第六話 イチゴちゃん進化と新たな車が
3回目のバトルに行く雅子
アップグレードしたイチゴちゃん
どうなる?
「お兄ちゃん、イチゴちゃんアップグレードしてくれてありがとう、でさ、来週はまた遠征だって、今度は○波山。ほんとよく見つけるよね」
11月、文化の日がある週の金曜の夜だった。
いつものように仕事から帰ってきた妹の雅子が、通勤用の軽自動車から降りて家に入ってくるという。
「うん、聞いたよ、今までよりも遠いからね、どうしようか?今日下見にいこう、新しい車の調子を見るのも兼ねて、サザンで行こう」
「あ、新しいのね、お兄ちゃんまた見つけたんでしょ」
「うん、グランツの4WD25ターボ+ATなんだけど、エンジンを〇B30に積み替えてMTに換装した。車体の補剛はタワーバー位しかしてないから、ほんとに様子見だよ」
「凄いじゃん、エンジンは?もっといじったでしょ」
「ばれたか、サンゴちゃんと同じ30のターボ改3.0、4WDなんで、駆動系全部移植。クランクは○ロワーのフルカウンター、ミッションは34GTRの6MTだ。FDは3.54ブロックの剛性考慮して450psにしてる。ETSの4WDなんでウエットでパワーオーバーになりにくいだろ」
「お兄ちゃんって、これを誰かに売るの?結構気合入ってるじゃん。前期の顔でしょ。同じ大きさの丸目4灯いいよね」
「うん、公認とって、隆弘かな?普段使いが欲しいとか言ってたよ。あいつは4WD欲しいって言うから。」
「ふーん、このスタイルにこのエンジンと駆動系って、猫の皮かぶったライオンみたいね。まあブロじゃないからいいか」
「あのなー、そうなんだよな。前期の顔に改造してあるのは、僕の好み」
「へー!これいいや、これって脚は?もういじったでしょ。そこにダンパーの空き箱あるじゃん」
「雅子にはお見通しだね。うん、これは、フロントは倒立で、後ろも同じドカルボンだよ。バネは20mmローダウンのレートは50%増し、後ろのメンバーのゴム関係は○TRで、Aアームも34用、ラテラルロッドは定番のFY3〇のピロだよ。テンションロッドはグランツの2WD用。まだ車体補剛してないからこの程度が限度だよ」
「そうなのね。じゃ、見に行って、データと道の画像撮ろうね。計測器積むね」
「おう。センサー頼むぜ」
雅子のイチゴちゃんは進化している。
この前、エンジンが調子悪いというので、オーバーホールしたら第4気筒目のピストンが溶けかかっていて、どうやら、そこだけ燃調が薄かったようだ。
そこは治したのだが、シリンダーブロックにクラックないかを見るのを忘れていた。
イチゴちゃんは、エンジン全体がくたびれていたようで、シリンダーブロックにクラックが入っていたのだった。
雅子は鋭い感性で、いつもとの違いを感じ取って僕に言ってくれたからよかったが、バトルの最中に亀裂が広がったら、エンジンブローだった。
イチゴちゃんはS○エンジンから、K○24改ショートストローク、ボア89.5×ストローク86の2.16L仕様に積み替えたのだ。
このエンジンは、知る人は某レース用エンジンとヘッドの構造が似ているという。
そんなエンジンなので、アメリカに頼んで特注のクランクとカムを作ってもらって、強化バルブスプリングを入れ、ポートの機械加工、カム山の逃げ加工すると簡単に500psになってしまう。
しかも、ヘッド形状がいいので、アンチノック性もいい。
それも相まって、4000回転辺りから上のトルクが膨らみ、しかもバルブ回りがシンプルなのでレブリミットも500回転高くなった。
乗りやすさを出すために400psでやめている。
雅子はパワーバンドが広がって乗りやすいとニコニコになっているのだ。
僕らはサザンに乗ってアジトとしている祖父母が住んでいた家を出る。
約1年前、祖父母は病院に通うのに不便ということで、僕らの実家に入った。
それと入れ替わりで雅子と僕が祖父母の家に住んでいる。
最寄りのインターから高速に乗ること約1時間半、桜○でおりて、一路目的地を目指す。
「お兄ちゃん、意外に遠いのね。これ快適ね。寝そう」
「うん、そうだね。エンジンはいいけど、脚がちょっとかなー?ボディもやわやわだしなー」
「そうなんだ、結構静かで遠出にはいいかもね」
「うん、そうだね、いい車だよ。RTS剛結してみよ」
「もう、お兄ちゃんっていじること考えると止まんないんだから」
「あ、ごめん、ついつい」
そう言っていると、目的日に着いた。
走らせてみると、思ったより道が狭い。
追い越しをかける場所も限られているし、速度も赤○よりは低い。
上り切って、頂上で雅子に変わる。
「雅子、こいつはいったら止まんないと思ってくれ、とにかく車体の剛性が足りてないのと、遮音がしっかりしすぎていて、速度感が無いから気を付けろ。そうだ、タイヤも普通の低燃費ラジアルだから」
「うん、わかった。イチゴちゃんやサンゴちゃんのつもりで行くとやばいってことね」
「そうだよ、まあ、ロックんやナナちゃんとおもって乗ってくれ」
「はーい、4割くらいかしら」
「そうだね、挙動になれるまではちょっとハイペースのドライブとおもって」
「はーい、うわ、なにこれ?ハンドル軽すぎ!え?これじゃタイヤの向きがわかんない。手ごたえもなさすぎじゃん」
雅子はステアリング操舵力小ささに驚きながらも4割と言ってペースを抑えて下っていく。
そうはいっているが、その走りはウルトラスムーズだ。
隣に乗っていると、ついつい寝てしまうくらいなのだ。
初めて乗るコース、車でもあっという間に乗りこなすセンスは見事というほかない。
それは、ホームコースでの練習も怠らないのもあるだろう、自分で課題を見つけてはそこを進化させる練習をする。
この前、イチゴちゃんの調子が悪くて、僕のサンゴちゃんでバトった時もあっという間に乗りこなして勝ってしまうくらいの腕だ。
しかも、頭がイチゴちゃんよりも重いサンゴでもきれいに曲げていってタイヤも労わって走れる。
雅子はスーパーの制服を脱いでジーンズとデニムのシャツ、ドライビングシューズになっている。
妹の佐野雅子、普段はターボチューンされた軽自動車で会社に行っている入社3年目、4月生まれの21歳。
高卒ではいったスーパーの本社で経理をしている。
妹は地元の商業高校を断トツ1番の成績で卒業して、商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシックなら任せての技能をもっていたので、地元資本の大手スーパーの経理部に学校推薦で入って、高卒ながら3年目の今は大卒と同じくらいの給料をもらっている。
あろうことか?雅子は自力で各店舗から集まる情報処理集計システムを組んでしまい、今まで買っていたソフトが不要になった。
しかも妹が作ったソフトのほうが勤めている会社に事情に合っているのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とシステムのメンテナンス費用が浮いた。
万一、おかしなことが起きても、雅子がすぐに治せる。
それも褒美もあって、雅子は高卒では異例の速さで主任に昇格してしまったのだった。
それに集計の自動化を進めた結果、仕入れと売上関連の報告がほとんどが一目でわかるようになって社長も大喜び。
その成果が認められ、高卒の3年目途中で主任に昇格して、部下を持ってその指導もするようになったという。
7月からは今年入ってきた大卒を部下にもって指導しているのだから驚く。
その雅子が行くと言っているのは峠だ。
雅子は高校3年で免許を取ると同時に峠を走り始めて既に3年がたっている、あっという間に上手くなってその地域でトップクラスの速さになっていた。
得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入って全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中では雅子しかいない。
ダウンヒルなら、雅子が一番だ。
僕:佐野悟瑠は雅子より4学年上の3月生まれの24歳。
大学を卒業してすぐに家業の中古車屋に就職して3年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今は実家の中古屋の整備工場で働いていて、中古車の納車前整備やトラブルが起きた車の修理をしていて、時には中古車査定もする。
大学のころから家業の手伝い=アルバイトしていてMIG溶接機や、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。
加えて、○ントリペアも勉強して資格もとった。
僕は中古車で人気がないが、程度のいいFRを見つけては整備して雅子の走り仲間へ売っている。
必要ならエンジンとミッションの載せ替えもやるのだ。
今、僕と雅子は僕の同級生がリーダーを務める走り屋チームにいる。
僕はそのチームの整備係になっている。
今回のサザンと言っている車も年配の方が乗っていたのだが、免許を返納したので手放した車で、20年以上前の車ではあるが、事故歴もなく、穏やかに走っていたのだろう、車体がしっかりしていたので、僕がスクラップにするのは惜しいと思って改造した。
4WDなのでエンジンとミッションを載せ替えたのだ。
「お兄ちゃん、これ乗ってて気が付いたんだけど、イチゴちゃんとか、サンゴちゃんみたいに素早く動かないから先読みが必要なんだね」
「うん、そうだよ、イチゴちゃんの感覚で運転したら、曲がんなくってどっか行っちゃうだろ」
「そうなのね、ねえ。このエンジンどのくらい出ててるの?なんかさ、3000でも十分速いんだけど」
「うん、そうだね。いくつだっけなー450ps仕様かな?リミットは7600だよ、サンゴちゃんと同じ3.0だから排気量で得してるよ。低速からターボ効かせてゆったり乗る方向の車だから」
雅子は少しエンジンの回転を上げた。
ブースト計が1.0を示した。
あっという間に6000超える
「雅子、どうだよ、このパワーって言うかトルクだけど」
「恐ろしいね!上りも物ともしないでしょ、この車重も」
「ああ、隆弘にのせてみてだね」
「いいなー、あたしが乗ろうかな?エッ○さ、あたしの会社の同期の女の子が欲しいっていうんだ。」
「へー、いいじゃん、ちょっと税金高くて燃費悪いけどね」
「まあ、いいよ、最近イチゴちゃんで行こうか迷ってるんだよ。エッ○だと上りが弱いから」
「そうか、まあ、じゃ、これ雅子が乗れるように作るよ」
「いい?やったね。同期にエッ○は譲ろ、彼女もターボ無いと遅いって言ってたもんね」
「そうか、まあ、それじゃ、ひと月かかるからさ、どんがら迄ばらして、錆とか見るからね、エンジンとミッションはこのままでいくから」
「うん、お兄ちゃんヨロね」
そういうと、雅子はターンして上りから下りのコースを見ていた。
今日の相棒のサザンは○33セドリッ○で、珍しい4WD仕様。
RB2〇ターボを積んだモデルで、後期型のグランツだ、それをいじって前期顔にスワップしている。
エンジンはブロックをホールデンの3.0仕様流用、クランクはねじりに強いクロワー製のフルカウンターにしてある。
ミッションは○34GTRの部品をそのまま組んでいる6MT仕様、ファイナルは3.54にしてある。
ペラは某製作所特注の強化競技用をサザンちゃんのホイールベースに合わせた特注品で丈夫でしかも軽い。
特製のクランクと○B26用のピストン、ビスカストーショナルダンパーを組んでハイパワー対策してある、ターボはシーケンシャルツインにしてパワーバンドを広げてある。
もちろんシリンダーもダミーヘッドとダミークランクを組んでボーリングしていて、設計値に近づけてある。
狙いはフリクションの低減で気持ちよく回るエンジンに仕上がっている。
ブロックの下にはプレートを入れて補剛、サイドにもがっちりプレートとスケルトンで補剛してあるので静かなままリミットまで一気に行くので気が抜けない仕様だ
ベッドも26ヘッドにして、ワンオフのサージタンク、6連スロットル仕様である。
最高出力もターボの力をかりて約450psを6400回転で叩きだす。
見かけは全くいじってないので、ぱっと見はおっさんのセダンに見える。
あろうことか前のオーナーのレースのハーフカバーもそのままにしている
今後はボディもいったんどんがらまでばらして、弱いと言われている、センターフロアとリアフロアのつなぎをしっかりさせたいのだ。
冷却に関しては、前置きインタークーラーと空冷式オイルクーラーも組んでいて4WD純正のインタークーラーの場所に組んであるので、オイルクーラーがあるとまではパット見では全く分からない。
しかし、室内を覗くとこれも只ものでないことがよくわかる。
純正にない6MT仕様で冷却関係の各メーターがダッシュボードに並んでいる。
オイルポンプ焼付き対策でサンゴちゃんと同じくドライサンプにしてるのもこの車のポイントだ。
ブレーキもこれから○34用の19インチ大口径4ポットベンチに換装する予定だ。
いまは純正のGT用タイヤとホイールを使っているので、低いギヤで全開にするとパワーに負けてしまう
コースのデータも取って、帰途に就く。
帰りは雅子の運転だ
「お兄ちゃん、イチゴちゃんね、なんか、500回転かな?上回してよくなったからさコーナーのつながりが良くなって」
「そうか、レブは9500だよね。以前はブロックとヘッドの関係で9000だもんね」
「うん、そう、4000から上がパワーバンドでしょ。もう乗りやすくって。こんなエンジンよく見つけたわね」
「ああ、これはワンボからの移植だからね、雑誌にさ、このエンジンのヘッドの基本設計がレース用のに似てるって書いてあったから、取っておいたんだよ」
「そうなんだ、さすがお兄ちゃんね」
「うん、バトルは来週だね、何が来るかわかんないけど踏めるかだな」
「OK」
そういっていると雅子と僕はアジトについていた。
試走したあと、家で動画や取ったデータを分析をしていた。
雅子はエクセルデータ落としたらマクロで走行軌跡から速度、ギヤ位置、エンジン回転までわかる分析ソフトを作っていたので、分析中はコンピューターに任せていつものようにお風呂に入ると寝落ちしていた。
やはり、バトルの道は狭いが追い越しポイントできっちり抜けるか、ブロックできるかで勝負が決まりそうだ。
イチゴちゃんはタイヤを17インチでいいサイズがあったので、45扁平から40扁平にしてみることにした。
ホイールは〇34GTターボ用から○33GTR純正鍛造品にしていた
減ったインセットの分だけトレッドを広げたのでフェンダーはワイドに変更して、はみだしを抑えている。
次の週、僕と雅子はイチゴちゃんをローダーにのせて、筑○山に来ていた。
セッティングを合わせ、一往復して休んでいると、走りや仲間もきた。
「雅子、調子はどうよ?」
隆文が声をかける。
「ちょっとイチゴちゃん進化したからさ、あたしはやっぱりイチゴちゃんがしっくりくるのよね」
「雅子、今日も頼んだぜ、ダウンヒルじゃ雅子がチームのトップだからね」
「ま、何とかね、隆文、ヒルクライムはヨロね」
「OK」
そういうと、雅子と僕はイチゴちゃんで足回りのセッティングを再開する。
分析ソフトの結果を入れてきたといっても現地での調整がいる。
「うーん、ちょっとアンダー弱いのよね。下にパワーバンド広がった分、低速で踏んじゃうとお尻振り振りしちゃう」
「そうか、後ろのダンピング2段下げてみよ、高速に合わせすぎたかな?元々、アンダー強いセッティングなんだけど、今回は前が抵抗になって後の荷重が抜けて踏むと行っちゃうのか」
「うん、ちょっと戻ってもう一回ね。ちょっと変えてみよ」
「そうだね。雅子、ここも右コーナーの処理で決まるから、駄目なら、後ろのスタビをあげるしかないね。これ以上前のロール剛性は落とせないでしょ」
「うん、でもまず、ダンパーでみてからね。だめならいじるよ」
もう一回下る。
こっちのほうで十分行けると雅子はいう、後ろが粘って低速でアンダーが増えてガンガン踏めるとして、Rrのスタビはこのままでいくことにした。
チームのもう一人のドライバーである隆文は雅子の一つ上でチームリーダーの隆弘の弟だ。
乗っているのはレガシ〇だ。
これはエンジンを2.2から2.5にしてパワーを稼いでいる。
ターボを換装して400kw仕様だ。
他にはロールゲージを組んである。
ブレーキはサンゴちゃんと同じ19インチの対向だ。
こちらのセッティングが終わってここのルールを説明して開始だった。
ここは半端な広さなので、後追い方式だ。
とはいっても追い越しポイントが結構あるので、油断ならないコースだ
今回は先にヒルクライムは済んでいて、隆文が既定の秒数逃げ切って勝利だった。
次のダウンヒルに備えて雅子と僕はスタートラインに車を停めている。
相手はBZ○だった。
ロールゲージを組んで、シュパッという音がすることからすると、ターボつけて結構いじってそうだ。
雅子がイチゴちゃんのタイヤをざっと自分の目で見確認して乗ろうとしたときに、
「おめえ、この美人に負けたら女装の刑だぞ。」
そう相手チームリーダーらしき奴がいうのが聞こえる。
雅子が反応するがププッと吹き出してしまった。
乗り込んでドアを閉め、ベルトを締めると
「まあ、何を言っても勝ちにいくことに変わりないわよ。お兄ちゃんナビヨロね。女装みたいよねえ。きゃははは」
いつものように雅子はバトルモードに切り替わって、リラックスした中にも眼の中の炎が見える。
雅子が完全に乗ってしまった。
走りや仲間も”こりゃいけるぜ”という顔している。
そう、雅子は僕の前ではおくびにも出さないが負けん気がめちゃくちゃ強い、その負けん気で突っ走っている。
僕をナビシートにのせてスタートだ。
レーシングして、スタートの合図を待つ。
一コーナーを立ち上がってバトルのスタートだ。
1回目は相手の先行、雅子が後追いだ
「雅子、まずは8500以下で走れ、舵角はこの間のバトルのようにするぞ、S〇よりちょっと頭重いから気を付けろ。相手の隙ついて抜ける時抜くんだぞ」
「OK、お兄ちゃん、案内ヨロね」
2速でタコメーターの針が8500に近づく。
3速にたたき込んで更に全開、1コーナーは右だ、ターンイン前で2速におとし、相手はしっかりインを締めて下る。
雅子も同様だが、相手の車はどうも高回転に伸びがない。
次はすぐ来るが、2速8500まで上がる前にブレーキング、今度は左コーナーだ。
ここもしっかりインを締めてこの前のバトルを応用して荷重移動を目いっぱい使って走る。
タイトではエンジンが重くなった分はややフロントヘビーになったのでフロントタイヤを極力労わって走る、タイトを抜けると一回目の中速ステージだ。
「雅子、ここからは9500までいくぞ、今は前が様子見している。最後のちょっとある高速に備えているんだ。多分、そこでこっちを陥れてちぎるつもりだ。なら、中速終わりの所で仕掛けるぞ」
「OK、レブ目いっぱいね。作戦は任せた」
最初の中速ステージで、シフトチェンジのタイミングを遅くしようとするが、相手は意外に伸びないので引っ張れない。
「まさこ、ここまで締めて走ってるってことは次のコーナーで多分アウトが空く、広いから並べばその次のコーナーはインになる、行くぞ」
「え?いいの?」
「立ち上がりで遠慮なく9500まで回せ。このエンジンは最高10000迄いける様に腰下にプレートを組んだから」
僕は雅子に指示を出した。
その通り、雅子が踏み込む、立ち上がりでアウトに並んで一気にリミットの9500を目指すイチゴちゃんのタコメーター。
相手は虚をつかれたようでブロックしようとシャカリキになってきた。
その刹那、相手はレブリミットになってセカンドからサードにシフトアップ、雅子はセカンドで10000までぶん回し一気にアウトからノーズ一つリードする。
相手は気づくのがちょっと遅かった、完全に雅子は相手をリードしてそのまま次のコーナーへ突入する。
「いいぞ、雅子、対向車なし、インから目いっぱい攻めろ。荷重移動だ」
「はいよ」
右コーナーを立ち上がって9500まで回して3速へ。
そこで勝負はついた。
相手は雅子に並ばれていて、アウトからは2重のガードレールが目の前に壁のようになっていて相手は恐怖が先立ちターンインが上手くできない
雅子は荷重移動をしっかり使って有利なインから立ち上がり、相手をぶち抜いた。
次の長めのストレートだ。
BZ○は立ち上がりで伸びがなく追いつけていない。
どうも高回転の伸びが無くなっている。
窓を開けて聞いていると、相手のエンジン音にカタカタという音が混じってきた。
どうやら、エンジントラブルの様だ。
短めのストレートを2速9500までまわして、左ヘアピンへ
2速そのまま右の広めのヘアピンをクリアして次のコーナーに飛び込む
相手はスローダウンしたようだ。
「雅子最終は気を付けろ、オーバースピードだと刺さるぞ」
「OK、任せて」
雅子は最終をきれいなドリフトで全開のまま抜ける。
「あとはゴールだ」
「はいよ」
3速全開のまま右コーナーを抜ける雅子。
抜き去ってぶっちぎりでゴールインだった。
約20秒遅れてスローダウンしたままあいてはゴールイン
エンジンからカタカタと音がする
なんかトラブるのようだ
「雅子、お疲れさん。抜き去る時に鳥肌立ったぜ、よくやったよ」
「イチゴちゃんね、今までよりも下からトルクあるし、上も500回転広がったんだ、いざとなったら10000迄いけるの。パワーバンド広くって乗りやすいんだもん。お兄ちゃんのお陰、いいエンジン組んでくれたの」
「乗りやすかったか、さすがだよ、あっという間にこのエンジンの特性にも慣れてんだもんな」
「お兄ちゃんのセッティングって、乗りやすいんだもん、いいエンジンよこれ。もうべた惚れ」
「雅子はー調子乗ってるぜ」
隆弘がきた。
「雅子、ぶっちぎりとは恐れ入ったよ。イチゴちゃんエンジン変わったばっかりだからヒヤヒヤしてたんだ」
「お兄ちゃんのエンジンとサスペンションのおかげ、もうこれめっちゃいいんだよ。」
「悟瑠、良いエンジンありがと」
「いいってことよ、イチゴちゃん前のエンジンが思ったより重症でさ。これに載せ替えるしかなかったんだよ」
「そうよ、急遽だったけど、お兄ちゃんのエンジンがいいからよ」
「さすがだよ、悟瑠は走れるんだよね、セッティングプロになれるよ」
「ま、いいってことよ」
僕らは帰宅する。
「お兄ちゃん、相手の弱点見抜いてたんでしょ。いきなり9500回転OKって」
「さすが雅子だ、そうだよ、相手はノーマルコンロッドで8000以上回すの無理なんだから、伸びの勝負で行けると思ったんだ」
「どうして?ノーマルコンロッドは無理なの?」
「まあ、水平対向エンジンの生産性でさ、コンロッドの切り方変えて斜め切りにしたんだけど、どうしても片方のシリンダーの方で力かかるところに切り欠きが来ちゃうんだ。昔のフラット4だと、組み立ては大変だけど、性能優先してたんだよね。それで高回転苦手になったからね。それにターボ付けもんだから更に負担かかったのさ」
「ふーん、さすがね」
「1500回転の伸びの違いは大きいってこと」
「もう、お兄ちゃんってがむしゃらに走らせているようで、きちんと考えているのね」
その後、ご飯を食べてアジトに帰るとサザン君をばらしていた
一旦どんがら迄パラパラにして、防錆加工や、弱いといわれるセンターとリアフロアの結合部を補剛する必要があるのだ。
まさか、これに雅子が乗りたいと言うとは思わなかった。
雅子が乗るならしっかり仕上げると気合を入れる僕だった。
あっという間に乗りこなした雅子
またまた勝ってしまった
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。