第六十六話 ボンネットバスの修理再生完了とTSカーの開幕間際で
すっかりリフレッシュした悟瑠たち。
溜まった仕事を掃かないとやばいと思っているとまたバスが?
パワーショベルも放置だったぞ。
主な登場人物と所有車
佐野 雅子 ヒロイン 24歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、8勝目にトライ中。
家業の佐野自動車販売の中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーの経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許、2級整備士免許、危険物乙4、玉掛、ガス溶接、救急救命士
レース以外の趣味:
オフロード走行:大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車
バス:
観光系 ルーシーちゃん
路線系 獅子丸くん
フーセンちゃん
短尺系 ニジュちゃん
エムエム君
COE大型総輪駆動ダンプ
4×4 藤子ちゃん
大型ボンネットダンプ
4×2 カービーちゃん
小型車
クーペ イチゴちゃん
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 28歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許
カーキチ、スペックオタク
所有車
バス:
観光系 ゴーゴーくん
ロザン君
なごみちゃん
路線系 パン君
ニイナちゃん
キューピーちゃん
COE大型総輪駆動ダンプ
4×4 サイバー君
小型車
セダン サンゴちゃん
三四郎君
加藤 隆弘 28歳
悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染。2月生まれ
所有車両
COE大型総輪駆動ダンプ
4×4 ラッシー君
バス U35H
小型車:
セダン エスティーくん
加藤 隆文 25歳
隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。
所有車
COE大型総輪駆動ダンプ
4×4 まゆかちゃん
バス MR510
クロカン4×4 ロックン
趣味:TSカーレース
松尾 百合 24歳
雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。
所有車
バス:
観光系 武蔵君
ラムちゃん
大型ボンネットダンプ
4×4 パイ君
4×2 徳次郎君
小型車:
軽4輪 エッちゃん
現在は丸松運輸の副社長 TSカーレーサー
松尾 譲 27歳 百合ちゃんの兄 丸松建設の副社長
所有車
バス:
COE ビーフさん
大型ボンネットダンプ
4×2 旦那さん
4×4 ゼットワン
小型車:
KE70HT
小笠原 愛理沙 23歳 TSカーレーサー
雅子の同じ学校の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長。2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務 大型免許所持
所有車
小型車:
セダン GXE10
バス:
観光系 ババロアちゃん
大型総輪駆動 4×4
COEダンプ フライヤーちゃん
小笠原 哲史 27歳 愛理沙の兄。別の会社に勤めているが家業に転職検討中
所有車
小型車:
セダン AE70
バス:
路線系 マーシーちゃん 6DB1⇒6D17T
長野さん 29歳。
バス会社に居たが欲しい車が排ガスの関係で住んでいる地域で登録できなくて雅子がいたスーパーに転職。今は愛理沙ちゃんの上司
所有車
大型短尺系バス:
自家用 伊那路
190ps/2900rpm 52kg・m/1700rpm
観光系 五平餅 6D14⇒6D16
190ps/2900rpm 52kg・m/1700rpm
路線系 鬼丸君 6DB1⇒6D17
210ps/2900rpm 56kg・m/1700rpm
小型車:
クーペ NE
狩野さん 29歳
運送会社にいたが首都圏の事業縮小で地方に転勤になったが偶然募集していた松尾建設に転職
所有車
6×4ダンプカー
V10 古武道君 V22C⇒V25C
450ps/2200rpm 165kg・m/1400rpm
V8 福田屋君
355ps/2200rpm 135kg・m/1400rpm
小型車:
EHT ND
連休が明けて、僕と雅子が出勤して開店の準備をしていると長野さんとみたことのないバスが入ってきた。
「長野さん、いらっしゃいませ。ええと、あ。この前のミーティングに来ていたK-UA31Kの方ですね」
「はい、宇和島と申します。実はこの車のエンジンを交換して欲しくて」
バスから降りてきた宇和島さんと名乗ったほうはそう言ってミーティングとは別のバスを見せてくれた。
「はい、いいですよ。え?これってU35Hですか?しかも低床の自家用?」
「ええ、珍しい自家用です。スクールバスになっていたようです。実は家においてあるK-UA31KのエンジンをこのU35Hの乗せてK-UA31KにはPF6HTAを積んで欲しくて。ミッションも入手してあります。ただ持ってくる手段がなくて困ってるんです。他の修理工場では引き受けてもらえなくて、困っていたらこの前のミーティングでここを紹介されました。できればこのU35Hを買い取ってくれる方がいれば喜んでお売りします」
そう言う、宇和島さんだった。
「宇和島さん。エンジンはうちのトラックで引き取りいきます。2台のバスのボディはいかがいたしましょうか?」
「K-UA31Kのボディは錆がないか確認お願いします。自分で修理してたんです。なにぶん素人なので錆を落としきれないところががあるかもしれません。U35Hは錆取りが手抜きになってしまっているので現状渡しで引き取る人がいれば売ります。K-UA31K修理の足しにしたくて」
「そうなんですね、承知いたしました。長野さんは?どうかしました?」
「この鬼丸君のエンジンを家においてある6D17に換装お願いします。3台の中じゃあ一番重くて6D16では登りがきついんですよ。6D16は五平餅に積んで、降ろした6D15は佐野さんのところで処分していただければ助かります」
「はい、承知しました。まずは6D17エンジンを取りに行くんですね」
BXD30の納車の前にまたバスのレストア依頼が来たのだった。
「長野さんは代車どうします?」
「代車は不要です。伊那路があるので」
「長野さん。バスにニックネーム付けたの愛理沙でしょ。鬼丸君とか五平餅とかも」
「そうです。小笠原はニックネーム付けるの好きみたいで」
「そうね、あたしの車にニックネームをつけてるの見てやってるの。そのほうが愛着湧くって言って」
「そうなんですね。小笠原も自分の大型車につけてますもんね」
「長野さん、宇和島さん、今日これからご都合良ければ今からなら2台のエンジンをトラックで取り行けますよ。隆弘。デコちゃんとミック君で引き取り行くからデコちゃん操作頼むぜ」
「いいよ。とにかく、バス4台のエンジンスワップか」
そう言ってると事務所に帰って来た親父が
「悟瑠、加藤運輸のトラクターとトラックの修理もわすれんなよ。2台ともミッションブローでMTにするんだ、今、雅子がミッションの在庫ないかあたってるから。隆のパワーショベルは部品欠品で鉄工所で作るしかないよ。納期出てねえから待ちだな」
「親父、わかった。とにかく、やるしかないな。お二方、送りますよ。今からエンジンをうちの車2台で取りに行くんでいいですね?」
「ありがとうございます。お願いします。僕の方はエンジンの他にK-UA31Kも持ってきたいんですが」
「いいですよ。エンジン取りに行くついでに。帰りの脚がないんですね」
「できれば、何かお借りできると」
「準備しておきます。親父、雅子、アサイー君いいかな?」
「うん、いいよ。パパってケーテン君をコンペティションイエローマイカにするんだって。まさかデコちゃんを白黒ツートンのパンダ仕様にしないよね。仕事一段落したらアサイー君はカラーをインパクトブルーに変更するとか言ってるよ。全面にホワイトとシルバーを1回ずつ捨て吹きして」
「雅子、それいいな。ってパンダ仕様は錦くんでやるとか言ってるぞ」
「はああ、パパってどんだけあのアニメ好きなのよ」
「いいだろ。雑誌に連載されていたのは俺と隆と隆義が楽しくバカやってた頃なんだ。舞台も同じ県でな」
「はあ、ほんとマニアだよ、隆弘と百合ちゃんのお父さんもね。さて隆弘、エンジンの引き取りに行くぞ」
「おう」
「先に僕は長野さんを降ろして宇和島さんのところに向かうから。長野さんはエンジンの準備しておくって。デコちゃんで宇和島さんのところに行ってくれ」
「いいよ」
「住所はここです」
「はい、追いかけます」
僕はミック君に長野さんを乗せて家に向かっていた
「あのU35H欲しくなっちゃいますね。うちの置き場がもう限界なんで、U35Hを買うと何か手放さないとなんなくて困ってます。長さで駄目かな?」
「そうですね。みたところU35Hはいい個体ですもんね。10メートル超えますもんね」
「そうなんですか。僕はフルオリジナルにこだわりないんでエンジンスワップしてあってもいいんですよ。長さが10メートル超えるのか?それじゃあむりだな。うちの車庫に入らない」
「うちの親もそうですよ。エンジン部品ないとわかると載せ替えちゃう。雅子もそうですよ。この前展示したカービーちゃんはオリジナルのエンジン部品が出ないからって新しいM10ターボに載せ替えですから。そうですか置き場に入らないのは残念です」
「ですよね。僕はターボあんまり好きじゃないんで今のところは生オンリーですね」
「そうですね。人それぞれですよね」
「あ、着きました。どうもありがとうございます。エンジン、ミッションと五平餅を準備しておきますね。」
「エンジンとミッション引き取ったらこのトラックでまた来ます」
長野さんを家の前でおろすと、そのまま宇和島さんの家に向かった。
僕が到着した時に既に隆弘はついていて、エンジンを釣る準備が終わっていた
「隆弘、どうだ?釣れそうか?」
「うん、いけるよ。アイ加工ロープ持ってきて正解だよ。パレット固定のエンジンもミッションも簡単だ」
「よし、あおりを降ろしたから乗せるのいいかな?」
「はいよ」
"ぐおおおーん"とデコちゃんのエンジンがうなってエンジンを釣り上げていく。ミック君君の荷台に乗せると次にアイ加工ロープ通して準備してあるミッションを釣る
5分足らずでエンジンとミッションを積み終わって僕はスリングベルトでミッションとエンジンを荷台に固縛して、隆弘はデコちゃんのアウトリガーを片付け、ミック君のあおりをあげて出発できるようになった
「宇和島さん、先にお店に行っててください。僕らはもう一機、長野さんのところでエンジンとミッションを引き取って帰ります。代車は準備してますので」
「はい」
僕らは、長野さんの家によってこれまた準備してある6D17エンジンとミッションを引き取ってお店に戻って来た。
長野さんは積みかえて欲しい五平餅に乗ってついてきていたのだった。
この6D17とそれに合う6MTは長野さんに聞くと笠木工房でオーバーホールしたものを買ったというのでそのまま組むことにしていた
「お兄ちゃん、お疲れ様。宇和島さんにアサイー君貸し出したからね。あ、そうそうもし買い手つかなかったらU35Hからおろしたエンジンは処分してくれって」
「おう、アサイー君は中型でパワーこそないけど結構ブン回るエンジンだから乗ったら新鮮だろう。最悪エンジンは処分だな。OK」
「そうね。ディーゼルであれだけブン回るのは新鮮かもね」
「そうだろうね。中型ってこともあるけど高回転の伸びが違うからね」
「そうだよね」
「そうだ、雅子、加藤運輸のトラック用ミッションの納入日がわかったら教えてくれ、それまで先にK-UA31Kのエンジン降ろしとオーバーホールやってるから。」
「はいよ。パワーショベルの部品は無いから鉄工所で作ってもらうしかないって。納期がどうも鉄工所が忙しすぎて出ないんだよ。」
「仕方あるまい」
「納期が出て部品がきたら修理開始ね。あたしは長野さんをおうち迄送ってくるね。いい子ちゃんで行ってくる」
「うん。よろしく。隆弘、エンジン降ろしやるぞ。雅子、気をつけて。鈴木さん達はBXD30の仕上げあと一息のようだな。終わったらK-UA31Kのエンジンスワップと板金を頼もう」
「ああ、BXD30は見違えるようにピカピカになっていたなあ。オーナーは時々見に来てニコニコだったよ。悟瑠、決めた。あのU35Hを俺が買うよ。さっきじっくり見たらちょっとあちこちに錆が来てるけど、モノコックの骨格部分は裏側からきちんと防錆処理してあって錆がない、かなりいい個体じゃん。水がたまるところに錆が来てるのはどうしても仕方ないってことだな」
「まったくこれだぜ。古いバスも良いんじゃねーか。総輪駆動のトラックとは違って。長野さんも欲しいけど置き場が全長10メートル超える車は無理って言ってた。言われてみれば隆弘たちの車は全部総輪駆動だな」
「そうだよ、俺の車って今は全部総輪駆動なんだよ。たまには純粋にそうじゃないのも乗ってみたくってな。10メートル超えても実家におけるよ。タフさんとTWD20改を売ったから場所が空いたんだよ。親父は最近のトラックはミッションとDPFの故障多過ぎるとか言って怒ってるよ。特に外資系のがって」
「そうなったらMTにするのがいいじゃん。まずはこのK-UA31Kからおろしたエンジンをしっかりオーバーホールするよ。隆弘は大型は生が良いんだろ。いじってパワーアップしたのをU35Hに乗せるよ」
「まあな。できればレッドゾーンまでビンビンブン回るディーゼルにしたいなあ。ラッシー君は高回転がパワーピークをすぎると伸びないから」
「わかったよ、PF6エンジンの低速トルクはレゾナターボのロングブランチインテークと隆文特製のエギゾーストのロングデュアルで稼いで、高回転はカムとポンプの噴射特性で勝負だな。ん?このU35HのエンジンはPE6に変わってるじゃん。それもK−の230psで2300rpmで最高出力出るやつになってら。ラッシー君のエンジンで高回転の伸びが欲しいならポンプをいじるよ。それとインテークの吸気干渉減らして効率アップするよ。8DC4のカムとポンプガバナー余ってるから。この前トラブって交換した8DC9をオーバーホールするついでに組み込んで積みかえればいいじゃん」
「ありがと。ってことはこの車はPE6Hに載せ替えてあるんかい?それじゃあU30Hじゃん」
「そう言っちまったらそうだな。じゃあこのエンジンのカムの減り方見ていいならPF6のカムをこのカムに入れ替えるよ、あ、後はポンプのガバナーも。どっちにしろポンプもオーバーホールすることに変わりないから」
「俺もやるよ」
「作業の前に宇和島さんにU35Hの引き取り手見つかったって言っとくよ」
「それもそうだな」
僕は宇和島さんにうちの隆弘が買うといっておいた、早くも引き取り手が見つかって喜んでいたのだった
「隆弘、エンジンは実力で265ps、トルクは90kgを目指すからな。リミットは2400rpm、出力は2200rpmから2350rpm迄ほぼフラットにしようとおもう。トルクは1300rpmから1500rpm迄フラット狙うよ。隆文。マフラー頼んだぜ。ポートも削って抵抗減らしてだな」
「悟瑠さん。任せてよ。兄貴。ロングデュアルでマニ割よりも静かならいいだろ」
「たのんだぜ。PF6なら低速トルクが欲しくてPG6にするほどでもないな」
「丈夫さとトルクの全域のバランスならPF6だろ」
「俺もそう思う。でなきゃあこんなに長く鉄道車両にも使われることはないよ」
僕と隆弘、隆文はK-UA31KからPF6Hエンジンを降ろしていた。降ろして見るとこのエンジンのベースはKC−のトラック用でバスは排ガス規制がK-と緩いので排ガス規制用の部品は取っ払われていた。
「これをやったのってまさかねえ」
「隆弘、やっぱり笠木工房だ、銘板が貼ってあるよ。ってことはU35Hもか?」
「ちょっと見てくるよ」
「悟瑠さん、笠木さんのところってエンジン載せ換えうまいですね」
「うん、笠木さんも結構やるんだよ。残念ながら設備が一つしか無いから台数出来ないって言ってたよ」
「そうかあ、残念」
と言っていると、隆弘が戻ってきて
「悟瑠。やっぱり笠木工房だったよ。ばっちり銘板があったよ」
「やっぱりなあ、素人にしちゃ道具がないのにうまくやってると思ったんだよ」
「だよなあ。笠木工房の車を整備したけど、水のたまるところをシッカリ防錆しているんだよね」
「そうだね。笠木さんにいつ手を入れたか聞いてみよ。それによってこっちの作業も変わるよ」
「そうだね」
僕は隆弘と隆文にエンジンおろしを任せて笠木さんに2台のバスにいつ頃手を入れたか聞いていた。
「笠木さんですか?佐野です。お忙しいところすみませんがちょっと教えて欲しいことが有りまして。今、お時間いいでしょうか?」
『はい、大丈夫ですよ。何でしょうか?』
「宇和島さんという方からK-UA31KのレストアとU35Hの引き取り手探し頼まれまして今進めてます。その途中で2台のバスに"笠木工房"の銘板見つけました。いつ頃手を入れたのかなと思いまして」
『ええと。多分2000年頃ですね。父がバリバリやっているころで、祖父が引退するかという時なので二人でやってましたよ。宇和島さんの方は色塗りは自分でやりたいからと言って祖父に習ってました』
「どうもありがとうございます。こちらでも手入れしますよ」
『よろしくお願いいたします。宇和島さんの息子さんですかね?本人は歳で維持できなくて手放したいって言ってました。息子さんの次男のほうは佐野さんと同じ県に住んでますよ。多分次男の方ですかね。上の方はバスとか大型に全く興味ないって聞きました』
「そうですか、どうもありがとうございます。」
電話を終えて隆弘に
「隆弘、20年くらい前だよ。親父が言うには笠木工房の建屋を新しくしたのはその頃っていうからこの2台のバスのレストアを宇和島さんがやっていたって言うならルーフかもな。20年もたてば錆びてくるだろ」
「そうか、それだな。みてみるか」
僕と隆弘、隆文は車を作業スペースに入れて、上から見てみた。
「予想通りだったな。ルーフは錆が結構出てる」
「笠木工房は屋根は外作業だからどうしても取り切れないのは仕方なかったか」
「まずはルーフを張り替えて防錆メッキして周りと同じ色に塗ればいいのか。U35Hも同じか」
「雅子が色の方針聞いてたはずだけど、ってことはU35Hも同じだな」
「兄貴、溶接は全部レーザーでしょ?違うの?」
「悟瑠、リベット再現?聞いてるか?」
「いいや、聞いてねーなー。錆の状況で決めてくれとは言ってたけど」
「悟瑠さん。雅子に聞くよ」
「隆文、責任者は僕だから聞いてくるよ」
僕は事務所に行って雅子に再生の条件を聞いていた。
するといいことに、K-UA31Kはルーフの部分はリベットの再生は要らないしそれどころか宇和島さんが防錆塗料で外板の対策はしているものの、あちこちに錆が浮いてきているので、できれば全面張替えて、塗装を塗る時じゃまになるリベットをなくしてほしいというだった。
それを聞いた僕と隆弘は防錆を重視して外板はルーフを含めて全面防錆メッキ鋼板に張り替えてレーザー溶接で仕上げることにしていた。
「工場長、BXD30仕上がりました。納得できる仕事ができました。全面リベットじゃないのが新鮮かもしれません」
「素晴らしいですね。ここまできちんと仕上がって。これはどこの色ですか?」
「オーナーさんもエアコンと、パワステとクラッチ、ブレーキのアシストに構内ですけど試乗して体感したら気に入ったと言ってくれました。色は許可取って夕焼け小焼けにしました。あっちはBXD50なんで長いですけどね」
「それはそれは。そうかあ。いいかも」
「このBXD30のルーフのベンチレーションがダミーになってるのは愛嬌ですね。天井は内側からフラットにしてそこにエアコン入れましたよ。オーナーさんは操作系のすべてが軽くなって乗りやすいのには脱帽してましたよ。後でじっくり乗りたいということで」
「そうですね。エンジンはDA640にターボの170psでもいいんでしょうが、新しい方がパワー出しやすいですよね。BXD30が積んだBG6Tは255ps/3000rpm 70kg/1700rpmにしてますから。6MTです。」
「速そうですね。すごい」
「鈴木さんが都合いいなら明日いつもの坂道に全開試験に行きますから同乗しますか?」
「はい、ぜひ」
「雅子、明日はいつものところに全開試験に行くからクレーン付きレッカーでついてきて。アジト発にするよ。鈴木さんはどの辺にお住まいですか?国道は違いますがそんなに遠くないですよね」
「さとみ小学校の近くです。テストに行く道の近くです」
「それでは、明日の朝に拾っていきます。近くのコンビニに6時半に来てください」
「はい。6時半ですね」
仕事が終わった後、雅子はクレーン付きレッカー、僕はBXD30に乗ってアジトに帰った。
「お兄ちゃん、BXD30がこんなに速くなって煙も吐かないんだよ。びっくりされそうじゃん」
「だろ。僕もびっくりさ。この内外装仕上がり。あの3人の仕事はすごいよ。オーナーも相当可愛がってるよ、このバスを。ここまでお金かけていいってびっくりだ」
「そうね。家一軒分は掛けてるんじゃない?BGエンジンもBXD30のエンジンルームにきちんと収まっているんだもんね。P-HTW12Kと同じ顔だからなんかね」
「うん、とにかくこの車はターボがいい仕事してるよ。液体式リターダーも付けたからいいかもよ」
「このへんの山坂道走るなら無いと不便だもんね」
「そう、排気とジェイクだけじゃあねえ。ブレーキは結構プアだし。いくらシューを高耐熱の物に張り替えたっていっても」
「そうかあ。明日その効果も確認だね」
次の朝、僕と雅子は早起きしてアジトからいつもの坂道に向かっていた。
「ええと。右に曲がってすぐのコンビニだよね」
『うん、そこでコーヒーでも買ってだね』
「そうしよう」
僕らが駐車場に入ってコーヒーを買って戻ると、ちょうど鈴木さんが歩いてきていた。
「工場長、事務長、おはようございます。」
「鈴木さん。おはようございます。それではBXD30に乗ってください。行きは僕が全開走行で確認します。帰りは鈴木さんが運転してみてくださいね」
「はい」
僕らはいつもの全開試験の登り坂を全開でぶっ飛ばしていた。ここはハットくんを調査したところでさすがにあの時は背中に6トンの荷物を載せていたので総重量が12トンになってて頑張っても50キロちょっとしか出なかった
ところがBXD30は総重量で8.2トンと軽いのと、6×6のハットくんと違って2WDで走行抵抗が少なく速いのだ
「速いですよ。この坂はBXD30のオリジナルなら喘ぎ喘ぎ40キロ出ればいい方ですよ。それが登坂車線に入らなくても制限速度+10キロで走れるんですね。あれ。重量積んでるんですね」
「はい、実は総重量に合わせて重量積んでるんで、大凡8.2トンです」
「すご」
「雅子、黒煙はどうだい?」
『全く見えないよ。それなのにこんなに速くっていいのって思っちゃうよ。お兄ちゃん、水温、油温はOK?』
「まったくもって問題ない」
無事に登り切ってデータも問題ないことがわかったので、ドライバーを鈴木さんに交代してお店に向かっていた。
「工場長。この車は排気も効くし、リターダーも効く。安心できていいですね。現代のバスと同じくらいの安心感ですよ」
下り坂を排気とリターダーを駆使して下っている鈴木さんが言う。
自分が直した車の試験なので楽しそうだ。
「鈴木さん。オリジナルのブレーキがプアなので補助ブレーキを強化しました。念のため高温に耐えるシューに張り替えていてもやばいかもしれないんで」
「はい、そう思います。ほんとにいい車ですよ。これにもラテリン入れたんですよね。すごく走りやすくなってます」
「そうです。各部のベアリングも120キロまで出してもいいようにグリスも換えました」
「オーナーさん大喜びですよ。良かった」
僕らは帰り道の途中のコンビニの前で鈴木さんを降ろすと、お店に向かった。
「悟瑠。OKだったようだな」
「うん、隆文の高精度排気ブレーキがいい仕事してるよ。マフラーも抜けがいいのに静かで」
お店に着くと隆弘と隆文が迎えてくれた。
「悟瑠さん。これはターボのおかげですって。高過給にしてるのがきいてますよ。排ガスはタービン回してエネルギー使い切っているんで勢いないですよ。僕としては楽でした」
「次は鈴木さんたちにはK-UA31Kの再生お願いするよ」
「悟瑠、俺と隆文と渡辺さんたちで見てたけど。骨の部分に錆がない。とはいってもどぶ漬けやり直すか考えどころだな」
「隆弘さん。予算はあるって。本当は2台のレストア頼もうとしてたんだけど、一台で済むからラッキーってことで。それに隆弘さんがU35H買うでしょ。その代金も投入して10年はメンテフリーで乗れるようにしてって」
「それなら外板全部剥がして、内装も全部剥がしてどぶ漬けだなあ」
「そうだな」
「床材も張り替えだろ」
「うん、床材も張り替えて欲しいって。木床じゃなくてできれば錆びないようにできるのがいいって。木床だとどうしても床の骨格が錆びるから」
「そうかあ。それはそうだな」
と言っていると、鈴木さんがお店について
「工場長、オーナーさんがすぐにタクシーでBXD30を取りに来るって私に連絡ありました」
「やべえ、重量おろさないと」
「私たちもやりますよ。3トン位手積みですか?」
「はい、手積みですから手分けしてやれば速いです。雅子。悪いけどオーナーさんが来てもいいように書類準備よろしく」
「はいよ。BXD30はエアサスにもしたんでしょ。後ろから見ててもフラットな姿勢のまんまでよかったよ」
「そう思ったよ。ピッチングもほとんどなくなってて」
「準備しとくね」
雅子は事務所に戻っていった。
僕らは6人で手分けして重量を降ろすと軽く拭き上げ納車の準備していた。
とりにきたオーナーさんはすっかり綺麗になってしかもエンジンを載せ替え、内外装もすっかり綺麗になっているバスをみて大喜びだった。
嬉しそうに後ろの右下に古いフォワー〇から剥がしたらしい6SPEEDというエンブレムを貼っていたのだった。
「佐野さん、ありがとうございます。これなら20年でも乗れそうです。何かあったらまたよろしくお願いいたします。」
「はい、作業した鈴木さんたち3人のおかげですから」
「逐一連絡して直すところを相談しながらやったので思い通りです。どうもありがとうございます。」
「良い仕上がりです。安いくらいです」
「いつでも整備しますから。よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
そう言ってオーナーさんは嬉しそうにターボの音を響かせて乗って帰って行った。
「手をかけた車との別れは寂しいですが、可愛がってもらえるんで嬉しいですよ」
「そうですね。鈴木さんたちにお願いです。早速ですが、このK-UA31Kの再生お願いいたします。このバスは笠木工房で再生をやってるようですが20年以上たってるんで外板は手入れしてますがあちこち錆が来てます。10年は錆びないようにというオーダーなので手入れよろしくお願いいたします。」
「はい。ところで丸松建設のパワーショベルのほうは?」
「それは僕らがやります。部品が欠品なので先に僕らはK-UA31K用に持って来たエンジンを整備します」
「そのK-UA31Kはどんガラにしてどぶ漬け、防錆メッキしてですね」
「はい」
僕らはその日から宇和島さんのバスのレストアにかかっていた。
「あれ?隆弘。このエンジンPF6THAって言ってたよなあ」
「ああ」
「ついてるポンプはPF6TBのだぞ。タービンは部番からするとTCだ。それに銘板はPF6THBの300psじゃん」
「なんだって?変なエンジンだなあ。いじろうとしたのかな?」
「そうかもね。いいことに電制だから噴射時期変更と噴射量を減らすのは簡単なんでセッティングやりやすくていいけどさ」
「そうだね。」
「雅子にちょっとエンジンどうして欲しいのか聞いてみるよ。依頼書みると外板張替、内装の木床を防水床、エンジンとミッションを持ち込みのをオーバーホールして載せ替え、U35Hはエンジン載せ替えか?隆文、錆止め何処までやるかだな」
僕は雅子に宇和島さんからエンジンパワーの要望を聞いてないか確認していた。
「エンジンのパワーは聞いてない。確認してみるね」
雅子に任せて僕らはエンジンばらしをやっていた。
「お兄ちゃん、宇和島さんから返事来て、トルクは120kgのままでパワーあがるんならできるだけ出るようお願いいたしますだって」
「はあ、まあいいか。あのミッションは135kg迄耐えれるからそっちでもいいんだけど。デフがオリジナルだから120kgにするか」
「悟瑠、出力は読みだとどのくらいかな?」
「トルクが85kg、240psと同じ比率にすればトルク120kgなら340ps位だな」
「それならいけるか」
「うん、ミッションが耐えれるからいいんじゃないか?あ、そうか。デフの能力考えたら120kgがギリかあ」
「そう言ったら獅子丸くんはいいのか?」
「交換したよ。UA452のデフに」
「え?」
「獅子丸くんはパン君を改造した時に135kgに耐えれるデフと入れ替えしたよ」
「ってことはパン君は?なんのデフだ?」
「RA552のデフだよ。150kgに耐えるから大丈夫だろ。ニイナちゃんはRA531のデフだよ」
「ってことはこのバス用のデフの在庫がないってことか」
「そうだよ。ちなみにゴーゴーくんはトラクターのデフにしてあるよ」
「さすがやること早いなあ」
「K-UA31Kのデフは110kgには耐えるから10%増しならいいだろうよ。僕の考えはトルクは120kgでやめて高回転のトルクを落とさずに340ps/2100rpmだと思ってるんだ」
「K-UA31Kに積むエンジンはそのくらいにするか」
僕らは突貫でPF6THBエンジンを仕上げていた。
週末、僕、雅子、隆弘、隆文と百合ちゃん、愛理沙ちゃん、哲史さんとそのお母さん、子供たちは雅子が経営するオフロードコースにいた。
なぜかというと、ここでTSカーのサスセッティングを詰めるためだった
僕と雅子はうちの積載車に4台のTSカーを乗せてきていた。
他には休憩室の代わりということで百合ちゃんが伊吹君、愛理沙ちゃんとその子供たち、哲史さん、母親はマーシーちゃんに乗って、隆弘と隆文はまゆかちゃんに乗ってきていた。
「この前はミニサーキットで確認したけど、今日はここで高速の確認しよう」
「走りながら温めて行ってくるね」
雅子たちは暖機走行にいってというか?半分過ぎたあたりから一気にエンジンを回している音が聞こえてきた。
「雅子たち気合入ってるなあ」
「ここはいいサーキットだろ。最高速近くまで見れるし、タイトのセッティングもできるし高速ステージならFの挙動もわかるよ」
「悟瑠さん。一周が6.5kmですよね。一回走らせてもらいましたけど運転の練習にはいいですよ.AE70でもいいようですが、マーシーちゃんで走るのが楽しいです。めいっぱいパワー使ってというよりも山道を模した区間をいかに失速させないようにすることが難しいかわかりましたよ」
「そうですね。マーシーちゃんのパワーならここだと不足かもしれません。そうなると一旦失速すると回復に時間かかりますからね」
「ええ。300psって聞いてましたけど、つかえる回転が広いんで楽でした」
「そうですね。山道ではパワーバンドの広い方がいいですから」
「俺もそう思ったよ。ラッシー君はハイ、ロー切り替えの5速なんだけどクロスしているところが使えると楽でいいよ。今日乗って来たまゆかちゃんは山坂を速く走ろうとするとパワー不足かもな」
「ですよね」
と駄弁っていると雅子が戻ってきて
「お兄ちゃん、ここっていいよねえ。タイトなこの前のミニサーキットからSみたいなアップダウンのあるサーキット、Fみたいな高速サーキット、Tみたいなテクニカルコースセッティングしたいところに合わせて走れるからこのセッティングだとこうなりそうって一発でわかる。1周が長いから見たいところに戻るのに時間かかるけどね」
「まあ、雅子は詰め込んだからねえ」
「欲張りだったかもね。初戦はTだから高速と言うか中速で勝負ね。バックストレッチ前のヘアピンが勝負なんだもんな」
「セッティングはこれでいいと思うけど。もうちょっと練習してくるよ。燃料よろしく」
雅子の言う通り、TSカーレースの初戦はTだ。そこでいい成績を取るためにセッティングを見つけていた。
雅子は燃料を補給して車を点検するとまたコースに戻っていった。
「悟瑠、ところで俺のラッシー君は310ps?」
「320psの110kgだ。吸気は左右のバンクでわけた等長、排気は親父特製のマニ割と隆文のロング中間パイプだろ。カタログ通りのパワーにしてあるよ」
「悟瑠さんってすご」
今度は愛理沙ちゃんが戻ってきて
「初戦はTですからもうちょっと曲がるセッティングにしたいんですよ。高速なら安定しててガンガン踏めるんですけど100Rが最大のところだとタイトで追い込むとドリフトさせてもアンダーで止まっちゃうんです」
「そうかあ、LSDのロック率高いのに代えてみようか?初期はアンダー出るから荷重移動しっかりさせてターンイン、うーん。ちょっと待てよ。バンパーラバーか。車体の剛性あげたからトラクションがかかりすぎてプッシュされてアンダーみたいな感じだな」
「悟瑠さんはどうすんですか?」
「ちょっと待って、バンパーラバーにちょっと細工する。元からこのサスは縮みのストロークをたっぷり取ってがっちり踏ん張るようにしてる。後ろを少し短めにしてみよう。縮みを減らしてか。説明するね」
「はい」
「愛理沙ちゃん。後ろの縮みのストロークをちょっと切ってみるよ。追い込んだ時に後ろの荷重移動おおくして回り込むようにする。ちょっと時間かかるから控用の伊吹君で待ってね。哲也くんと愛美ちゃんと遊んでて。20分くらいかかるから。」
「はい。オーバー方向のセッティングですね」
愛理沙ちゃんは、ヘルメットを脱ぐと伊吹君に向かって行った
「隆弘、手伝ってくれ。後ろのバンパーラバーに噛ませ物して効果をみる。いいことに別置きだから両面テープで貼ってみたい」
「高さは?」
「まずは10mmゴムウレタンで。後ろ側ね」
「いいよ。あげておく、作ってくれ」
「ホーシングに貼るから周辺の脱脂も頼む。ガムテで補強しておきたいんだよ」
「OK」
僕は持ってきていた発泡ゴムを切って脱脂すると両面テープを貼っていった、隆弘はジャッキで持ちあげてブレーキパーツクリーナーで脱脂していた。
ホーシングに両面テープで貼り付けてガムテを使って補強すると地面におろして念のため隆弘と哲史さんにトランクに乗ってもらって当たる位置が合っていることを確認していた。
「僕が愛理沙を呼んできますよ」
「お願いいたします」
と哲史さんが愛理沙ちゃんを呼びに行ってると今度は百合ちゃんがコースから戻ってきて
「隆弘、悟瑠さん。もうちょっとなんて言うかステアリングの遊び減らせないですか?結構ふらつくんで」
「見てみるよ」
「隆弘、あげようか」
「ああ、百合。降りて伊吹君で休んでて。セッティングするよ」
「お願いします」
僕が百合ちゃんのKE55をジャッキであげ終わると、愛理沙ちゃんが来て
「悟瑠さん、ありがとうございます。お兄ちゃんが燃料を補給したとか」
「しておいたよ。いつでも走ってOKにしておいた。」
「愛理沙ちゃん。挙動が急変してるとかあったら言ってよ。セッティング変えるから」
「はい。悟瑠さん、お兄ちゃん、ありがとう」
愛理沙ちゃんがコースに復帰していった。
「ああ、やべえ。悟瑠、百合、KE55はタイロッドエンドがガタガタじゃん」
「隆弘。ギヤは?左右にハンドル切るから音を聞いてくれ」
「そうだな。悟瑠ちょっと頼むぜ」
僕は運転席にいってハンドルを素早く左右に切っていた
「うーん、結構ガタガタいってるなあ」
音源探査機を耳に当てて音を聞いていた隆弘が難しい顔して言う
「隆弘、重症?」
百合ちゃんが心配そうな顔して言う
「うん、百合。ステアリング系統全体に結構きてるよ」
「隆弘、交換しようにも部品は今ここにはないよ」
「百合には悪いが今日はリタイヤだなあ」
「本番でないのが幸いだったな」
「そうだな」
「百合、悪いが今日はリタイヤだよ。早く見つかってよかったけどステアリング系の部品に異常が出てる。アジトに帰ってばらさないとわかんない」
「そうなんだ。わかった。今日はリタイヤね」
「レースの時じゃなくて良かったんだよ」
「うん、そうね。レースでリタイヤよりもはるかに良かったってことよね。ポイント取れないってことにはなんないもんね」
そこに隆文がコースから戻ってきて
「兄貴、初戦はTだからいいけどFの時はもうちょっとスタビリティーあげないとアクセル踏めねーよ。高速で尻がブリブリ来るよ」
「そうか、仕方あるめえ」
「今日はここで俺たちが参戦するサーキットのほとんどをみれるから現地に行って最終確認だけで済みそうだ。レギュレーション変わってもいけるよ」
「そうか。良かったな」
「今日はこれでOKってわかったから初戦はこのセッティングでいく。今年は全勝が目標だ。喉かわいちまった水飲みてえ。兄貴、悟瑠さん、水飲んだら車を積む準備しとくよ。初戦に備えてエンジンとミッションをオーバーホールして、サスとか駆動系のベアリング交換だな」
そう言うと、隆文は積載車の方にTSカーを運転していった
「全く、隆文みたく何も考えないで気合で行けてるのもいいかもな」
「隆文らしいぜ。ええと。残るは雅子と愛理沙ちゃんか」
「あ、愛理沙ちゃんが戻って来たよ」
「悟瑠さん、どうもありがとうございます。このセッティングならいけそうです。前のはFならいいんですがTだと安定しすぎて曲がんないですね」
「ちょっと、フロントに寄せすぎかもしれない。後ろにビルトインロールバーブレースとホイールハウスブレース入れたから力が上手く左右に分散してるんだろうな」
「悟瑠さん、そのおかげで乗りやすくなりましたよ。とにかく後ろが踏ん張るんで高速になっても安定してて安心できます」
「よかった。この特性のバンパーラバーを作ってもらうんでまたテストに時間作ってこよう」
「そうですね。車を積載車に積んだらバーベキューですね。雅子先輩と百合先輩って食べることになると抜けがないんですもん。お腹すいたって言いますよ」
「そうだね。あ、確かにお昼にはいい時間だ。レースで走るにしても連続で2時間は走らないからね」
と言っていると雅子がコースから戻ってきて
「お兄ちゃん、初戦はこれでいく。初戦までにボディーの傷みを見て周辺部品のリフレッシュすればいいのね」
「そうだな。エンジンもオーバーホールだ」
「うん。ミッションもでしょ。あたしは車を乗せて、その後はみんなでバーベキューね。ああ、お腹すいちゃった。良い緊張の後なんでご飯が進みそう」
そう言って雅子は隆弘や百合ちゃんとTSカーを積載車に積んでいた。
僕と愛理沙ちゃんは雅子の言うことを聞いていて、噴き出しそうになるのを必死にこらえていたのは言うまでもない。
全員がTSカーを積載車に積んで、その後はみんなでバーベキュー施設を借りて楽しんで帰って来た。
雅子と百合ちゃんが呆れるほど食べていた
週明けからは僕らは部品が来なくて滞っていた加藤運輸のトラックとトラクターのミッション載せ替えと公認をやっていた。鈴木さんたちはK-UA31Kの外板チェックしていた
「工場長、やっぱり防錆鋼板って言っても2000年あたりのはちょっと防錆力が甘いですね」
「だよなあ。隆弘も気が付いていたけどあちこちに防錆塗料塗った跡かあるとか言ってた」
「ですよね、オーナーさんの要望は全部張替ですか?」
「うん、このバスを相当気に入ってるようで、U35Hを手放しても費用捻出するみたいですよ。リベットじゃないのがいいとか」
「わかりますよ。鉄板に溶接よりも部分的に熱が入るんでヘドる時があるんです。スポットならリベットほどなら入りませんからね。かなり丁寧に鉄板を鍛え直してますが時間かかりますからね」
「そうだって親父が言ってたなあ。うちの自動鉄板鍛錬機はその効率アップのために作ったって」
「ですよね。車内の床も防水仕様に張替ですよね」
「はい、それでお願いします」
「突貫でやりますよ」
僕らはたまたま小型の車検や点検がその週来ないのでアルバイトくんや新人君たちには鬼丸君、五平餅のエンジン載せ替えをやってもらっていた。
週が明け、僕らは鬼丸君、五平餅のエンジン載せ替えを終えて納車、加藤運輸のトラックとトラクターもミッション載せ替えて納車して別のお客さんのオーストラリア仕様のR31セダンの再生をやっていた。
これまた希少なRB30E+5MTを積んだ個体で既にメーターは20万キロを超えていた。
その週末の金曜日が終わろうとしたときに高尾さんがバス2台でやってきて
「佐野さん、実はこの家内の9メートル大型バスの引き取り手探してほしいんです。実はMK116Jのいい個体があって買わないかといわれているんです。オーナーが9メートル大型バスの整備工場が佐野自動車販売と笠木工房ってわかったらMK116Jをうちに是非つかってほしいということで。家内も幅が狭くてデフにLSDが組んであって冬に楽なMK116Jがいいと言い出したんですよ。うちって管理者いなくて1台しか持てないのでやむなくですけど9メートル大型バスを手放すんです」
「わかりました。探します。欲しい人はいるはずですよ。この前のミーティングの時はそんな話はなかったようですが」
「ええ、その後でうちの製油所を見学しに来た方が9メートル大型バスを丁寧に使ってるのを見てここなら安心ということで話が来て、MK116Jを試乗もさせてくれました」
「そう言うことですね」
高尾さんは奥さんと件のMK116J、9メートル大型バスに乗ってうちのお店に来ていたのだった。
「悟瑠さん、9メートル大型バスは俺が買います。DA100Dは悟瑠さんがラテリン入れてフレームも補強してあって安定良すぎで練習なんないですよ」
「確かに9メートル大型バスはラテリンは入れたけどフレーム補強入れてないからね」
「佐野さん、MK116Jの整備お願いします。それと定員を29人乗りに変更お願いします。エンジンのターボ化とボディの錆と。9メートル大型バスはMK116Jが完成したら交換しに来ます。今日はこれからお隣の県のミーティングに前泊で向かいます。9メートル大型バスは僕としては最後の出品です。試乗会もあるんで提供します」
「承知いたしました。喜んで」
MK116Jの整備作業を請け負った僕らだった。
車から離れて疲れをいやした悟瑠たちの次の仕事もやっぱりエンジンスワップとボデーの錆取り
隆弘と隆文も古いバスを買って始まるバスライフ
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
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すみませんが10月中まで本業多忙で更新が不定期になります
次回は出来上がり次第投稿します




