第七話 またまた赤〇でバトルとサザンちゃん
またバトルする雅子
サザン君の仕上がりは如何に?
「お兄ちゃん、サザンちゃんありがとう、でさ、今日はいつものところ行って限界どうなるかみたいんだ。通勤だとわかんなくって。このエンジン高回転引っ張らなくって良いって言うのも楽ね」
11月の末ごろ、そろそろ冬タイヤが必要になってきた一週目の金曜の夜だった。
いつものように仕事から帰ってきた妹の雅子が、通勤用に仕上げた○33○ドリックから降りると言う。
「いいけど、タイヤは低燃費のエコノミー系だからハイグリップじゃないからイチゴちゃんの感覚で攻めるのはまずいよ。ちょい悪おじさんの姿の若いアスリートだから」
「あはは、そうね。じゃ、50%かしらね。そうだ、エッ○同期の娘に売ってあげちゃったけど、よく乗ってたねって言われちゃった、ターボのほか何かしてたの?」
「うん、エッ〇はまず、コペ○用のエンジンとECUに載せ替えて軽量フライホイールは入れてたね。ああそうか。カムはNAカムでインクラ前置き、オイルクーラーでしょ。脚は特注の純正形状倒立だよ。そうそう車体はジムカーナと同じくスポット増しというか穴を全部塞いで開口部もレーザーのシームレス溶接にした。もしかして硬かったかな?バネはタン○用の30mmダウンでバネ80%上げてある位だよ。ボディには補強バー入れて固めてあるよ」
「凄いじゃん、エンジンは?それだけ?」
「うん、タービンは2サイズアップしたからなんだけど可変バルタイで低速トルク稼いでターボラグ減らしたけどどうしても結構ドッカンになっちゃうかも、5000から8000まで一気にブン回るよ」
「道理で、同期がね、バイパスで2速で全開にしたら速すぎて怖かったって。アッという間に100キロ出るんだもん」
「あはは、そうだよ、110ps以上出てるから。車重は700キロくらいでしょ、ぶっ飛び軽だよ。いわなかったけどブレーキは同じ会社のミニバンのブレーキ移植して、前は14インチ、後ろは径180のドラムだから峠にいってもその子の腕なら多分フェードしないよ」
「ふーん、あたしそんなのに乗ってたの?まったく気が付かなかった。イチゴちゃんより遅いとは思って位で」
「あのなー、それはそうでしょ。イチゴちゃん乗りやすさ出すため抑えてるけど400psは出てるから」
「えええ?そうなの?今度はサザンちゃんでゆったり走るの勉強しよ、サザンちゃんの脚と車体はどうしたの?」
「脚は、フロントは倒立で、後ろも同じだよ。バネはフロントが20ローダウンのレートは50%増し、後ろは20ローダウンの40%増しに変更、後ろのメンバーのゴム関係は○TRで、Aアームも34用、ラテラルロッドは定番のピロだよ。テンションロッドはGT用80。この前に行った時と同じだよ。でも車体補剛したから、感じ方違うと思うよ」
「そうなのね。どこやったの?」
「うん、イチゴちゃんとほとんど同じだけど、もともと高級車だから、つくりが結構贅沢でさ、それに音漏れしないようにあちこち塞いであるからさ、そのふさぎの補強と後ろのトランクのところに遮音ボードがあったからそれを補強して、点付け溶接になっていたのをレーザーでシームレスにした。そしたら、めっちゃ剛性上がって後ろのバネ少し落として、ダンパーもちょっと落とした。フロントのメンバーとボディは剛結、後ろのメンバーは某ショップの試作メンバーにしてみた。ブレーキは前にサンゴちゃんに使ってたR3○GTR用を移植した。タイヤは245/45-17、ファイナルは3.54で様子見してる。30ターボのブロックだからある程度は大丈夫だとは思うけどね」
「お兄ちゃんさすがね、この前よりも曲がりやすくなったのはわかったけどそんなことまでしてたんだ。履いてるタイヤがタイヤだかんね。ご飯食べて着替えたらたら行ってみよ。でもさ。どたどたした雰囲気ないよね」
「もちろん、車体の剛性上がってるからだよ。タワーバーもついてるからね」
「そうなんだね」
そう言いながら、僕らはご飯を食べて着替える。
雅子は会社の制服から峠に行く時のジーンズとデニムの上に皮のジャケット。
僕は車の下にもぐるかもしれないので、車いじり用のつなぎに着替えていた。
工具を積んだサポートカーのロックんのエンジンを始動していた。
今日の相棒サザンは○33セドリッ○だ。
珍しい4WDのモデルで、外観はグランツ前期型にしてある。
エンジンは30ターボブロックを流用、オイルの戻り穴を拡大して26ヘッドとブロックの間をつないでいる
ミッションは○34GTRの部品をつかって作った6MT仕様で後ろのペラのみ作っている。
ペラは某製作所特注の強化競技用をサザンちゃんのホイールベースに合わせて作ってある。
特製の85mmストローククランクと○B26用のピストン、ビスカストーショナルダンパーを組んである、ターボはシーケンシャルツインにしてパワーバンドを広げてある。
もちろんシリンダーもダミーヘッドとダミークランクを組んでボーリングしていて、設計値に近づけてある。
狙いはフリクションの低減で気持ちよく回るエンジンに仕上がっている。
ベッドは26ヘッドにして、ノーマルのサージタンク、6連スロットル仕様である。
最高出力もターボの力をかりて約450psを6400回転で叩きだす。
ブロックの耐久性も考えてレブリミットを7600にしてある。
排気量が大きいので3000以下のトルクにも余裕があって雅子は乗りやすいと言っている。
この車は見かけはホイール以外は全くいじってないので、ぱっと見はおっさんのセダンに見える。
前のオーナーのレースのハーフカバーもそのままにしている
今ではボディをいったんどんがらまでばらして、この車も弱いと言われている、センターフロアとリアフロアのつなぎをしっかりさせたのだ。
そのおかげで、某ショップ試作のメンバーを組んでもボディが受け止められるのでその良さがよくわかるのだ。
冷却に関しては、空冷式オイルクーラーも組んでいて4WD純正のインタークーラーの場所に組んであるので、オイルクーラーがあるとまではパット見では全く分からない。
しかし、室内を覗くと只ものでないことがよくわかる。
純正にない6MT仕様で冷却関係の各メーターがダッシュボードに並んでいる。
オイルポンプ焼付き対策でサンゴちゃんと同じくドライサンプにしてるのもこの車のポイントだ。
雅子はサザンにのって、僕はロックんに乗ってアジトとしている祖父母が住んでいた家を出る。
約1年半前、祖父母は病院に通うのに不便ということで、僕らの実家に入った。
それと入れ替わりで雅子と僕が祖父母の家に住んでいる。
何時もの峠について、ロックんを駐車場にとめて、サザンのナビシートに乗る
「お兄ちゃん、このエンジンすごいよね。2000回っていればこの上りものともしないんだよ、イチゴちゃんだと苦しいのに」
「うん、そうだね。エンジンはいいけど、タイヤが省燃費タイヤだからさ」
「そうなんだ、結構静かで食いつく方と思うけど」
「うん、そうか、今日は雅子の50%くらいで走ってみようか?」
「うん、そうね。」
「あ、そうだ。あとで僕もハンドル握るよ、いいかな?」
「うん、お兄ちゃんセッティング名手だからね」
そう言って雅子が走り始めた。
走らせてみると、ホームコースはサザンにはとにかく道が狭い。
イチゴちゃんなら十分振りまわせるコーナーが長さが4.8メートル超えあるサザンにとっては狭いのだ。
「雅子、こいつは僕もまだ限界まで攻めてない、重いからいったらそのまま止まんないかもしれないと思ってくれ、とにかく車体の剛性上げたのは良いんだけど遮音がしっかりしすぎていて、速度感が無いから気を付けろ。そうだ、タイヤもタイヤだから限界はかなり低いよ」
「うん、わかった。イチゴちゃんのつもりで行くとやばいってことね」
「そうだよ、まあ、ロックんかナナちゃんとおもって乗ってくれ」
「はーい、いいとこ50%くらいかしら」
「そうだね、挙動に早くなれないとね」
「はーい、うわ、なにこれ?馴れたけどやっぱ峠じゃハンドル軽すぎ!ボディ補強とかで大分手ごたえ出たけどやっぱり難しいな」
雅子は50%といっていつもの下っていく。
そうはいっているが、その走りはウルトラスムーズだ。
隣に乗っていると、峠ということを忘れてついつい寝てしまうくらいなのだ。
ホームコースとは言え、初めての車ではしるのだが、あっという間に乗りこなすセンスは見事というほかない。
それは、ホームコースでの練習も怠らないのもあるだろう、自分で課題を見つけてはそこを進化させる練習をする。
この前、イチゴちゃんの調子が悪くて、僕のサンゴちゃんでバトった時もあっという間に乗りこなして勝ってしまうくらいの腕だ。
しかも、頭がイチゴちゃんよりも重いサンゴでもきれいに曲げていってタイヤも労わって走れる。
妹の佐野雅子、普段はターボチューンされた軽自動車からサザンに乗り換えて会社に行っている入社3年目、4月生まれの21歳。
高卒ではいったスーパーの本社で経理をしている。
妹は地元の商業高校を断トツ1番の成績で卒業して、商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシックなら任せての技能をもっていたので、地元資本の大手スーパーの経理部に学校推薦で入って、高卒ながら3年目の今は大卒と同じくらいの給料をもらっている。
あろうことか?雅子は自力で各店舗から集まる情報処理集計システムを組んでしまい、今まで買っていたソフトが不要になった。
しかも妹が作ったソフトのほうが勤めている会社に事情に合っているのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とシステムのメンテナンス費用が浮いた。
万一、おかしなことが起きても、雅子がすぐに治せる。
それも褒美もあって、雅子は高卒では異例の速さで主任に昇格してしまったのだった。
それに集計の自動化を進めた結果、仕入れと売上関連の報告がほとんどが一目でわかるようになって社長も大喜び。
その成果が認められ、高卒の3年目途中で主任に昇格して、部下を持ってその指導もするようになったという。
7月からは今年入ってきた大卒を部下にもって指導しているのだから驚く。
その雅子が行くと言っているのは峠だ。
雅子は高校3年で免許を取ると同時に峠を走り始めて既に3年がたっている、あっという間に上手くなってその地域でトップクラスの速さになっていた。
得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入って全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中では雅子しかいない。
ダウンヒルなら、雅子が一番だ。
僕:佐野悟瑠は雅子より4学年上の3月生まれの24歳。
大学を卒業してすぐに家業の中古車屋に就職して3年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今は実家の中古屋の整備工場で働いていて、中古車の納車前整備やトラブルが起きた車の修理をしていて、時には中古車査定もする。
大学のころから家業の手伝い=アルバイトしていてMIG溶接機やレーザー溶接機、フレーム修正機もバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。
加えて、○ントリペアも勉強して資格もとった。
僕は中古車で人気がないが、程度のいいFRを見つけては整備して雅子の走り仲間へ売っている。
必要ならエンジンとミッションの載せ替えもやるのだ。
今、僕と雅子は僕の同級生がリーダーを務める走り屋チームにいる。
僕はそのチームの整備係になっている。
「お兄ちゃん、これ乗ってて気が付いたんだけど、イチゴちゃんとか、サンゴちゃんよりも車重おもいから先読みが必要なんだね、それにブレーキもイチゴちゃんのと同じでしょ。この車重じゃ本気になったらあっという間かも」
「うん、そうだよ、イチゴちゃんの感覚で運転したら、曲がんなくって、途中でブレーキもいっちゃってやばいでしょ」
「そうなのね、ねえ。そうだこのエンジンどのくらい出ててるの?なんかさ、3000でも十分速いんだけど」
「うん、そうだね。450ps仕様にしてる。耐久性考えてリミットは7600だよ、3.0だから排気量を活かして低速からパワーだしている。」
雅子は少しエンジンの回転を上げた。
ブースト計が1.0を示した。
あっという間に6000超える。
「わ、速すぎよこれ、もうお兄ちゃんったら脚よりもエンジンが勝ってるじゃん。トルクの塊」
「雅子、どうだよ、このパワー、雨降りでも大丈夫なように4WDだよ。トルクで走る車だから」
「恐ろしいね!下りでこれなら、上りは全然物ともしないでしょ、この車重も」
「ああ、上りは僕が乗ってみるよ」
「いいなよ。大Rだ、おりゃー。あれ?これ?カウンター要らないの?」
「滑ると前が引っ張るから」
そう言うが、大Rコーナーを一定のカウンターを当てたままきれいなドリフトで弧を描いて抜けて行く。
タイヤがタイヤなので車速が低く悠々とコントロールしている。
見ていたギャラリーから歓声が上がっていた。
「さすがね、このサザンちゃんも滑らせるとイチゴちゃんたちと感覚似てるよ。タイヤがタイヤだから速度でないけどコントロールしやすいの」
「それはよかったよ」
「気に入っちゃったよ。成程ね、あおってきたらあのコーナーならドリドリできるからいいかも。それに低速からトルクの塊だから楽でいいわよ」
「おいおい、通勤路でバトルのはやめてよ、それに高速になるとウイングあるって言ってもイチゴちゃんのGTとは違うからね」
「そうね、わかったわ、大Rをこんだけ簡単に行けるならもういいや。お兄ちゃん乗ってみて」
「そうか、気に入ってもらってよかったよ」
「うん、お兄ちゃんって車づくりの名手ね」
そういうと、雅子は下りのゴールに着いた。
そこでは、隆弘たちが来ていた。
「雅子、これどうしたんだい?さっきいつもの大Rをきれいに雅子みたいにドリフトで抜けたのがいたって連絡来たけど、雅子か」
「うん、良いでしょ、これ、あたしの通勤車にしたの」
「これある意味スゲーなー。外観ノーマルで中身ギンギン仕様だね。悟瑠らしいや」
「まあ、良いでしょ。レブ低くて450ps仕様だから乗ってて楽だし」
「おー、やっぱり6MTか、よくここまできれいに換装するもんだよ。そうだ僕にも作ってよ、いいのあったら」
「ああ、いいぞ、そうだ2.5の古い○ーガがあるんだよ。それ改造しよう。Zの30ターボに換装かな?」
「おいおい、何すんだい?2WDだろ」
「まあ、お楽しみってことで」
「任せたよ。6MTだろ」
「もちろん」
その後は僕が上りを運転して挙動を調べた。
少し、路面が荒れていると後ろがぴょこぴょこ振られる感じが残る。
もう少しトランク内の補強が必要かもしれない
いつもの機器でデータも取って、帰途に就く。
アジトにつくと
「お兄ちゃん、なんかね、このエンジン下からのトルクが良すぎてさ下手になっちゃうかも、シフトさぼっても走っちゃうんだもん、○ッセだと失速する登りのところでも4速でぐずらないで走っちゃうし」
「そうか、まあ、仕方あるまい。こんな車なんだから」
「うん、やっぱりイチゴちゃんで走んないとかな?」
「ああ、そうかもね、雅子、ちょっとこの後で後ろ補剛するからね」
「そうなんだ、さすがお兄ちゃんね」
「うん、仕上がりは来週かな?トランク内で補強版を溶接して防錆メッキと塗装するから3日位塗料の匂いは勘弁ね」
「OK」
今日の試走したあと、家で動画や取ったデータの分析をしていた。
雅子はエクセルデータ落としたらマクロで走行軌跡から速度、ギヤ位置、エンジン回転までわかる分析ソフトを作っていたので、分析中はコンピューターに任せていつものように爆睡していた。
次の週、僕と雅子は後ろ周りの補強が終わったサザンで赤○山にまた下見に来ていた。
ここは以前バトルしたところで、雅子と隆文がぶっちぎりで勝ったのだった
その時はイチゴちゃんが壊れ、やむなくサンゴちゃんに乗っていたのだ。
その日は別のチームから挑戦状が来たのもあって、念のための下見だった
ゆっくり流して一往復して休んでいると、チームの走りや仲間もきた。
「雅子、調子はどうよ?今日もイチゴちゃんじゃないの?」
隆文が声をかける。
「今日はこの子に早く慣れたいから乗ってきちゃった。重いからいい練習になるよ」
「雅子、なんかさこの車だと娘さんがお父さんの車乗ってるみたいで、相手にはわかんないからいいかもね」
「へへへーそうね、この前からまた進化したんだよ。トランクバーいれて、トランクブレースいれたらめっちゃ挙動が安定したの。お兄ちゃんが見つけたんだよ」
「悟瑠、ドライバーに復帰しろよ、お前ならクライムでもブッチだろ」
「まあ、良いって事、今日はゆっくりサーベイだからさ」
「ああ、頼んだぜ」
もう一回雅子がハンドルを握る。
「うーん、やっぱりサザンちゃんって車重が重いからかな?ちょっとサンゴちゃんよりもアンダー出るね。その分考えて走るね。あとはギヤがちょっと高いんだよね」
雅子がスピードをあげる、本人は60%と言っているが、その走りは21歳の女の子ではない。
トーヒールは完璧で全く回転にずれがなく、測っていると、時々7m/s2以上の旋回加速度でコーナーを抜けている。
ブレーキも同じで、踏み始めが優しいので気が付きにくいが、時には7m/s2以上で減速する。
以前より格段にスムーズなのだ。
「この前とあんまり変わんないけど、イチゴちゃんで走るからちょっと考えないとね」
「うん、ここは対向車がいてもあんまり速度落ちないからね」
「うーん、そうなのね、その処理がキーね、前回は対向車来なかったもんね」
「うん、そうだったね」
「はーい」
コーナーいくつか過ぎた、急にストレートが長くなる
「ここから高速ステージだ、一気に速度上がるから対応するんだぞ、サザンはブレーキ弱いからイチゴちゃんの感覚で踏んじゃためだよ」
「うん、ここからね、たしかに、えー?3速でここまで?○葉ラインとおんなじね」
3.5のサザンで3速6000までまわっている
「イチゴちゃんなら3.9かな?」
「そうね、下手すると5速?」
「かもね」
また、低速ステージに入る
「やばい、アンダー出しちゃった。ここがポイントね」
「そう、ここは高速から油断するとささるぞ」
「そうよね、サザンだから気が付いたし、この前はサンゴちゃんで余裕あったからね。サンゴちゃんの方が曲がるセッティングだもんね」
「さすが、雅子。わかってるじゃん、イチゴちゃんのミッションのギヤ比は3.9で行くから。ちょっと忙しいかも」
「お兄ちゃん頼むね」
雅子が感心したように言う。
下見した後、家で動画や取ったデータの分析をしていた。
更にその次の週、12月に入ってもうそろそろ雪がちらつく頃だ。
次の週、僕と雅子はローダーにイチゴちゃんを積んで早目に集合場所の駐車場についた。
念のため一往復して休んでいると、走りや仲間もきた。
「雅子、調子はどうよ?」
隆文が声をかける。
「今日はイチゴちゃんなんで、ここ走るの初めてだからセッティングにちょっと時間かかるかも」
「仕方ないね。雅子、今日も頼んだぜ、ダウンヒルじゃ雅子がチームのトップだからね」
「ま、何とかね、隆文、クライムはヨロね」
「OK」
そういうと、雅子と僕はイチゴちゃんで足回りのセッティングを再開する。
分析ソフトの結果を入れてきたといっても現地での調整がいる。
「うーん、ちょっと高速お尻振り振りね。跳ねる感じする」
「そうか、後ろのダンピング2段下げてみよ、曲がるように低速に合わせすぎたかな?もっとアンダー方向にしないとね」
「うん、ちょっと戻ってもう一回ね」
「雅子、右コーナーの処理で決まるから、駄目なら、前のスタビをあげるしかないね」
「うん、でもまず、ダンパーでみてからね」
もう一回下る。
こっちのほうでもオーバー気味だと雅子はいう、フロントのスタビをワンサイズ大きいのに交換した。
走ってみると挙動が安定して踏めるとして、スタビは一ランク太い仕様でいくことにした。
チームのもう一人のドライバーである隆文は雅子の一つ歳上でチームリーダーの隆弘の弟だ。
乗っているのはレガシ〇だ。
これはエンジンを2.2から2.5にしてパワーを稼いでいる。
450ps仕様だ。
他にはリアシートを外してロールゲージを組んである。
ブレーキはサンゴちゃんと同じ19インチだ。
こちらのセッティングが終わってここのルールを確認して開始だった。
ここは広いので、前回と同じく並んでのスタートだ。
とにかく先にゴールしたもの勝ち
一発勝負だった。
今回も先にダウンヒルで雅子と僕はスタートラインに車を停めている。
相手はNB○ードスターだった。
ロールゲージを組んでいるところとあおると”パシューン”とブローオフの音がする、結構いじってそうだ。
雅子がイチゴちゃんのタイヤをざっと自分の目で見確認して乗ろうとしたときに、
「おめえ、ビジターが美人でも手抜きすんなよ。鼻の下伸ばしてんじゃねーぞ。わかったか?」
そう相手チームリーダーらしき奴がドライバーにいうのが聞こえる。
ぷぷっと雅子が吹き出した。
乗り込んでドアを閉め、ベルトを締めると
「じゃあ、そんな奴なら大丈夫だよ、勝っちゃうもんね」
もう完全に雅子はバトルモードに切り替わって、眼の中の炎が見える。
雅子が完全に乗ってしまった。
走りや仲間もいつものように”こりゃいけるぜ”という顔している。
僕をナビシートにのせてスタートだ。
レーシングして、スタートの合図を待つ。
スターターの両手が下がってスタートだ。
キャリキャリキャリとタイヤを鳴かせて絶妙のホイールスピンとともに立ち上がっていくイチゴちゃん
ふと見ると向こうはどうやら、スタートしくじったのか?ダッシュで既に1車身離れている。
「雅子、この前と同じだ8500以下でまずは走れ、サンゴちゃんと違って軽いからいけるぞ、相手も軽いからタイヤに注意だ」
「OK、対向車ヨロね」
2速でタコメーターの針が8500に近づく。
3速にたたき込んで更に全開、1コーナーは右だ、ターンイン前で2速におとし、しっかりインを締めて下る。
次はすぐ来るが、2速8500まで上がってシフトアップ、3速全開で加速、コーナー手前でブレーキング、2速に落として今度は左コーナーだ。
ここもしっかりインを締めてこの前のバトルを応用して荷重移動を目いっぱい使って走る。
タイトではイチゴちゃんのほうが得意なのでフロントタイヤを極力労わって走る、タイトを抜けると一回目の高速ステージだ。
「雅子、ここからは9500までいくぞ、今は後ろが離れてかけている。逃げ切るぞ。多分こいつもタイヤを今は温存してる。2回目の高速に備えているんだ。うしろを離していればベストタイムラインが使えるから目いっぱい行くぞ。5車身離せ」
「OK、ベストタイムライン使うためにレブ目いっぱいね」
最初の高速ステージで、レブ9500までめいっぱい引っ張りシフトチェンジ。相手の作戦の裏をかくため回す。
「雅子、次のタイトはギヤ下げたのと中速トルク出てるから2速で行ける」
「え?いいの?」
「ストレートの後のタイトは2速のほうがこの場合は良い。」
僕は雅子に指示を出した。
その通り、3速で雅子が踏み込む、一気にリミットの9500を目指すイチゴちゃんのタコメーター。
間隔が更に開く、相手は必死に追いすがろうとしてきた。
5速迄シフトアップしてフル加速しているとタイトコーナーがせまる。雅子は5速から一気に2速までシフトダウン、タコが6000付近を指す
「いいぞ、雅子、対向車なし、目一杯2車線つかえ。ベストラインだ」
「はいよ」
コーナーを立ち上がって3速へ、ぐんぐん加速するイチゴちゃん
あっという間にNB○ードスターは15車身以上離れたようだ。
窓を開けて聞いていると、相手も2速で立ち上がったのか?
エンジンの特性の違いなのか?一瞬タービンの音が途絶える
短めのストレートを3速9500までまわして左ヘアピン
手前で2速に落としてそのまま右の広めのヘアピンをクリアするとトンネルだ
トンネルの出口の直角を曲がった先はかなりのタイトなヘアピン
2速のまま5000まで落としてクリア、次の右は目いっぱい車線をつかってクリア。
タイトを抜け、やや大きめのヘアピンを3つクリアして最後の高速ステージだ。
後ろのライトが遠くになっている。
「左大Rは気を付けろ、オーバースピードだと刺さるぞ」
「OK、おりゃー」
雅子は大Rをきれいなドリフトで全開のまま抜ける。
「あとは右コーナー早めに減速しろ、油断すると刺さる」
「はいよ」
3速全開のまま右コーナーを抜ける雅子。
ぶっちぎりでゴールインだった。
約20秒遅れてNB○ードスターがゴールイン
ふと気が付くと、排気管から白煙を吐いている。
ピストンが棚落ち気味かもしれない。
「雅子、お疲れさん。あとは隆文に任せよう」
「イチゴちゃんって、以前よりも下からトルクあるし、パワーバンド広くって乗りやすいんだもん。こんなエンジンがイチゴちゃんに乗ってるのすっごく嬉しいの」
「乗りやすかったか、さすがだよ、良かったよ。」
「お兄ちゃんの作るのってホント乗りやすいんだもんね」
「雅子のセンスだよ」
ヒルクライムはランエ○だったが、パワーの差があったのか?隆文もちぎって勝ちだった。
全員でハイタッチして勝利を喜んでいた。
「雅子、イチゴちゃんでぶっちぎりとは恐れ入ったよ。この前刺さりそうになってたからさ」
「イチゴちゃんはサザンちゃんよりも簡単に曲がるよ、お兄ちゃんのセッティング上手だから」
「悟瑠、良い車ありがと」
「ま、いいってことよ」
僕らは帰宅する。
雅子頑張ったね。
「お兄ちゃん良い車ありがと」
「良いってことよ」
僕らは爆睡していた。
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