第六十四話 オフロードコースの進化と爆走する大型総輪駆動
改修していたオフロードコースが完成。ミニサーキットになってしまったところをガンガンぶっ飛ばす雅子たち
主な登場人物と所有車
佐野 雅子 ヒロイン 24歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、8勝目にトライ中。
家業の佐野自動車販売の中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーの経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許、2級整備士免許、危険物乙4、玉掛、ガス溶接、救急救命士
レース以外の趣味:
オフロード走行:大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車
バス:
観光系 ルーシーちゃん
路線系 獅子丸くん
短尺系 ニジュちゃん
エムエム君
大型総輪駆動 4×4
ダンプ 藤子ちゃん
大型ボンネット 4×2
ダンプ カービーちゃん
小型車
クーペ イチゴちゃん
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 27歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許
カーキチ、スペックオタク
所有車
バス:
観光系 ゴーゴーくん
ロザン君
なごみちゃん
路線系 パン君
ニイナちゃん
キューピーちゃん
フーセンちゃん
大型総輪駆動 4×4
ダンプ サイバー君
小型車
セダン サンゴちゃん
三四郎君
加藤 隆弘 27歳
悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染。
所有車両
大型総輪駆動 4×4
ダンプ ラッシー君
小型車:
セダン エスティーくん
加藤 隆文 24歳
隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。
所有車
大型総輪駆動 4×4
ダンプ まゆかちゃん
クロカン4×4
ロング ロックン
趣味:TSカーレース
松尾 百合 24歳
雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。
所有車
バス:
観光系 武蔵君
ラムちゃん
大型ボンネット総輪駆動 4×4
ダンプ パイ君
大型ボンネット 4×2
ダンプ 徳次郎君
小型車:
軽4輪 エッちゃん
現在は丸松運輸の副社長 TSカーレーサー
松尾 譲 26歳 百合ちゃんの兄 丸松建設の副社長
所有車
バス:
COE ビーフさん
大型ボンネット 4×2
ダンプ 旦那さん
大型ボンネット総輪駆動 4×4
ダンプ ゼットワン
小型車:
HT KE70
小笠原 愛理沙 23歳 TSカーレーサー
雅子の同じ学校の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長。2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務 大型免許所持
所有車
小型車:
セダン GXE10
バス:
観光系 ババロアちゃん
大型総輪駆動 4×4
ダンプ フライヤーちゃん
小笠原 哲史 26歳 愛理沙の兄。別の会社に勤めているが家業に転職検討中
所有車
小型車:
セダン AE70
バス:
路線系 マーシーちゃん 6DB1⇒6D17T
長野さん 29歳。
バス会社に居たが欲しい車が排ガスの関係で住んでいる地域で登録できなくて雅子がいたスーパーに転職。今は愛理沙ちゃんの上司
所有車
大型短尺系バス:
自家用 伊那路
190ps/2900rpm 52kg・m/1700rpm
観光系 五平餅 6D14⇒6D15
175ps/2900rpm 46kg・m/1800rpm
路線系 鬼丸君 6DB1⇒6D16
190ps/2900rpm 52kg・m/1700rpm
小型車:
クーペ NE
狩野さん 29歳
運送会社にいたが首都圏の事業縮小で地方に転勤になったが偶然募集していた松尾建設に転職
所有車
6×4ダンプカー
V10 古武道君 V22C⇒V25C
450ps/2200rpm 165kg・m/1400rpm
V8 福田屋君
355ps/2200rpm 135kg・m/1400rpm
小型車:
EHT ND
月曜日、会社に行くと
「悟瑠、雅子。DA640エンジン予備とかあるかな?見たらブロックがやばいんだよ。ロア側が開いてる」
「親父、6BGにするのがいいと思うよ。DA640のブロックは在庫無いよ」
「だよなあ、オーナーに言って6BGに交換だなターボなら200psいけるか?」
「もちろん、雅子、ハットくんは255psの70kgだよなあ」
「うん、6BGならうちに在庫あるよ。ハットくんと同じくらいまでなら」
「インクラとオイルクーラーもOKだな」
「うん。ハットくんと同じメニューにすればいい」
「俺がオーナーに言うよ。綿貫さんのエンジンもオーバーホールしてか。タフさんの公認よろしくな。そうだ。先輩から依頼が来たぞ。明日U-FL417Fに6D17エンジン積んで乗ってくるってさ」
「はーい」
僕らは仕事を貰えてうれしいのとちょっと休みが欲しいと思っていたのだった。
月曜日は綿貫さんのエンジンばらしとBXD30のボディの整備していた。
在庫の6BGエンジンはオーバーホールしていつでも使えるようにしておいたので注入するオイルを80度まで温め、一部ノズルの穴からオイルを垂らすとヘッド回りのボルト類を締めてオイルを注入して燃料を吹かないでスターターで回して各部にオイルを回していた。
ばらしておいた噴射ポンプを組み立てて、燃料系統を接続してエンジンを回す。
"フロロローン"と6B系独特の甲高い音を立ててエンジンが目覚めた、"カラカラ"と乾いたアイドル音を響かせてエンジンが回っている。
アクセルを煽ると"フロロローン"となかなか調子音を立てて回る。
「親父、6BGエンジンは問題ない。エンジンマウントにちょっと加工は要るけど問題なく乗るからいいだろ」
「おう、じゃあそれで行くぞ。依頼者もエンジンが無くて廃車はもったいないと言ってた。それに古い車はいいことにシンプルだから部品が全くなくても流用で何とかなる」
「うん、そうだね。いいことにこのエンジンって2000年代でも据え付け用で作ってたから部品があって助かる。メカガバナーでいいんだからさ」
「工場長、BXD30は一旦フレームとボディーを分けてフレームとボディの下側の錆取りしたほうがいいですよ。この車ってフレームのボディマウント取り付け部のところによく罅が入るんですよ」
板金職人の鈴木さんが言う
「それなら一旦おろしてボディとフレームの錆びを落としましょう。必要だったら防錆メッキとカチオンも掛けて新車並みの防錆しましょう」
「はい。一旦錆を全部落として、古いフレームの塗料全部剥がしましょう。その後は赤錆を黒錆に変換して防錆メッキすれば10年は錆の問題ないですよ」
「よし、それで行こう」
その日はBXD30からエンジンを降ろしてマフラーもおろしていたらそこで時間切れになった。
次の日、夕方ごろに今は漬物屋をやってる笠木さんが仮ナンバーをつけて6D17エンジン積んだU-FL417Fと奥さんと2台でうちのお店に来た。
「よう、康晴、来たぞ。そう言えばこの前TF30GDの他にもビッグの総輪駆動に乗ってきてたなあ、仕様はそれベースにできるか?」
「ああ、あれは悟瑠のKC-CF53XH改ですよ、これに近いのはうーん、ここには無いなあ。みんな大型だし」
「パパ、百合リンが乗ってた美浜ちゃんならあるよ。元々4トン車だし」
「そうだな。雅子。脚のデータはあるかな?」
「うん、データあるよ。脚はそれをベースにすればいいかも。重量やホイールベースもほとんど一緒だし。フロントはウレバンだから大きなエアタンク要らないよ。鉄子ちゃんの脚でもいいかも。あ、でもボンネットか。重量配分が違い過ぎるか」
「お、それ良いかもな。任せる。どっちでもいいぞ。この前来たTF30GDくらい伸びる脚にしてくれ。見積もりよろしくな」
「はい、では先輩。頑張りますんで」
親父がそう言うと
「そうだ。せっかく来たんだから隆と隆義も呼んでいっぱいどうだ?」
「そうですよね。そう思って隆義と隆には今日は仕事入れないで空けておけって言っておいたんで大丈夫だと思います」
「よし、康晴。飲みに行くお店は康晴に任せる。今日は駅の近くに泊るんだ。というかここの工場は駅に近いのにこんなに広いんだな」
「先輩。俺がここを買ったときは何もなかったんですよ。隆義と買ってここで整備工場やって、隆義は運送会社とエンジン整備やって。なぜか俺の方は中古車屋が本業になってしまったけど」
「まあ、よくあることだな」
「ここへんのお店が10年くらい前にほとんど撤退してその後空き地だったんで追加で買って大型もできるようにしたんですよ」
「そうか、小型系は山の方か?」
「はい、そっちでも。ここでやれればここで、入庫の台数多くて無理なら山の方でもやってます。荷台の木の床はあっちじゃないと。難燃剤の含侵装置はもって来れなかったんですよ」
「おお、そうかあ。今日は飲みながらもっと話そう」
「はい、先輩。お店に案内します。おーい、悟瑠、雅子。悪いが今日のこのあとのお店よろしくな」
そう言うと、親父たちはお袋が運転するいい子ちゃんで飲み屋に行ってしまった。
「悟瑠、U-FL417Fの脚だけはアジトでやったほうがいいなあ」
「ああ、リーフスプリングをいじる設備はあっちが充実してるからなあ」
このところ、メインの取引先の加藤運輸のトラックがほとんど総輪エアサスなので、リーフスプリングをいじる設備のベンダー等はアジトに持って行ったのだ
このU-FL417Fは記録簿を見る限り新車からずっと笠木工房のメンテナンスを受けていた様でフレームとボディーの錆まったくは心配なさそうだったのでフレームにリーフスプリング取り付け点をつけて、防錆塗料を塗るべくエンジンとサスペンションをおろしていた
僕と隆弘は鈴木さんたちにボディ、フレームを任せて、笠木さんが持ってきた6D17エンジンをバラしていた
「悟瑠、このエンジン結構手入れいいじゃん」
「そうだなあ。ヘッドカバー開けた限りじゃあオーバーホールしてあってそのまま使えそうじゃん」
「オイルパンの中を見て掃除してあったらこのまま使うか?」
「バルブスプリングの傷み具合見てだな」
「そうだな」
「後は、いつオーバーホールしたか聞いておくよ。1年以内ならそのままだけどそれ以上ならヘッド開けよう」
「そうだな、オイルが落ち切ってるだろうし」
一旦作業を止めて笠木さんにこの6D17エンジンをいつオーバーホールしたか聞いた。
『オーバーホールして半年経ってないですね。エンジンが入ってきてすぐにやってます。悟瑠さんほど各部の重量合わせはやってませんが±5グラムまでは追い込んでます。念のためフライホイールとクラッチカバーアッシーでバランス取りましたよ。フロントプーリーもカバーとフライホイールには白い線を引いてますので。吸排気のポート等はいじってないです』
「ありがとうございました。そのままU-FL417Fに積みますね」
『はい、よろしくお願いいたします』
笠木さんがオーバーホールして半年経ってないならそのまま使えるとわかって隆弘に言った
「笠木さんがオーバーホールして半年経ってないよ。しかもクランクプーリー、フライホイールとクラッチカバーアッシーでやってあるみたいだからそのままいけそうだ」
「それは良かったな。このエンジンは4Vが出た後のKC-だな。ってことはクランクのジャーナル径が太くなったやつだな。静かになっていいよ」
「そうだな。吸排気系をいじって実力で210psにすればいいね」
「そうだな。それならガンガン走れるだろ」
僕らはBXD30とB622B、U-FL417Fのレストアと親父のタフさんの公認資料作りでめいっぱいだった。タフさんはいいことに排ガス規制、騒音規制が始まる前の生産なので公認は換装したエンジンの出力アップに駆動系が耐えるか確認する強度計算書の提出だけで取れてしまったのだ。
他に入って来る通常の車検と中古車の納車前の整備は専用のスタッフに任せていたし、アジトの方にある工場もフル稼働に近くて、ここのフレーム修正機はBXD30とB622Bの再生で占領されていて鈴木さんたちは小型車の事故修理が入るとアジトの方に出張してフレーム修正機を使って修理していた。
BXD30とU-FL417Fのフレームの防錆処理が仕上がったところで僕らはU-FL417Fをアジトに運んでそこで脚をいじっていた。
「悟瑠。フロントは2枚リーフでメイン延長とロングシャックルだな。ウレバンアシストでいくんだろ」
「ああ、前はその通り。後ろはAアームのコイルでエアアシストだ。ちょっと前後のペラが短いからタフさんやサイバー君達よりはストローク取れないけどな」
「これに合うコイルばねも良くあるよな」
「バネ屋が特注で作ってくれるからいいよ。ストローク稼ごうとするとコイル+エアがいいよね」
「そうそう。リーフスプリングはどうしてもストローク取れないところ有るからなあ」
僕と隆弘は雅子のソフトで計算した結果の通りに作ったリーフスプリングと同型車のエアサスから流用したアーム類を使っていじっていた。
2週間後、何とか突貫でU-FL417Fの脚を作り上げて完成、エンジンスワップの公認も取ってはれてナンバーを取って納車のために雅子と二人でウッディパラソルにむかった。
エンジン回りは隆文特製の等長エギゾーストマニフォールドとロングデュアルマフラーで低速からフラットなトルクを目指している。
吸気系も特製のサージタンクとロングブランチを使って実用域のトルクアップを狙っていた。
僕は、雅子の藤子ちゃんを運転していた
『お兄ちゃん、やっぱり8リッターの生じゃあこの坂苦しいかな?同じ生のパパのタフさんよりも遅いよね、やっぱり全体的にトルクがないって感じね』
ハンヅフリーで繋いでU-FL417Fを運転している雅子のスマートフォンから連絡が来た
「そうか。実力で210ps出てるからいけるはずなんだけど。ってことはトルクが違いすぎなのかも。タフさんは120kgでこっちは56kg。それに車重が4トンあるからね。その分は重いかも。それにミッションのギヤ比もワイドじゃん。タフさんはハイロー切り替え6速だよ。クロスでパワーバンド外さないでしょ」
『それはそうよね。確かに3速、4速が結構離れてるわねえ。1.8くらいありそうね』
「ミッションはどうしようもないね」
『仕方ない。全開で回すよ。って言っても3000が限度かあ。4速でレッドの3200迄は無理ね」』
「ガバナー特製で無理かもね。それに黒煙対策で上は絞ってるよ」
『やっぱりね。でもハンドリングと乗り心地はめっちゃいい。これなら一日乗ってもOK。クラッチもアシストあって軽いよ』
雅子はエンジンを全開で回しに回して急坂を登って下りに入ると追加したリターダーをフルに使って下りきって、麓の街にあるウッディパラソルに着いた。
「こんにちは、笠木さん。書類ありがとうございました。U-FL417Fエンジン換装とサスペンション改造が終わったんので納車に来ました」
「おお、悟瑠君と雅子さん。よく来た。これかあ。早速いいかな?6D17にしたんだな。真っ赤なフレームとサスアームにリーフ。いいなあ」
待ち切れないのか?依頼主の親父の先輩がウッディパラソルで迎えてくれた
「悟瑠さん、納車お疲れ様です」
現在の社長の笠木さんが言う
「バッチリ仕上げましたんで、とにかく、乗って貰えればわかります。おろした6D16エンジンはどうしますか?」
「エンジンはうちが引き取ります。オーバーホールして販売します」
「悟瑠くん、早速のっていいかな?楽しみなんだ」
一通り車の周りをみて満足そうな顔していた親父の先輩が僕に声をかけた。
キャビンと荷台は要望通りのブリティッシュグリーンにしてある、排気管は泥濘やこのところ増えている冠水路でも立ち往生しないように煙突にして公認を取っている。
「はいどうぞ」
「行って来る」
そう言って乗るとすぐさま、親父の先輩はオフロードコースのモーグルに行く、ウッディパラソルの社長の息子さんが心配そうに父親の走りを見ていた。しかし全く問題なくクリアしてしまった。
次の3段腹も伸びる脚にものを言わせてタフさんと同じく難なくクリア。
戻ってきた社長の父親は上機嫌な顔で言う
「これはすげえよ。康晴の言うようにこの脚は上級者と言うか瞬間湯沸かし器の様に直ぐに熱くなつやつには不向きだ。熱くなって走ってハマったら救援するのやべえし、フロントのデフ迄ロックしたらひっくり返るまで行ける。フロントデフロックは脱出専用だな」
「どうもありがとうございます。良かったです。僕らはこれで引き揚げます」
「おう、どうもありがとうございました。康晴によろしく。これほどになるとは思わなかった。代金は見積もり通りか?」
「はい。父には伝えておきます。はい、見積もり通りです。では、失礼します」
僕らは雅子の藤子ちゃんでお店に戻っていた、その中で雅子が百合ちゃんの走りのことを言ってきた。
「百合リンって切れた時の走りってすごいわ。動画もらって全部見たんだけど。実況聞き逃したところなんて速すぎて隆弘さんが引きつってたよ」
「ああ、第5コーナーでしょ。対向車来ないとわかったとたんにインカットしてそのまま向き変えてドリフトしながら次のコーナー突っ込んでいったもんな。CN9Aのドライバーはなすすべなしで離されてて」
「そうそう、そのへんから先は舞由良が来てしゃべっちゃったからね。5連ターンのところなんて2つを纏めて扱っていくもんだからバラバラにクリアしようとする後ろはもう全然速度乗らなくて。見えなくなってるんじゃってくらいの差がついたよね」
「そうそう、見せ場は最終コーナーだったよな。完全に4輪ドリフトのままでクリア。ギャラリーは度肝抜かれてたもんなあ」
「そうだよねえ、眼の前でCN9Aのドライバー目の前で見たら絶対に自信無くすね。って言うか舞由良が弟に動画を見せたっていってたなあ」
「どうだって?」
「見ててレベルの違いにがっくりだったって」
「だよねえ」
「無謀って分かれば良いよ」
「ほんとそれ」
「百合ちゃんの腕も上がったなあ。隆弘があんなに切れたように飛ばしてもスムーズさを保ってたって言うからなあ」
「そうね、やっぱりここ最近は6×4トラクターで3軸トレーラーダンプばっかり乗ってるからかなあ?」
「そうかもなあ、重いから丁寧に走らないとヤバいもんな」
「そうよね。あたしもうかうかしてらんない。練習あるのみね」
「そうだな。今日もホームの高速の方にルーシーちゃんで練習行くのが良いよ。紙コップに水入れて」
「そうしよ。お兄ちゃんってこっそり通勤のときにやってるんだもんなあ」
「あははは。ばれちゃあ仕方ない」
「みんな、こそっと練習ね、油断してたわよ。仕事でも練習になる百合リンや愛理沙には負けてらんない」
そういいながらお店に戻ると百合ちゃんが来ていた
「百合リン、どうしたの?修理?」
「雅子、急だけど明日都合いいかな?例のコースの改修終わったんだよ。いろいろあって1周6.5キロのコースは先々週辺りにも言った通りターマックになっちゃった。やっぱり泥んこで作ると維持費が半端ないって。パパの見立てだからはずれないよ。許容軸重は16.8トンにしたから、大型車でもバンバン走れちゃう。路面は普通の舗装だよ」
「明日、見に行くよ。オフロードは?」
「オフは3.7キロ。これも場所の関係で8の字。ターマックの内側に作ってる。クロスの橋が並ん出るのは愛嬌ってことで」
「そうなんだね。行ってみるよ。悪かったわね。百合リンにおまかせしちゃって」
「良いわよ。あたしの方の理由で改修だから。そうそう、来月のミーティングに間に合ったわよ。オペレーターの訓練には最高ね。それから、愛理沙の会社と共同でうちで新しく買った本社敷地内にBDFプラント立ち上げるの。愛理沙の会社って商業地みたいでプラントは危険物は少量じゃないと駄目みたい。それに今事業拡大であちこちでお弁当デリバリーやってるでしょ。お店で出る使用済み油が処理しきれないんだって。それなら近いうちの本社でやればもっと多く処理出来るって言うことで」
「BDFを外販するのね」
「うん、しても、雅子のところとせいぜい隆弘さんのところね。殆どがうちの重機と愛理沙のところのトラックと雅子のところで消費かも。今は処理が間に合わないって言うことで現場で加熱処理とフィルターで濾すだけで使ってる。食品カスが取り切れなくて燃料のプレフィルター結構詰まるけどね。それなんでパパが先走って作ってるんだよ。本社の隣の工場が閉鎖されるって聞いてすぐに買っちゃって」
「百合リンのせっかちなのはお父さんににちゃったのね。わかったわよ。うちも結構使うからいいかも。このところ高速でトラックの立ち往生の救援要請増えて2台のレッカー車が出動しっぱなし。うちのパパと隆文がほとんどお店いないで救援ばっかりなんだもん」
「そうなのね。いい機会じゃん。明日みんなを誘って来てね。ストレス溜まっててガンガン走ったりしてね」
「ガンガン走るのはママの方よ。知っての通りドリフトやってたし」
「そうよねえ。じゃあ明日9時に現地集合よろしくね」
そう言うと、百合ちゃんは6×4トラクターに乗って帰っていった。
「百合リンってここに来るだけでもスムーズさを鍛える練習出来るんだね」
「そうだな。このところ大型でくるもんな」
「この差はでかいわ。あたしも帰りからコップに水練習しよ。こぼさないで走ってみよ」
「雅子、それなら念のため外にはこぼれてもいいようにしたほうがいいよ。バスはイチゴちゃんの3倍は揺れるから。トラックなんて5倍は揺れるよ」
「そうかあ。お兄ちゃんのシートの加工が上手だからなのね」
「藤子ちゃんはエアクッションとキャブサス入ってるから。とはいっても共振のところは仕方ないって、カービーちゃんはサスペンションシートだけだな。カップフォルダーのところには何も無いからあふれるよ」
「そうかあ。ホームグラウンドでの練習はルーシーちゃんにしよう。それなら何往復してもバス会社の新人が山坂道の走り方の練習してるようにしか見えないでしょ」
「そうだ、それに制限速度守ってスムーズに走るんだからそれは問題はないよ」
「決めた。そうする」
その夜も雅子はルーシーちゃんに乗って練習に行った。僕もゴーゴーくんで同じように練習していたのだ。
百合ちゃんが来た次の日、お店を臨時休業にして朝9時前には僕と雅子、隆弘、隆文、親父は雅子と百合ちゃんが共同で経営するオフロードコースの門の前に集合していた。
既に百合ちゃんと狩野さん、譲さん、百合ちゃんの父親の隆さんが来ていた
それに愛理沙ちゃんと哲史さんも愛理沙ちゃんの二人のお子さんを連れてフライヤーちゃんとマーシーちゃんに乗って来ていた
「みんな。来てくれてありがとう」
「百合リン、工事ありがとうね」
「いいのよ。このところの人手不足で工事が減ってて生コン業者も材料の在庫抱えてて困ってたんだよ。期限切れで捨てないといけないようなコンクリート材料があったから全部買ったのよ、そしたらおまけしてくれたの。おかげで結構安く手に入ったから許容軸重あげちゃった」
「そうなんだ」
「橋の鉄骨は工事が中断してこれもばらして捨てるしか無くて困ってた業者から買い取って使ったの。耐荷重50トンにしてるから大丈夫でしょ。このターマックコースはダンプとか、トレーラーのドライバー育成でも使うのよ」
「百合リン。このコースを加藤運輸も使いたいって言ってた。貸すけどいいよね」
「うん、ってことでまず走ってみてね。コースのレイアウトは複雑だから気を付けて。直すところがあったら言ってね。雅子の設計と悟瑠さんの考えで大体作ってる」
「うん。ありがと」
「それに走る順番はパワーがある車が先ね。トップはサイバー君、次が藤子ちゃんでタフさん、ラッシー君、パイ君、フライヤーちゃん、まゆかちゃん、ゼットワン、鉄子ちゃんの順番ね。念の為、哲史さんは最後尾からゆっくりマーシーちゃんで来てね」
「みんな。ないと思うけど。コースアウトには気を付けて」
先頭の僕が慎重に攻めていく。案内図の通りに走って行くが逆バンクもあったりでテクニカルコース的なところがある反面、登り坂になってるストレートは距離こそ短いが全開で走れるコーナーでつながっていて、結構速度が乗ってしまう。
「うーん、最終手前にはシケインがいるかもなあ?速度が乗りすぎる」
実際にその通りで僕の運転するサイバー君では8ナンバーの特車でリミッターがないとはいえ、登り勾配でも100キロはゆうに超える。
しかも、ストレートの終わりはフラットになっていて、普通の路面なのでサーキットとは違って滑るのだ。
「百合ちゃんに言っておこう。リミッター付きなら90キロだけど排気とかリターダーないとストレートエンドのペアピンコーナーの突込み一発でフェードするなあ。そのまま下りの連続コーナーで行っちゃいそう。なるほど、ここにはサンドトラップありかあ、良いかもな」
僕のサイバー君でも5周も走るとブレーキが怪しくなって来るのでスローダウンして冷やしていた。
1周冷やしてコースから出るとタイヤの状態を確認していた。すると雅子の藤子ちゃんが戻ってきて
「ここはドリ車とかサンゴちゃん、三四郎君で走ってみたいなあ」
「サンゴちゃん、三四郎君で走るなら後半のストレートにシケイン作んないとヤバいよ。あの登り勾配でも200キロば超えちゃうよ。コーナーはせいぜい100キロ。トラックはでないから良いとしても」
「だよねえ。安全考えたらシケインかなあ」
と言ってるとみんなが続々とコースを出て駐車場に集まってきた。
「百合ちゃん、すっごく良いコースだよ。これは楽しいし、大型車の練習にはもってこい」
降りてきたみんなが口々に言うのを聞いて百合ちゃんが嬉しそうに
「そう?ありがとう」
「百合リン、大型は良いけど、サンゴちゃん、三四郎君みたいな車で走るならシケイン要りそうだよ」
「雅子も?実はあたしも走ってそう思った。パイ君でも100キロ近く出ちゃうもんね。そのへんは対策するよ。念の為、用地はあって後半のストレートの真ん中よりちょっと先にシケイン作るよ。大型はっていうかリミッター付きは最高速のままでも行けるよ」
「そうなの。やっぱりバスとかはヤバいもんね」
「うん。安全考えたら全部シケイン通したほうが良いかもね。50キロくらいまで落とすような」
「そうだと思うよ」
「雅子、やっぱりシケイン設定ね。バリア置いて万が一通過してもいいようにしておくわよ」
「そうね。そのほうがいいわね」
「明日から突貫でやるよ。次回のミーティングに間に合わせるから。安全優先よね」
「ダートも走っていいんだよね?」
「もちろん、あのトンネルくぐっていくとダート。そこは最高速70キロの設定なんで速度は乗らないと思うよ。トンネルの高さ制限は4.5メートルよ」
「百合リン、ダートね。ふへへへへー、楽しみ」
雅子がいたずらっ子の顔になって藤子ちゃんに乗り込むとさっさとトンネルをくぐってダートコースに行ってしまった。
僕も追いかけてダートを走る、ここはまさにテクニカルコースで最初の方は各コーナーの曲率が小さいので加速力の小さい大型車では僕のサイバー君がいくら520psといっても短いストレートと登り坂では加速しきれるものではない。
高速コーナーが多い下りに入ってもわざとなのだろう、大橋ジャンクションのように曲率を変化させて一定舵では曲がれないようにしてある。
その辺は隆弘がコース設計に携わっていただけあって安全のために高速コーナーながらも速度が乗らないようにしてある。
「隆弘やるなあ。これは上手い」
ついつい、独り言が出る。
高速コーナーの終わりは15%の登り勾配でしかも先は最初は緩めだが更に20%の登り勾配になって終わりには直角に近いコーナーが配置されている。
その先は更に登り勾配がきつくなって30%勾配の大Rコーナーだが、大型車では空のトラクターでもせいぜい50キロ出ればいい方だろう。
登り切って下り勾配に入るのだが、それこそ各コーナーの曲率が小さくとにかく速度を出せない。排気を使って下るが入って3速がいいところの位の某峠の旧道のようにコーナーの中にシケインがあるような構造でこれまた速度が出せない
下りきったところにちょっと長めのストレートがあってコースへの出入り口が作ってある
ストレートのエンドは40%の急こう配できついコーナーが待っているが減速しやすい。
3周ほど走って駐車場に戻ると、ほかの車も戻ってきていた。
戻って来た隆弘に声をかけた
「隆弘、やるなあ。ここまで走りにくくて速度が乗らないコースは初めてだよ」
「楽しんでもらえてよかったよ」
「隆弘さんの設計でしょ。上手よね」
「でしょ。あたしもお願いしてよかったと思ったの。ターマックは悟瑠さんの設計相当入れたんだよ。リターダーを使わないと多分1周でブレーキ終わっちゃうかもね。シケイン入れるよ」
「安全考えたけど。結構速度乗っちゃうかもね。ダートは地形を上手く使った構造で良く作ったよ」
「できるだけ、忠実にやってみたんだけどね。上り勾配で失速させないと雨の日止まらないでしょ」
「そうなんだよな。結構考えたと思ったよ」
「百合。これいいコースだよ。相当考えたね。確かにターマックはシケインいるよな。ダートはとにかく速度が乗らないように設定してるよ。コース設定がうますぎだ。もっとパワーある車で走りたいって思ったよ。ちょっとミスると失速する。うまい」
そう言うのは百合ちゃんのお父さんだ
「おう、隆の言う通り走りにくいでも、これは旧車大型乗りにはいいコースだよ。パワー使い切って速く走るって爽快思う位のたのしさがある。ターマックはやっぱり最終コーナーのところにシケインいるなあ。リミッターあればいいけど無いと大型でも120超えるぞ。俺のはターボ無いけど6速ふけきりだ」
「やっぱりそうなのね。パパ。明日から緊急工事いいかな?2週間で仕上げるから。路盤は作ってあるんだよ。その上に砂利盛してアスファルト敷いてご通過防止つけるよ」
「いいよ。最大のストレートが登り勾配8%とはなあ、鉄子ちゃんのパワーだと4速ふけきりで5速じゃ加速できないから安全だなあ」
「大型車前提だからね。悟瑠さんのサイバー君はなんのそのって感じで走ってたよね」
「520psは伊達じゃないってわかったよ。総輪駆動にはもったいない位のパワーで」
「そうだな。今日俺はタフさん乗ってわかったよ。タフさんは設計が70年代でどうしても100キロはきついよ。悟瑠は相当加工して対応してるようだけど、よくわかるよ」
「へえ、康晴、そうなのか?」
「うん、これは隆義が自分で乗るってとっておいたんだが結局俺に売ったんだよ。設計が古いのはどうしようもないよ。どこか剛性が足りない」
「そうなんだ。まあでもいいか。鉄子ちゃんは1950年代が原設計だからかなあ、高速域はほんとつらいって感じだな」
「70年代でもそんなもの。最低限80年代の設計じゃないと無理だな」
「そうかあ、いい車ったと思ったけど。高速乗んないからいいかあ」
そう言っていた百合ちゃんのお父さんだった。
「まゆかちゃんのパワーじゃあここは横向けるのむりかあ」
「隆文、おめえは何でも横向けるんだからよ」
「きゃははは、隆文らしいね。藤子ちゃんくらいのパワーなら結構いける。でもね。熱くなるとやばいかも。リターダーをフルに使って走ったけどさあ、水温もあがってやばいって思っちゃったよ」
「そうだなあ、愛理沙ちゃんは?」
「楽しいですよ。フライヤーちゃんのパワー使いきって走るのも。もうちょっとパワーあってもいいかなって思う位がいいんですよ」
「愛理沙もそう思うよね。普段はいいけどここでフルに引っ張るとちょっとね」
「そうかあ、まゆかちゃんもそうかも」
「隆文、その車は実際は295から300だからな。そのエンジンの表示はネットだけどストックの実力でそのくらい出てて、更に吸排気いじって噴射いじったからそのくらい出てるんだよ」
「じゃあ、兄貴のは?」
「315だったかな?実際はそんなもんだ」
「悟瑠、俺のタフさんはどうなんだ?」
「340psそのものだよ。元から排ガス規制P-でそのくらい出てたからね」
「そうかあ、道理で速いとおもった」
「そうか、それならな。決めた。それだな」
僕らはその後も楽しむだけ楽しんで帰って来た。
百合ちゃんの会社の若手もダンプで走って練習したらしい。
勿論、終わった後はターマックには路面スイーパーをかけて掃除、ダートにはグレーダーを入れて砂利の慣らし直ししていたとのこと
「お兄ちゃん、いい具合に仕上がったでしょ。シケインはやっぱり欲しいって感じね」
「まあ、リミッターあればいいけど無いとヤベえだろ。三四郎君ならストレートエンドで200キロ軽くいくよ、雅子のサニ丸だって150キロは出るぞ」
「そうかあ。気が付かなかったけど。あそこなら高速サーキットのセッティングもできるよね」
「できるさ。正直言ってターマックの方は高速サーキットだよ。テクニカルサーキットと思ってるかもしれないけど勝負所は最終コーナーとその前のシケインへの突込み、ストレートエンドのブレーキング競争だよ。全部高速域の勝負。他のコーナーは抜けるものではない」
「そうかあ、勝負どころの速度で判断か」
「その通り、鈴鹿はテクニカルコースといわれてるけど勝負所はストレートエンドの突込み勝負。ってことは高速域でのストレートの速度の乗りが重要ってことだよ。すなわち高速サーキットってこと」
「奥が深い」
「また、明日から仕事だな。いいことにレストアはBXD30とB622Bの2台だ。それが掃ければちょっと3連休にして休もうぜ」
「うん、鈴木さんたちにもそう言っておいた。結構疲れが来てるみたい」
「3連休してリフレッシュだな」
「それがいいよ。百合リンと休み合わせて遊びに行きたいなあ。愛理沙は無理かな?」
「そうだな」
僕らは雅子と百合ちゃんが経営するモビリティパークの新コースを走って満足して帰って来たのだった。
次の日、オフロードコースで爆走した僕らは仕事の合間で休憩していると、フオオオーンとV10エンジン+ターボの音が聞こえ、止まったかと思うとギイッと事務所のドアがあき、百合ちゃんが突然やってきた。
「百合リン、いらっしゃい。車調子悪いとか?」
「違うの。ねえ、ねえ。悟瑠さん、隆弘さん、雅子、隆文さん。聞いてよ。パパ迄大型総輪駆動のダンプに沼ったの」
「なんだそれ?」
「ちょっと外来て見てよ。超低床船底に積んでるから。パパったら積んだから引っ張って公道復帰頼んで来いって言うんだよ」
「どんなダンプだって?」
僕らは駐車場に行くと6×4トラクターで引っ張ってる超低床船底に古いキャブオーバーの総輪駆動が乗っていた。
「みてよこれ。このトラック、書類もあるもんだからさ。この前廃工場を片付けと掃除に行ったときにこれもその工場に旧車マニアが居たみたいで電気防錆して放置してあったのよ。それをパパが工場の機械処理費用を値引くって言って引き取ったの。あっちから見ればトラックの処分費用浮くし値引きしてもらえるんで二つ返事」
「はああ、仕方ないかもね」
「お兄ちゃん、ええとこれって77年式のCF30DD改ね。パパのタフさんと似たようなものね。」
抹消登録証を見た雅子が言う
「雅子、ニックネームはCF30DD改の3と0とDでサンデー君ね」
「はあ、もうニックネーム付けちゃったの?」
「うん、もうあきらめた。それにそこの工場にあった重機も引き取ってきてさあ。今、お兄ちゃんが引っ張って。あ、来た。これも現場で使えるようにしてだって。オフロードコースの整備にピッタリとか言っちゃって。V8が気に入ったとか」
そう言っているとドリュドリュというV8の排気音を立てて、船底にタイヤを外した大きなショベルカーを積んで狩野さんが4×2トラクターでひっぱり駐車場に入って来た。
その後ろから、フロロローンとショベルカーのタイヤを積んたハットくんを運転してきたのは譲さんだった。
それを見て口をあんぐりさせる僕らだった。
オフロードコースをリニューアルした雅子たちはいい腕で爆走
同じくダートコースを爆走する悟瑠の父親
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
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すみませんが10月中まで本業多忙で更新が遅れます
次回は2週間後21日の予定です




