第六十一話 TSカーオフシーズンの練習と百合ちゃんと愛理沙ちゃんの総輪駆動
順調に仕事を片付けていく悟瑠たち
その中に百合ちゃんが難題のゼットワンを買っちゃって
愛理沙ちゃんも8トンの総輪駆動を見つけて
主な登場人物
佐野 雅子 ヒロイン 24歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、8勝目にトライ中。
家業の佐野自動車販売の中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーの経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許、2級整備士免許、危険物乙4、玉掛、ガス溶接、救急救命士
レース以外の趣味:
オフロード走行:大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車
バス:ルーシーちゃん、獅子丸くん、ニジュちゃん、エムエム君。
大型総輪駆動:藤子ちゃん、ボンネットダンプ:カービーちゃん
小型車:イチゴちゃん
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 27歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許
カーキチ、スペックオタク
所有車:
バス:ゴーゴーくん、ロザン君、なごみちゃん、パン君、ニイナちゃん、キューピーちゃん、フーセンちゃん。
大型総輪駆動:サイバー君
小型車:サンゴちゃん、三四郎君
加藤 隆弘 27歳
悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染。
所有車両
大型総輪駆動:ラッシー君 小型車:エスティーくん。
加藤 隆文 24歳
隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。
所有車
大型総輪駆動:まゆかちゃん クロカン4×4:ロックン
趣味:TSカーレース
松尾 百合 24歳
雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。
所有車
バス:武蔵君、ラムちゃん
ボンネット総輪駆動:ゼットワン、ボンネットダンプ:徳次郎君、小型車:エッちゃん
現在は丸松運輸の副社長 TSカーレーサー
松尾 譲 26歳 百合ちゃんの兄 丸松建設の副社長
所有車
バス:ビーフさん、ボンネットダンプ:旦那さん
総輪駆動:パイ君
小型車:KE70HT
小笠原 愛理沙 23歳 TSカーレーサー
雅子の同じ学校の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長。2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務 大型免許所持
所有車:小型車、GXE10
バス:ババロアちゃん、総輪駆動:フライヤーちゃん
小笠原 哲史 26歳 愛理沙の兄。別の会社に勤めているが家業に転職検討中
所有車 小型車:AE70セダン
バス:マーシーちゃん
300ps/ 2900RPM 80kg・m/1700~2350rpm
長野さん 29歳。
バス会社に居たが欲しい車が排ガスの関係で住んでいる地域で登録できなくて雅子がいたスーパーに転職。今は愛理沙ちゃんの上司
所有車バス:
9メートル自家用 190ps/2900rpm、52kg・m/1700rpm
9メートル観光 175ps/2900rpm、46kg・m/1800rpm
9メートル路線 190ps/2900rpm、52kg・m/1700rpm
小型車:NE
狩野さん 29歳
運送会社にいたが首都圏の事業縮小で地方に転勤になったが偶然募集していた松尾建設に転職
所有車 ダンプカー
6×4V10ダンプ
V22C⇒V25C 450ps/2200rpm、165kg・m/1400rpm
6×4V8ダンプ
F20C 355ps/2200rpm、135kg・m/1400rpm
小型車:ND
「百合リン、美浜ちゃんはどうすんの?」
「うん、ママが乗るって。このところ山間部の足場の悪いところに行くことが増えててデビちゃんやでん六くんはLSDあるけど2WDは無理であたしの美浜ちゃんを取られたの」
「それで?載せ替えるエンジンあるかなあ。無いとパワーアップできないって75年式でしょ」
「エンジンは任せます。ゼットワンって前後のデフにもロック有っていいから直してほしくって。50年以上前の車だけどよろしくお願いね」
「百合ちゃん。公道復帰承知しました」
「よろしくね、ダーリン」
そういう百合ちゃんを不思議そうな顔して見ていた親父だった。
僕らは必死に笑いをこらえていた。
「もしかして、百合リンは脚もやって欲しいのかな?」
「うん、美浜ちゃんと同じメニューって言うか、雅子の藤子ちゃんのメニューが良いな、隆弘さん。ねえ。いいでしょ。リーフとエアアシストで」
「お、おう、隆文、じゃ、ラ、ラテリン頼むぜ」
「アハハハ、兄貴、良いぞ」
隆弘のデレ顔でテンパったのを見るのは久しぶりだ。
同じく雅子と隆文も笑って見ていた。
「そうか、そう言うことね。じゃあ、百合ちゃん。いいわよ。あたしがちゃんと監督するから」
そう言うのはうちの母親だ。
「仕事の段取りは、加藤運輸のトラックの2台のMTへの載せ替えと、百合リンのゼットワンのエンジン探しね。2台の加藤運輸のトラックのMT換装終わらせたらゼットワンが入庫って感じで」
雅子が言う
「うん、多分、トランスファ―もいるよ。今のままじゃあ80キロも出せないって。ミッションのベアリングが高速対応してないから、焼き付くよ。それなら新しい除雪車のミッションとトランスファーにした方がいいよ。おかまが合うかなあ?」
「悟瑠の言う通り。エンジンはターボでしょ」
「そうだな、ゼットワンはできればターボにしてなるべく低速トルク稼ぐ設定がいいなあ。排気量大きいエンジンが入ればいいけど、エンジンルームが狭くて。百合ちゃん。悪いけど今は工場がいっぱいで引き取れないから隆弘のところのトラックの修理が終わったら呼ぶから持ってきて。でなければ取りに行くから。実物見れて良かったよ。もしかするとターボなしのエンジンオーバーホールと等長マニがせいぜいかも。マフラーは作り直す」
「隆弘さん、それでお願いします。お邪魔してすみませんでした。連絡お願いします。隆弘さんまたね」
そう言うと、百合ちゃんはドリュドリュドリュドリュとV8エンジンの排気音を響かせて、船底にゼットワンを積んだまま帰って行った
「雅子、エンジンとミッショントランスファー探し頼むよ。K13のミッションとトランスファーが良いな」
「いいよ。後はフレーム補強の鉄板もでしょ、ラテリンの材料とエアバッグと」
「ありがと、その通り。とにかくエンジンはM10が良いけど、P-のER200でもいいよ。建機のエンジンでもOK。排気量は同じだけどいろいろ新しくなってるから。」
「そのままじゃあ、だめなのね」
「うん、ヘッドとブロックに罅がないならいいけどね。このエンジンは建機とか発電機で2000年初頭まであったよ。それなんで補修部品が出ればいいけどもう廃止されて久しいから出ないかなあ。それじゃあ何かあったら治らないって言うか、それなら建機時代の新しいエンジンに載せ替えしちゃう」
「OK、排気規制は関係ないもんね。記号がないってことは」
「そうだな、できればM10ならKC-のがいいなあ。U-だとブロック剛性アップに対応してないから、騒音規制で本体騒音対策したんだよ」
「そうなの?」
「そうそう。それなんでなるべく騒音対応したエンジンでバス用でも構わないよ。KC-がほしいな。EGRしてるから若干吸気系の掃除は要るけどね。そのほうがブロックが丈夫でOK」
「お兄ちゃんがそこまで注文つけるの珍しいね。わかった。結構他の会社の車でも騒音規制や排ガス規制が本格的になったころだよね。初期のならなおさらだよね」
「うん、GEとかMDみたいにSCRだとEGRしないから汚れが少ないんだよ。とにかく、いいエンジンがほしいなあ」
「わかった。ニジュちゃんを買ったお店と鉄子ちゃんとハット君のキャビンを買ったお店とウッディパラソルにも聞いてみるよ。後は北の方にあるお店にも」
「頼んだよ」
雅子に部品の発注を頼んで僕らは加藤運輸のトラックのミッション換装をやっていた。
「しっかし、AMTの交換部品の新品が100万ってなんだよな。新品MTの方が安いってどういうことだよ」
「そうなんだよな。それにアメリカに頼むとどんなエンジンのおかまも作ってくれるから良いよ。ブロック側の図面とミッション側の図面ていうかな?最悪寸法入った画像でもいいんだからなあ」
「そうだよ。今回は必要なかったけど490ps対応のミッション新品なくなったら大変だよね」
「その時はオーバーホールして使い回すよ」
「そうだな」
僕らはミッションの換装を終えて百合ちゃん車のエンジンとミッショントランスファーが見つかるまでスーパーの3.5トントラックのウイング改造やっていた。
出来上がって納車前の漏れ試験といつもの全開試験に行こうとすると
「お兄ちゃん、ゼットワンに積むエンジンが見つかったって。笠木さんのところで。なんかM10と建機用のED100両方だって」
「OK。じゃあ取りに行こう。ついでにいつもの坂で3.5トントラックの全開試験もやっちゃう」
「それいいわね。ってことは明日エンジン引き取って明後日3.5トントラックはスーパーに納車ね」
「うん、愛理沙ちゃんに連絡よろしく」
そう言って他の部品が大丈夫かチェックしていると雅子が工場に来て
「お兄ちゃん、明日は愛理沙が一緒いくって。もし、問題ないならそのまま引き取りって言ってた。今日と明日はお仕事お休みなんだって。明日は愛理沙が羽伸ばしするんだって」
「子供たちは?お母さんが面倒見かな?」
「その通り。明日はお母さんがお子さんの面倒見して愛理沙は一緒行くって。このところ忙しくって出かけてないからお子さんと一緒にお出かけ中とか言ってるよ」
「じゃあ、僕らのアジトに明日はくるのか」
「うん、愛理沙は前泊で来るんだって。予約しておいた会社の車点検してほしいからここに持ってくるとか言ってるよ」
「あ、そうか。3ヶ月点検だな、最初に納車した中型ロング移動販売車の点検は隆弘に任せるよ」
「OKわかった」
「ってことで、夕方に来るから乗せてアジトに帰って明日の朝はアジトから行くからね」
「はいよ」
その日はデコちゃんのクレーン取り付けと雅子のカービーちゃんにオーバーホールしたエンジンをのぜるべく検討して
「雅子、いいことに買って来たEPエンジンってコンパクトで楽だよ。純正のEBエンジンって意外にでかいよ」
「へえ、そうなんだ」
「それに上手くするとツインターボでも余裕で入っちゃう。元からターボにする計画があったエンジンだよ。つごうがいいな」
「へえ。最初からターボなのね」
「そうだな、なんか理由あって生の開発をやめてって感じだな。後継機にもほとんど変更しないで受け継がれてる。150クランクは無理だったから若干排気量下がったけどそれはターボでカバーってことで」
「そうなんだ」
と言っていると予約してあった中型ロング移動販売車に乗って愛理沙ちゃんが来た。
排気系がノーマルなので静かだ
「こんばんは、点検お願いします。中型ロング移動販売車は終了の連絡あれば長野と河野が取り来ます」
「愛理沙、お休みでしょ。いいの?」
「うん、今日は緊急が有って午後から出たの。トラブルで」
「明日も午後に出たことになるから、明後日にお休みずらしたの」
「そうなのね」
「はい、後相談あるんで乗ってください」
「いいわよ」
僕らは僕が3.5トントラックに乗って、雅子と愛理沙ちゃんがルーシーちゃんでアジトに帰った。
アジトについて、愛理沙ちゃんは手際良くご飯の準備してくれた。
「愛理沙、すごい。さすがって感じね。どうもありがとう」
「あたしが持って来たのはおかずだけですけど。これはお泊り代ってことで、実は8トンの総輪駆動の廃車体が倉庫にあったんですよ。書類もきちんと残ってて公道復帰できそうなんですよ」
「え?愛理沙。年式は?」
「81年式みたいです。中古で買って30年くらいそこの農場で使って10年くらい前にエンジン壊れてナンバー切って直そうと思ったらしいんですけど断念したみたいで倉庫に放置なんです。エンジンが降りてて動かないんですよ。処分しようとしたのを聞いて運び出すならロハでいいって言うから。どっかの輸送業者に聞いたら50万円かかるって言われて」
「わかったわ。取りに行ってほしいってことね。お兄ちゃん、50万って結構吹っ掛けたよね」
「レッカー車で引っ張り、エンジン別輸送でならいいところかなあ」
「はい。パパも加藤さんに聞いたら相場だとかいわれて。それに修理用で集めた部品もあるみたいなんで一緒に引き取ってほしいって言われてます。パパの取引先なんですよ。8トンの総輪駆動は経営している農場整地や薬撒き荷物運びで使ってたみたいです。今はもうちょっと小型の総輪駆動で十分なんでそっちでやってるようです」
「なるほどね。愛理沙はこうなると趣味ね。コレクション?」
「実はババロアちゃんって通勤でも使ってるんで、BDFつめてるんです。会社でこのところお弁当需要が増えてしかも地元のお弁当チェーンも傘下に入れちゃったから、そこの使用済み食用油も回収してリサイクルやってます。それで社員に廉価販売してるんですよ。通勤手当の代わりって言うことで。それなんで8トンの総輪駆動で通うのもいいかなって思ったんです」
「そうかあ、愛理沙はババロアちゃんで行ってるのね。駐車場停められるもんね」
「はい、長野さんも3台のバスを毎日交換してに乗ってきてます。今日は9メートル路線で来てました」
「あはは、あたしがニジュちゃんとエムエム君で通い始めたの続いてるんだね。百合リンもラムちゃんとか武蔵君、マキちゃんで通って来てて綿貫さんがビビってたもんね」
「そうですね。それで綿貫さんにも免疫ついてますよ。自分で欲しいとかも言ってます」
「あはは、それはそれは」
「綿貫さんのお気にはお惣菜用キッチンカーです。ちょっと長さが短いのがいいって」
「そうなんだね。まさか探せとか言わないよね」
「実は練習用で欲しいって言ってますよ」
「はあああ。明日笠木さんのお店に行くから今のうちに情報送っておくわよ」
雅子は笠木さんのお店に情報を送っていた。
次の日も愛理沙ちゃんが作ってくれた朝ご飯を食べると僕と愛理沙ちゃんが3.5トントラックに乗り、雅子がミックに乗って後ろからついてくるようにしていた。
「じゃあ、愛理沙ちゃん行くよ。この車はミッションは変えてないから出力アップの分は全部速くなる方にしてある。それ考えると非力ってことはなくなるはず」
「はい、楽しみです」
僕はいつもの坂道までは制限速度くらいで走ってテストするところに来て
「ここから全開で行くよ」
「はい」
僕は急な上り坂を各ギヤリミットまでぶん回した。
とはいっても、4速に入れるとほとんど加速せず拮抗してしまう。
空でこの性能だとちょっと物足りかもしれないが、雅子が言う生の時は普通の発進でも2500迄回す必要あるのに比べればずいぶんマシになったと思った。
「悟瑠さん、ちょっと不足かなって思いますけど。まあいいところでしょうか?絶対的な速さは無いでしょうけど十分ですよね」
「うん、そう思う。この急坂はターボなしなら3速でギリかな?」
「ですよね。4速には入らないでしょ」
「そうだね。黒煙も吐かないからいいことにしてね」
「そっちの方がいいですよ。脱硫軽油でですよね。スーパーではBDF入れるんで問題ないでしょ」
「うん、そうだね」
全開で上っていってもまったく数値に変動はなく問題ないことを確認してそのまま、笠木さんのお店に行った。
「いらっしゃいませ」
「お世話になります」
「今日はエンジン引き取りに来ました」
「はい。パレットに積んであります。エンジンはどうします?M10はどうもターボにしてU-の生のトラックに使おうとしたみたいでブロックや中身は横倒し用、マウントとかオイルパンは縦用になってます。もう一つはED100と思ったんですが、これもER200をトラックに使おうとしたみたいです。ER200だとP-迄バスにあったんですよ。それなんでK-のトラックに使うためですね」
「そうですか、ED100かなあ。」
「お兄ちゃん、両方つめるよね」
「積めるよ。もしかして?」
「ふへへへへー、いいじゃん。あたしのカービーちゃんにM10ターボ欲しいなあっておもったの。百合リンのにはED100でしょ。みる限りボンネットが邪魔でターボ無理よ。せいぜい等長エギマニがいいところ」
「まあな。元々260psあるからその通りにすればいいか。実力で260ps出れば問題なしだ」
「うん、それならミッション載せ替えも要らないから。コストもかからなくていいかも」
「言う通り、内外装で結構コストかかるからエンジン、ミッションはオーバーホールと換装で何とかなればいいよ」
「百合リンにはエンジンは年式新しいのにアップデートって言っておくよ」
「笠木さん、どうもありがとうございました。愛理沙ちゃん。3.5トントラックに乗ってもらってそのままお店にいいかな?愛理沙ちゃんの見つけた8トンの総輪駆動は明後日に引き取りしたいけどいいかな?」
「はい、悟瑠さんの都合のいいところで。百合先輩の車が先ですもんね」
「そうなんだけど、百合リンの車って部品の在庫が無いのよ」
「そうなんですか?」
「総輪駆動なんで意外に自由度無いの、あたしが譲ってもったカービーちゃんなら年代近いんだけど流用楽なのよ。調べるとエンジン換装しようとするとエンジンを美浜ちゃん位にダウンサイズするか?K型エンジンにしないとだめなのよ」
「そうなんですね」
「ここいちゃまずい。峠のお蕎麦屋さんに移動しよう」
僕らは内金を入れてエンジン2機引き取ると僕らはちょっとお昼には時間が早めだったがお蕎麦屋さんに移動してお蕎麦屋さんに入って
雅子と愛理沙ちゃんと続きをしゃべっている。
「部品ないんですね。大変ですよね」
「それと愛理沙の車の部品がどこまでそろっているかなんだけど、ババロアちゃんやった時の部品はあるし、あの頃のエンジンって建機でも使ってるからまだ部品が出るから楽なのよ」
「そうなんだ。百合先輩の車は?」
「そこなのよ、車見たけどエンジンルームが狭くてターボが乗らないの。愛理沙のはキャブオーバーだから何とかなるのよ。元からターボの設定あったし」
「それで」
「そうなんだよ。百合ちゃんゼットワンのメーカーにはボンネットにV8エンジンの設定がないんだよ。直6だけの設定だからエンジンルームが狭いんだよ。雅子のはエンジンをコンパクトにしてターボつける」
「そうよ。百合リンのボンネット総輪駆動はキャビン変えたの。ターボ乗らなくて。でも、あのメーカーには載せ替えるキャビンも無いのよ」
「そうなんですね」
「うん」
僕らはお蕎麦を満喫すると愛理沙ちゃんに3.5トントラック乗ってもらって出発した
「愛理沙、スーパーにはいけないけど引き渡しね。何かあったらすぐに連絡ね」
「はい、ありがとうございます。さっき乗りましたけど。パワーアップ体感出来ていいです」
「じゃあよろしくね。百合リンのゼットワンの部品次第ね」
「帰ったら鈴木さんたちに聞いてどのくらいで仕上がるか聞くよ。言う通り内外装ボロボロだもんね。高尾さんのところのバスみたいにがっちり防錆してないよね」
「そうねえ」
「ああ、せめてもの救いは仕舞われてた場所が雨風と日が当たらないことだな。野ざらしならもっと朽ちてるよ」
「そうね。愛理沙またね。明後日8トンの総輪駆動の引きとりね」
「お願いします」
僕と雅子はミックに乗って愛理沙ちゃんは3.5トントラックでそれぞれの場所に帰って行った
ミック君の中で雅子に聞いた
「ところで雅子はM10エンジン買ってどうすんだ?まさかカービーちゃんに積むとか?」
「うん。お兄ちゃん、せっかくカービーちゃんにEP100積んでもらったけど新しいM10ターボにして欲しいなあ。排気量同じようなエンジンにして扱いやすさ出したいの。それにM10って結構回るってことで」
「排気量下げないってやつか。OKいいよ。それで行こう」
「うん、元々のポテンシャルはEP100が上かもしれないけどエンジンが新しい方がいいじゃん」
「ってことは狙いは330psの110kg・mだな。このエンジンもEP同様コンパクトなんでいけるよ。エギゾーストノートマニフォールド作ってもらうか」
「パパにお願いするのね。ツインスクロールかしらね」
「うん、そっちの方が干渉しないから良いよ」
お店に帰ってくると隆弘と一緒にエンジンを降ろしてオーバーホールの準備して鈴木さんにゼットワンの内外装は直すのにどのくらいかかるか聞いてみた
「現車詳しくみないと何とも言えないけど。フレームがいってないなら1月もあれば」
「ありがとうございます。とにかく車持って来よう」
「あたしが百合リンに都合を聞いておくよ」
「よろしく」
「お兄ちゃん、愛理沙の引き取りでもしかして先に取り掛かるのかな?」
「ああ、フレームに錆が回ってないこと祈るよ」
エンジンを引き取って二日後、ばらしの途中だったが愛理沙ちゃんとの都合か合って2軸総輪駆動レッカーとミック君でフライヤーちゃんと部品を引き取りに行った。
途中で愛理沙ちゃんを拾っていくと
「あ、悟瑠さん。そこです。これだとバックで入らないと厳しいかなあ?」
「これは総輪駆動だからいいけど、雅子のミック君は空だから厳しいかなあ。2軸総輪駆動レッカーで引っ張って倉庫に入ろう」
僕は先にバックで先に倉庫への道を上って
「雅子、そっからバックで入ってきて。デフロックかけて」
「はいよ」
雅子がゆっくりとバックで入ってくる、僕も総輪に駆動力をかけてゆっくりバックしていく。
ミック君を操る雅子の腕は大したものでオールシーズンタイヤと積んでいたノーパンクタイヤの助けもあったのか?僕が助け無くても登り切ってしまった。
「愛理沙、このフォーク使えるのね」
「はい、これはここの荷物運びだして使ってました。先輩凄いですね。この前来た時は6×4平ボディが苦労してましたよ」
「そうなの?デフロック入れて一定の速度でゆっくりバックすれば問題ないわよ」
「そうなんですね」
「もしかしてその車ってクラッチペダル無しのAMTかも、それだと苦労するよ。特に雨上がりの後だと染み出るからね」
「タイヤもね。この車はマッドアンドスノーだよ。縦溝だと土は全然噛まないから」
「そうなんですね」
「そうそう、愛理沙ちゃんのもオールシーズンタイヤにしてあるよ。平たん路なら少々の雪は大丈夫」
「もしかしてお兄ちゃんのマーシーちゃんも?」
「愛理沙、もちろん、全部そうやってあるよ。これから引き取るフライヤーちゃんも、タイヤは全部オールシーズンタイヤにするよ。あ、8トンの総輪駆動はフライヤーちゃんね」
「先輩、もうニックネーム付けたんですか?どうもありがとうございます」
「そうよ。譲さんの車にも全部付けちゃった。そのほうが愛情沸くでしょ」
「そうですね」
僕と雅子と愛理沙ちゃんで倉庫の奥にあった部品とエンジンが抜かれたフライヤーちゃんを積んで帰って来た
「愛理沙、このエンジン8DC8エンジンだよ。この人先見たねえ。このエンジンは結構長く生産されたから部品残ってるし産機でも使ってるよ。DC9の噴射系部品も使えるからいいよ。愛理沙のババロアちゃんもそうだかんね」
「そうなんですね」
「うちにまだ3機も在庫あるよ。このところちょっとは出たけどね」
「うわあ、残ってますね」
「愛理沙ちゃん。この車フレームに錆がなくていいよ。それにキャビンも電気とおしてあって錆びてないよ。次は百合ちゃんの車だな」
「そうなんですね、どうして電線つながってるかと思っていたんです」
「僕も初めて見た。LED電球つけて途中に車体とフレーム噛ませてある。電子がいつも供給されるから電線が錆びないとの一緒だよ」
「へええ」
雅子と愛理沙ちゃんが感心していた
「この持ち主は直す気満々だっただろうね」
「そうなんですね。大事に乗ります」
愛理沙ちゃんが言うので鈴木さんに全部チェックしてもらって防錆することにした。
次の日、百合ちゃんの車を取り寄せた。
「あれ?これも錆びてない?」
「工場長、ほら。ここに電極つなぐターミナルがありますよ。それにこの車の持ち主も小笠原のお嬢ちゃんのと一緒」
「そうなんだ。それじゃあ大丈夫だ」
「これなら一月もあれば直ります」
「2台、やりましょう。お願いします」
「承知しました。こんなに楽でいいのかって思いますよ。アンダーコート剥がして防錆メッキして電着塗装ですね。大丈夫です。ここにはフルサイズトラックがどぶ漬けできるブースがあるんで楽ですよ」
「僕らは雅子のエンジン積みかえやります。後は愛理沙ちゃんのエンジンオーバーホールと百合ちゃんのエンジンのオーバーホール」
「お嬢さんがデコちゃんと呼んでる車のクレーンも完成です」
「どうもありがとうございます。これで救援も楽になります」
僕らの仕事がひと段落着いた週の週末はミニサーキットでTSカーのプラクティスをやっていた。雅子たちの車の車体関係を調べて溶接が傷んでいたところを直し、スポットをすべてレーザーで溶接しなおしていた。
ロールバーもつけ直したのでセッティングの変更要否を見ていたのだ。
「雅子、脚はいじってない。変更いるなら変えるぞ」
「うん」
そう言うと雅子は走りに行った。
一緒に来ていた愛理沙ちゃんと百合ちゃん、隆文も走っていたのだ。
「お兄ちゃん、ちょっと後ろがブリブリいっちゃう。もうちょっと後ろ落とした方がいいかも」
「わかった。まずは方向があってるか見るから、スタビとってみようか?」
「うん、アライメントじゃなくてロール剛性かどうか確認ね」
「その通り」
僕は後ろをあげると、リアスタビのコンロッドを片方外して
「雅子、これでドアンダーならロール剛性だよ」
「OK」
雅子が走りに行った。
次に入って来たのは愛理沙ちゃんで、
「悟瑠さん。いいですか?後ろが踏ん張らなくて」
「そうかあ、同じかあ」
「先輩も苦しんでましたね。ちょっと気になったのは前に対して後ろの方が負けてるんですよ。車体が後ろが曲がってるって言えばいいのか?」
「ああ、そう言うことか。わかった。レーザー変位計使おう。5機あれば良いな」
僕は思い当たるところにレーザー変位計をつけて
「愛理沙ちゃん。もう一回走ってもらえる?ドリフトしてもok」
「はい、行ってきます」
すると雅子が戻ってきて
「お兄ちゃん、なんかさあ。後ろの方が曲がってる感じする。高速になるとオーバーになっちゃう」
「ああ、多分前が固まりすぎた。それなんで相対的に後ろの方が弱くなったんだよ。愛理沙ちゃんに頼んで変位計つけて走ってもらってる」
「そうなのね。同じハッチバックだもんね」
「まあな、雅子の方がフロアや骨格の鉄板が薄いんだよ。それが気になってなあ。うまくロールバーで調整するよ」
「そうね。それがいいよ。バラスト積んでるくらいだし」
そう言っていると百合ちゃんと隆文も入ってきて
「兄貴、なんかバランス崩れてるよ。前の入りはいいけど全然後ろがふんばってくれないって」
「隆弘さん、あたしのも、後ろがベナベナした感じ」
「悟瑠、前を強化し過ぎたか?後ろがバランス崩れたって」
「雅子も愛理沙ちゃんも同じこと言ってるよ後ろに環状構造の鉄板貼るのと開口部をもっと補強だろ、ドア周りとか」
「そうだなあ。やっぱりと思ったよ」
「隆文のは特に後ろの窓がでかいから」
「そうだなあ、今日は仕方ない。また次の機会にか?」
「いいことにレーザーが10機ある。雅子、データ取れるだろ」
「うん、この車を作った時のデータがあるから同じ場所とって比べるのはできる」
「それで行こう」
「愛理沙ちゃんの車は僕がデータ取りたいところ有るから走ってみるよ」
僕らはその後の走行時間めいっぱい使って4台の車に変位計をつけてデータを取った。
「明日は無理だな、次回は一月後なら取れるよな。ちょっと早いがアジトにいって解析結果見てみよう」
「うん、そこで補強入れて取ってデータとって見よう。走行会を企画だ」
「お兄ちゃん、任せて」
僕らは一旦アジトに戻ってその日に取ったデータと前に取ったデータを比べていた。
わかったのは全部の車が後ろの剛性上がり代が前の30%もないことだった、これでは確かに前が固まった分どうしても後ろの方が弱いと感じてしまう。
特に隆文の車はドアの後ろの窓の変形が補強前よりも大きくなっていて一番弱いところに力が集中してしまったようだ。
「うーん。これは盲点だなあ。他のKPも同じ悩み抱えているのか?」
「隆弘さん、KPの画像見ても補強されてるとは見えないよ」
「そうか、ってことはだ。うーん。俺たちがフロント固め過ぎか」
「ってことは、やっぱりフロントやりすぎだったな」
「前後のバランスとか、ベテランにはノウハウあるんだろうな。こっちはまず窓枠補強するよ」
「それがいいよ」
「お兄ちゃん、みたけどさあ。あたしと愛理沙の車の差ってロールバー着地点の剛性が全然違ってることよ。愛理沙の方はあたしの車の倍くらいありそう。それなんで愛理沙の車の違和感があたしのより少なかったんでしょ。百合リンの車とあたしのはいい勝負。ちょっと百合リンの車の方がホイールベース長い分変形量でかい」
「そこは、リンクサスとリーフの違いもあるよ。リーフはちょっと苦しいよ。ショック取り付けの剛性が出ないって。百合ちゃんのはハッチバックじゃないけど後ろのウインドウのところの変形がでかい。これもKPと一緒で補強前より変形してる。しかも床も変形してるよ。後ろのウインドウ周りの補強がいるってことだよ」
「そうね、リーフはばねの取り付け点の剛性はあるけどバンパーラバーのところは弱かったってことね」
「そこなんだよね。脚を長めにとってるからねえ。とにかく、後ろの補強方法考えて雅子の計算式でやってみるよ。静剛性でいいから。次回迄鉄板作って貼ってみるよ」
「うん、それがいいよ。データも取るんでしょ」
「もちろんだよ」
「お兄ちゃん、ちょっと画像あるけど。あんまり補強されているように見えないんだよね」
「そこだよ、僕が間違っていたみたいだ。前はもっと緩くていいんだよ」
「よかった。悟瑠さんでも読み外すんですね。いつも完璧だから」
「愛理沙、いつも一緒に居るとお兄ちゃんって結構チョンボやってるんだよ。まあ。それもいいんだけどね。毎回完璧なんてあたしが追いつかないって」
「そうですね」
「百合ちゃん、僕もまずったようだ。窓ガラスって実は相当大事だってわかったよ」
「隆弘さん。よろしくお願いいたします。
その後は僕と隆弘で後ろ周りの補強方法を考えていて、一部を固めても結局弱いところが変形して結果があまり変わらないとわかったのだった。
「隆弘、奥が深いなあ」
「悟瑠、俺も勉強が足りないよ」
それから仕事して週の半ばになっていた、僕と隆弘、隆文は雅子のカービーちゃんのエンジンを再び載せ替え準備して、買って来た2機のエンジンと愛理沙ちゃんのエンジンをばらして休憩の時間になった時だった。
「愛理沙、言いたいことはわかるけどさあ。お兄ちゃん。DC9って乗るかなあ」
「いいけどミッションごと交換だよ。どう見てもこのままのミッションだよトルクが厳しいかなあ?愛理沙ちゃんがそれでいいならやるけど」
「そうなんですね。うーん。微妙。ミッション迄交換ですか?」
「絶対OKって言えるのはDC8までだよ。幸い建機や産機のエンジンになってたから補修部品は何とかなるよ。東南アジアじゃあ現役だからねえ」
「わかりました。コストも考えるとエンジンはオリジナルでいきます。それならついてきたDC8を積んでくださいね。コストも考えます」
「承知しました」
愛理沙ちゃんは引き取ってきた総輪駆動の話が終わると定期点検が終わったスーパーの中型標準移動販売車を運転して帰って行った。
その後、午後の休憩時間に事務所で僕らが休んでいるとドリュドリュドリュドリュという排気音が聞こえ、百合ちゃんが超低床船底で何やら古い総輪駆動を乗せてきた
「雅子、悪いけどお兄ちゃんがこのWD81を手に入れちゃって。仕事で解体に行った倉庫で動力源になっていたのを引き取ってきちゃったよ」
「え?そんなの有ったっけ?お兄ちゃんしってる?」
「うん、6DC2エンジン積んだボンネット型の8トン積み2軸総輪駆動だ。カービーちゃんと同じ時代の車だよ。動力源って?」
「うん。全体を浮かせてタイヤのところに継手をつけて2軸から動力とって機械を動かすのに使われてて、電気が引けなかったみたいでそこでエンジンで機械を回して作業してたの。立て直してソーラー発電にして小型の発発に交換するから処分してって言われたの。それも抹消登録が残ってるのよ。厄介なことに」
「ってことは公道復帰?」
「うん、伊吹君ではオフロードコース走れないから。いつも練習で使ってる6×6クレーン車が最近空いて無くて練習する総輪駆動無いの。あたしがゼットワン公道復帰頼んでるの知っていいなあって言ってるのよね。今はママの美浜ちゃんで走ってるんだけどこれもママの仕事とバッティングするからこれ見つけてやったーだって。このWD81ってエンジンが結構調子悪いとか。エンジンはもう修理に使う部品が無くて他のエンジンに載せ替えお願いだって」
「うーん、公道復帰するとしたらV8の8DC8積むしかないよ。V6に使えるいい噴射ポンプがないよ。かと言ってコモンレールにするには直噴じゃないから大掛かりになりすぎてむずい。それなら同じキャビンでV8の8DC2積んでるW122っていう総輪駆動のトラクターがあるから8DC8積んじゃうって手がある」
「やっぱり。ですよね~。6DC2はプレコンバッションですものね」
「まだピストンは何とかなるけどね。ポンプがないんだよ。ってことは8DC8を積むのかなあ。W122には同じキャビンでV8の8DC2を積んでるからWD81に乗るのは確かだよ。在庫のエンジン使うよ」
そう言っていると
「悟瑠さん、よろしくお願いいたします。百合、どうもありがとう。エンジンはV8になるんですね。排気量大きくなるのは乗りやすくなるんで歓迎です」
「「「はあああ」」」
僕と雅子、百合ちゃんが大きなため息ついていた。 遅れて入って来た譲さんは満面の笑みでお願いしていたのだった。
やっと旧車の整備が終わったと思っていたらまた古い総輪駆動がくる
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