第七十一話 丸松建設のボンネットバスのエンジンスワップとまた峠のバトル
納車したバスがまた舞い戻って来た?シート交換はめっちゃ厄介
次のレースはどうなる?
主な登場人物と所有車
佐野 雅子 ヒロイン 25歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、9勝目にトライ中。
家業の佐野自動車販売の中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーの経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許、2級整備士免許、危険物乙4、玉掛、ガス溶接、救急救命士
レース以外の趣味:
オフロード走行:大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車
大型バス:
観光系 ルーシーちゃん
路線系 獅子丸くん
フーセンちゃん
短尺系 ニジュちゃん
エムエム君
大型キャブオーバーダンプ
4×4 藤子ちゃん
大型ボンネットダンプ
4×2 カービーちゃん
小型車
クーペ イチゴちゃん
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 28歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許
カーキチ、スペックオタク、エンジンスワップ大好き
所有車
大型バス:
観光系 ゴーゴーくん
ロザン君
なごみちゃん
路線系 パン君
陽菜ちゃん
キューピーちゃん
大型キャブオーバーダンプ
4×4 サイバー君
小型車
セダン サンゴちゃん
三四郎君
佐野 康晴 僕の父親 56歳 佐野自動車販売の社長。趣味人 マニ割、エギマニ作りの名手 元整備工で板金も得意
所有車
バス:路線系
大型 ニイナちゃん
中型 アサイー君
ケーテン君
小型 いい子ちゃん
大型ボンネットダンブカー 4×4
タフさん
セダン
Q-LS131H改
佐野 康子 僕の母親 54歳 佐野自動車販売 副社長 佐野自動車販売店長、営業、仕入れ担当
所有車
大型リアエンジン路線バス
錦くん
大型ボンネットダンブカー クレーン車改造済
デコちゃん
バン
KG-VWMGE24改
加藤 隆弘 28歳
悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染。2月生まれ。エンジン加工の名手、エンジンスワップ大好き
所有車両
大型キャブオーバーダンプ
4×4 ラッシー君
大型自家用バス
兎ちゃん
小型車:
セダン
エスティーくん
加藤 隆文 25歳
隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。板金と排気系を作るのが得意
所有車
大型キャブオーバーダンプ
4×4 まゆかちゃん
大型ボンネットダンプ
4×2 きみこ
バス 大型短尺路線系
恋路ちゃん
クロカン4×4
ロックン
趣味:TSカーレース
松尾 百合 25歳
雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。松尾運輸の副社長。普段はおっとりだがスイッチが入ると途端にせっかちとブチ切れになる 5月生まれ
TSカーレーサー
所有車
バス:
観光系 武蔵君
ラムちゃん
大型ボンネットダンプ
4×4 パイ君
4×2 徳次郎君
小型車:
軽4輪 エッちゃん
松尾 譲 27歳 百合ちゃんの兄 丸松建設の副社長。マニ割マニア
所有車
バス
キャブオーバー
ビーフさん
大型ボンネットダンプ
4×2 旦那さん
4×4 ゼットワン
小型車
E-KE70HT
松尾 隆 丸松建設の社長 百合ちゃんの父親 56歳 速い車大好き
所有車
大型キャブオーバーダンブカー
サンデー君
セダン
E-GNY33改
松尾 友香 百合ちゃんの母親、丸松運輸の社長 54歳 旧車大好きながらもオリジナル主義
大型ボンネットバス
4×2 デビちゃん
4×4 てつしくん
大型ボンネットダンブ
でん六くん
HB
E-KP61
小笠原 愛理沙 23歳 係長
TSカーレーサー
雅子の同じ学校の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長(7代目)2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務 大型免許所持 抜群の運転センス
所有車
小型セダン
TA-GXE10
大型リアエンジン観光系バス
ババロアちゃん
大型キャブオーバーダンプ
4×4 フライヤーちゃん
小笠原 哲史 27歳 愛理沙の兄。別の会社に勤めていたが家業に転職、副社長 大型免許所持 旧車好きで母親に似てオリジナル主義
所有車
小型車セダン
E-AE70
小型クーペ
E-S130
大型路線系バス
マーシーちゃん
中型総輪駆動トラック
美浜ちゃん
長野さん 30歳。 移動販売課 課長代理
バス会社に居たが欲しいバスが排ガスの関係で住んでいる地域で登録できなくて雅子がいたスーパーに転職。今は愛理沙ちゃんの上司
所有車
大型短尺系バス
自家用
伊那路
観光系
五平君
路線系
鬼丸君
小型車クーペ
NE
狩野さん 30歳 業務課長
運送会社にいたが首都圏の事業縮小で地方に転勤になったが偶然募集していた松尾建設に転職
所有車
大型キャブオーバーダンプ6×4
V10
古武道君
V8
福田屋君
小型車EHT
ND
綿貫 洋平 スーパーの販売部 課長 37歳
中型リアエンジン
ロニー
橋爪 正治 スーパーの社長 61歳
ボンネットバス
ポニーちゃん
僕と雅子が月曜日出勤すると、会社のネット注文に依頼が入っていた。
「ねえ、お兄ちゃん。綿貫さんからこの前に鈴木さんたちがレストアして納車したBX521のボンネットバスをスーパーの社長が買ったみたいで、スーパーの見学する小学生の送迎で使うから内装改装してほしいって」
「え?もしかして?あのスーパーで買っちゃったの?ってことはクロスシートに変更するのかな?」
「そのとおりよ、ロングシートからクロスシートにしてほしいだって。29人乗りにしてほしいんだって。1台で不足のときは綿貫さんのB622Bの2台で送迎、それでも不足の時は長野さんバスだって」
「そう来たか」
「エンジンはできればオリジナルのDA120に戻して、タコ足ロングデュアルのマフラーにしてほしいって。綿貫さんのB622Bでやったのが気に入ったみたい。排気音がかっこいいとか」
「それもやるのか?DA120エンジンも買ったのか?そう言えばDA120エンジンはオーバーホールしてオーナーに返したもんな。うちの在庫のでもいいけど」
「そう。愛理沙に聞いたら、スーパーの社長とBX521のオーナーが知り合いみたいで、BX521のオーナーが緊急で事業の資金が要るんで泣く泣く売り出すことになったのを知って、現金決済で買ったの。なんか綿貫さんもスーパーの社長も旧いバスに嵌ってない?」
「古いものを大事に使うということをPRするには一番いいじゃん。60年以上も前の車を使ってるなんてないでしょ」
「そうよね、確かにいい方法かもね」
「工場長、改修はいいんですけど純正シートありますかね」
「そう言えばシートの強度証明がいるんだったな。」
「悟瑠。あの公明党も余計な事ばっかりしやがるぜ。旧車乗りからするとクソ迷惑だ。ディーゼル乗りには排ガス規制と言い」
「副工場、私もそう思いますよ。そのおかげで大型車がつまらなくなりました]
「まあな、どっちにしても純正シートならいいんだろ。どこかに残っているか不明だけど探して見よう」
「そうだな。シートメーカーって言うか。図面が残ってないかな?」
「もしかすると、隣の県のボディメーカーの下請けに残ってるかもな」
「そうだなあ、そのボディメーカーが一番長くボンネットバスの架装をやっていたから上手くすると残ってるかもな」
「工場長、多分引退したうちの親が知ってるかもしれません、聞いてみます」
「鈴木さん、どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします」
「悟瑠、6QAエンジンは?ありそうか?」
「隆弘さん。もう手配してあるって、北の方に在庫があったから今送ってもらってる。明日には加藤運輸に届く。先にてつしくんからエンジンおろしてね。そうそう、百合リンから短い方のボンネット総輪駆動のバスはてつしくんっていうニックネーム付けたって」
「そうかあ、ロングのほうは?」
「軽快君だって」
「早いなあ。先に軽快君のエンジンをてつしくんに乗せえてかな?」
「うん、先にてつしくんを納車してほしいんだって。今は梅雨の季節なんで現場がぬかるんで結構困ってるみたいね」
「だよねえ。移動事務所も伊吹君でしょ」
「そう、百合リンはパイ君。作業のダンプも後2軸使ってて、スタック対策中、百合リンのパパはサンデー君でも行ってるって」
「そうだよね。ボンネットの6×4もフル稼働なのか?」
「そうよ。狩野さんも自分の古武道君でお仕事中。ダンプは全部デフロックと前後デフのロック設定してあるから良いけどね」
「そりゃ大変。このてつしくんを急いで仕上げよう」
「急がないといけないって事態と言ったらそうだけどね」
「兄貴、これって等長エギマニって言ってなかったっけ?」
「そうだ、悟瑠、これってインテークとマフラーはロングデュアル区間にしてしたからのトルクを稼ぐんだろ」
「そう、乗りやすさ重視だ。僕の大型はターボしかないけどサンゴちゃんで生の良さは知ってるからさあ、下から上まで綺麗に回るのっていいよ」
「だよねえ、俺もまゆかちゃんでよくわかる。排気干渉も吸気干渉も減らしてあるから吹けが違うよ。きみこもそう」
「そうだな、俺もそうラッシー君の吹けが全然違うし、兎ちゃんは吸排気いじったらパワーが違ってそれにカムをPD6にしてるから高回転も回るもんな」
「だろ、とにかくだ。実力でカタログ値+を出したいんだよ」
「そうだなあ、あのメーカーも数値より出ないことがおおいね」
「そうそう、ラッシー君とか兎ちゃんのメーカーは結構カタログ値に近い数値だけど」
僕らは軽快君からエンジンを降ろしてオーバーホールして、てつしくんに乗せられるように準備していた。
「なんか工場長、副工場長たちってエンジンオーバーホールが早いですよね。エンジンばらして組み立てる迄3人で1日でやっちゃうんですか?」
「まあ、これで6BGは6機目ですよ。勘所わかるから楽です。重量バランスしっかり取るとパワーがちゃんと出てくるいいエンジンですよ。」
「そうですね、このところ6BGエンジンのオーバーホール多いですもんね」
「そうですね。僕らは部品を洗浄している間に新品のピストン、コンロッドの重量確認すれば時間無駄になりませんよ」
「バルブのコッター外しも早いですもんね」
「専用の治具があるんで楽ですよ」
「お手製ですよね」
「はい。電動工具で回せるようにしましたよ。隆弘が考えたんです。作ったのは隆文ですけどね」
「そうですね。良く考えてありますよ。隆文さんの作品ですよね。手先が器用でいいですね」
「そうですね。隆文はほんとに手先が器用で工作は小学校のころから得意って言ってますよ」
「そうですよねえ。あのステンレスマフラーの溶接の腕。機械かと思う位綺麗に仕上げてしまいますね」
「そうですよねえ。僕もステンレスをああまで綺麗にしかも僕の半分くらいの時間で仕上げるとは恐ろしい腕ですよ」
「悟瑠さん、鈴木さん、なんかくすぐったいなあ」
「あはははは」
僕らは軽快君からおろした6BGエンジンをてつしくんに乗せるべくオーバーホールしてしいた。
シリンダーライナー、ピストン、コンロッドの重量合わせ、ピストンとライナーのクリアランスのあわせした新品に交換、クランク、クランクプーリー、フライホイール、クラッチカバーをアッシーにしてダイナミックバランスも取っていたのだった。
バランスを取っている間に洗浄機でシリンダー、ヘッドを洗浄していた。
頑固な汚れはメディアブラスターで汚れを落として仕上げて組み込みする準備しておいたのだ
「悟瑠、3人でやると早いよな。午後から組み立てだな。明日の夕方までにはてつしくんに乗せてエンジンに火が入りそうだな」
「ああ、なんかこのところ同じ6BGエンジンを何機もオーバーホールやってると大体の勘所が掴めるから作業が早くなるよな」
「ああ、慣れたら3割から4割近くは時間減るもんな」
「悟さん、この6BGエンジンはオイル管理いいのか汚れ少ないですよ」
「そうだね。流石に吸気ポートには吹き返しでデポは溜まってるけどほかはとっても綺麗だ。」
「おう、俺も思った。経年でオイルシールがヘタっているのは御愛嬌として、隆文。次よろしく」
「兄貴、いいぞ。次は6気筒目だな」
「そこだ。行くぞ」
僕らは夕方までにエンジンを組み立て、てつしくんにエンジンを乗せる準備していた。
次の日の昼前にはてつしくんに乗せ終えて液物を入れて始動する準備も終えていた。
「隆弘、午後はこのエンジンかかったら漏れ確認して納車だな。名変は終わってるから」
「おうよ。公認は次の車検と言っても一月もないか」
仕事が終わって帰り支度していると、鈴木さんが、
「工場長思い出しましたよ。あの丸松のお嬢ちゃんが軽快君と呼んでるバスは僕の師匠のつてでF重工にバスボディの架装を依頼したんですよ。出来上がった後もまえいた整備工場で社長と今は引退した私の板金師匠が二人でずっと面倒見てて、我々には見せも触らせてもくれなかった車です。それで細かく覚えてなかったんですよ。てつしくんは私と渡辺と田口で見てたんです。師匠がちらっと言ってたのを思い出しましたよ」
「そうですか。それでわからないって言うんですね」
「はい、てつしくんと軽快君は同じ人が持ち主って聞いてますので、ずっと依頼主は変わってませんね。そこの親父さんがうちの整備工場のお客さんで整備する工場を探しててうちに依頼して来たんです。ちらっと工場の隠しブースで見たのを思い出しましたよ。そうそう管理者にもなってもらってましたね」
「そうですね。車を見る限り、凄く丁寧に直してますもんね」
「先ほど改めて軽快君をじっくり見ましたけどフレームはハイブリッドみたいですねえ。後ろのTD系の8トントラックのフレームとHTWのフレームはここで繋いで、前のSKWのフレームはここで上手く繋いで、真ん中にHTWのフレーム残す形にしてますね。ホーシングは前はSKW、後ろはTD系の物を積んでるんですよ。多分ですが後ろ1軸でバスの重量を支えるには後ろ2軸のフレームとホーシングでは強度が不足だったんでしょうね。前は何のためかな?よく見るとフェンダーが大きくなってますもんね」
「そうなんですね。オリジナルは後ろを2軸で支えてますもんね」
「このバスって後ろのオーバーハングが3メートルあってTSD45の2.7メートルよりも長いんですよ。その分もあるんでしょう。あ、そうか。フロントに重しする役目でSKWのホーシング使ってるみたいですね。BXD50と同じ3メートルのオーバーハングです。ホイールベースが大凡600mm短いんでその分の対応ですしょうね。相当頑丈に作ってますよ。その分重いですけどね」
「なるほどね。軽快君をつくった人はきちんと考えていたんですね。」
「と、思います。トランスファーもハイパワーに耐えるものに変えて車重に対応してますね。パワーアップしたかったんでしょうかね。」
僕らは軽快君の改造について現車を見ながら話ししていた。
軽快君は鈴木さん達が前に居たお店で錆対策を入念にしたらしく、最後の整備してから20年くらい経っていても全く錆がなく、鈴木さんの言う通り電子防錆装置を交換しただけで済んでしまうくらいだった。
百合ちゃんとお母さんからはボディーカラーを丸松で持ってい他のバスと同じ色に塗り替えて欲しいという注文があったが、それはまた後にすることにしていた
次の日、僕と雅子はエンジンを載せ替えが終わったてつしくんを納車して美浜ちゃんを引き取って帰ってきた。
美浜ちゃんはうちのお店で哲史さんの名義に変更、各部の傷み具合を点検して問題ない事を確認したらオイル交換、ミッション油の交換、車内清掃して納車準備していた
「お兄ちゃん、夕方に哲史さんが取りに来るってウキウキしてるよ。美浜ちゃんで獣油を引き取るの楽になるとか言ってて」
「ラード工場でもあるからそこで作った製品をスーパーに卸すんだよね。国内産が売り文句とか言っていたよねえ」
「そう、国産は強いよね。愛理沙のスーパーでも全店合計で500g入りが1日に1000個は売れるって」
「そうなんだね。それに美浜ちゃんは雅子がオフロード対策で伸び重視にしているからどんなところでも乗り心地が良くて製品が傷まないって言ってるよね」
「そうかあ、そうよね。あ、そうね。もしかしたら愛理沙のフライヤーちゃんに乗っていいと思ったのかもね」
「確かに、フライヤーちゃんはエアサスにしたからねえ」
「そうだよね。美浜ちゃんって車高が上がって積みづらいかもしれないけど良いのかな?」
「昇降プラットフォームあるみたいね。愛理沙ちゃんが言ってたよ」
「そうか、そうだよね」
「今日は入って来た6QAエンジンのばらしやって上手くすると明日には乗るんじゃないかな?シリンダーだけの時に位置を確認するよ」
「よろしく。じゃあ百合リンには土曜日には納車できるって言っておけばいいかな?」
「そう。土曜の朝に全開で漏れ試験やってだな」
その日の仕事が終わって雅子と隆弘、隆文とでしゃべっていた
「6QAって結構コンパクトでいいな」
「そうだな。この排気量にしてはコンパクトにまとめたエンジンだよ、その辺は設計にあの毒舌評論家がかかわっているだけあるよ」
「お兄ちゃん、明日には火が入るかな?」
と、喋っているとドリュドリュドリュドリュドリュとV8エンジンのエキゾーストノートを響かせババロアちゃんに乗って愛理沙ちゃんと哲史さんがやってきた
「愛理沙、哲史さん。いらっしゃい」
「佐野さん。どうもありがとうございます、美浜ちゃんの名義変更が終わったそうですが」
「はい、終わってます。保険の手続き終われば乗って帰れますがいかがいたしますか?それともそちらで入ってますか?」
「保険はもう入れてきました。今日の16:00からなのでもう保険が効いてます。」
「それじゃあこれで。エンジンとミッション、デフのオイルは交換しましたのでしばらく交換しなくていいと思います」
「どうもありがとうございました。助かります」
「現状渡しなのでこれでいいですね」
「はい。丸松運輸でも丁寧に乗ってたようですので嬉しいです。この車があれば獣油工場にも楽に行けますよ。かといって愛理沙のフライヤーちゃんでは大きすぎて」
「そうね。お兄ちゃん。工場の近くは道が狭いからね」
「そうなんだね」
「そうなんです。長さもフライヤーちゃんは長くてぎりぎりなんです。それなんで美浜ちゃんが最適なんですよ」
「ねえ。お兄ちゃん、帰るよ。明日はあたしも仕事だし。あ、そうだ悟瑠さん。すみませんがお兄ちゃんに運転教えて欲しくって時間空いてたらなんですけど」
「ちょっとまってね、今週の土曜の夜なら」
「お兄ちゃん、良いよね」
「はい、お願いします。場所は何処でしょう?できれは春名がいいんですが」
「良いですよ。それでは18時半ごろでいかがですか?」
「ぜひ」
「車はお兄ちゃんのでいくの?」
「そう、AE70を使うよ。下りの練習だからね」
「それじゃあ、GXE10は良いのね」
「うん」
「じゃあさ、あたしは由香里に言っておくからね。土曜日はお兄ちゃんが峠走ってるって」
「ありがとう。愛理沙。帰ろう」
愛理沙ちゃんと哲史さんはババロアちゃんと美浜ちゃんに乗って帰っていった。
「よし、僕らもかえって今週の土曜日の準備するか」
「そうね」
その週は僕らは軽快君に6QAエンジンを積んで6速ミッションとトランスファーを丸松建設の伊吹君の整備を頼まれた時に取り寄せたうちにある在庫に交換していた。
排気系は親父特製のタコ足でしかもデュアル区間を長めにとってフラットなトルクを狙っていたのだ
「よし、コレでいいか?不良在庫のCVS19のミッションとトランスファーが役に立つとはなあ」
「僕もびっくりさ。きちんとつくからなあ」
「ペラ迄こんなに簡単についてしまうとは思わなかったぜ」
「その辺は予想以上に楽だったぜ」
「隆弘。わりいが前言ったとおり土曜の夜にうちのクレーン付きレッカーを乗って僕について来て欲しい。行き先は春名。哲史さんに運転教えてくれって言われてな」
「おう、開けてあるよ。悟瑠はサンゴちゃんかな?」
「そうだな。サンゴちゃんで教えるよ。いくらダウンヒルでもAE70は厳しいよ。GXE10でもパワー不足だ」
「AE70ならAE85といい勝負だろ」
「まあな。エンジンは修理で4AUになっててもなあ」
「AE71だな。駆動系は86のを使ってるのか?」
「70オリジナルだ。でもミッションはT50にしてある。念のためのアシスト頼むぜ。クラッシュはしないと思うけど」
「明日の夜だな。明日は昼に軽快君の全開試験やって良いならそのまま丸松運輸に納車だろ」
「うん、ラジエターは6UZターボのものにしてあるからいいんじゃねーかな?」
「それならいけるだろ」
「オイルクーラーも空冷をつけたから何とかいけるかな?」
「それじゃあ、オーバークールになんないの?」
「なんないよ。オイルクーラーも入り口制御のにしたから」
「やるなあ。あしたは頼んだぜ。俺らは他の仕事片付けるから」
「そうだ。なんか丸松の社長はこの軽快君知ってたみたいだな。狙ったように来たもんね」
「そうなんだ」
次の日、僕と雅子は軽快君とクレーン付きレッカーの2台で全開試験していた。
隆弘たちは工場に残ってBX521のシート交換とエンジン載せ替え、スーパーの引き摺りローリーの車検があるのでその準備をやっていた。
BX521は幸いにも、純正のシートが見つかってそれに交換していた。
しかしながら、交換で来たのはホイールベースの真ん中あたりから後ろで前の方はどうしてもバッテリーの配置の関係で交換できず横向きシートにせざるをえなかったのだ
僕と雅子はいつもの試験する上り坂を軽快君とクレーン付きレッカーで全開で登っていた。
「雅子。軽快君の黒煙はどうだ?」
『OK、うっすら見えるけどほとんどわかんない。生じゃあこれくらいが良いところじゃない?』
実力で220ps出てるとは言っても重量を積んで12トンになっている軽快君は4速全開で喘ぎ喘ぎ60キロ位で登っていく。
一旦速度を落とすと回復に時間がかかるのでターボが欲しいところだが、エンジンルームの関係で入らないので仕方ないのだった。
「そうだな、燃調はこれでOKだな。思ったより吸気性能良かったよ。重量に対してパワー無いなあ」
『お兄ちゃん、燃料は上で絞ったの?』
「いいや、そのまんまだよ。噴射圧は6Hターボのポンプに交換して2倍くらい高圧にしたけど。狙いは霧化を良くして黒煙減らすようにしたよ」
『そうなんだ。効果ばっちりじゃん。ところで水温と油温は大丈夫?』
「うん、全く問題なし。調子いいよ」
『じゃあ、バッチリね。後は登り切ったら漏れを確認、補助ブレーキの確認しながら下るんでしょ。生じゃあそんなものでしょ。」
「そう言ったらそうだな」
僕はハンズフリーで雅子と話しながら登り切って、運転交代してお店に戻った。
「お兄ちゃん、下りの途中でも言ったけど、リターダーって正解ね。よく考えたらブレーキが1軸分減ってるもんね」
「そのとおりなんだよ。がっちりリターダー効かせたから下りは問題ない。それに総輪駆動にして走行抵抗増やすという手もあるぞ。直結だから狭いカーブならブレーキング現象出るよ」
「お兄ちゃんって博識ね。確かにね。ホイールベース長いからその分ブレーキング現象も大きくなるわよね」
「そう、その辺は丸松建設の社長は良く知ってるよ。前のタイヤの摩耗が増えるけどね」
「そうか。納車行かなきゃね。隆弘さん。午後あたし用があって行けないから、納車の付き合いお願いするけどいいかしら?」
「いいよ、帰りにスーパーの引き摺りローリー引き取ってくるだろ」
「うん。お願いします」
午後にお店で積んでいた重量を降ろして丸松建設本社に納車にいった、待ちわびたように百合ちゃんの父親が出てきて
「佐野さん、助かります。一番軽いドライブ君でもぬかるんでると後ろがめり込んで大変なんですよ。大事に使います。リングちゃんやマキちゃんはもっとめり込むし、かといってうちにはもうバスがなくて」
「たいへんなんですね。てつしくんと軽快君の色の塗り替えはまた後ですね。点検の時でも」
「はい、つゆが明けたらお願いいたします。これで家内のてつしくん借りないで済みますよ。総輪駆動のバスを買って良かった。百合からは今でもデビちゃんを壊したっていまだに言われますよ」
頭を掻きながらいう百合ちゃんの父親だった。
「松尾さん、今回は納得した仕事が得来ました。御用命ありがとうございます。では、僕らは失礼します。毎度ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうございます」
僕と隆弘はエスティーくんでスーパーに向かっていた、午後から降り始めた雨は少しずつ雨脚が強くなってきていた。
「悟瑠、今日はちょっと天気が悪いなあ。上の方は結構雨強いだろ。それに霧が出てないか?」
「そうだな。霧が出ちゃあムズイいかな」
「夜までどうなるかだな」
「だな。ウエットでもいいならAE70が軽いからいいかな。パワーよりも軽い方が速い」
「そういえばブレーキって強化したんだっけ?」
「一応、前はTE71のブレーキ、後ろはAE70Vのブレーキを入れてある。と言ってもフロントは13インチだからなあ、導風板は付けてるから」
「仕方ないだろ、ホイールが13インチじゃ」
「うん、ほんとはNCP51のブレーキにしようかと思ったけど、それならGX71の14インチにした方が早いからやめた」
「そうだな、ハイディスクにしないとぶつかるんだよな、そんな特殊なホイール探すなら14インチにした方が早いよな」
「その通り、山坂の多いところ走るならGX71のブレーキのつけてホイールはLX70用の14インチと175/65-14にした方がいいよって言ったけど、哲史さんはオリジナルがいいって言うことで13インチの鉄チンだよ」
「それじゃあねえ」
「僕らは自分の車なら好きにできるけど、お客さんの車は無理だからね」
「そうだね」
僕と隆弘はお店に戻る途中に車検するスーパーの引き摺りローリーを引き取っていた。
お店について隆弘と仕事の段取りを話していた
「後は来週か?」
「そうだな。今日は土曜日だしもう整備工場は閉めてもいいだろ。中途半端にするなら」
「だな。明日は鈴木さんの出の番ですね。急な入庫以外は何か急ぎありますか?」
「はい、明日はBX521の右側のバッテリーターミナルがやばいんで交換します。実は交換しないとエンストします。プラス側がボロボロなってましたよ。新品に入れ換えます」
「前回は見てなかったんですね」
「そうです。と言うかオーナーにバッテリー新品に替えたって聞いてて、しかもエンジンの掛かりもよかったのとこの車はマイナス端子を外す時は左を外すんですよ」
「そうでしたね。右は外さないから見てなかったのか」
「そうです。今回、シート交換できないかと思って、右側のシートを外してみたらターミナルがボロボロになってまして。見落としですね」
「仕方ないですね。お手数をおかけしますが交換お願いしますね」
「はい」
僕と隆弘、隆文は会社をあがると、哲史さんが待つ春名へ向かった。
道中雨こそ降っていたが、幸いにも霧はなく、路面が濡れているのに気をつければ運転の練習には問題なさそうだった。
いつもの駐車場に入って待っていると、あろうことか哲史さんに続いて雅子と百合ちゃん、愛理沙ちゃん迄やって来た。
雅子はルーシーちゃん、百合ちゃんはラムちゃん、愛理沙ちゃんはフライヤーちゃんだった。
雅子たちの後ろにはZN6で以前の総長の由香里ちゃん、そしてZN8で新しく総長になったという、紫陽花という愛理沙ちゃんよりもガタイのいい女子が来たのだった。
「オスッ、7代目、雅子先輩、百合先輩。総長交代したんで改めて紹介します。五式 紫陽花です。紫陽花、挨拶」
「オスッ。十三代目から紹介されました五式 紫陽花と申します。お初にお目にかかります。この度、この春名レディースの十四代目総長を拝命いただきました。以後お見知りおきを」
「紫陽花ちゃんね。すっごく良いガタイだけど何か?格闘技系かな?」
雅子が尋ねた
「オスッ、自分は合気道を高2の夏迄やってました。一番強くても試合に出してもらえないので腐っていたら十三代目に拾ってもらいました。」
「えええ?由香里。そうなの?」
「オスッ。七代目。なんか去年きた顧問がえり好み酷くて、しかもセクハラとか。部員の一人が危なく襲われそうになったの」
「オスッ、自分はその顧問からその部員を守ったらレギュラーを外されました」
「そう、紫陽花は自分のためじゃないのにそんなにひどい目に合わせるならと思ってあたしがここに連れてきたんです」
「それからは何を言ってもガン無視で段位も取らせてもらえませんでした」
「紫陽花、段位はいいのよ。段位があるとやばいからね。経験有でも段位がないと全く強さがわからないでしょ。幽霊部員かもしれないよね。段位あると喧嘩した時にやばいの」
愛理沙ちゃんが言う
「あ、七代目。そうですね」
「車の免許は取ったばかり?」
「オスッ、そうです。でもカートで小5から走ってました。サーキットも。兄がいてあたしも走ってました」
「そうなんです。紫陽花のドライビングセンスがすごいです。あたしより上手いんです。それで悟瑠さんに脇乗せてもらえばいいかと思って」
そう言うのは前の総長の由香里という女の子だ
「ふふふ、由香里もちゃっかりさんね。悟瑠さん。あたしからお願いします」
「いいよ、愛理沙ちゃんの頼みなら」
「え?まじっすか?」
「先に哲史さんにレクチャーしてからね」
「オスッ、待ちます」
「そうか、後ろに乗って聞いてて。実際走っているところを見ながらの方がいいかもしれないから」
「光栄です」
「よし、じゃあ。雅子、隆弘、隆文。サンゴちゃんみてて」
「おう」
「哲史さん、紫陽花ちゃん乗って。先に僕の運転で行くよ」
「悟瑠さん。宜しくお願い致します」
「オスッ、悟瑠さん。お願いします。お邪魔します」
「哲史さん。このAE70は脚がほとんどノーマルでウエットだよ。いくらウエットに強いタイヤに交換したと言っても、攻めても6割がいいところだよ。いくよ」
僕は、車の様子を見ながら走って行った。
「スタートはこのコーナー抜けたところから。おっとー。さすがにノーマルはロールでかいなあ」
「えええ?この速度で?」
「雨の場合はここで車の向きを変えて。遠心力に駆動力で対抗する」
「うわー、ばぐってる。横にはしってるう」
後ろに乗っているカートドライバーの紫陽花ちゃんは後ろの席で悲鳴を上げているが、ドリフトドライバーの哲史さんは全く動じずに乗っている
「悟瑠さん。これで6割ですか?」
「雨で路面が濡れて足がノーマルじゃあ。これ以上攻めるのは危ないって。夜のウエットなら限界内で走らないと命がいくらあっても足りないよ」
「自分はカートもやりましたけど、うわー。この5連ターンをこんな速度ですか?」
「うん。まあ、これくらいなら十分に行ける。データ知ってるからね」
「うおおおお、やべえ。ぶつかるうう」
ヘッドライトをハロゲンからLEDに交換しているといっても結構見えづらいのは事実だ。
ハイビームにすると雨粒が乱反射して見づらいので限界内で走って行く。
最終コーナーをせめてドリフトで抜けて行くとゴールだった。
一旦ギャラリー駐車場に入ると向きを変えて登りのラインを攻めていく
「悟瑠さん。これのパワーじゃあ練習には厳しいですか?」
「厳しいのはあるかもしれないけど。これくらいなら限界まではいけますって。一応100ps出てますから」
「え?そうなんですか?」
「はい、ポートもそろえて、ばっちり仕上げてありますから。いきますよ。ここは全開で」
「ええええええ?嘘でしょ、きゃあああ」
紫陽花ちゃんが悲鳴をあげる、隣では哲史さんの顔が引きつり気味だ
「登りの注意点はプッシュアンダ―。きちんと向きを変えてからじゃないとフロントの荷重抜けでドアンダーになって曲がんないから気をつけるように」
「すみません、あたしのZN8でも同じようにいいですか?」
「いいけど。哲史さん、今度は後ろにいいですか?」
「うしろもいいかもしれません」
雅子たちのところに戻って、今度は紫陽花ちゃんのZN8に乗って下って、同じようにレクチャーしていた
2人に走り方の基本を解説しながら戻ると、また雅子たちバトルを挑まれていたのだった。
ZN8で戻っている途中でこの前と同じように愛理沙がリーダーということで演技よろしくと雅子から3人に連絡来ていた
「あ、悟瑠、お帰り。お疲れ様」
「リーダー、何か」
「おう、また相手を頼みたい。いいか、あたしとバトるならまずは手下をやっつけてからな。春名ムーンライトのリーダーとバトルなんて10年はやいわ」
「仕方ねーな。じゃあ、いいか。車は何だ?」
「悟瑠さん、あたしのZN8でいきましょう。ウエットなら速いです」
「うーん、そうだなあ。サンゴちゃんはガチガチだからなあ」
「それから是非。また隣に乗せてください。あたしもっと速くなるから」
「OK。いいぞ。下りはZN8だ。登りはエスティーくんだな」
「いくぞ」
相手の車は、SXE10だった。
排気音を聞く限り、マフラー+タコ足の様だった
「あたしが、スタートやるよ。リーダーよろ」
「おう、悟瑠。頼んだぜ」
「リーダー。行ってきます」
「あ、そうだ。悟瑠。作戦はだな」
そういうと、愛理沙ちゃんはチュッと僕にキス
「ダーリンよろしく」
「くうう、七代目。カレシ借りますね」
「おう、頼むぜ」
"ジョン"と音を立ててドアを閉めた。
由香里ちゃんが両手をあげてレディの合図だ。
"シュオオオーン"とエンジンの回転をあげた。
「ゴー」
3回上下に振られていた由香里ちゃんの両手があがってスタートだった
「いけええ」
雅子の応援の声、僕は3000rpmでクラッチを繋いでZN8をフルダッシュさせた。
1速7000rpmで2速へほとんどノーマルとは言え重量が70kgはSXE10より軽いのと排気量が400cc多いアドバンテージで1車身離して最初のコーナーに飛び込む。
「うえええ、はええ」
「ふふ」
ウエットなのでパワー差よりも脚の差の方が大きい、相手はどうも脚を峠のドライ用に設定してあるらしく、ミラーでに映る範囲では挙動がクイック過ぎて走りにくそうだ
「悟瑠さん、こんなに速いんですか」
「そう」
2速全開で立ち上がって、また7000rpmで3速に入れてダッシュ、立ち上がりで後ろのヘッドライトがちょっと乱れる
「ウエットでは脚が硬い車は挙動速くなるからたいへんだな」
「ですね」
「よし、ここは横に向けて遠心力に対抗する」
僕は2速に落としつつ"フォーン"とあおって回転合わせてつなぐと略略進行方向に対して真横になってコーナーを辿る。
「うおおお、真横」
迫ってくるのは5連ターンだ
「よし、行くぜ。5連ターン」
「はい」
後ろを3車身離したまま飛び込む。一つのコーナを捨てて攻める。後ろとは徐々に差が開き始める
「次はここまで寄せて、次のコーナーのため立ち上がりで対向車線に入らないようにライン取りする」
「はい」
無事に5連ターンを抜けると後ろは既に20車身は離れていた
「5連は抜けたぞ。後はハイスピードを抜ければゴールだ」
次も真横にしたまま抜けていく、どうやら相手は既に戦意喪失でただついてくるだけになっていた
「うおおおお、俺の車速すぎ、脳内バグりっぱなしっ」
後ろはウエットにはサスが硬すぎのようでコントロールに苦労している
こっちはほとんどノーマルなのでウエットでも挙動が穏やかで走りやすい
最終コーナーでも安定したグリップ走行で抜けていく、ゴールしたら相手とは15秒ちぎってゴールしていた。
まずは1勝あげた。
次はヒルクライムで、隆弘は自分のエスティーくんを使うと言って一往復の慣らしをやっていた。
「また、CT9Aだぜ。げっぷがでてたまんないな」
「同じ4WD同士だな、頼んだぜ」
「任せろ」
隆弘と相手のCT9A、隆文、相手チームの1人、スターター役の由香里ちゃんが一緒にスタート地点に降りて行った。
『行きます』
愛理沙ちゃんのスマートフォンからの由香里ちゃんの声、僕らはありさちゃんのババロアちゃんちゃんの中で事務所のモニターに映る隆弘のエスティーくんから送られてくる動画と音を視聴していた
『グオオオオオオッ、ギャギャッ』
もう一台スマートフォンからの動画にはスタートした2台の4WDのテールライトが赤い帯を引きながらコーナーに消えて行くのが映っていた。
「由香里、戻ってきな」
『はい』
「隆文、クレーン付きレッカーでゆっくり来な」
『はいよ』
由香里ちゃんを載せたクレーン付きレッカーが発進したようで由香里ちゃんのスマートフォンから送られる方の画面にはクレーン付きレッカーから送られてくる道の様子が写り出した。
分割された隣の画面には隆弘のエスティーくんからの動画が来ていた。
後ろのモニターからの動画も飛んでくるので同時に見れる
「よしよし、隆弘が前を行ってるな。ん?やべえ、後ろ曲がりきれずに壁に行ってるじゃん。隆文、クラッシュ。救援」
『悟瑠さん、クラッシュ?OK、場所はどのへん?』
「5連のしたから3つ目」
『了解』
僕はババロアちゃんから降りると相手チームに連絡しに行った
「CT9Aがクラッシュしてる」
「え?一松が?クラッシュ?どのへん?」
「5連の登ってきて3つ目あたり」
「わかった。そっちの車がゴールしてからだな」
「そのほうが安全だろ、いま、下からうちのクレーン付きレッカーが向かってるから、隆弘がゴールしたら駆けつける」
「ええ?一松さんがクラッシュ?嘘だろ。あの冷静な」
「もしかしらアウトに寄りすぎたライン取って外に溜まった泥に乗っちまったのかも」
「あ、そうか。5連の登り?あり得る」
そう言っていると、"シュオオオオン"というフラット4のエンジン音と"ふおおおおっ"というマフラーの音を響かせ隆弘がゴールインした。
「悟瑠、後ろが消えたんだが?」
「うん。5連の3つ目でクラッシュだ。隆文がクレーン付きレッカーで救援に向かってる。俺たちもいくよ」
「隆文と悟瑠と俺が行けばいいだろ。車はどうする?」
「相手に聞くよ。雅子、解散だ。これじゃあ走れない」
「うん、そうね。紫陽花ちゃん。解散ね。車はお兄ちゃんに任せればいいよ」
「そうね」
「みんな。今日はありがと。解散。無事についたら俺に連絡しろよ。着くまで気を抜くな」
「「「「「「「オスッ」」」」」」」
「隆弘、救援行くぞ」
僕と隆弘は救援に行った。ぶつかった場所はコンクリートウォールだったのでフロントバンパーが取れてボンネットとフェンダーがつぶれていた。
「レッカーであげてドーリーで引っ張るしかないな。幸いにも道路施設には影響なしか?」
「それならいいか。じゃあ、引き上げて山を下りよう」
「どうもありがとうございます」
「指定工場はあるか?無いなら佐野自動車に持って行くよ。」
「悟瑠。どっちがいいんだ?アジトなら一旦上った方がいいな」
「アジトだろ。明日見てみるよ」
「え?佐野自動車さん?」
「そうですよ」
「すみません、直すついてでいいんですけど。ボディーアライメント見て欲しいんです。中古車店から買ったんですけどなんかおかしくって」
「承知しました。これは50万コースかな?フェンダーとボンネットバンバーグリルがあればすぐだよ。中はすぐに直せる」
「お願いします」
僕と隆弘はアジトにCT9Aを引っ張って帰って来た。
次の日の日曜日のCT9Aを調べると、この車はどうもニコイチのように見えたのだ。
月曜日、お店に出勤、アジトでは渡辺さんと田口さんがCT9Aを修理していた
「お兄ちゃん、愛理沙がバスにニックネーム付けたんだってB622B改はロニー、BX521改はポニーちゃんだって。愛理沙も考えたわね」
「なるほどね。愛理沙ちゃんもやるよね」
「そうね」
僕と雅子が車検整備が終わった大型引き摺りローリーの納車と4トン補充車の引き取りにスーパーに向かっていると、愛理沙ちゃんが運転するポニーちゃんを先頭に綿貫さんのロニー、長野さんの鬼丸君が連なって駅の方向に走っているのとすれ違った。
どうやら、小学生の見学の子供たちを乗せているらしく、愛理沙ちゃんはこっちに気が付いて手を振ってくれていた。
「愛理沙がポニーちゃんをドライブね」
「納得かな?愛理沙ちゃんの腕なら確かだよ。普段からババロアちゃんを運転してるんでしょ」
「そうよね。ある意味適材よね。普段から仕事で移動販売車の大型ロングノンステにも乗ってるんだもんね」
「長野さんは自分の鬼丸君も駆り出されたのか?」
「そうね、綿貫さんのロニーもでしょ」
「次のミーティングにはポニーちゃんも展示かな?」
「あははは、そうかも」
僕らは駄弁りながら大型引き摺りローリー納車して4tローリー引取するとそのままアジトに帰って、次のレースの準備をしていた。
雅子は今シーズン初めての超テクニカルサーキットなので対応方法を検討していた。
サス、ミッションギヤ比の仕様を真剣に考えていたのだった。
順調に軽快君のエンジンスワップを終えて峠に行く悟瑠たち
峠にいってクラッシュした車の修理を請け負ってしまったねえ
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