第七十五話 TSカーカップ5戦目と2台のバスの外板張替
なみちゃんとレイ君の再生している最中にTSカーカップ第5戦目のTサーキットへエントリー。
なんとしてもトップを取りたい隆文と3勝目を狙う雅子、更に2勝目を狙う愛理沙ちゃんと百合ちゃんも来て混戦
主な登場人物と所有車
佐野 雅子 ヒロイン 25歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、10勝目にトライ中。
家業の佐野自動車販売の中古車販売店副店長兼整備工場副工場長、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーの経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許、2級整備士免許、危険物乙4、玉掛、ガス溶接、救急救命士、巻き上げ機
レース以外の趣味:
オフロード走行:大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車
大型バス:
観光系 ルーシーちゃん
路線系 獅子丸くん
フーセンちゃん
短尺系 ニジュちゃん
エムエム君
大型キャブオーバーダンプ
4×4 藤子ちゃん
大型ボンネットダンプ
4×2 カービーちゃん
小型車
クーペ イチゴちゃん
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 28歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許 巻き上げ機、危険物乙4
カーキチ、スペックオタク、エンジンスワップ大好き
所有車
大型バス:
観光系 ゴーゴーくん
ロザン君
なごみちゃん
路線系 パン君
陽菜ちゃん
キューピーちゃん
大型キャブオーバーダンプ
4×4 サイバー君
小型車
セダン サンゴちゃん
三四郎君
佐野 康晴 僕の父親 56歳 佐野自動車販売の社長、総括責任者。趣味人 マニ割、エギマニ作りの名手 元整備工で板金も得意
所有車
バス:路線系
大型 ニイナちゃん
中型 アサイー君
ケーテン君
小型 いい子ちゃん
大型ボンネットダンブカー
4×4 タフさん
セダン
Q-LS131H改
佐野 康子 僕の母親 54歳 佐野自動車販売 副社長 佐野自動車販売店店長、営業、仕入れ担当
所有車
大型リアエンジン路線バス
錦くん
大型ボンネットダンブカー クレーン車改造済
4×2 デコちゃん
小型車 ハードトップ
E-KE70
加藤 隆弘 28歳
悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染。2月生まれ。エンジン加工の名手、エンジンスワップ大好き
所有車両
大型キャブオーバーダンプ
4×4 ラッシー君
大型自家用バス
兎ちゃん
小型車:セダン
エスティーくん
加藤 隆文 25歳
隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。板金と排気系を作るのが得意
所有車
大型キャブオーバーダンプ
4×4 まゆかちゃん
大型ボンネットダンプ
4×2 きみこ
バス 大型短尺路線系
恋路ちゃん
クロカン4×4
ロックン
趣味:TSカーレース 今シーズン未勝利
松尾 百合 25歳
雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。松尾運輸の副社長。普段はおっとりだがスイッチが入ると途端にせっかちとブチ切れになる 5月生まれ
TSカーレーサー 1勝あげ、2勝目を目指す
所有車
バス:大型観光系
武蔵君
ラムちゃん
大型ボンネットダンプ
4×4 パイ君
4×2 徳次郎君
小型車:クーペ
エスワン
松尾 譲 27歳 百合ちゃんの兄 丸松建設の副社長。マニ割マニア
所有車
バス
キャブオーバー
4×2 ビーフさん
4×2 レイ君
大型ボンネットダンプ
4×2 旦那さん
4×4 ゼットワン
小型車 クーペ
イーサン
松尾 隆 丸松建設の社長 百合ちゃんの父親 56歳 速い車大好き 悟瑠の父親の同級生
所有車
大型キャブオーバーダンブカー
4×4 サンデー君
大型ボンネットバス
4×2 なみちゃん
小型車 セダン
E-GNY33改
松尾 友香 百合ちゃんの母親、丸松運輸の社長 54歳 旧車大好きながらもオリジナル主義
大型ボンネットバス
4×2 デビちゃん
4×4 てつしくん
大型ボンネットダンブ
4×2 でん六くん
小型車 HB
けいこ
小笠原 愛理沙 24歳 係長
TSカーレーサー
雅子の同じ学校の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長(7代目)2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務 大型免許所持 抜群の運転センス
所有車
小型セダン
TA-GXE10
大型リアエンジン観光系バス
ババロアちゃん
大型キャブオーバーダンプ
4×4 フライヤーちゃん
小笠原 哲史 27歳 愛理沙の兄。別の会社に勤めていたが家業に転職、副社長 大型免許所持 旧車好きでオリジナル主義
所有車
小型車
セダン:E-AE70
クーペ:ましこ
大型路線系バス
マーシーちゃん
中型総輪駆動トラック
美浜ちゃん
長野さん 30歳。 移動販売課 課長代理
バス会社に居たが欲しいバスが排ガスの関係で住んでいる地域で登録できなくて雅子がいたスーパーに転職。今は愛理沙ちゃんの上司 短尺バス好き
所有車
大型短尺系バス
自家用:伊那路
観光系:五平君
路線系:鬼丸君
小型車
クーペ:NE
狩野さん 30歳 業務課長
運送会社にいたが首都圏の事業縮小で地方に転勤になった。偶然募集していた松尾建設に転職
所有車
大型キャブオーバーダンプ6×4
V10:古武道君
V8 :福田屋君
小型車
EHT;ND
綿貫 洋平 スーパーの販売部 課長 37歳
中型リアエンジンバス
ロニー
橋爪 正治 スーパーの社長 61歳
ボンネットバス
ポニーちゃん
デッサン
「譲さん嵌ったねえ」
そこにうちの母親がやって来た。
「あ、百合さん。いらっしゃい。譲さんにお礼言っておいてね。KE70ありがとうって。悟瑠が整備したんで調子はいいわね。ちょっと非力だけど」
「え?ママなんかしたの?」
「うん、愛理沙ちゃんのおうちにあたしのKG-VWMGE24改をあげちゃったの。どうしても個人商店にラードを卸す時に使うバンが欲しいっていって探して欲しいって言われてたの。ラードって重いのと取り扱い増えたから今まで使ってたKE71Vじゃあ積み切れなくてどうしようもないって。あたしはこのところKG-VWMGE24改には荷物を全く積んでなくて単なる脚にしかなってないから、あげちゃった。お買い物の脚がほしいなあって思ってたらそれなら譲さんがGS130改買ったんで、KE70をあげるって言うから、もらっちゃった」
「うそでしょ。それにしても愛理沙の家のKE71Vっていったい何年つかってたの?KE70と同世代だよねえ」
「うん、1980年ごろだから45年じゃん。ずっと使っていたのかな?よく錆なかったねえ」
「まじかあ、でもそうかもしれないよ。KE71Vと同時代のN社のSバンとか、Pバン、M社のLのバンは海岸近くに行くと3年持たずに錆でボディが腐ったってお爺ちゃんが言ってたなあ。隣の県の海岸の近くとかで使うんじゃあ70系バンの独壇場だったとか」
「その頃からT社って防錆きちんとしてたんだね」
「設計がきちんとしてたんだよ。とはいっても90年代からはどこの会社も錆びなくなったよ。唯一錆びるのはSだな」
「なるほどね。百合リン。ところで3台のバスと積むエンジンはどういう段取りなのよ?」
「ええとねえ、まず、6QA1持ってくるからオーバーホールして、ミッションは6速MTをちゃんと見つけてあると言うか、もともとなみちゃんに乗ってたの。なみちゃんを買ったらエンジンとミッションがついてきたの。お兄ちゃんはそれ見て玉突きスワップお願いっていってきた」
「なーんだ。そういう背景ね。段取りもわかったわよ。今はなみちゃんの公道復帰が先で、それやりながら6QA1エンジンのオーバーホールでしょ。6QA1エンジンのオーバーホールが出来上がったらレン君からDH100エンジンをおろして6QA1エンジン積んで、次にビーフさんから6BG1おろしてDH100積んで、外販張替中のBXD30Eに6BG1積むってことね」
「その通り、BXD30Eはレイ君って呼ぶの、0とEで。それにGS130改は1と3でイーサンって呼ぶことにしたからね」
「はあああ、まあいいか。ビーフさんの6BG1はレイ君に積んで、レイ君からおろしたDA640エンジンはどうすんの?」
「うちで持ってても仕方ないから雅子のところにあげるよ。再生が来た時でも使ってもらえばいいよ」
「まあ、そうだな。在庫にすればいいか。ありがと」
「百合、ってことは、DH100積んだビーフさんに合うファイナルドライブがあるかだよなあ」
「百合リン、いくらなんでも、ビーフさんのファイナルそのままはやばいでしょ。回転が違い過ぎて」
「百合ちゃん、隆弘、ビーフさんに使える直結用ファイナルがうちの在庫にあるから何とかなるよ。ギヤ比は4.875にすればいいさ。それにビーフさんフロントのフレームとアクスル、ハブの耐荷重ならエンジン重量重くなっても十分いける。百合ちゃん、エンジンが約300kg重くなるからその分でビーフさんは8トン超えちゃう。定員を27人に減らすけどいいかな?」
「いいよ、8トン未満にしてマイクロバス登録でしょ」
「うん、そうすれば高速道路も安い」
「あ。もしかしたら、お兄ちゃんはまたビーフさんを移動事務所にして欲しいって言うかも、パパも伊吹君をバスにしたいって。それに買っちゃったレイ君は元から29人乗りのロマンスでしょ。それならビーフさんは移動事務所登録にし直して伊吹君の代わりにするかも。それにビーフさんを移動事務所にして、8トン未満なら高速は普通車だよね。ちょっと待ってお兄ちゃんにどうしたいのか聞いてみる」
「そうだね。念のため譲さんに聞いたほうがいいよね」
百合ちゃんが譲さんにビーフさんをどうしたいのか聞いていた
「百合リン、ビーフさんはまた移動事務所にするってことと、今更だけど伊吹君はバスにするってことでいいのね」
「そうなの。伊吹君は今は移動事務所登録なんだけど、8トン超えちゃうから普通車って言っても高速は高かったから。もしかしたら伊吹君は軽快君と同じで足場の悪いところに行く時の送迎車にするかも。足場の悪いところの下見なら伊吹君じゃなくて、ゼットワンで行けばいいのよ。伊吹君が走れないところでもゼットワンなら走れちゃう。それにゼットワンがいけないならハットくんしか入れないじゃん。それじゃあ工事のダンプが入れないから何もできないもん」
「そうよだね。工事できるか、できないかを見に行くんだもんね。ビーフさんの最大積載量は車両総重量で8トン未満になるように減らせばすればいいんだよね」
「雅子、そうだよ。架装の仕様は前と同じだけどエンジン重量増えた分、積載重量減らす必要あるのかもね。どっちにしても最大積載量1トン未満の申請になるから変わりはないから良いけどね。最大積載量のステッカーが変わるだけでしょ」
「うん、そうね。あ、お兄ちゃんから返事が来た。ビーフさんは移動事務所にして伊吹君はエンジン交換の時に37人乗りにして欲しいって」
「それなら、ビーフさんから外した移動事務所の部品がまだ在庫で有るからまた組めばいいだけだよ。外したシートの跡や手すりの跡を隠すようにユニット化にしてあるから組みなおすのも簡単だよ」
「さすがですね、簡単に組めるようにできてるとは」
「そのためにユニット化したんで、ちょっとした変更でBXD30系にも組めるよ、必要に応じてだけど。うちのバスを移動事務所にする時に楽したくて作ったんだ」
「そうかあ、雅子のところも移動事務所あるもんね。なんに使ってるの?」
「そうよ。移動事務所はパパたちが車を買い付けに行くときとか、現場で修理の見積もりする時の使うのよね。現場で車を見ていいの見つけたら、欲しいって言う人に連絡しているなら即入札するとか、修理の見積もり内容説明する時とか」
「そうか、そうやって使うのね。もしかして事務所の電源はソーラー?」
「言い方難しいけど、事務所本体は充電式。エアコンをフルに使っても2日間は持つよ。ここのお店のソーラー発電機で作った電力を内蔵バッテリーに充電するの。駐車場に屋根をつけて、その屋根にソーラーあるからそこの充電設備使って内蔵バッテリーに充電して使ってるのよ」
「なるほどね」
「ここの工場の電気は100%ソーラーで賄ってる。ソーラー発電機が発電しなくなった後処理が大変って言ったら大変だけど」
「なるほどね。あたしのところも駐車場に屋根付けてやっちゃお、そうかアジトのところもソーラー発電だよねえ」
「うん、アジトもソーラー発電と工場の設備をフルに電気使っても3日間は持つバッテリーにしてあるよ。ソーラーでバッテリーに充電してそれでも余ったら売ってるよ」
「もしかしてそれでここの工賃やすいのって電気代かかってないから?」
「それは違うよ。電気代は人のコストに比べたら微々たるものよ。設備を動かすを電気代かからないってだけだからね。それにあたしたちのコースのところに作ったスーパーの使用済み食用油のバイオ燃料工場も愛理沙んちの獣油工場も全部メインはソーラーでしょ。油作るコストよりも運ぶほうが高いじゃん」
「そうだよね。そう言えば、スーパーの各お店からの使用済み油の回収とバイオ燃料工場への燃料輸送、出来上がった燃料の配送は加藤運輸にお願いだったもんね。うちでは話をもらったけど受けきれなかった」
「仕方ないって、丸松運輸って元から建機輸送がメインでしょ」
「そうよ、丸松運輸ってしたのは外販のためだけどね」
「そうだよなあ。スーパーのローリーは加藤運輸に売ったみたいだね。加藤運輸ではバイオ燃料輸送するからトレーラーローリー買ったみたいだよ」
「そうなのね。って言ってもローリーのメンテは雅子のところだからあんまり変わんないね」
「うん。整備の費用請求先が加藤運輸になっててアレっ?て気がついたようなものよ」
「雅子、それ違うよ。加藤運輸にドライバー派遣と兼運行管理者を派遣してもらって点検の調整とか委託したんだよ。愛理沙ちゃんたちが移動販売で忙しいから。隆弘のお母さんがリース車の管理者も専門にやってるよ」
「へええ、そうなんだね。百合リンのところじゃあ受けきれないじゃん」
「あ、雅子ごめん、しゃべっちゃった。お邪魔しちゃったね。あたしは今日はお休みなんだ。雅子、夕方なにか食べに行こうよ。あたしはこれからお隣の県まで海産物のお買い物言ってくるの」
「いいよ。エンジンスワップの段取りはわかったから。譲さんにエンジンスワップと伊吹君のバスに改装する注文書送ってって言っておいてね」
「うん、今、お兄ちゃんにLINE送ったよ。じゃあ。今週末のレース頑張ろうね。雅子、17時30分頃に〇〇の駐車場ね」
「はいよ」
"ヒュオオオーン"とターボの音を響かせて、百合ちゃんは徳次郎君で帰って行った。
その後は、若手にはアジトでMA45改、イーサン、エスワンの車体補強を隆文をリーダーにしてやってもらって、僕と隆弘はなみちゃんに乗せる8PDエンジンオーバーホールとターボ化、鈴木さんたちには外板の張替をやってもらっていた。
早く帰れる日は週末の雅子たちのTSカーレースに備えて、アジトでTSカーのメンテナンスしていた。
週末の土曜日、初戦と同じサーキットで第5戦目の予選があった。
「兄貴、エンジンも足もばっちり決まったぜ。後は本当にオーバーヒートしなきゃあトップもいけるぜ」
「とにかく、ここは狭めで抜きにくいからポールからの逃げ切りが有利だからな」
「もちろんだ。俺も考えたエンジンルームの空気吸出しダクトだ。吸排気ある左側で滞留して空気をしっかりと抜く設定にしていくぞ」
「隆文自信満々じゃん、ところで雅子はいけそうか?」
「もちろん。今回は初戦と同じ設定、いけるだけ行ってみるよ。ボディもサスもエンジンも問題ないし、トラブル起きなきゃあトップいけるわよ」
「愛理沙ちゃんも同じかな?」
「はい、2勝目狙います。今のところエンジンも脚もばっちり決まって調子いいので行けそうです」
「百合ちゃんもだね」
「もちろん。隆弘、車はバッチリ仕上がってる、調子いいよ。ありがと。トラブルさえなきゃあガンガン行けるわよ」
予選前の練習を終わった4人は午後からの予選に備えて気合を入れていた、今回のエントリーにはいつものベテランの奥山選手と神保選手が車の整備がどうしても間に合わないと言ってきていない、それに5戦出場禁止となった久保田選手と玉城選手もいないので次に来そうなのは能條選手、クラス1の一色選手のようだ。彼らがどこまで入ってくるかが今回の見どころと言うのが大方の見方だった。
「お兄ちゃん、じゃあ予選行ってくるね」
「兄貴、車ありがと。トップ目指すぞー」
「悟瑠さん、行ってきます」
「隆弘、車ありがと。エンジンも調子よくって楽しそう」
雅子達4人はそれぞれの車に乗って予選に臨んでいた。
今回は隆文の気合がものすごく、これでもかという位攻めまくっていた、雅子も攻めてはいたが、ちょっと最終コーナーでお尻が振れるのを気にしていたようだ。
同じことは愛理沙ちゃんにも言えて、最終コーナーでオーバーステア気味になるのを抑えていたし、百合ちゃんは逆に最終コーナー攻め込むとちょっとアンダーが出ていたのを気にしていた。
予選の結果はセッティングがばっちり決まったという隆文がポール、2番手にわずか0.03秒差で雅子、3番手にそのまた0.03差の愛理沙ちゃん、4番手に愛理沙ちゃんと0.05秒差で百合ちゃんだった。5番手は約1秒離れて能條選手、6番手に約1秒差のクラス1の一色選手、7番手もクラス1の車両8番手にクラス2の小平選手という順番だった
「よし、ポール取れたたぜ。明日の決勝は逃げ切りだ」
「隆文、やるわねえ、今回は抜かれちゃった」
「隆文さん、車がばっちりって感じね」
「そう、水温と油温が落ち着いているっているのはいいよ。ガンガン踏んでいけるって。雅子と愛理沙ちゃんは最終で尻振りしてたような」
「うん、今回は踏み過ぎちゃったかな?第一戦と同じセッティングなんだけど、今回はどうしても後ろがいっちゃう」
「雅子、確かに最終コーナーでちょっと後ろがふりふり気味だったもんね」
「うん、路面温度が違うのかな?お尻がフリフリ気味。決勝の時どうするか考えよう」
「あたしも、ちょっとオーバー気味でした。最終コーナーで思ったより踏めなかった」
「雅子と愛理沙はそうなんだ。あたしはちょっとアンダー気味で最終コーナーでステアリング多めに切ってるから踏んでも踏んでも抵抗になったみたいで伸びなかった」
「うーん、明日のセッティングどうするかだな」
「お兄ちゃん。あたしは、そのままで行くよ。変えて変に嵌る方が厄介だから」
「悟瑠さん。あたしも、そのままで行きます。荷重移動で何とかなる範囲なんで」
「うーん、あたしはどうしようかな?ねえ隆弘、念のためフロントハブ見てもらっていいかなあ?左側。なんか力が逃げてるっていうかそんな感じがするのよ」
「百合。OK、おかしかったらベアリングを交換するよ、と言うか外したんなら新品に交換する。不良品だったかな?」
「そうだな。もうここまでするとほんのちょっとしたところで差がつくからな」
「お兄ちゃん、あたしのも左だけでいいからハブのベアリング交換してもらっていいかな?愛理沙もそうだよね」
「そうですね。交換お願いします」
「これから、3台交換だな。鈴木さん、渡辺さん、田口さん、村上君、小林君、石橋君、3台左のハブベアリング交換する。幸いアッシーで部品が有るからそんなに時間はかからない。」
「「「はい」」」
僕らは3台の車をあげると脚を降ろして3台の左側の前後のハブベアリングを交換していた。
「うーん、悟瑠、なんかボールベアリングのように見えるぞ。コロ軸受けよなあ」
「そうだな。仕様違いか?ちょっと待て、複列コロ軸受けだよなあ。玉軸受けになってるよ。それじゃあ剛性出ないでしょ」
「ってことは右も交換だな。やるぞ」
僕らは3台の全車輪のホイールベアリングを交換して、明日の決勝に備えていたのだ。
「雅子、百合ちゃん、愛理沙ちゃん。申し訳ない。ベアリングが仕様の違うものが来てたよ。僕らはコロ軸受けたのんだけど玉軸受けが来てた。これじゃあ剛性は出ないよ。全部交換したから」
「そうだったの?」
「最終コーナーで踏ん張らないとか、アンダーとか、タイム差見ればわかるけどほんの紙一重の差のところ勝負じゃあ、ちょっとでも狙った仕様と違ったらじゃあ話になんないよ」
「お兄ちゃん。そうなんだね。明日は交換したベアリングで走るけど、サスのセッティングは変えられないからマッチしきってないのは仕方ないよね」
「はい、あたしも仕方ないと思います」
「隆弘、あたしも仕方ないかもって思うよ、明日はアンダーが減って踏んでいければいいかも」
「すまない。僕らの確認ミスだ」
「よし、交換OK。みんな、今日は宿舎に言って温泉浸かって疲れ取ろう。明日も忙しいからね」
「「「「「おう」」」」」
僕らはサーキット近くの山のふもとの温泉宿に泊って、その日の疲れを流していたのだった。
次の日、天候は前日のカンカン照りとは打って変わって分厚い雲に覆われたスッキリしない曇りの日だった。
決勝の日、ピットクルーとしてきてくれていたのは、うちの板金名手3人組と若手3人、今日だけだが普段からアルバイトで来てくれるブルームーンズのメンバーから3人、丸松建設から狩野さんと神山さん、譲さん。
スーパーからは長野さんと愛理沙ちゃんのお兄さんの哲史さんが来ていた。
他には河野さんと綿貫さんがそれぞれメキシカン販売車と大型ロング販売車できていて、愛理沙ちゃんの応援とスーパーの売上への貢献を図っていた。
「今日は太陽の照りが無い分、路面温度がそんなに上がらないからややソフトが使えちゃうね」
「そうだね、それでいっちゃうか?」
「プラクティスでどうなるかよね。路面の状態を確認してどうするか決めるよ」
「わかった。タイヤはハードとソフトの両方準備しておくよ」
「そうかあ、ハードにして無交換って事もできるのか。20周だよね」
「まあな、今日の周りの走り見て決めればいいだろ、多分だけどKP61でクラス1の一色選手はハードの無交換作戦、能條選手もKP61なんで同じかも、亀作戦で」
「そうね。今日は隆文が異様に乗ってるからなあ、最初ややソフトで、後半ソフトってこともあリかな?」
「ありあり、多分だけど後半は軽くなってラップがどんどん速くなる」
「そうね。とにかくプラクティスの走りを見て決めよう」
雅子はまずはノーマルの硬さのタイヤで走っていた
プラクティスを終えて戻ってきた雅子が
「お兄ちゃん、バッチリ行けそう。お尻フリフリなくなった。タイトでのアンダー対策でちょっと回り込むようにしたんだけど高速コーナーのオーバー気味の原因がハブベアリングとはねえ」
「ごめんなさいだよ。組む時に見てなかったってことだからなあ。新品なんで信用してそのままくんじゃった」
「まあ、予選で気がついたから良いって。軸受一つでも違うんだってわかったよ。また一つ勉強になったわよ」
「悟瑠さん、ありがとうございます。あたしもこのままいきます。後ろが安定してガンガン行けそうですから」
「隆弘、ありがと。アンダー減ってよかったよ。やっぱりキャンバー剛性不足してたんだね」
「百合、俺たちも気をつけるよ。アッシーするときはきちんと確認するって」
「隆弘、それはいい勉強だよ。じゃあ、行って来るね」
雅子たちがグリッドに向かって車を出して、一周すると各ポジションに並んでいた
今日の参加はクラス1が14台と多く、クラス2は6台だけだった。
場内のビジョンがコースを映し出すと中継が流れ始め、レースのスタートを告げていた。
"本日も始まりましたTSカーカップ、第5戦。本日の実況は古館、解説には脇阪さんに来ていただきました。脇阪さん、よろしくお願いいたします。早速ですが本日の見どころは?"
"皆さん、こんにちは、解説の脇阪です。まず、今回は加藤選手がわずか0.03秒という僅差で佐野選手の5連続ポールを阻んでますからねえ。その加藤選手が逃げ切れるかが興味の湧くところです"
"そうですね。このところ加藤選手はずっとオーバーヒートに悩まされてましたね"
"オーバーヒート対策がうまくいけば、元から上手い選手なんでポールポジションから逃げ切りですね"
"脇阪さん、後は佐野選手。小笠原選手の巻き返しがどうなるかですね。エンジンのパワーなら佐野選手と小笠原選手に分があります、加藤選手と同じエンジンの松尾選手にはスタビリティというアドバンテージがあるんで加藤選手はコンパクトさで勝負でしょうか?"
"そうだと思いますよ。今日は熱くなった方が負けでしょう。最後の方で上手くタイヤをマネージメントしたものが制しますよ"
"そうですね。他には、例えば5番手以下はいかがでしょう?"
"なんと言っても一色選手ですよ。クラス1で6番手に食い込んでくる腕は本物です。クラス優勝は間違いないでしょう。クラス1の他の車よりも1秒以上速いです。一色選手がどこまで能條選手を追い詰めれるかですね"
"ということは、一色選手は総合でもいいところに食い込む可能性ありですね"
"はい、今日は曇ってて、路面温度が上がらないでしょうから、一色選手はハードタイヤ無交換作戦。クラス2の6台は交換しないともたないでしょうから何処で交換するかと硬さの選択ですね。タイヤ交換の駆け引きも勝負ですよ。後は何といっても後半でのラップ遅れの処理ですね"
"そうなんですね。今日は見所がたんまりありそうですね。ありがとうございます。レースは間もなくスタートです"
「解説は雅子と同じ読みしてたなあ、クラス1はタイヤ無交換、雅子たちは交換しないともたないでしょだって」
「僕もそう思う。交換の駆け引きが重要だ。できれば早い周回からガンガン走ってかき回すとかやって交換の時間を稼ぐ、交換後はソフトにして、燃料減って軽くなる分を生かして逃げ切る。今日の神様は誰に微笑むかだよ」
「それだな。雅子は何か策を考えているだろう。どこかで隆文の付け入るスキがあるかを見て走る、隆文はそのプレッシャーとコンセントレーションが切れないこと祈るってことだ」
「そうなんだよな。隆文はポールトゥウィンって経験がない。逃げるための走りってやってないよ。そうなるとその走りを知っている雅子は有利だよ」
「そうかあ、後は百合がどこまでいくか?重量は隆文のKPとほぼ一緒だ。ドレッド広いのとホイールベースが長い分どう出るかだな。それにワンボのアクスルだからなあ」
「その通り、あ、そろそろスタートだ。それ言ったら愛理沙ちゃんの車はラリーカーのアクスルそのものだよ。サファリでも走れる仕様だ」
しゃべていると"ピーッ"とホイッスルの音が響いて全車が"ブロロロローン"とエンジン始動、シグナルが赤から気点滅に変わってゆっくりとペースカーが走りだし、レースがスタートした
"シグナルが黄色点滅に変わってフォーメーションラップスタートです。フロントローの加藤選手と佐野選手の争いは見ものでしょうね"
"そうですね。加藤選手がどこまで逃げて、佐野選手が加藤選手の隙を上手く突いて抜けていくかどうか、結構突っ張り合いになるかもしれません"
"そこが見どころなんですよね"
各車のエキゾーストノートが"ブワワワーン"と高まってペースカーを追走していく。
シグナルが青に変わって、ペースカーがピットロードにはいると各車のエキゾーストノートがさらに高まって猛然と隆文、雅子、愛理沙、百合ちゃんの4台がダッシュしていく
"さあ、スタートです。おっとお、この4台はまずは一色選手がタイヤ無交換作戦と見て自分たちのタイや交換時間を稼ぐ作戦のようですね"
"そうですね、どうもこの4台はソフト系のタイヤで交換までの時間を稼ぐ作戦ですね"
「隆文はどこまで逃げていくかだな。雅子たちの作戦は前半は全く仕掛けずにタイヤ交換の時間を稼ぐための走りするんだろう」
「そうだね。4台は完全にベストタイムを出すラインで走ってるよ。一色選手よりもラップで5秒以上速いじゃん」
「5番手の能條選手もソフトタイヤだな。今日は4台に最初からついて行って、何とかタイヤ交換のどさくさで前に出ようって作戦かなあ」
「それと、6番手スタートの一色選手と少しでも差をつけておいて、交換しても前に入ろうって作戦だろう。交換してもソフトでいくだろ。燃料補給無しで軽くして」
「悟瑠の読みは正しいな。見る限り、6番手以降は亀作戦のようで、無交換だから前半はゆっくり目、重量が軽くなる後半で勝負しようってところだな、それならこのペースもわかるぜ」
「良い感じで雅子たちは走ってる、雅子が仕掛けるとしたら後半のタイヤ交換してラスト5周だろう」
「俺もそう思うよ」
"なんか今回のレースは異様におとなしいですねえ。佐野選手、加藤選手、小笠原選手、松尾選手は全く同じペースで走って後ろとの差を広げにかかってる。この4台はパフォーマンスが本当に拮抗なので誰が勝ってもおかしくないですよ"
"そうなんですよね、今回、能條選手も以前とは別人のようにプッシュしてますね。普段なら無理しないで走る選手ですが、今回から走り方を変えたんでしょうか?"
"そうですね、今までの守備的な走りよりも、リスクを冒してもトップを取る走りに変えてきたようです"
「隆文は相変わらずストップウォッチだな、全くペースが乱れない」
「それに引っ張られる3人もやるよ」
僕らは隆文、雅子、愛理沙ちゃん、百合ちゃんの走りをずっと注視していた。10周過ぎても上位5台は予選の順位のままで走って行って後半になってそろそろタイヤ交換するラップ数になってきていた
"レースは動きがなく、予選順位のまま中盤を過ぎて後半に入りました。ええとクラス2の小平選手が早めのタイヤ交換ですかね"
"そうですね、11周目ですから、早いといったら早いかもしれませんが、まあまあいい交換の時だと思いますよ"
"12周目、13周目あたりでトップ4台は入るんでしょうね"
"そうですね、タイヤが持つなら13周目に入って残りはソフトでガンガン攻めるという作戦でしょう。4選手は今のペースだと13周終わるまでタイヤが持つかですね。12周で4台同時に入ることも考えられますね"
"あ、加藤選手と佐野選手、いや、4選手交換の様です。12周で交換、残り8周は踏み合いの様そうですね"
『お兄ちゃん、タイヤヨロ。ソフトね』
『兄貴、タイヤヨロ。ソフト』
『悟瑠さん、タイヤ、ソフト』
「隆弘、タイヤよろしくね。ソフトで』
4人から次々とタイヤ交換の連絡が来ていた。
「みんな、4台くるぞ。打合せ通りの配置につけ、今回はクラス1の一色選手の前に雅子たちを返すんだぞ」
「はい」
「悟瑠。隆文たちが来たぞ」
「交換」
僕らピットクルーは訓練した通りの交換速度で交換作業をやって狙い通り一色選手の前に戻すことができた。
5番手の能條選手も何とか一色選手の前に戻ったようだ
「残り8周か、残り3週くらいから雅子が攻めてくるぞ」
「うん、それにしても隆文も踏んでるなあ。エンジンルーム内の空気吸出しがうまくいったな。水温、油温はやや高めの90度だけどまだ正常範囲だ」
「このペースだと、雅子と愛理沙ちゃんのブレーキが心配だなあ。でも初戦よりはちょっと遅いからいいか?隆文はこの前のここの時は後半は流したもんな」
「そう、4人にトラブル起きないこと祈るぜ」
「そうだな。百合の車のミッションは1800用のを積んでるし、ブレーキは定番のMK63だ。あ、とうとう雅子がウォータースプレー使いだしたな」
「百合が仕掛けたぞ。あれ?愛理沙ちゃんが譲った?」
「もしかして、ラスト1周までタイヤを温存する作戦にしたか?」
「愛理沙ちゃんは常に冷静に走るだったなあ。百合はこの前のミニサーキットの一件でどこか自信つけたからなあガンガン来るぞ」
「雅子が不気味だな。後3周、全く動かない」
"おおおおおっとお、松尾選手が佐野選手に襲い掛かった。え?佐野選手あっさりと抜かせましたね"
"もしかして何かトラブってますか?ペースは落ちてませんがあがってもいないですね"
"はい、レースは残り2周、ラップ遅れをトップ4台は次々躱していきますね。え?小笠原選手が佐野選手を躱した?"
"佐野選手何らかのトラブルですねえ。ペースを落とさずに冷静に走り切ろうって作戦ですね"
"レースは加藤選手が逃げ切ろうとしてますが、許すまじとテールトゥノーズで追う松尾選手、松尾選手にピッタリついて追う小笠原選手、しかし、後ろから虎視眈々狙ってとついてくる佐野選手。さあ、ファイナルラップです"
"トップ4台がライト点灯しましたね、加藤選手が予想どおりハイビームですね。ラップ遅れは邪魔すんなどけどけ、お前らは知ったことかというような走りしてますね"
"加藤選手は佐野選手が下がったので安心なんでしょうが、松尾選手も小笠原選手も速いですからね、コンセントレーション切らさないように必死ですねえ"
"ちょっと佐野選手がタイトコーナーでアンダーに苦しんでると言うかさっきよりも舵角が多めですね"
"何が起きたんでしょうねえ"
"もしかすると左フロントのスローパンクチャーかもしれません。左フロントタイヤに何か違和感を覚えたんでしょう。完走目指してますね"
"のこり、え?どうしたんでしょう?松尾選手があっさりと小笠原選手に第1ヘアピンの立ち上がりで躱わされました"
『隆弘。やっちゃった。シフトミスったら2速に入んなくなった。これから何とか345速で走る。ヘアピンの立ち上がりがむりっぽ。雅子にも抜かれちゃう』
「OK、百合、とにかく無事に完走することを目指せ。雅子を抑えるのきついけど能條選手のペースになら追いつかれない。バックストレッチで4速に入ったら逃げ切りだ」
『うん』
「雅子が第2ヘアピンの立ち上がりで百合ちゃんを抜いたぞ。百合ちゃんと能條選手とは5秒差か、捥げ切ったな。バックストレッチで4速に入ったなOKだ。百合ちゃんは逃げ切った」
「どうやら雅子も何か抱えていたな」
「聞くのはゴールしたらだよ。おおおおお、愛理沙ちゃんが最終コーナーを外から行ったあ」
「隆文抑えきれるか?あと少し。ええ?この位置から?スゲーもう愛理沙ちゃんはアクセル全開じゃん」
「車のパワーならKA10の勝ちだ。ゴールまで踏み合いだな」
「うーん、隆文逃げれるか?残り10メートル、5メートルギリギリか?おおおお、隆文が何とか逃げ切ったな」
「隆文は肝冷やしただろうな。最終コーナーのアウトから来るなんて思いもしてないかも」
"今、加藤選手が小笠原選手をタイヤ一個分抑えきって冷や汗もののチェッカーです。小笠原選手との差は鼻の差半分もなかったですね、何とか逃げ切りましたね。ポールトゥウィンです"
"2番手には小笠原選手惜しかったですねえ、ここまで車をと言うかタイヤを温存してて使い切りでしたね"
"そうですね、入って来た情報だとレースの順位のトップテンは、トップが加藤選手。今季初勝利ですね、そして2番手には小笠原選手、3番手に佐野選手、4番手に松尾選手、5番手に能條選手の順番です。クラス1の一色選手はクラス優勝ですね"
「あ、雅子たち戻ってきたな。隆文、優勝おめでとう」
「悟瑠さん、兄貴、ありがと。トラブルなくてよかった。愛理沙ちゃん上手かったねえ。危なかったよ」
「隆弘さんどうもありがとうございます。実は、タイヤを使い過ぎて残り3周冷や汗ですよ」
「百合はミッショントラブルか、わるかったよ」
「仕方ないわよ、あたしのシフトミスだもん。Fの時の愛理沙の気持ちがよくわかる」
「先輩大変でしたよね」
「雅子はタイヤ?左がおかしかったように見えたよ」
「そう、左のフロントがスローパンクチャー。ゴールまで持ってくれって祈ってたわよ。ほんとひやひやよ。百合リンはファイナルラップでミッショントラブルだもんね」
「考え方によっちゃあファイナルラップだから逃げ切ったのかもね」
「そうだね。残りコーナー4つで済んで良かったと思うのが良いよ」
「そうね。次はOね。お兄ちゃんエントリーするの?」
「そこは、見送りかな?4台でエントリーはクルーがきついんだよ」
「そうかあ、それなら次は最終戦のFでしょ」
「そう、今度は25周のセミ耐久みたいなものかもね」
「そうだね」
「この調子で行くぜ」
「全く、隆文を乗せちゃったぜ」
「レースには時の運もあるから」
「そうね」
僕らは、4台のTSカーを積載車に積んでクルーになっていたみんなはロザン君に乗せ、部品を積んだミック君に別れて乗って帰って来た。
月曜日、会社に行くと
「お兄ちゃん、矢代さんからすっごい注文が来ちゃったよ。書類はあるんだけど、ほとんど廃車体のBH15公道復帰させてほしいだって。なんかさ、譲さんのビーフさんとか、レイ君の話も聞いてたんでBH15を復活してほしいって頼みにきた」
「良いけど、矢代さんって何をやってる人なんだい?BH15はフレームまでいってたら結構時間かかるよ。多分広島かメーカーに行って博物館の車の状態と詳細スペック測ってこないと無理だよ」
「ええと、百合リンの情報だと、矢代さんはメインは屋内配線もできる家電屋さんみたいね。大手量販店の下請けと自分で販売と仲卸。大型の電気設備施工も請け負うの。なんで丸松建設とは取引があるんだって。再生頼まれたBH15の状態見ないとどうなるかわかんないよね」
「そうなんだよ。pcのデータ見たけど、画像の通りだと結構たいへんだよね。フレームが鍵だよ。1965年式のBH15って何に使うんだろ、エンジンは多分もうないからH07Dにするか在庫のEM100だなあ。大きさから言ったらエンジンはH07Dにしてボディとフレームは現車で残っている車見ないと何とも言えないって。半年仕事だなあ」
「大変そうだよね。このBH15は会社のイメージアップに使うみたいね。会社では古いものを捨てずにリサイクルって言うか再生しているって言うとウケるみたいで。エンジンは探してみるよ。笠木さんのところに聞いてみる。なかったら在庫のEM100ね」
「宣伝広告用かあ、それとK-ZC121改も修理だって?というかこのトラックベースに移動事務所を作って欲しいって言うように見えたんだけど」
「それなんだけど、ブローしちゃったエンジンを直して、3軸を2軸に改造して荷台部分に架装して移動事務所を作って欲しいとか言ってるよ。なんか、この秋から3年計画で丸松建設と一緒に仕事するんだけど、この仕事ってダムの電気設備のメンテナンスと修理みたいよ、ダム関係の仕事が増えて現場監督が常駐できる場所が欲しいんだけど、ダムの近くは総輪駆動じゃないとつらいところみたいね」
「ううう、ボディビルドかあ、うーん、これは鉄道会社が親会社にメーカーに外注に出そう。うちじゃあこのメーカーのボンネットバス2台は受けきれないって。あのボディメーカーは特車を作ってるところだし、神戸のボンネットバスのレプリカを作ってるよ。キャブオーバーのシャシにボンネットバスの車体を作成したみたいだから」
「お兄ちゃん、K-ZC121改のシャシの改造は?2軸化はうちでやるのかな?2軸にしてくれってそれならサスはまさかと思うけどエアにしてとか?」
「雅子、もらった注文書をよく見ると、ブローしたエンジンの修理か交換とフレーム系は2軸にして総輪エアサス化してくれって依頼されてるんだよ。それならエンジンの修理と2軸化、総輪エアサス化まではうちでやって、ペラは隣の県のペラメーカーで作ってもらえばOK。デフは2軸トラックのもの流用できるよ、と、いうことだからフレームの工事まではうちでやってボディは外注する。先に形と仕様を決めて予約しておけばいけそうじゃん」
「ってことは、大凡半年から1年の仕事かしらね。あとはボディビルダー次第ね。予約は入れておくわよ」
「多分ね。矢代さんに後部のデザインどうするか聞くよ。レン君的なリアエンドとか、伊吹君のようなのならいいけど、デビちゃんとかレイ君ビーフさんみたいな丸い形の後ろは手叩きになりそうじゃん。まさかフロントグリルを剣道面にしてくれとは言わないと思うけどね」
「え?もう一台来ちゃったよ。古いDA90をベースにボディビルドしてこれはキャンパーにして欲しいって。ボディはFRPでいいから、デビちゃんを再現したような形にして欲しいって」
「えええええ?雅子、うちってボディビルダーだっけ?」
ようやく1勝目をあげた隆文
災難は百合ちゃんに
2台のバスの仕上がりはいつかな?と思っていたら脚の長い仕事が来ちゃったぞ
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
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