発電機を回してトランクに積んであるキャパシターにも充電して走行中はキャパシターから貯めた電力がなくなるまでバッテリーに電気供給します。エアコンも減速の時はコンプレッサーを回して蓄圧装置に冷媒を蓄圧して貯めます。それなんでエアコン使ってもエンジンの発電負荷は少ないですよ。一旦冷えてしまえばガンガン冷やさなくてもOKですよ」
「もしかして今回依頼された車たちは全部電動コンプレッサーにするの?」
「全部やります、自動でエンジンブレーキ作動させたときにキャパシターに充電する装置もつけます。サブバッテリーとして大容量のキャパシター積んでますのでそこに充電です。今回のBH15はエアサスにするのでコンプレッサーは電動の方がいいです」
「わかった。ルーフのベンチレータがないのは楽だな。ところで外気導入はしないの?」
佐藤さんが聞いてきた
「佐藤さん、外気導入もできるようにしますよ。車両の左右前面上部に取り入れ口つけてます。サイクロン方式で排水と塵埃を除いて車室に導入します」
「なるほどね。それはいい考えだね。賛成だ。僕らが先にやるのは急ぎのBH15だな」
「はい、博物館でBH15の再生した時の途中の画像ももらってきましたので、その通りにやっていけはいいはずです。ボディのメーカーも一緒なので。あ、でもフレームとホーシングの関係で車幅広げるひつようあリますね。念のためU690のデータも取ってきました」
「悟くん、いいデータ見つけてきたねえ。ルーフと後面、前面のやり方は任せて欲しい。30mmならU690のデータ使えば何とかなるはず。片側15mm外だしにすればいいから」
「はい。それに博物館でU690の再生時に撮った画像や部品の寸法データもあったので入手できました。そのデータも使うことができます」
「良いデータだ。車幅がBH15完成形により近いから参考にするにはいいなあ」
僕たちはもらって来たデータを使って大凡の完成図を作って、完成図をベースにして各部の部品づくりしていた。
その時に役に立ったのがU690の再生時の画像とボディ全体の採寸結果だった。
車幅が僕らが考えていたものと近くて、車体の内側に使う骨格部品、パネル部品は取って来たBH15とU690のデータを総合して作れたので、あれこれ考える手間が相当省けていた。
「悟瑠、このBH15に使うトラック、P-FH229BAのフレームは低床化するのか?」
隆弘が聞いてきた
「うん、エアサスにして下げる。ホーシングをバンプラバーで止めるところはフレームに付けるけどフレーム自体はそのままで車高は50mm下げる。エアサスにするとエアバッグの下側の取り付け位置が下がるのと、エアで車高調整できるし、空積差はトラックほどでかくない。その分攻めれる」
「なるほどね」
「佐藤さん、鈴木さん。渡辺さん、田口さん、植木さん、BH15のボディ関係の再生よろしくお願いいたします。雅子、車検関係とメンテナンス関係を村上君たちと一緒に頼むよ、笠木さん、隆弘、隆文。僕たちはP-FH229BAのフレーム改造をやるからね」
「おう、悟瑠、おおよそ2月後の50周年の式典迄間に合わせないとまずいんだろ。P-FH229BAのフレームはエアサス化とフロントセクション繋ぎ変えか」
「その通り、フロントもエアサスペンションにしてラテリン入れて軌跡合わせやるからラテリン着地点のフレームを補強してだな。ラテリンの長さは車高を50mm下げた状態に合わせるんだよ。フロントセクションをもらうKB122トラックには標準でパワーステアリング付いてるからハンドル操作も楽になるよ」
「BH15にはパワステも着くのか。それは喜ばれるなあ、とにかくやろう」
僕たち作業する人全員平日は殆どが2時間の残業、週末の土曜日を返上でフロントセクションをキャブオーバーからボンネットのKB122のフレームに交換、センターより後ろのP-FH229BAカーゴトラックフレームとの接合を終わらせて全員で再生していた。
ボディの下周りの骨は佐藤さんと鈴木さんにがメインで作業して、P-FH229BAのフレームにどんどん部品を溶接していた。
ホイールベースの関係でトラックのプロペラシャフトは長さを変える必要があるので隣の県とその隣の県境近くにあるドライブトレーンメーカーに発注して作ってもらっていた。
ホイールハウスとの隙間の関係で約50mm下げたエアサスを組んで上屋を組めるように下屋を図面の通りに組み上げるところまで進めることができたのだ。
内装では、シートをオリジナルの3方向にシートにしてくれと言われていたので、表皮の張替をシート屋さんに依頼して僕たちは再利用する内装材の洗浄と床張りをモクモクと進めていた。
エンジンはうちにP-FH229BAが到着した時に調べたところ、あろうことか新車時から全く開けてないようなので、なみちゃんの作業中に全分解していた。
デビちゃんみたいな事が置きないように念のために分解したEM100エンジンの各部品を超音波でクラックがないかも検査した結果、なんとクランクシャフトの内部にクラックがありそうという結果になったのでデビちゃんに組んだクランクを作ってくれたメーカーに削り出しクランクの作成を頼んでいた
「悟瑠、なんかクランクが来てるぞ、コンロッドも来たよなあ。コンロッドは特製のH断面?」
「うん。雅子のカービーちゃんと同じだよ。クランクとコンロッドを高剛性の物に交換する。ブロックは丈夫そうだから3100迄は回せるよ。念のためベアリングキャップ倒れ防止プレート付ける。雅子のカービーちゃんの手法を使うよ」
「悟瑠さん、EM100エンジンは吸気系と排気系と噴射特性でパワーアップするの?」
「うん、実力で235ps/2900rpmにはしたいなあ。最高回転アップでいけばいいんじゃないかな。オリジナルは2800近辺でガバナーが作動するけどエンジンのダイナミックバランス見直しとクランクキャップをつなぎ合わせて倒れを抑えるプレートを設定して3100rpm迄リミットあげる。カムはM10用が作用角大きそうだから交換しておく」
「悟瑠のよみだからな。いけるだろ」
「多分いけるよまかせろ。EMとM10は基本的なところの寸法は変わってない。細いクランクは鋳造から鍛造鋼にして対策、燃料は電制ポンプ使って進角特性をH07Dに合わせてみるよ」
「悟瑠さん。マフラーはロングデュアルの一本だしと吸気もデュアル区間長く取るってことでしょ」
隆文が聞いてきた
「そう言うこと、恋路ちゃんと同じだよ。下から上までまんべんなく回るエンジンにするんだよ」
「それなら走りやすいか。ミッションもそのままでOKだな。後はエアサスだな」
「悟瑠君たち、フロントサスはどうすんだい?」
「フロントは抜きリーフとエアバッグでアシスト+軌跡合わせのラテリン入れます。笠木さんの総輪駆動の改造車と同じ方法です」
「ああ、俺のU-FL417Fと同じか?そう言ってもボンネットだとそんなに荷重変動しないから楽は楽か」
「そうです。念のためフロントフレームのサスエアバッグの取り付け点は補強します。この頃改造している車たちと一緒です。直近だと丸松建設のなみちゃんとかスーパーマーケットの社長が買ったデッサンにもやってます」
「悟瑠君たちの経験値の差だな。サスを仕上げてそれから上屋の組み立てかな?」
「はい、雅子が作った自動図面作成アプリが速くていいですよ。まずは上屋の骨格部品を作って組んでいきます。エンジン関係は僕と隆弘でやるので隆文にはエンジンが載ってレイアウト決まるまではボディをやってもらいます。この車は良いことにフロントセクションにはもっと大きく重いエンジンが載るスペースあるので吸排気系も楽なはずです」
「いけそうだな。骨格部品にプレスするにはUV硬化超硬度レジンが最高だな。これで型作ってここのプレスで打てばいいってことか。50ショットはもつんだろ」
「はい。今回は大活躍ですよ。50ショットは持ちます。アウターパネルはダイレス加工機がやってくれるんで、データと鉄板入れておけば自動で一晩中やってくれます。次の日の朝には外装部品ができてますから」
「良いじゃあねーか。さあ、やるぞ」
僕らは作業すすめていた、"ドン、ガッシャーン"という音とともにプレス加工機を使って骨格部品の加工を始めていた。
"バズズッ"とレーザーで作った骨格部品を溶接する音、"カンカンカン"と修正するハンマーの音が聞こえる。
「佐藤さん、我々は設備が最新でついていくのが大変だよなあ。ここまで簡単に形が出ると深絞り加工の腕が落ちそうだな」
「笠木さん、この工場の評判がいい理由がわかりますよ。作業が早いのに仕事が綺麗って」
「笠木さん、佐藤さん。ダイレス加工機で鉄板部品を作っても実際に車に当てて合わせるとなったら熟練の技が要りますよ。うちは継ぎ目の修正は半田でやります。パテは使わずにやってますよ。亜鉛が多めの半田です」
「うん、純正も隙間埋めは半田だよ。それが良いよ。」
「ええと、フレームとフロア、上屋の骨格部品は出来たから次はパネルの作成なのでダイレス加工機にデータ入れてですね。」
「組んでいくぞ、植木さん。佐藤さん、鈴木さんやりましょう。レーザー計測で0.1mm迄精度出せるのはいいよなあ」
「だねえ、笠木さんとこもレーザー計測はほしいよねえ」
「佐藤さん。ほんとだよ。それにエアーアシストあるからパネルを楽に組める。と言うかうちの工房だと2人で抑えながらやる作業が一人でできるなんてなんて楽なだって思うよ」
「うちならガムテープでくっつけて点付けやってますよ。一人では大物パネルは無理ですねえ」
と言いながらも板金のベテラン勢6人の仕事は早くて骨格がドンドンできていく。
朝から組み始めて夕方にはバスの形が見えてきていた
ぼくと隆弘はエンジンのオーバーホールして頼んでおいたクランクとコンロッドを組んで仕上げていた
「隆文、明日はエンジン積んでみるからエギゾースト関係のレイアウト見てくれ」
「はいよ。等長にしてロングデュアルだよね」
「うん、目標は235ps/2900rpmにするから、それに合うように頼むぜ。なるべく静かにしてくれって」
「それならタイコ3連装がいいかも。排ガス装置がないからまだ楽だよ」
「明日は頼むよ」
2時間の残業を終えてアジトに帰って雅子と話ししていると
「お兄ちゃん再来週あたりにTSカーの確認したいのよ。ここ一番の時は11000迄回る仕様がいいけど、下は6000位から使えると良いんだけどなあ」
「キャブだと排気系でやるしかないかも。ロングデュアルとシングル部大口径だなあ。やってみるよ。隆文ほどの職人技にはできないけどな」
「あたしもやるからね。今週末はマフラーづくりかも。愛理沙も来るって言うから一緒にやっちゃう」
「耐久に近いから通常は9500rpm迄でホントに勝負のときは11000rpmまで使えるようにするよ」
「ありがと。メカ系はなにかするの?」
「今回は検査のみだね。超音波で検査して問題ないならそのまま、問題有ったら部品交換するよ。クランクは鍛造で作ってもらったの在庫がある。コンロッドは伸びと内部損傷を見ておくよ。鍛造で作ったH断面コンロッドだ。」
「作戦よね。セミ耐久だから兎で行って途中でこわれてリタイヤはまずいよね」
「そのとおり、乗りやすさと耐久性重視。ちょっと燃料濃いめにしてピストンを冷やす設定。燃費との関係もあるよね」
「ヘッドはレーザー+リメルト処理やってあるんだよね」
「もちろん。鍛造プレートも貼ってある。熱対策はバッチリ」
「わかった。そのスペックで走ってみるよ。とにかく今はBH15の再生と公道復帰最優先ね。お兄ちゃん、日本の車検制度を逆手に取ったわね。きっとうまくいくわよ」
「フレームに書類があれば上屋は何乗ってもOKだからね。フレームの一部が残っていれば継ぎ足しもOKだから良かったよ」
「うん」
雅子と話した週末はTSカーのメンテナンスをやっていた
次の週もお店の工場でずっとBH15の再生をやり続けていてなんとかうまく行ったようで車の形になってきて内装を仕上げにはいっていた。
天井にエアコンダクトをつけて新造した天井パネルをつけて性能確認ができるところ迄来ていた、エンジンも仕上がってフレームに積み込んむとミッションつけて、新造したプロペラシャフトをつけて動ける状態にしていた。
そんなころ、バスボディの作成を依頼していたボディメーカーからK-ZC121改のボディが完成したので実車を見に来てほしいと連絡があった。
僕はBH15の再生で行けなかったので、矢代さんと親父が確認に行ってきたところ、後ろの造形も含めてイメージどおりにバッチリ仕上がっていて、矢代さんも気に入ったと言うことだった。
大凡2週間後にはカラーを吹いて納車できるということだったので仮ナンバーを持って引き取りにいくことにしていた。
忙しく仕事していた週末の土曜日に、笠木さんと佐藤さんが帰る迄残り1週間となったときだった。
親父がアジトに帰ろうとしていた僕を呼び止めて
「悟瑠、先輩たち後1月延長してここで仕事することになった。実はだなあ、笠木さんのところなんだが、どうやら建屋の骨格の鉄骨の一部が錆びて交換が必要で工事に一月かかるんだよ。工事の立ち会いは息子さんに頼めるんで先輩たちはここで仕事する。農業はドローンでやるから先輩は収穫まで工房で仕事の予定だったんでこっちに残ることになった。それから佐藤さんなんだが、どうも建物にアスベストが見つかって除去しないと水回りの配管交換ができなかったらしくて工事が遅れたんだよ。それに整備用の設備が水没していて交換するんだよ。設備の納入が遅れてて佐藤さんが検収するまでが一月伸びたんで、その間ここで仕事してもらうことになったんだよ」
「そうなんだ、こっちは助かる」
「先輩たちもここの自動鉄板鍛え機とダイレス加工機とレーザー計測が相当気に入ったようでなあ。借りに来るとか言ってるぞ」
「それは良かったよ。稼働率あがるなら歓迎だよ」
「先輩は工房に天井クレーンと鳥居方式の高所作業用の箱もつけるそうだ。今まで難しかった大柄バスの屋根の塗装もやるとかいってるよ。その工事をしてて鉄骨がヤバいの見つけたんだけどな」
「それは良かったと言うべきなのか?」
「先輩は医者の不養生と言ってたなあ。車の錆は見てても自分の工房の骨組みに錆があるのを見逃してるとははずいと言ってた」
「そうかあ、確かにそうかも」
アジトに帰って雅子とTSカーカップ最終戦の準備として排気系の改造をやっていた、デュアル区間を今までの5割増しにして中回転のトルクを稼ぐ、その代わり排気系全体を少し太めにして高回転の抜けを確保する作戦だった。
隆文は亀作戦に切り替え高回転よりも中回転重視、愛理沙ちゃんは中回転重視、百合ちゃんは逆に隆文よりも高回転重視だった。
日曜日に雅子たちが経営するコースに行って仕上がりを確認して、次週の最終戦に備えていた。
BH15の再生は順調に行って、週末の金曜日までには内装を仕上げて、塗装も済ませてあり、エンジンも積んであって走行して漏れ試験をやれば納車できるという状態まで来ていたのだ。
BH15はP-FH229BA改として公認を取れているので、持ち込み車検が終わればナンバーをつけて納車できるところまで来ていた。
「来週の式典には間に合いそうだな。ナンバーも付くっていったら大喜びだったもんね」
「そうだな。書類がなくってどうしようもないって状態のバスをここまで仕上げて、ナンバーついてなんて思わなかったんだろうな。そうだ、悟瑠たちは今週末はレースだろ。先輩は見に行くとか言ってるよ。クルーはどうする?」
「両日ともにアルバイト君に頼んだよ。ブルームーンズのメンバーが来てくれる。10人来れるから雅子と隆文と愛理沙ちゃんは何とかなるよ」
「百合ちゃんは?」
「愛理沙ちゃんのところから長野さんと哲史さんがくる、百合ちゃんのとこから譲さんと狩野さんがくるみたいだからなんとかなるよ」
「今回はうちの若手とか鈴木さんたちは休みと言うか、土曜日は出勤でDA90ベースのキャンパー作るんだろ」
「うん、親父指揮頼むぜ。小林君は図面作成ソフトとダイレス加工機使えるから」
「任せろ」
親父にDA90ベースのキャンパーを頼んで僕らはTSカーカップ最終戦にエントリーしていたのだった。
予選の結果はやはり雅子が速く、ポールを取っていた、2番手は愛理沙ちゃん、3番手に百合ちゃん、隆文は高速が伸びないのが災いして4番手だった、5番手は定位置になってきている能條選手、6番手にはあろうことかクラス1の一色選手、7番手にクラス2の奥山選手、8番手に神保選手、9番手にクラス1の新人で星選手、10番手に同じくクラス1の三浦選手の順番だった
"TSカーカップ最終戦始まります。実況はわたくし、日吉。本日の解説は近藤さんに来ていただきました。本日はどうもありがとうございます。早速ですがよろしくお願いいたします。"
"こんにちは、近藤です。今日の見どころはセミ耐久なのでクラス1にも十分勝機があるってことですねえ。予選トップの佐野選手も予選のペースでは走れませんから付け入るスキは十分ありますよ"
"そうですね。予選のペースで行ったら厳しいですよね"
"そこで、タイヤ交換と燃料補給と回数が勝負を分けますよ。その駆け引きが難しいですね"
"どうもありがとうございます、駆け引き次第ってことですね。それでは選手の紹介です。ポールを取ったのはカーナンバー1佐野選手です、第4戦目以来のポールです。2番手は小笠原選手・・・・"
選手紹介が続く中、僕らは準備に余念がなかった。
「隆文は予選もハードで走ったんだよな」
「もちろん、レブしばり8500、ストレート5速のみ無制限だ。5戦目のように優勝狙うってさ」
「それで5番手の能條選手よりも2秒も早いって腕をあげたな」
「雅子たちから3秒以上遅いけど追いつけるとか言ってたぞ」
「隆文なかなかやるじゃん、亀作戦ってことでデータとりしたのか」
「悟瑠、雅子だってそんなもんだろ。ハードで走ってだろ」
「まあな。よし、無線の確認だ。ナンバー1感度よろ」
『はーい、良好。車も』
「OK、ナンバー2。返事ヨロ」
『ナンバー2、問題なし。兄貴行くぜエ』
「まったくよ。愛理沙ちゃん.どうよ?」
『問題ないです。よろしくお願いいたします。』
「百合、聞こえるか」
『隆弘、OK。シフトミス気をつける』
ルーチンの無線確認を終えてチーム佐野の4人は"ブロブロブロ"とアイドリング音が木霊す車内でコンセントレーションを高めていた。
"プオーン"と合図のラッパが鳴ってシグナルが赤からオレンジ点滅になって、ペースカーがフォーメンションラップに入った。
ビジョンにペースカーが100Rを抜けたのが映ると、アナウンスが入って来た
"最終戦、スタートです。25周という長丁場を制するのはどこになるのでしょう?今、先頭はシケインを抜けて最終コーナー立ち上がって、シグナルが青に変わりました。ペースカーがピットに入っておおおおお、きたきたきたあああああ"
熱血実況が雄叫びをあげる。
"トップは予選通り佐野選手、2番手に小笠原選手、3番手に松尾選手と続いてます。若干遅れて加藤選手、能條選手、一色選手と続いてます"
"今回の台風の目は一色選手でしょうね。最軽量のKPですから耐久的なところでは有利な方向ですね"
"でしょうね。一色選手は上手く能條選手のスリップを使って引っ張られてますね"
"能條選手は駆け引きする選手じゃないので一色選手も走りやすいですね"
"奥山選手がストレートで躱せないと結構きついでしょうね"
"はい、そこですね"
レースはまずますの立ち上がりを見せていた。
雅子、愛理沙ちゃん、百合ちゃんの3人は序盤から後続を引き離す作戦のようでベストタイムラインを使ってどんどん差を広げていく
一人旅になっているのは隆文で3台に1周当たり大凡5秒遅れてはいるが、後ろの車たちを確実に3秒ずつ離していくのだった。
"近藤さん、今日は2回のピットですかね?"
"多分ですが、クラス1は1回、クラス2は2回でしょうね。後は燃費ですよ。終盤ガス欠とかオーバーヒートとの戦いでしょうね。タイヤは理論上で言えばゴールした時に100%使い切っていればいいんですよ"
"そうですね。レースは現在9周目ですが、そろそろタイヤ交換に入る車が出てきそうですね"
"はい、トップの3台はそろそろ入るんではないでしょうか?"
"あ、佐野選手、小笠原選手、松尾選手がそろって入りましたね"
"ですよね、あのペースだと入らないともたないでしょう"
場内の実況が流れる中、雅子たちが3台入って来た、隆文は13周目に入ってくるといっていた
「お兄ちゃん、ノーマルとガス」
「隆弘、タイヤヨロ、ノーマルとガスも」
「お兄ちゃん、あたしもノーマルとガスね」
「愛理沙、OK」
3台を送り出したところで確認すると隆文がトップで周回を重ねていく、雅子たちは4番手になっていた
「よし、まずは一色選手、能條選手を躱したぞ。とはいっても能條選手も一色選手も13周目のピットだろうから重量が軽くなっててインフィールドでは結構速いなあ」
「雅子は18周目あたりにもう一回入るだろ。6周ならソフトで勝負だろうね」
「百合もそうかも。ガスを満タンにはできなかったから燃費の勝負だろ。」
「そうなんだよ。雅子の車は耐久性のために燃料を濃いめにしてる分、燃費がきつい」
「百合は濃いめにしてないから少し余裕あるなあ。隆文は亀作戦当たってるなあ。結構逃げ切ってる」
僕らが話していると
"レースは13周目です。そろそろクラス1が入り始めますか?"
"はい、クラス2で入っていない加藤選手、能條選手は入るでしょうね。タイヤが限界なはずです。その次は18周目に佐野選手たちやクラス2の選手が入るはずですね"
"近藤さんさすがですね。加藤選手、能條選手、一色選手と続々と入り始めました。12周目に入った選手と少し交錯してますね"
"佐野選手たちはこれを見越して先に入ったんでしょうか?だとすると読みは確かですね。ちょっとピットロードが混雑気味です。交錯を避けるためというんであれば正解です"
"ああ、加藤選手交錯に巻き込まれてロスしてますね。タイヤ交換して燃料補給してピット出ました。素晴らしいビットワークですね"
"今は、何とか4番手で復帰ですね。佐野選手たちから20秒離されてますね。もう一回入る時にどこまで追いつくかそこがポイントですね"
"おおお、奥山選手。タイヤが温まってないのと燃料補給で重くなってる一色選手と能條選手に襲い掛かった。後ろからは神保選手もパッシングライトで宣戦布告だ。すごい争いになってる"
"ここで一色選手の前に出ないともう一回ピットインする奥山選手と神保選手には勝ち目と言うか入賞狙えないでしょ。必死でしょう"
"重量差で有利な奥山選手と神保選手は能條選手、一色選手を躱していったあ。加速性能が違ってます"
"一色選手はつききれないか。神保選手のスリップに入ろうとしたようですが、補給した燃料分で加速力が足りませんでしたね"
"これで、奥山選手と神保選手が5番手と6番手にあがってレースは15周目に入りました。奥山選手たちは4周のうちにどこまでさをつけることができるかですね"
"そうですね。ラップ遅れの車の処理も兼ねてますね。それにしても今回のレースはチーム佐野で作戦が別れているところが面白いですね"
”ですね、佐野選手はたち3台はガンガンいってますねえ。ラップ遅れはもう逆らえませんね"
"レースは順調に進んで18周目です、そろそろ入りますかねえ"
"はい、あ、入りますね。佐野選手、小笠原選手、松尾選手が入りました。この差だと加藤選手の前に戻れるかもしれません"
「お兄ちゃん、ソフトよろ。燃料は入るだけ」
「悟瑠さん、ソフト、燃料は流れで」
「隆弘、ソフトで。燃料はいるだけ」
3人とも全く同じ作戦のようでタイヤを交換して交換中に入るだけの燃料を詰めてピットアウトして言った。
"うああああ、早い。佐野選手がピットアウトです、小笠原選手、松尾選手の3台がピットアウト。加藤選手はまだ最終コーナーだ"
『え?雅子たち?くっそー。ふけろ、4K改』
「隆弘は、ちょっと苦しいか。作戦ではピットの間に追いつくはずだったからなあ」
「後は、燃料と熱との戦いだからなあ」
「うん、雅子と愛理沙ちゃんが燃費が厳しいよ。百合ちゃんは多少余裕ある」
「ってことは、百合ちゃんがトップになることもあるのか?」
「うん」
「悟瑠さん、百合がトップ?」
「そうですね。雅子と愛理沙ちゃんの車はちょっと安全のために濃いめに振ってるんですよ。百合ちゃんのは、そのままなんで燃費がいいんです。それとソフトで行ってるんで速度あがります、その分厳しいですよ」
「そうだろうな。隆文はピット1回作戦だからこれでもちょっと苦しいか?」
「まあ、上位のトラブル脱落待ちだからなあ。今回は3人が本当にうまく乗ってるよ。めっちゃくっちゃ速いのに壊さない」
「うん、譲さん、哲史さん、3人のクラッチつなぐときのずれが100回転ないんだよ。3人の誰かだけど、燃料が持つかどうかだよ」
「うん。そうなんだな」
"レースは3台の争いに搾られましたね"
"ええ、ここまで差が付けば3台は逃げ切りに近いでしょう。残り2周ですか。加藤選手は完全に全開モードですね"
"差がつきすぎですね。3台がタイヤ交換終わってピットアウトしてから必死に追ってましたが追いつきませんね"
"そうですね。よくトラブル起きずに走ってますよ。何台かはオーバーヒートでリタイヤしてますが、上位の車はよくメンテしてあるんでしょうね。5番手以降は能條選手も全開で追ってますね。一色選手はずっと能條選手のスリップ使って必死について行ってるって感じですねえ"
"ああ、奥山選手と神保選手は燃料がぎりぎりでしょうか?ペース落としましたね"
"燃料ですね。能條選手たちを追うのを諦めましたね。完走狙いにしましたね。あ、これはやばいですね。佐野選手が松尾選手に躱されましたね。燃料の様です"
"現在のトップは小笠原選手です、2番手は佐野選手。3番手に松尾選手です"
"そうか、佐野選手は3番手までに入れば年間優勝ですね、完走狙いです。苦しいのは小笠原選手ですねえ優勝にはトップしかないですから"
"そうですね。ポイント差はそうですね。小笠原選手は優勝すると文句なしですが、2着の場合は佐野選手が5着より下でないと年間優勝できないってことですね、松尾選手は優勝すれば3位に入ることができますね。加藤選手は優勝で松尾選手が4位なので苦しいですね。佐野選手が松尾選手に躱され3位です"
「雅子は完走狙いで最悪隆文に抜かれても愛理沙ちゃんが2着以下なら優勝か」
「うん、愛理沙ちゃんの車の燃料がどこまで持つかだな」
「愛理沙、燃料もってくれ」
「百合、引き離してる?」
「愛理沙ちゃんはラップ遅れの上手くスリップ使って燃料節約しているのか?」
「そうかも、残りは最終コーナー」
"レースももうすぐチェッカー、さあ、最終をトップで立ち上がるのは?ええええ?小笠原選手きたきたきたあああああ。うおおおお、松尾選手がアウトから躱しにいったああ"
実況が絶叫していた
"嘘だろ、こんなことありえんのかよ。佐野選手はインから?すぐ外の小笠原選手。松尾選手と佐野選手に挟まれたあ、佐野選手が抜くか、抜くか?あああああ。なんだー?」
「雅子も全開だ。10000オーバーの踏み合い。パワーなら310」
「え?愛理沙ちゃんが失速?」
「ガス欠だ」
愛理沙ちゃんのKA11がどうやらガス欠になってやむなくクラッチを切って惰性で走っている。
燃料が残ってる百合ちゃんのKE55が躱していく、雅子の310が百合ちゃんの抜きにかかった
「あ、雅子もガス欠?」
「百合ちゃん逃げ切った」
"うあああ。佐野選手も失速?ガス欠?僅差です。今、チェッカーです。優勝は松尾選手、2着はタイヤ一個分遅れた佐野選手、3着に半車身遅れた小笠原選手、4着に20秒差がついてましたが加藤選手です。5着以降は能條選手、6着に一色選手、7着に奥山選手、8着に神保選手。ここまでが入賞です。"
「やっぱりそうか、エスケープに車を出したな。」
「ガス欠かあ。燃費の差が分けたかあ」
「それにしても愛理沙ちゃんはずっと雅子の後ろに居たんだから燃料もっと残ってよさそうだったけど」
「隆弘、愛理沙ちゃんも百合ちゃんもスリップに入りすぎるとオーバーヒートするんだよ。どうしてもクーリングするから変則的なラインになって燃料を使ってしまう」
「そうかあ。結局そんなに節約にはなんなかったってことか」
「そう言うことだ。百合ちゃんの車が一男燃費良かったってこと」
「そうかあ」
雅子たちの車にピットから燃料を持って行って補充して戻してきた。
「悟瑠さん、俺のエンジン何かやったんですか?」
「特別なことはしてないはずだけど」
「雅子たちがピットアウトしてから9500rpm迄ぶん回してストレートエンドじゃあ10000rpm超えていたんだけどもっちゃったって」
「もしかしたら、チタンタペットとロッカーアームが効いたのかもなあ。チタンコンロッドも」
「えええええ?チタン?」
「うん、4台ともそうだよ。その分高回転でぶん回してもOKなんだろうなあ。とにかく良かったよ」
「それって」
「隆文の亀作戦も良かったよ。結局なんだかんだ言っても車が壊れずに走り切ったってことが嬉しいよ。作った僕らの苦労も実って」
「悟瑠さん、素敵です。いい車ありがとうございました。ガス欠はあたしのミスなんで何も言えません」
「愛理沙、あたしも同じよ。ラインの差分燃料消費量に影響ね。百合リンよく無事だったよね」
「実はあたしもヒヤヒヤ。最後の踏み合いなんて10000rpm超えていたから。隆弘。素敵よ」
「だよねえ。お兄ちゃん。良いエンジンというか車ありがと」
表彰式を終えて帰って来た後はアジトでささやかな祝賀バーベキューしていた。
2年連続の総合優勝を取れた雅子はほっとしていたのだった
次の日会社に行くと
「悟瑠、BH15の持ち込み車検は明日予定なんだが最終検査はOKか?今日のうちにやることあるか?」
「もちろん、シートの強度は純正品でOKが取れた。証明書もあるからいける。今日は仮ナンバーで全開テスト行って来るよ」
「じゃあ、全開テスト終われば全部OKだな。クラッチアシストあってエアオーバーブレーキもあるし、エアコンもOKだな。ほとんど現代の車になったなあ」
「うん、車検さえ取れれば納車もいけるよ。エンジンそのままだから」
「そうだな。よろしく」
僕と雅子でBH15の全開テストして、漏れやオーバーヒートなどが無いのを確認して次の日の公認の準備していた。
次の日、晴れてBH15はナンバーがついて公道復帰を果たしたのだった。
依頼者の納車したところ、大喜びしていた。
BH15はシャシーの関係上、車幅が30mm広くなったが、やはりナンバーがついて堂々と公道を走れることの方がオーナーに乗っては嬉しいようだった。
オーナーの会社の50周年式典にはBH15が展示されていて、親父が再生した工場の代表として招待され行って来たのだが、先方から再生にかかわった人全員にお礼ということで人数分の引き出物をいただいてきたのだった。
その後は、ボディビルダーからK-ZC121改が仕上がって帰って来たので移動事務所の組み込みでバタバタしていたのだ。
その週の週末、アジトに帰ろうとすると雅子が注文受付のパソコンを覗いていう
「お兄ちゃん、スーパーマーケットの社長がまたBXD30を買ったみたい。前にうちで再生してエンジンスワップした個体」
「えええ?あのオーナーはターボにして速くなって良かったと喜んでたはずだけど」
「その人ねえ、BXD20Eの廃車体見つけちゃって、いいことに抹消登録の書類があったもんだからその車が劇レア車ってわかったもんで欲しくなって買っちゃったの。現状渡しなんでBXD20Eの再生資金のためにBXD30を売っちゃったの。個人売買で笠木さんのところに委託したんだって」
「そうかあ、もしかしてスーパーマーケットの社長は笠木さんのところに探す依頼してたのかなあ?すぐに見つかって渡りに船みたいな感じだね」
「そうねえ。愛理沙に聞いたら長野さんの鬼丸君とか綿貫さんのロニーの使用頻度高いから気にしてたみたいで早く追加のバスがいるって探していたみたいね」
「ってことは、社長は決断が早いなあ、運転は長野さんで愛理沙ちゃん?それに綿貫さんも運転かな?」
「そうかも、それで、スーパーマーケットの社長からエンジンのターボ取っ払ってNAにしてって来てるの。山道いかないし、高速も乗らないから255psは不要だって。できれば下から回るようにしたいんでロングデュアルにしてって」
「はいよ」
僕らのバスの改造は続くのだった。
雅子が薄氷の総合優勝
連続入賞の愛理沙ちゃんが準優勝
悟瑠たちが直したバスが売りに出ているのを見たスーパーマーケットの社長が買って
何するの?
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
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