第五十四話 ミーテングでまた仕事を貰った僕らと古い総輪駆動のエンジンスワップと
デコトラのメンテナンスで忙しい悟瑠達がまた開催されるミーティングの運営スタッフになって
しかも大変な古い総輪駆動のエンジンスワップに奮闘
主な登場人物
佐野 雅子 ヒロイン 24歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、6勝目にトライ中。
家業の佐野自動車販売の中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーで経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許。2級整備士免許
レース以外の趣味:
オフロード走行。大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車:大型バス2台、大型総輪駆動、イチゴちゃん。
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 27歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許
カーキチ、スペックオタク 所有車:バス9台+大型総輪駆動、サンゴちゃん、三四郎君
加藤 隆弘
悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染、所有車両 大型総輪駆動、CBA-GVB。
加藤 隆文
隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。所有車 大型総輪駆動。ロックン
松尾 百合
雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。
所有車;武蔵君、ラムちゃん、美浜ちゃん、徳次郎君とエッちゃん
現在は丸松運輸の副社長 兄は譲さん
小笠原 愛理沙
雅子の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長。2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務 所有車:GXE10
兄は哲史さん
長野さん バス会社に居たが欲しい車が排ガスの関係で登録できなくて雅子のいたスーパーに転職。今は愛理沙ちゃんの上司 所有車所有車9メートルワンドアとNEとNE
狩野さん
運送会社にいたが首都圏の事業縮小で地方に転勤になったが偶然募集していた松尾建設に転職
所有車 6×4V10ダンプと6×4V8ダンプとND
「悟瑠、雅子、隆弘くん。急ぎでボンネットの総輪駆動にキャブオーバーの総輪駆動から降ろしたV8を乗せてくれだと。8DC8の予備エンジン持って来たよ。どうも6DC2が2気筒死んでるみたいで走らないんだと」
「仕方ない、デコトラベース車の作業が遅れるってことか。あ、でもいいことにうちに8DC9の在庫あるじゃん。オーバーホールも済んでるよ。それならフレーム系だけだなあ」
「悟瑠、それで行くぞ。8DC8はオーバーホールしてないらしい」
「隆文、仕方ねーなー、部品そろえてか。雅子。悪いけど取り寄せ頼むよ」
「いいよ。最低限そろえて。スリッパ―、ライナー、ピストン、ベアリングとゴム部品かな?カムはどうしようもないなら8DC9ベースで買えばいいのかな?」
「それでいこう。どっちも最高出力は2200回転なら何とかなるよ」
「お兄ちゃん、頼んでおくよ」
「隆弘、車引き取り行こう」
急遽段取り変更していたのだった。
僕と隆弘が念のため2軸のレッカー車で引き取りに行った
ボンネットの総輪駆動のエンジンをかけてみるとマフラーからはモクモクと白煙を吐いてしかもエンジンの振動もひどい。言うように2気筒が稼働してないようだ
「一応、エンジンとそれに合う8DC9用ミッションと10DC8に合う8M21用ミッションは準備しましたんでよろしくお願いいたします。荷台に積んでおきました。固定してますので」
「はい、それではボンネットの総輪駆動をこの2軸のレッカー車で持っていきます」
「はい、よろしくお願いいたします。」
「念のためボンネットの総輪駆動のプロペラシャフトを切っていきますね」
「ありがとうございます。手伝います」
オーナーと一緒に運ぶ準備していたのだった
「実はこの車古いけどパワステとクーラーとクラッチアシストを付けたんで運転が楽になったんです。キャブオーバーよりも運転席が低いので農園仕事に便利で使ってたんですけどとうとうエンジンがだめになって来たようです。急坂でパワーを搾りだす乗り方するのでその分無理かかったんでしょうね。それに水の汲み上げで使っているんでほとんどエンジンが回りっぱなしです。酷使されてたんですね。水の汲み上げに困ってまして」
「そうなんですね。急ぎます」
「この車の代わりが無くて修理したかったんで無理を聞いてもらいました」
「はい、なるべく早く直します」
「公認もお願いいたします。公道を走るので」
「承知しました」
2軸のレッカー車でボンネットの総輪駆動を引っ張りながら隆弘としゃべる
「隆弘、これって趣味の世界のようだけど実用車なんだね。パワステ付とはよくやったなあ」
「そうだなあ。パワステ無いといくらダートと言っても大変だもんな。水の汲み上げにも使うって言うからには酷使かもなあ」
「うまくやったねえ。それにクラッチアシストとクーラーとは。丸松建設の6トンよりも快適かもな。V8にしたらラジエターも大きくしたほうが良いなあ。お金が掛かりそうだけど代わりないってことだ」
「そうだね。話し変わるけどデコトラベース車の作業はエンジンは積みかえだけか、楽は楽だな」
「隆弘、シャシの錆がないかと隆文にマフラーを作ってもらえばいいか。鳴き重視だろ、単気筒はサイレンサーを純正品にする手があるな」
「そうだなあ。2リッターのNA用があればいいけど」
「径は45mmあれば十分だな」
「フルデュアル4本出しにして2本ずつ上下に並べるんだっけ?」
「そうなんだよ。鳴き側のタイコは5リッターのターボ用でいいか」
「そうだね。背圧かかり過ぎかなあ?排気ブレーキは4つつけるんだろ」
「そうしたほうが良いだろ。イベント用とか言ってたけど」
と、デコトラベース車を改造する方向性を喋りながら帰ってきた。
僕らは引き取ってきたボンネットの総輪駆動を工場のピットに入れて点検していると
「工場長、これって結構フレームが傷んでますよ。いくらなんでもここの補強はパワステを付けるには不足したままなんですよ。ブラケットつけたんですが既に溶接が剥がれかけててやばいです」
「だよねえ。無理はかかっていると思ったけど、クロスメンバー足りないよねえ」
「はい、不足してます。本来なればここにクロスメンバーを入れてブラケットの着地点を補強するんですよ、ここってステアリング操作の時に力かかるんでフレームの補強も兼ねて」
「そうなんですね、補強入れてもしかしてここのフレームの亀裂確認してですか?」
「そのとおりです、亀裂がないなら良いですが、あったらここは重要なんでこのセンターまで作り直しですよ。パッチ当てて誤魔化しは無理ですから。これはフレームの反対からパッチあてて誤魔化してあります。とにかくクロスメンバー入れるところに亀裂無いといいけど」
「鈴木さん、すみませんがこの車で時間がかかるところをからやりましょう。この車はPTOにポンプを繋いで農作業に使っています。急ぎと効きましたんでいつ修理完了するか連絡するので。僕らは乗っかってるエンジンをオーバーホールして直ぐに乗せられるようにします。」
「はい、30分後に」
「はい、よろしくお願いします」
「隆文、わりいがデコトラベース車のフレームのチェックとマフラー頼むぜ。叩きを上に2本並べて、鳴きを下に2本並べるんだと」
「兄貴、材料は何だい?耐久性のステンが良いのか?音質のスチールがいいのか?」
「ステンレスだな。耐久性重視とか言ってた」
「分かった。架装もおろしてだよな。エンジンも下ろすのか?」
「そのとおり」
「隆文、第2ピットだぞ。エンジンは在庫のオーバーホール済み8DC9あるから載せ替えだけだ」
「兄貴、悟瑠さん、それは助かる。早く終わるな」
「そうだな。期間短縮よろしく。おろした8DC9エンジンは時間作って新人の練習教材だよ。分解整備の練習用にする」
「OK」
「隆文、僕らはボンネットの総輪駆動のエンジンオーバーホールやるから」
「鈴木さんたちは?」
「ボンネットの総輪駆動のフレームの状態見てる。かなり無理くりな改造してて傷んでるかもって。クロスメンバー作っているよ」
「OK、じゃあ、僕は新人君と一緒にデコトラベース車やるよ」
「隆文、仕切り頼むよ」
「任せろ」
隆文は新人たちと一緒にデコトラベース車のエンジンと架装を降ろす準備していた。
そこに鈴木さんが来て
「工場長、幸いにも亀裂はないですよ。パワステブラケットを溶接しなおした跡があって結局、溶接強度が足りないのが幸いしてました」
「今回はクロスメンバー作ってですね」
『はい、クロスメンバー作ってがっちり溶接すれば大丈夫です」
「お願いします」
「はい」
「隆弘、エンジンやろう。雅子が部品入手できるかだけどな」
「再利用できるものはするだな」
「そうだよ」
「部品なくなってるからなあ」
「直噴ポンプも分解整備かな?」
「そうだね、噴射ノズルもオーバーホールだな」
「うまくいくと8DC11の部品使えるかな?噴射ポンプも」
「それならラッキーだ。2000年代まで作っていたから部品確保もまだ楽だ」
僕らはエンジンをばらしていた。
以前分解した8DC9とほとんど同じでまだ楽は楽だった。
スリーブの内径を測ってみるとほとんど減ってなく新品に近いと言うよりも小さ目だ。もしかするとオーバーホールしてあまり走っていなかったのかもしれない。
それにカムもそのまま使っても問題ないし、スリッパ―も交換してあって大丈夫そうだ
しかし、ピストンは新車から交換してないようでクリアランスが既定の倍くらいある
「悟瑠。径は8DC9のNAのピストンなら合いそうじゃん」
「ピストンが全く同じなら大丈夫と思うよ。排ガス規制で部番分けたか?部番は違うけど形はほとんど一緒だなあ。あ、燃焼室がちょっと違うなあ。コンプレッションハイトが違うぞ」
外したピストンと新品のピストンを比べながら言う
「ってことはストロークはコンロッド長でやってるのか?」
「ああ、たぶんな9の方がストロークが長い分ブロック高を高くしてるようだなあ。アレ?前期と後期でブロック高違うよ。ってことは後期からって言うか?まあいいや。これは幸いにも同じピストンが26個もあるぜ。いろんな改良入ってるのかな?って言うか親父は一体どんだけ在庫あるんだ?」
二つの資料も合わせて見比べているとどうも規制への対応なのか?途中でかなり変更が入ってるようだ。
「よし、このピストンを組んでおくか。なんとかなるだろ。同じ8DC8なら燃焼室形状がちょっと違うだけだ」
「幸い他は一緒だ。いまさ、外したピストンの径を測ったけど結構減ってるなあ、前のオーバーホールの時はスリーブは交換したけどそう言った理由かわかんないけどピストンはそのままかあ。スリーブって前期の物は8DC9と一緒か」
「だな。交換するか?」
「スリーブも減ってたらな」
僕らはコンロッドのメタルの表面の荒れ具合を測っていた、いいことにというか何回か交換したようで今ついているのはほとんど痛みが無くてそのまま使えるのがわかった。
「スラストもそのままで行けるか?」
「スラストは替えよう。見ると減ってクリアランスがでかい目だよ。ちょっとつめ気味にしておこう。というよりもバリがないか見ようぜ」
「そうだ、忘れてた」
僕らはブロックや他の部品を洗浄すると新しいスラストベアリングを確認して組み込んでいった。
新品のゴム部品を組んでもとに戻していく。
途中で隆弘が言う
「悟瑠、このエンジンは前のオーバーホールの時の洗浄が甘かったようだなあ。洗浄した液をみたら砂が結構あるぞ」
「うん、そうだね。ブラストの洗浄が悪いのかよくわかんないけど、洗浄が甘かったのは確かだ。不思議なのはスリーブが減りにくいような加工したのかなあ?ピストン減りすぎ」
「まさかねえ。ちょっと見るか」
僕と隆弘は外したスリーブをルーペを使って観察していた。
比べる対象は新品のスリーブだ
「これってまさかねえ。鉄塊から削って作ったとか?鋳鉄じゃなくて炭素鋼だ」
「俺もそう見えるぞ。鉄塊っていうか丸棒か引抜き管だなあ、丸管というか電縫管じゃなくて溶接跡のない一体ものだからな」
「ってことは丸棒か引抜き管を削り出して作ったってことか?」
「そう見えるな。結構手間がかかっているように見える」
「やるなあ、ってことは摩耗に強いのかあ」
「鋳鉄よりは硬いからその分は強いなあ。でもさ多分、滑りは悪いかもな、鋳鉄なら炭素分が滑りを良くするんだけどないんだよな」
「そんなデメリットも有るのか」
「隆弘、これってそうだけど、作るのにすっげえ手間がかかっていると思うよ。自動で作ったのかもね」
「これってもしかして材料が余ってて作ったのかなあ?」
「なんともわかんないけどね。その可能性はあるよ。例えば錆びさせて使えないとか、材質の仕様間違えたとか」
「悟瑠、仕様違いの材料ならあり得るなあ、粘りが要るのに硬い高炭素鋼とか」
「鍛造丸棒から作ったのなら削るの大変でしょ。穴開けて拡大していってだろ。それ考えると引抜き管だな」
「引抜き管でも気が遠くなりそうだな」
「ホントだよ、どうやって作ったかだけどな。手間のかかった作りだけど鋳鉄よりはピストンを攻撃するよ」
「スリーブの剛性は高そうだけどね。それで静かだったってことか?」
「隆弘。多分な。ははあ、あれっ?これはそういうことか、スリーブの外径がでかいよ、これってブロックを弄って有ってノーマルサイズのスリーブだとガバガバってことか」
「そうかも。ガバガバになってるから削って作ったってことか、もしかしてブロックの予備がなくてスリーブを作ったってやつだな」
「そうかも。このブロックはもうほとんど残ってないだろ。東南アジアなら肉盛りして削るんだろうけど、この車はスリーブ作ったってことか」
「それにしても材料から削り出しでとはやるなあ。作った時の材料も使い道全くなくて廃棄するものを再使用したんだな。それに内径がちょっと狭目だなあ」
「隆弘、もしかするとピストンも新品がなくて現車のピストンを修正してそれに合わせたスリーブを作って入れたってことか。今回は内径をオリジナルに合わせよう」
「悟瑠、それが良いな。前回のオーバーホールの時にはブロックとピストンが無くて無理くりってことか。今は東南アジアで上手くするとエンジンの部品は入手できるけどな」
「使いたくなかったかな?あっちは壊れたら直せばいいって感じだもんな」
「そうそう、道具だから壊れるのが当然って考えか」
「とにかく、組むぞ」
僕らはスリーブはそのままで軽く削り内径を合わせてその後内側の表面をホーニングしてクロスハッチを馴らしてゴムパッキンを交換すると再度ブロックに組み込んでいた。
しかもご丁寧にスリーブとブロックに気筒番号まで打って有ってどうやら、そこの場所にピッタリ合うように作っているみたいだ。
ヘッドのバルブをみると交換したようで噛み込んでいたカーボンを取れば使えるのでカーボン除去してシートと摺合せし直して組んでいた。
「旧車は現物合わせってよく言ったもんだな」
「だな、これほど現物合わせが似合うものないよな」
僕らは何とかエンジンを組み上げて積み込むために板金名手3人とまた現物合わせしていた
その時板金名手の3人は既にフレームとキャビン、荷台の錆取りから防錆メッキ、防錆塗料の塗り直しも済ませていつでも乗せる準備ができていたのだった。
「元からV8設定あるからマウントは何とかいけそうだな」
「ミッションはいいけどペラをつくらないと合わないよな。フロントは何とかなるか」
「ってことは特注か?この長さの有るか?」
「あるよ。ホイールベースが10mm違いだけどそれならエンジン位置を5mmずらせばドン付きの心配もない。この積んできたミッションはうちで買い取りで在庫のミッションを使う」
「在庫のミッション?」
「ああ、うちの在庫あったよって言うか、隆弘の車用の予備だ」
「ああ。あれ用のH/L5速か」
「それ。必要ならスペーサー挟んでペラの脱落防止をつける」
「それで行こう。スペーサー+脱落防止だな」
「現物合わせの連続だなあ」
「ほんと、鍛えられるよ」
「と言うか、これも結構改造してあってオリジナルとは全然違ってるじゃん」
「工場長、副工場長、親に聞いてましたけど昔はこんなものですよ。車検もいい加減だから大体が通っちゃう」
「でしょうね。PTOも変更されているけど」
「形式迄届けてないから通るんですよ、今は細かく届け出いるから無理でしょうけど」
「そうだよねえ。この車の届け出はエンジン積みかえでいいかな?強度と」
「ですね、その当時の物はないですから」
「雅子に書類を作ってもらってだな。鈴木さんエンジン搭載とペラの脱落防止お願いします。念のため2重にして」
「そうですね、安全重視でいきましょう」
「お願いします。僕たちは先に注文入ってたデコトラベース車を仕上げます。隆文に頼んだので大丈夫そうですが」
「工場長、隆文さんのマフラー溶接の技術は大したものですよ。綺麗な波うちで仕上げるんですから」
「だよね。僕もできないですから」
「私もあそこ迄綺麗には無理です、天性の才能ですね」
「やっぱりそうですよね。ボンネットの総輪駆動へエンジンよろしくお願いいたします。」
「はい」
僕と隆弘はデコトラベース車の仕上げにかかっていた
「隆文、ありがとうな。うまくいってよかったぜ」
「兄貴、依頼者の要望で近接を80dBにしてけどこれでいいかな?」
暖機していたので吹かして音を聞く
「このくらいならいいよ。純正のタイコだから音が劣化することは少ないからさ」
「そうだね」
「鳴きはちょっと小さいか?でも何とかなるかな?」
「デコトラ初心者だからいいか。イベントメインって言うし」
「そうだな。GVW20トンだろ」
「そうみたいだよ。ちょっと短い11メートルだろこれ」
「そうだよ。エンジンもちょっと非力だから仕方ないって」
「ターボつけたらマニ割の効果がないでしょ」
「そう、意味ないよ。全く鳴かないよ」
「叩きだけでしょ」
「そう言うこと」
「これで納車しよう」
「じゃあ、次だな。隆弘、雅子とデコトラベース車を納車に行って代わりのキャブオーバーの総輪駆動引き取ってくるよ。先に10DC8エンジンのオーバーホール頼むよ」
「OK。やっておくよ」
僕と雅子はニイナちゃんと2台でデコトラベース車を納車していた。
いった先は他の3台と同じく個人事業主の様で、今回のトラックは趣味用だという。
「叩きを減らして鳴きを重視しました」
「いいですねえ。あれ?アイドルではピヨピヨ言わないんですね。それに叩きも静かでいいですね」
「踏んでアクセルオフした時に鳴きます。タイコは純正のマフラーの物なので消音性能はいいですし、劣化も少ないです。そっと踏めば予備車にもできますよ」
「そうですか?」
「いいですか?ちょっと吹かしますよ」
僕はそう言うとエンジンを軽く吹かして一気にアクセルから離した、するとピヨピヨピヨという鳴きの音が聞こえる
「いいですねえ。どうもありがとうございました」
「次のイベントに乗ってきてくださいね」
「はい」
雅子と僕は次のキャブオーバーの総輪駆動のオーナーに向かっていた
「雅子、次の車は結構古いけどちゃんと走るらしいよ」
「そうかもね。そうだ。あの6DC2はどうすんの?」
「分解整備して返すよ。長期間停めっぱなしは一部分に力かかりっぱなしになってまずいからタペットのボルトは緩めたままにしてプッシャーやバルブスプリングへの負荷を減らすよ」
「良い案ね。あ、着くよ。さすがニイナちゃんこの坂苦にしないもんね」
「まあな。485psは伊達じゃないって」
「そうだ、パパから聞いたけど次の旧車ミーティングの仕切りたのまれたとか言ってるよ」
「え?どういうこと?」
「いつもイベントやってる人が仕事が立て込んで仕切りできなくてパパに頼んできちゃった。パパも百合リンのパパもそこの会員なんだよね、悪いことに隆文たちのパパも」
「まじかあ、ってことは俺たちがやれってことになるなあ」
「うん。ここだよね」
「おう」
僕と雅子はキャブオーバーの総輪駆動のオーナーの農園に着いた。ここは冬になると雪が積もるのでキャブオーバーの総輪駆動は除雪車としても活躍しているのだった。
「どうもありがとうございます。実はこの車で納品にも行くんでトラック機能の回復とサスをエアにして欲しくてお願いしました」
「エンジン換装だけじゃなく?」
「はい、総輪駆動でもエアサスにできるって聞いたのと、この前のイベントで展示してあった総輪駆動のように」
「あ、あれですか?わかりました、やってみます」
「実はエンジンを一年前にオーバーホールしたんですよ、でもこの坂を荷物満載で時にはボンネットの総輪駆動を引っ張って上るには非力で全開で回すんで排気量増やそうと思いました」
「はい、承知しました。ボンネットの総輪駆動は申請中です。間もなく通ると思いますのでお待ちください。申請通ったら車検してお持ちしますので」
「助かります。ところで次のイベントの主催するって聞きましたけど。フリマにうちの野菜とこんにゃく出荷したいんですがいいですか?」
「ぜひお願いします、これから出店募集するので」
「良かったです、はい、それではお願いします」
「雅子。キャブオーバーの総輪駆動乗ってくれ。僕はニイナちゃんで帰る」
「いいよ。たまには別の乗るのも」
僕はニイナちゃんで帰る途中雅子から聞いたオフ会の仕切りでやるべきことの整理をしていた。
一番のネックの場所は雅子と百合ちゃんが持ってるオフロードコースにすればいい、飲みものはスーパーにお願いするとして、バーベキュー炉はあるとして炭と肉をどうするかだった
告知は雅子にお願いしてとまとめてきた
「雅子、回送ありがと。調子はどうよ?」
「なんかキャブオーバーの総輪駆動のエンジンは上が回んないよ。隆弘号よりも」
「結構はへたってるのかもね。タコメーター無いだろ」
「ここに各ギヤの最高速が書いてあるから、わかるじゃん」
「そうか。そうだな」
「ところで、お兄ちゃんオフ会はどうする?」
「リスト作っていつもしきってた人に聞くしかないよ。見落としあるかもしれないし」
「そうね。パパが言うには一番大変なのは場所の確保だって」
「だねえ。今回もあの場所使えるかな?」
「ひと月後なら予約とってないから大丈夫」
「百合ちゃんと話ししてかな?」
「それは済んでてて百合リンのパパからも話が来てるよ」
「まず場所の確保は良いとして次に要るのは告知?」
「そうね。実は譲さんがもう作ってた。丸松建設のホームページでPRしてる、うちもこれからやるけど」
「後は出店とバーベキュー施設の使用料金か」
「忘れてない?レンタルのトイレね。この前は不足してたよ。河川敷よりは良いけど」
「そうかも」
「やることリストアップしようね」
「送ってあるよ」
「はやっ。ああ、これね。じゃあさ。スゲジューラに入れて進めて行こうね」
「バーベキューのセットを販売するか悩みどころだけどね。お肉の保存どうするかだけど」
「食中毒が心配だからやめようよ。お店で買ってきてもらってかな。暑い季節だし」
「そうだな、野菜の直販とかだな」
「メキシカンのキッチンカータコスとかブリトーストとか売って、お惣菜のキッチンカーでアイスクリームとか冷たいもの売るって愛理沙に聞いたよ。スーパーもキッチンカーが展示対象なんで展示車でお店やるって」
「もう参加表明?やるなあ」
「丸松建設も出すよ。今度こそ百合リンはラムちゃんを出すって」
「そうか。隆弘と隆文は総輪駆動かな」
「そうね、あたしは今回はニジュちゃんかな?バン仕様から移動事務所にしちゃったけど。実際アジトでもお仕事できちゃうからね」
「そうか。それもいいな。ニイナちゃんを移動事務所にして買い付けでも使えそう」
「そうね。オークション結果を事務所で待つよりもいいよね」
「そうだな。その場で引き取る以外ならね」
「あ、やば。お兄ちゃん。ミーティング準備はあたしがやるから、総輪駆動のエンジン載せ替えでしょ。なんか今日引き取った人ってできればキャブオーバーの総輪駆動出したいような雰囲気だよ」
「ああ、それはわかったよ。4台のデコトラ片付いたから急ぐよ」
「そうそう、TSカー直せないもんね」
「雅子のはもう治ってるよ。ラリー用の延長があったからそれ入れてキャンバーがちょっとネガになったけど」
「はやっ。そうなんだね。次戦が楽しみね」
「じゃあ、張り切ってエンジンやるか。フレームは3人にお願いだ」
「うん、部品はそろってるからね、ピストン+ライナーも10個」
「OK、ありがと」
僕と隆弘、隆文は新人君たち2人と5人でエンジンばらししていた。
鈴木さんたち3人と手の空いている3人はエンジンおろしと荷台を降ろしていた。
「工場長、フレームは全く問題ないです。この個体は酷使されてなくて、しかも除雪車にしてあったんでしょうけど早く引退したみたいで酷使されてないですね。もしかすると破産したホテルの払い下げかもしれませんね」
「確かに、傷みはっていうか無理を掛けずに低負荷で使われてきた車ですね」
「そうですね。あ、そうそう。この当時の車はどうしても鋳物の砂落としが甘いことが多いんですよ。洗浄の時は高圧洗浄機で砂落とししたほうが良いですよ」
「このオーバーホール中のエンジンですね、このエンジンなんか予備エンジンみたいで全然使った形跡がないんです。かかるかわかんないですね。しかも木枠に入っててビニール被ってましたよ」
「ということは保管されていた新品エンジンでしょうね。ベアではなくコンプリートです。できれはポンプとバルブのスプリング交換した方が良いですよ」
「どうもありがとうございます。結構いいかも。消耗部品さえ交換すれば。ポンプは10DC11用があったよ」
「悟瑠、すぐやろう。ボンネットは車検も通ってる申請に許可が来ればOKで納車できる」
「めど立ったな」
「肩から荷が降りたぜ」
「隆弘、次はキャブオーバーの総輪駆動の荷台の修理だな。これは鈴木さんに指揮とってもらって直そう。4トンつめればいいとか言ってたな」
「隆文も応援に行ってもらおう。駆動系はいいか?」
「組わせるミッションは8M用だろ。なんとかなるな。KL-用ならネット表示だ」
「後はペラだな。出力同じならいいのか?」
「ギヤ比は見る限り8M用が少しハイギヤだからいいな、強度もOK、公認は楽そう」
「悟瑠、ラジエターの移動と大型化いるだろ。オイルクーラーも」
「そうだよ。8M用のペラありきで組むから、マウントも若干ずらす。フレーム側にブラケットいるかな?元からV10は設定あるからなんとか行けそうだけどな」
「150mmくらいずらさないと無理か?現物合わせだな」
「鈴木さんを呼んで相談だな」
僕は鈴木さんを呼んでエンジンマウントを作れるか車をみながら相談していた
「理想はクロスメンバーを入れてですね。オイル交換に支障無いようにしながら」
「そこはお願いしたい」
「位置的にはここで良いですか?仮置きしてリーフの端材でクロスメンバーとエンジンマウントブラケットを作りますよ」
「そうですね。ここにミッションのフランジ合わせてです。ここに貼ってある糸がペラのフランジです。これにも落下防止つけてほしくて」
「承知しました。おーい、やるぞ」
「お願いします。とにかく僕らはエンジン洗浄して必要な部品交換します」
そこからは怒涛の如くだった。
僕、隆弘、隆文の3人は分解した10DC8エンジンを徹底的に洗浄して組み上げていた。
バルブスプリングもバネ定数と自由長を測ってばらつきを抑えて組んでいった。
クランクもピストンもコンロッドもバランスを取ってクラッチカバーとフライホイールはアッシーでバランスをとっていた。
2日で組み上げて鈴木さん達が作ったフレームに乗せていた。
しかもエアサス化も残っているのでばたばただったのだ。
何とかミーティング迄仕上げてオーナーに納車していた。
「悟瑠、雅子、隆弘君、鈴木さん達 お疲れ様オフ会に行くんだが、今回はV10にした後2軸トラクターと船底出す。悟瑠は?」
「僕は総輪駆動を出すよ」
「あたしはニジュちゃん出すよ。移動事務所に改造したから」
「もう一台はやっぱりケーテン君だすかな?登りきついけど3速ならいけるだろ」
「4台ね。うちは出店はグッヅ販売かな?」
「改造のPRでしょ」
「なるほど、エンジンスワップもやるからな」
「それで決まりだな。定番のバーベキューだな」
「炉はあるからいいけどそれよりもスーパーの移動販売車とかキッチンカーから買ってよ。愛理沙も来るから」
「そうか、そうだな。U-があったもんな」
「展示車でスイーツ販売やって中型ロングで飲み物販売だって。中型保冷車は倉庫とミーティングの場所のピストン」
「よし、明日は早起きだな。俺はV10にした後2軸トラクターと船底乗っていけばいいな。現地集合だな」
「親父、明日」
僕と雅子はアジトに帰って次の日の準備していた。
「お兄ちゃん、エンジンも発発もOK」
「僕のもOKだ」
「おやすみー」
雅子はそう言うと寝てしまった
次の日のミーティングは司会から何から忙しく、車を見ることはできなかったがうちが面倒をみたP-FS668BAとP-CW66Vや、KC-CW63CVXとKC-FR3FWCAとKC-CXM81V1とKC-FU515SXをみた観客たちは興味津々でうちのパンフレットを見ていたのだった。
総勢で150台くらいが集まってきて前回のミーティングから進化したところを説明していたのだった
百合ちゃんはラムちゃんを展示してニコニコ、お兄さんの譲さんは旦那さんを展示、両親はクレーン車とボンネット8トンを展示していた。
驚いたことに、丸松建設で買ったボンネットダンプの元のオーナーが唯一残った6トンボンネットに乗って展示してくれていた。
盛況のうちにミーティングが終わった僕らは会場を片付け、レンタルトイレの返却してアジトに帰って来た
盛況のうちにミーティングが終わった僕らは会場を片付け、レンタルトイレの返却してアジトに帰って来た
「お兄ちゃん、予想通り6トンボンネットの車検とレストア整備お願いします。って来ちゃったよ」
「そうか、頑張って仕上げるよ。オーバーホールか」
「あらら?それだけじゃなくて譲さんの旦那さんにターボ欲しいって。もうちょっとパワー欲しいってことで」
「わかった、検討するか。旦那さんなら部品あるからまだまだ楽だよ。KC規制クリアしたエンジンだ」
ミーティングの収支計算が終わる前に修理の注文が来たのだった。
仕事が立て込んでTSカーをいじれない悟瑠たち
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。
お気に召しましたらイイネや感想いただけると更新のモチベーションアゲアゲになります




