第六十二話 譲さんの総輪駆動とみんなでオフロード
やっとデコちゃんをクレーンにして落ち着いたと思ったら譲さんにも古い総輪駆動の公道復帰依頼がくる悟瑠たち
主な登場人物と所有車
佐野 雅子 ヒロイン 24歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、8勝目にトライ中。
家業の佐野自動車販売の中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーの経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許、2級整備士免許、危険物乙4、玉掛、ガス溶接、救急救命士
レース以外の趣味:
オフロード走行:大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車
バス:ルーシーちゃん、獅子丸くん、ニジュちゃん、エムエム君。
大型総輪駆動:藤子ちゃん、ボンネットダンプ:カービーちゃん
小型車:イチゴちゃん
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 27歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許
カーキチ、スペックオタク
所有車:
バス:ゴーゴーくん、ロザン君、なごみちゃん、パン君、ニイナちゃん、キューピーちゃん、フーセンちゃん。
大型総輪駆動:サイバー君
小型車:サンゴちゃん、三四郎君
加藤 隆弘 27歳
悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染。
所有車両
大型総輪駆動:ラッシー君 小型車:エスティーくん。
加藤 隆文 24歳
隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。
所有車
大型総輪駆動:まゆかちゃん クロカン4×4:ロックン
趣味:TSカーレース
松尾 百合 24歳
雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。
所有車
バス:武蔵君、ラムちゃん
ボンネット総輪駆動:パイ君、ボンネットダンプ:徳次郎君、小型車:エッちゃん
現在は丸松運輸の副社長 TSカーレーサー
松尾 譲 26歳 百合ちゃんの兄 丸松建設の副社長
所有車
バス:ビーフさん、ボンネットダンプ:旦那さん
総輪駆動:ゼットワン
小型車:KE70HT
小笠原 愛理沙 23歳 TSカーレーサー
雅子の同じ学校の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長。2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務 大型免許所持
所有車:小型車、GXE10
バス:ババロアちゃん、総輪駆動:フライヤーちゃん
小笠原 哲史 26歳 愛理沙の兄。別の会社に勤めているが家業に転職検討中
所有車 小型車:AE70セダン
バス:マーシーちゃん
300ps/ 2900RPM 80kg・m/1700~2350rpm
長野さん 29歳。
バス会社に居たが欲しい車が排ガスの関係で住んでいる地域で登録できなくて雅子がいたスーパーに転職。今は愛理沙ちゃんの上司
所有車バス:
9メートル自家用
190ps/2900rpm、52kg・m/1700rpm
9メートル観光
175ps/2900rpm、46kg・m/1800rpm
9メートル路線
190ps/2900rpm、52kg・m/1700rpm
小型車:NE
狩野さん 29歳
運送会社にいたが首都圏の事業縮小で地方に転勤になったが偶然募集していた松尾建設に転職
所有車 ダンプカー
6×4V10ダンプ
V22C⇒V25C 450ps/2200rpm、165kg・m/1400rpm
6×4V8ダンプ
F20C 355ps/2200rpm、135kg・m/1400rpm
小型車:ND
「雅子、悪いけどお兄ちゃんがこのWD81を手に入れちゃって。仕事で解体に行った倉庫で動力源になっていたのを引き取ってきちゃったよ」
「え?そんなの有ったっけ?お兄ちゃんしってる?」
「うん、6DC2エンジン積んだボンネット型の8トン積み2軸総輪駆動だ。カービーちゃんと同じ時代の車だよ。動力源って?」
「うん。全体を浮かせてタイヤのところに継手をつけて2軸から動力とって機械を動かすのに使われてて、電気が引けなかったみたいでそこでエンジンで機械を回して作業してたの。立て直してソーラー発電にして小型の発発に交換するから処分してって言われたの。それも抹消登録が残ってるのよ。厄介なことに」
「ってことは公道復帰?」
「うん、伊吹君ではオフロードコース走れないから。いつも練習で使ってる6×6クレーン車が最近空いて無くて練習する総輪駆動無いの。あたしがゼットワン公道復帰頼んでるの知っていいなあって言ってるのよね。今はママの美浜ちゃんで走ってるんだけどこれもママの仕事とバッティングするからこれ見つけてやったーだって。このWD81ってエンジンが結構調子悪いとか。エンジンはもう修理に使う部品が無くて他のエンジンに載せ替えお願いだって」
「うーん、公道復帰するとしたらV8の8DC8積むしかないよ。V6に使えるいい噴射ポンプがないよ。かと言ってコモンレールにするには直噴じゃないから大掛かりになりすぎてむずい。それなら同じキャビンでV8の8DC2積んでるW122っていう総輪駆動のトラクターがあるから8DC8積んじゃうって手がある」
「やっぱり。ですよね~。6DC2はプレコンバッションですものね」
「まだピストンは何とかなるけどね。ポンプがないんだよ。ってことは8DC8を積むのかなあ。W122には同じキャビンでV8の8DC2を積んでるからWD81に乗るのは確かだよ。在庫のエンジン使うよ」
そう言っていると
「悟瑠さん、よろしくお願いいたします。百合、どうもありがとう。エンジンはV8になるんですね。排気量大きくなるのは乗りやすくなるんで歓迎です」
「「「はあああ」」」
僕と雅子、百合ちゃんが大きなため息ついていた。 遅れて入って来た譲さんは満面の笑みでお願いしていたのだった。
「百合リン、わかったからその車おろすよ。押しかけ女房ならぬ押しかけ依頼者ね」
「まあ、ごめんねえ。お兄ちゃん。おろすよ。あたしのゼットワンが遅れちゃうわよ。あ、そうだ。あたしのってV8乗らないんだっけ?」
「百合ちゃん、それは無理だって。フレームの幅が狭くてV8エンジンは乗らないんだよ。元々ボンネットにV8の設定ないから」
「それは仕方ないわねえ。ターボも無理なんですよね」
「うん。エンジンルームの幅が狭くてターボとエアエレメントを置く場所がない。しかもK型にしようと思ったけどそれも無理かもしれない。エンジンルームの長さが足りない。無理やりED100を押し込んだようにもあるんだよ。除雪車上がりかも」
「うーん。仕方ないなあ。それなら決めた、お兄ちゃん。あたしがパイ君乗るから、ゼットワンをお兄ちゃんが乗って。遅いのはいいや。悟瑠さんV8にしてくださいね」
「全く、百合はわがままんだからさ」
「何言ってるの。お兄ちゃんのわがままのためにここに交渉来たでしょ。ってことで車の交換決まりね。雅子、悟瑠さん。ゼットワンはお兄ちゃん。パイ君はあたしね。これはターボ付くの?」
「キャビン載せ替えてT901のにすれば」
「うーん。仕方ない。それならいいや。275psですか?あたしはあの独立ボンネットの形が気に入ったのよ。鉄子ちゃんとかハットくんはターボつけるからキャビン変えちゃったでしょ。パパは速さ重視だから仕方ないけど。6×6クレーン車はオリジナルなんであたしはそっちが好きなんです。といってもいかんせん遅くて」
「ええと、8DC8エンジンは290psにする。車載の後輪の実力でそれ以上。カタログの305psよりも実力で出てるかも。愛理沙ちゃんのフライヤーちゃんと同じスペックかな?」
「そうなんですね。それならいいかも」
「悟瑠さん、百合が僕に乗れって言ったゼットワンのパワーはどのくらいですか?」
「一応、カタログ上は260psなんでまずはそれを目指しますよ。元からこの会社のはパワーを出すのにに苦労するんですよ。ターボなら実力でも出しやすいんですけど、生では吸気系いじって、等長マニ:デュアルを長めにとってもいいところ250psギリかなあ。乗りやすいように特性はフラットトルクにしますよ」
「百合はそう言うことかよ。親父と一緒で速い車好きだからなあ」
「悟瑠さん。あたしのパイ君はマニ割?」
「その予定。吸気は干渉防止レイアウトにするよ。マニ割りにするとV8は排気干渉しなくなってパワーアップするよ。煙突左右出しデュアルの予定。静かなほうがいいならサイレンサーで調整して後ろ4本出しにするよ」
「静かなほうでお願いします。煙突デュアルよりオリジナルの後方左右デュアル4本出しのマフラーお願いします」
「はい、エギゾーストノートマニフォールドは等長にして低速トルク稼ぐから。念のためにリターダー追加するね」
「お願いします。お兄ちゃんのゼットワンにもリターダー追加お願いします。あ、やばい、そろそろお暇しないと。ほら。お兄ちゃん油売ってる暇ないよ。雅子、よろしくね」
百合ちゃんはそういうと、一礼して2軸トラクターに乗ってエンジンをかけていた。
「全く、百合は。悟瑠さん、隆弘さん、隆文さん、雅子さん。お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします」
「譲さん、承知いたしました」
「はい、承知いたしました」
百合ちゃんたちはドリュドリュドリュドリュとV8フルデュアルマフラーの排気音を響かせ、2軸トラクターで空になった船底を引っ張って会社に帰って行った
「お兄ちゃん、もしかして愛理沙のフライヤーちゃんにもパイ君同じメニュー入れるの?」
「まあ、そうなんだよ。といっても逆でさフライヤーちゃんのメニューを、パイ君に入れるって方がただしいな。使ってるミッションは愛理沙ちゃんのフライヤーちゃんが丈夫そうだ。パイ君に百合ちゃんが乗るって言ってくれてよかったよ。譲さんならミッション交換もしなきゃやばいって思ってた、百合ちゃんなら発進とか上手いから壊すことないんで良いけど」
「そうだな、百合の運転はスムーズだよ。雅子と近くなってる」
「やっぱりね。あたしはどっちの総輪駆動にターボ無理なら百合リンはパワーのあるパイ君に乗るって言うと思ったわよ」
「そうだよ。百合は本当にせっかちでさ。速い車大好きだもんな」
「百合リンは高校の頃からせっかちだよ。隆弘さん、この性格は一生変わんないって。でもねえオリジナルのスタイルが好きなのよね」
「そうだよなあ。譲さんに聞いたよ外観ドノーマルで中身ギンギンが好みとか。雅子が売ったエッちゃんもアルミをオリジナルの14インチにしちゃったでしょ。」
「そう、見た目はマフラー以外普通の軽自動車。それでばかっぱやが好きみたい。お兄ちゃん、8DC8を積んだ2台はマニ割と干渉防止吸気系でパワーアップして、譲さんのゼットワンは等長のインテークとエギゾーストマニフォールド+デュアル部分を長めに吸気効率アップだよね」
「うん、排気位置は全部オリジナルの通り、後ろで排気する。愛理沙ちゃんのはスーパーに乗っていくから静かにして欲しいって言うから、サイレンサー2連装+後ろデュアル4本出しにするよ。百合ちゃんのも静かにするなら同じくサイレンサー2連装と後ろ4本出しにする。静かなほうでOKと言ってたし。隆文、頼むぜ」
「はい、悟瑠さん。承知」
「そうねえ、百合リンは意外にっていうか煙突も好まないんだよね。排気音も静かなほうがいいって」
「悟瑠。そう言えば脚はどうする?愛理沙ちゃんのフライヤーちゃんは何も聞いてないだろ」
「愛理沙ちゃんには言ってないけど脚はサイバー君と同じにするよ。走破力と乗り心地重視で。お子さんも乗るんだろ。うまくISOFIXバー付かないかなって思ってるんだよ。念のためドライバー席はシートを交換して、2人掛けの方にミニバンのキャプテンを二つつけようかと」
「そうね。愛理沙はお子さん乗れないと困るもんね」
「悟瑠はこれだよ」
「百合リンのパイ君も同じ脚でいいと思うけど、ボンネットの分、ちょっとフロント荷重変わるよね」
「まあ、その辺は任せろだ。定数で何とかする。譲さんのゼットワンは美浜ちゃんと同じ脚でいいかな?」
「そうだなあ、まあ、フロントが軽い分それでいいだろ」
「お兄ちゃん、じゃあプランは決まったね。百合リンはせっかちだからパイ君早くしてってせっついてくるよ」
「それは仕方あるまい。その辺は上手くやるさ」
「よろしく」
「やりやすさなら8DC8エンジンを2機仕上げて、その後にゼットワンのエンジン仕上げて換装。雅子のカービーちゃんはもうエンジンにターボを組み込んで積みかえ終わったから金曜日にでもテスト行けるよ」
「すごーい。早いわねえ」
「若手君がエンジン弄るの面白いって言ってオーバーホールしちゃったよ。それにクランクとピストン、コンロッド。プーリー、フライホイール、クラッチも全部アッシーでバランスを取ったんだよ」
「うわー、すっごいじゃん」
「将来は自分でチューニングショップやりたいって。特にエンジン系」
「そうなのね。有望ね。ノウハウいっぱい吸収していい仕事してほしいわね」
雅子が言っていた、その週、僕と隆弘たちは8DC8エンジンのオーバーホールと親父に頼んでエギゾーストのマニ割マニフォールドの作成、マフラーの作成に忙しかったのだ。
金曜になって、雅子のカービーちゃんのエンジンの長時間アイドル試験でも漏れがなく、いつもの道で全開テストしていた。後ろからは隆弘とエンジンを組んだ若手の村上君が乗った2軸総輪駆動レッカーでついてきてもらった。仕上げの確認はすべて隆弘がやっているので問題ない見込みではあるが全開テストなのでついてきてもらった。
「お兄ちゃん、そう言えばこのエンジンのフライホイールとクランクのプーリーのバランス迄取ったんだよね。効果ばっちりじゃん、静かで滑らかに回って気持ちいいエンジンになってる」
「もちろん。クラッチカバーもアッシーでとったよ。ロスを減らしてパワーアップには一番いいよ」
「だよねえ。お兄ちゃんは燃焼室の容量も合わせるよね」
「うん、他には吸排気のポート径と噴射インジェクターの特性やデリバリーパイプの長さも全部そろえるよ。そうすると噴射特性もそろうから静かでパワーあがるんだよ」
「だよねえ。このエンジンも静かで振動が少ないよね。ものすごく頑張ったんだね」
「ああ、コンロッド両端の重量までも合わせていたからね」
「すご」
「それは僕が教えた。トータルで5グラム以内まで追い込んでいたからいいと思うよ」
「良いわよこれ、水温も油温も問題なし。速くなったわよ。330psだよね」
「なんとかギリギリ出たよ。錦くんは余裕で335ps出たけどこれは苦しいね。327,5ps」
「まあいいや。レブの2700rpmまでは苦しいかな?いいところ2600rpmね」
「うん、排気量の関係も有って低速に振ったターボなんで高回転はどうしても空気が入らないんだよ。そうなると高回転は空気不足で黒煙物凄くなるから2600rpm以上は絞って有るんでリミットは2600rpmと思って」
「わかったよ。あの会社のはそんなもんだよね。お兄ちゃんは良くパワー出すよ」
「ターボはまだ楽なんだよ。水温もOK、異音もないね」
「そうね。速くなって良かったわよ」
「そうだねえ。ここまで速くなれば雅子も満足だろ」
「まあね、感じとしてはニジュちゃんやエムエム君よりも速いじゃん。獅子丸くんとルーシーちゃんよりも速いかも」
「そうかも、空ならバスよりは軽いからね。そうだ。カービーちゃんはデフロックじゃなくてLSDだから整備の時に気をつけてよ。片輪持ち上げてエンジン始動するとやばいからね」
「うん、イチゴちゃんと同じだよね」
「そのとおり」
思ったよりも速くなって御機嫌の雅子はアジトにカービーちゃんを乗って帰ってニコニコしていた。
仕事が詰まっていた土曜日に出勤してると
「悟瑠、雅子、隆弘君、悪いが2台の加藤運輸のトラックがやばいらしい。救援に行くんで2軸総輪駆動レッカーと4軸総輪駆動レッカーでいく。悟瑠と雅子は軽症の方を2軸総輪駆動レッカーで牽引頼む。俺と隆弘君は重症で荷物積んだままらいいからパワーが無いとだめなんで4軸総輪駆動レッカーで救援する」
「わかった。引き揚げたら急ぎで修理だな」
「ああ、どっちも変速しないし、重症の方はエンジンもかからないと聞いた。4軸総輪駆動レッカーでもち上げてペラ切って運ぶよ」
「僕の方はエンジンはかかるんだな」
「かかる。ペラを切って運べる。最悪ミッション交換だ」
「はいよ。ねえねえ。ママさあ、11リッター用のミッションの在庫が1機しかないから5機発注お願いね。この様子だと加藤運輸の同型車全部交換かも。6台だよね」
「そうだな。じゃあ行くぞ」
親父と場所の確認して親父と隆弘、僕と雅子の2人ずつのペアになって救援に向かった。
僕らのは高速のサービスエリアに入って停まって待っていた
「佐野自動車販売です。救援来ました」
「ありがとうございます。エンジン使えたんで良かったですよ。荷物は営業所から近かったから別のトラックに積みかえて出ました。今トラックは空になってます。船底にフォーク積めたから良かったけど」
「ありがとうございます。雅子。ペラ切って前を持ち上げてだな」
「OK。後ろで切ってスリングで釣っとくのね」
「うん、ペラの後端のフランジ外して釣るから、エア頼む。釣ってしまえば後はどうにでもなる」
「OK」
僕と雅子は運ぶ準備していた。加藤運輸の人も手伝ってくれてペラを切って吊るすことができた、その後、加藤運輸の人は乗って来ていた会社の営業車で親父が救援に向かっているところに行くといって先に出てしまった。
「雅子、出るぞ」
「OK。ゆっくりね」
僕らはゆっくりと高速道路を引っ張って最寄りのインターで出るとお店まで一般道を引っ張って帰って来た。
「悟瑠さん、雅子。ありがとう。親父はミッション載せ替えしてくれだって」
隆文が迎えてくれた
「急いでやろう。自己診断かけてだな」
「うん、兄貴から連絡来たけど。あっちは相当重症で自己診断すらかからないって」
「それはまずいわよ。かなり大変じゃん」
「ヘルプはいいのかな?」
「いらないみたいだよ。うちの親父はそれよりもすぐにこのトラックを直してくれってさ。兄貴たちはヘルプ無しでいいように4軸総輪駆動レッカーで行ったみたい。荷物を下ろせてないんだって」
「そのまま引っ張るのか?」
「そうだってさ」
「そりゃあパワーいるわね」
「隆文、自己診断の結果はエンジンコントロールユニット?」
「とりあえず、在庫の新品入れてみましょう」
隆文は倉庫から新品のECUに入れ替えてイモビをリセットして自己診断の準備していた
「悟瑠さん。準備いいですか?」
「よし。カプラーで買えただけだが、セッティングはOK」
自己診断結果を見るとなんとまたECUと出た、おかしいと思って別の機器で全体をチェックするとAMT本体とミッションコントロールユニットと出た。
「ミッションのトラブルらしいな。5年たってるから新車保証ないよなあ」
「親父の言うようにのせかえかなあ」
「やるか、幸い11リッター用は1機あるよ。在庫の奴に載せ替えよう」
「ファイナルのギヤ比OKですか?」
「隆文。多少合わないのはご愛敬だろう。ちょっと待てこのAMTって直結じゃん。ってことはFDも直結用か。在庫のミッションも直結だよ。それならいける」
「ペダルとそのほかの部品ですね」
僕らエンジンのおかまとミッションのおかまが合うかチェックしていた。幸いにも問題ないのでクラッチもそのまま使うようにしてミッションを交換、エンジンECUも交換してMTにしていくべく作業を開始した。
その夜、親父が引き取って来た同形式のトラックを見てその壊れ方に呆れてしまった。
ミッションからオイルがぽたぽたと漏れている
「悟瑠。この車のMTミッションって在庫あるか?俺が行った方はミッションケースが割れてるって」
「11リッター用か?使い切って今うちには在庫ないなあ。13リッター用でいいならあるぞ」
「ああ、そうだよなあ。13リッター用にしてもいいけどなあ」
「って言っても13リッターのは重いから減トンなっちゃまずいだろ。11リッター用中古探すか新品を部販から取るかだろ。もう発注してあるよ。新品なら部飯に在庫ありそうじゃん」
「そうだな、ってことはミッションの到着待ちだな」
親父が運んできた車の状態を見ていた僕らはこれもミッション交換しかないと覚悟していた
「親父ミッションブローの原因ってなんだ?」
「ああ、ミッションのケースが割れててそれが走ってる時に急に進行してそっからオイルが流れ出ているのに気が付かなくて、ブローって言うか焼き付きだな」
「そうかあ。よく事故にならなかったなあ」
「ああ、オイルが無くなって内部が過熱したんだよ。それで摩擦が増えたんで徐々に速度落ちて何とかサービスまで来て止まったらあとは焼き付いて動けずだよ。どうやら発進できなくなって呼んだって感じだな」
「それじゃあねえ」
「エンジンも無理かかってオーバーヒートしてたけど電動ウイングだったから何とか荷物は予備車に積み替えて納めに行ったよ。フォークが救援に来たからまあ間に合うかはわからんけど今日中に着くだろ、予備車は俺が作ったK-GD53Vだ」
「親父、まさか?爆走仕様だろ」
「ああ、俺が組んだRG8ターボ積んだK-GD53Vでかっ飛ばすだろ。リミッター無い一番古い予備車だからなあ」
「わかったよ。それ良いとしてこれは完全にミッション交換だなあ」
「ミッションが逝ったトラックはエンジンもオーバーヒートしてるからオーバーホールだな。念のため各部の歪みのチェックいるぞ」
「2PG-FS4H〇が二台ともトラブルとはなあ」
「時の運だな。専用の検査機で見たらどうやらミッションのコントロールユニットがおかしくなって発進や変速の制御がうまく行かなかったらしいよ。ドライバーも発進のときにドンと急につながるとかシフトアップの変速ショックがでかいと思ってたけど、まさかケースが割れることになるとは思ってなかったようだ」
「親父。わかった修理すぐにするよ。隆弘。ってことは今、加藤運輸には予備車0だろ。ヤベえな」
「軽症の方は何とかなるとしてこっちはエンジンまで修理っていうかオーバーホールか」
僕らは百合ちゃんと譲さんにパイ君とゼットワンの作業が遅れることを伝えて加藤運輸のトラックを突貫で直していた。
一週間後、一台の修理が終わって納車、ホッと一息ついていると
「悟瑠、すまんがトラクターも故障したようだ。救援行ってくる」
「親父またか?」
「ああ。同じメーカーで今度はエンジンが逝ったらしい。トラクターヘッドだけなら2軸総輪駆動レッカーで何とかなる」
「はいよ」
親父が3人組の一人渡辺さんを連れて加藤運輸のトラクターヘッドを救援に行った。
その間、趣味車の愛理沙ちゃんのフライヤーちゃんを仕上げて漏れ確認のためエンジンかけっぱなしにしていた。
夕方になって引き取って来たトラクターヘッドを見てまた呆れてしまった
そのトラクターヘッドのエンジンは完全に足を出していて、クランクは折れてしかも冷却水は空、オイルも空という状態だった。
「親父、これってどうしたらこうなるんだ?」
「よくわからんがどうやらターボが壊れてオイル吸ってエンジンが暴走したらしい。オーバーレブして壊れたとか言ってるよ。全開で坂を上っててレブリミットギリ迄引っ張ったところでエンジンが暴走してミッションを壊してしかもエンジンも壊れてしまったみたいだ。」
「ターボのシャフトが折れたタイミングが悪かったか」
「ああ、見る限り、タービンがオーバーレブしてシャフトが折れてそっからオイル吸ってエンジンが暴走。運悪くその時は変則の最中でクラッチがつながった途端にミッションも逝ったらしい。運転手曰くは煙もうもうだったらしいよ」
「だよねえ。ミッション壊れてってことはニュートラルになったのと一緒でそのまま逝ったか」
「ああ、無負荷でオーバーレブして逝ったな」
「ってことは、周辺機器も逝ってるんだろ」
「どうもそうらしい。燃焼温度高すぎでヘッドとピストンが変形するくらいまで逝ったようだ。幸いなことにエンジンとミッションは保証修理だ。来月が満五年の車検だったらしい。うちもそこの指定工場になってるからクレーム扱いで修理だな」
「部品発注して納品まではどうしようもないな」
僕らはその間もう一台のウイングを直して愛理沙ちゃんのフライヤーちゃんの全開テストの後は百合ちゃんのパイ君の全開テスト、譲さんのゼットワンの全開テストと大忙しだった。
週末、ボディーの補強をやり直した4台のTSカーをミニサーキットで走らせていると僕らの走りを見ていた人が声をかけてきた
「この4台はチーム佐野の車ですよね。私はTSカーのイベントを主催している組織の物です」
「はい、そうですが」
名刺を渡してきた人が続けて言った。
「実は来週FサーキットでTSカーのイベントがありまして参加車両を探してまして。いかがですか?招待ということで参加費は無料で、すみませんが輸送費は払えませんが」
「お兄ちゃん、いい機会じゃん。この車の高速の安定性見てみようよ」
「そうだな」
「ぜひお願い致します。」
「それではここにサインいただいていいですか?」
僕らは参加する書類を確認してサインしていた。
「お兄ちゃん、車はばっちり仕上がってるよ。スタビリティーあがっててしかも曲がりやすくなってていいわこれ」
「悟瑠さん、あたしもです」
「隆弘さん、あたしのも」
「兄貴、ばっちり。これで雅子と対等に行けるよ」
「調子乗ってるぜ」
「「「「あはははは」」」」
補強結果に満足した僕らは次週のFサーキットでTSカーイベントを楽しみにしていた。
その間は加藤運輸のトラクターヘッドを修理して納車、全開テスト中にオイル漏れを起こした譲さんのゼットワンの再テストも終わって納車していた。
Fサーキットについて車のウォーミングアップするとフリー走行に行った
「雅子、愛理沙ちゃん、気をつけて」
「はーい」
「隆文、百合ちゃん。よろしく」
僕らはFサーキットのTSカーのイベントに参加していた。
フリー走行の時に雅子たちは本番レースと同じくらい本気で走っていた。
「雅子たちは絶好調だなあ」
「そうそう、全開でいってるなあ。ギャラリーもあの走り見せられちゃあなあ」
「そうだろ」
イベントはコース上でのTSカーの紹介とドライバーへのインタビューの後は参加した15台でエキシビジョン走行、普段はあり得ないドリフト走行だった。
「雅子、軽くいってくるか」
「うん、流してくるよ。空力も良くって超高速でも浮かないし、スタビリティばっちり。いいよこれ」
「そうですよ。雅子先輩と同じですよ。すっごく乗りやすいの。ボディー剛性ってバランスが大事なんですね」
「悟瑠さん、レーザーシームレスいいですよ。後ろの補強もばっちりです。兄貴エンジンも絶好調」
「隆弘さん、あたしもそうです。すっごく走りやすくなりました。ボディががっちりタイヤを受け止めてるって感じで」
「それは良かった」
「エキシビジョン行ってくるね」
雅子たちはそう言って走りに行った。
"ぷあああーん"という歯切れのいいエキゾーストノートがコース内にこだます。
雅子の車と愛理沙ちゃんの車が本番レースさながらの速度でストレートを吹っ飛んでいく、その後を"ごおおおおぉん"という吸気音を響かせ百合ちゃんと隆文の車もストレートをかっとぶ
「おいおい、あいつらストレス解消とばかりに全開でカッ飛んでるぜ。安定度もぴか一だなあ」
「ああ、エンジンが最高に調子いいみたいだ。エンジンルーム内導風板もうまくいったな」
そう言っていると5周のエキシビジョンが終わって、次は元ドリフトドライバーのドリフトだった。雅子と愛理沙ちゃん、隆文が出ていた。
「ドリフトなんて久しぶりじゃん。行ってみようか」
「おう、トップは雅子で次は愛理沙ちゃん。その後俺だな」
「車を壊さない程度に行ってくるよ」
「そうね。タイヤはエコタイヤにしておいたから」
3台はこれまた勢いよくダッシュ。第一コーナーから真横にしてクリアしていく
「おいおい、相変わらずだなあ。いくらグリップ低いタイヤっていってもガンガン行ってるぜ」
「まあ、それで限界超えた時の挙動見てるんだからいいんじゃないの。テスト走行だな」
「そうだな」
雅子たちは2周のドリフト走行すると戻ってきて
「お兄ちゃん、足のセッティングもばっちり、おうち帰ってボディの痛みを見て来季の開始待ちかしらね」
「ああ、雅子たちはドリ車みたいに切れ角増やしてないのによくやるよ」
僕らの走りが終わるとTSカーの部門は終わって次はD1車の部門の開始だった。
僕らは最後まで見てしまうと帰りの渋滞に嵌るので自分たちが終わるとすぐに撤収して帰って来た。
休みが明けた週からはトラクターヘッドからブローしておろしたエンジンと暴走したエンジンで壊れたミッションをメーカー本社に送っていた。
正規ディーラーの人も見に来ていて、このところこのエンジンのタービンブローを聞くことが増えているらしく何かが起きているのかもといっていた。
その後は、いつものルーチンの移動販売車たちの定期点検、加藤運輸の定期点検、車検と仕事が詰まっていたのだった。
他には丸松運輸、丸松建設の車の点検、車検もやって開催場所を貸した旧車ミーティングに参加する準備も並行してやっていた。
「工場長、次回のミーティングは大型だけじゃないですよね」
「うん、小型もOK、合同なんで200台は集まるよ」
「私たちもいきますよ。TE37とA73Dと230GXTで小型の展示場は舗装してある駐車場ですよね」
「そうですよ。実は舗装コースも新設したんで走るのもいいですよ。うちからはカービーちゃんとデコちゃんをお披露目しますよ。サイバー君と藤子ちゃんの4台でいきますよ」
「それはいいですね。隆弘さんたちは?」
「僕らはまゆかちゃんとラッシー君でいきますよ。丸松の方からはデビちゃんとドライブ君とパイ君とゼットワンも来るって言ってるし、愛理沙ちゃんはフライヤーちゃんで来るって言ってます、哲史さんはマーシーちゃんで。長野さんは9メートル路線前中、狩野さんは6×4V10ダンプですよ。あのRG10に改造したV10ダンプも来るって言ってます」
「悟瑠さんたちはオフロードコースも走るんですね」
「そうですよ。マニ割の音がガンガン聞こえますよ。半分は百合ちゃんたちのシェイクダウンですよ」
「それもいいですね。ボンネットバスの「デビちゃんとドライブ君の試乗会も」
「ほかにもボンネット来るそうですからそれも乗りましょう。舗装コースで試乗会できます」
「それは楽しみです」
ミーティング当日になって、既に鈴木さんたちはボンネットバス試乗会でご機嫌だった。
「いやあ、楽しいですねえ。って言うかこのデビちゃんは乗り心地エアにしただけあっていいですねえ」
「そうですね」
「お兄ちゃん、ドライブ君もいいよ。ターボいいわなね」
「悟瑠さん、ゼットワン仕上げありがとうございます。これ楽しくていいですよ。僕ももっと上手くなります」
「悟瑠さん、あたしも感謝です。フライヤーちゃんすっごく楽しいです。しかもチャイルドシート付くし。お兄ちゃんのマーシーちゃんも良くて子供たちはニコニコですよ」
「よかったですよ」
「あ、高尾さん。こんにちは」
「また来ました。6トンボンネットは絶好調です。パワーあると楽ってよくわかりましたよ。あの峠超え楽ですよ。急坂4速で行けますよ」
「高尾さん。喜んでいただき嬉しいですよ」
「MR510もパワーアップしたんで女房が毎日乗って嬉しそうですよ。この前なんてスーパーにMR510で行って買い物するの楽だとか言ってます。やっぱり山坂道で使えるギヤが増えたのがいいですよ。エンジンこそ小型化しましたけど。ターボのパワーはいいですよ。今日も来てて路線バスの試乗会にいってます」
「それはよかった」
そう言って展示されていた車を見て回って戻ると、あろうことか愛理沙ちゃんの課長の綿貫さんが僕んちの展示場所にやってきていた。
「佐野さん、いいバス買っちゃいました。フリマでって言うか?展示しててうりたしってあったバス買っちゃいましたよ。名義変更と整備お願いしますね」
「何を買ったんですか?まさか?旧車ですか?」
「はい、74年式のB622Bです。ショートなんで僕の練習にはぴったりです。エンジンオーバーホールと防錆処理、車体色塗り替えお願いします。80年代の京〇カラーで」
「はい承知しましたが、車はどれでしょう?」
「できれば帰りに乗って帰るので一緒にお店までいいですか?あれです」
綿貫さんが指さしたのは結構手入れのいい元ホテル送迎車だった。貴重なB622Bで小柄なので練習にはぴったりだろう。
「はい、承知しました」
「できればパワステとクーラー着けたいんてす。お願いできますか?」
「できますよ。屋根のベンチレーションは廃止しますが。クーラーユニットは屋根に乗せますよ」
「いいですね。よろしくお願いいたします」
ミーティングが終わって、僕らは綿貫さんが買ったというB622Bとともにお店に帰って来た。
お店に着くと、後ろからついてきていた奥さんに乗っけてもらって帰って行った。
僕らはそのバスを工場に仕舞うとアジトに帰っていた。
「綿貫さんも嵌ったよねえ」
「楽しいって言うか、乗用車ともダンプとも違うよね」
「そうね、あたしもその違いが楽しくて乗ってるようなものよ」
「だよねえ」
次の日、僕と雅子がお店に出勤すると駐車場に見慣れない総輪駆動のダンプカーが置いてあった。
「ねえ、パパ、ママ。この総輪駆動ってどうしたの?」
「ああ、実はだな。隆義のところに眠ってたんだよ。公道復帰させようと思ってな」
「うそでしょ。この車?あ、でも全然錆びてない。どうして?」
「いいだろ。電気防錆で錆を防いでいたんだよ。隆義が実家で使わなくなったのを持って来た時にガレージの奥に仕舞って時間見てやろうとしたんだよ。それまで錆びないように電子防錆つけて眠らせていたんだよ」
「親父、これを公道復帰させて何に使う?それにしてもよく残ってたよなあTF30GDとは。何年式だよ」
「75年式の車だ。隆義の実家で除雪車にしようとしたんだが、結局荷物運びだけで使って直近の30年は眠ってた。これと同じキャビンでRD8を積んだTZ50HTがあるからRF8は乗るだろ。PE6はもう古いからエンジンはそれにしようと思ってな。うちに在庫のKC-のRF8あるだろ。ついでに6速ミッションもあっただろ。KC-までエンジン作ってだろ。それなら排ガスも何とかるだろ」
「まあ、これって公道復帰して何にするんだ?仕事で使うのか?」
「俺の趣味だな。このところのミーティングに行くと面白いのがいっぱいあってだな。脚は悟瑠のサイバー君とか松尾のお嬢ちゃんのパイ君と同じやつな。このところの旧車の買い付けで2軸総輪駆動レッカーで行くんじゃあうちの仕事とぶつかるだろ。それでどこでも行ける車が欲しくなってな。マニ割と左右煙突でいくぞ。そうだラテリンもよろしく。藤子ちゃんやサイバー君がオフロード走ってるのを見て俺も走ってみたくなった」
「はああああ」
その場でがっくりとしていた僕と雅子と対象ににっこりしていた親父とお袋だった。
後ろの補強方法が嵌って大幅に性能向上した4台のTSカー
模擬バトルではドリフト経験者の腕が光る
それにしても悟瑠の親父さんが総輪駆動に嵌るとは
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