第五十二話 大型車の改造とまたスーパーのトラック探しと次のレースの準備で
愛理沙ちゃんからまたトラックの注文入る。
相変わらず大型旧車の改造依頼とエギゾースト関係作製依頼が増える佐野自動車
主な登場人物
佐野 雅子 ヒロイン 24歳 4月生まれ
峠のバトラー⇒TSカップレーサー、6勝目にトライ中。
家業の佐野自動車販売の中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長
前職はスーパーで経理兼販売促進
所有免許;大型2種、牽引運転免許。2級整備士免許
レース以外の趣味:
オフロード走行。大型の2軸総輪駆動のエンジン、サスペンションをいじって自分好みした。
パソコン:プログラム組むのも好きでシステムを自力で組める
所有車:大型バス2台、大型総輪駆動、イチゴちゃん。
僕;佐野 悟瑠 雅子の兄 27歳、3月生まれ 妹の雅子より4学年上
家業の佐野自動車販売に就職して6年目、整備工場の工場長兼副社長。
所有資格 2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。免許は大型、けん引免許
カーキチ、スペックオタク 所有車:バス9台+大型総輪駆動、サンゴちゃん、三四郎君
加藤 隆弘 悟瑠の同級生で親友。専学卒業後家業の内燃機整備工場に就職、佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。悟瑠の幼馴染、所有車両 大型総輪駆動、CBA-GVB。
加藤 隆文 隆弘の弟。雅子より一学年上だが、3月生まれで実はほとんど同い年。工業高校から家業へ就職。佐野自動車販売に事業譲渡でそのまま異動。所有車 大型総輪駆動。ロックン
松尾 百合 雅子の親友、丸松建設のお嬢さん。雅子と同じ高校卒業して同じスーパーに入って家業に転職。バス2台所有 現在は丸松運輸の副社長
兄は譲さん
小笠原 愛理沙 雅子の一つ後輩。小笠原食肉のお嬢さん。元レディス総長。2児のママ かつて雅子がいたスーパーに勤務
兄は哲史さん
次の日、会社行くと
「雅子、5勝目やったなあ。おめでとう。注文がまた来ちまった」
「うん?」
「今度は古いトラクターでなあ、って言うか総輪駆動で8DC8らしいが10DC8にしてくれだと。しかもエンジン持ち込みだ」
「載せ替えかあ」
「よろしく、その前に4台の注文こなしてだろ。10DC8もサージタンクと煙突だとさ」
「はいはい、先にエンジンオーバーホールだな」
僕らは勝利の余韻に浸る暇もなく仕事に戻ったのだった。
「ん?親父。その当時、そのメーカーには8DC8積んだ総輪駆動のトラクターはないぞ。8DC6ならあったぞ。総輪駆動にトラクターのエンジン乗せてくれならわかるけど。どっちにしても先にエンジン持ってきてもらおう」
8DC8の総輪駆動は記憶になかったのでついつい親父に聞いてしまった
「聞き違えたか?トラクターとして使ってたか?電話だったからなあ」
「まあいいや。総輪駆動にV10乗せろってことだろ。360psなら8DC11の総輪駆動用ミッションで行けるよ。ミッションも交換だろうからな」
「そうだな。プレコンバッションなら8DC6とか10DC6だもんな。わかった」
親父は直ぐ依頼者に確認の電話を入れていた。
しばらくして
「悟瑠。すまんわかったよ。総輪駆動にトラクターのエンジン載せ替えと、もう1台の総輪駆動のエンジン載せ替えだよ」
「親父、なんだそれ?わけがわかんない。2台やるってこと?」
「そうなんだよ。先ずはキャブオーバーの総輪駆動のV8をトラクターからおろしてあるV10に載せ替えて、ボンネットの総輪駆動にキャブオーバーの総輪駆動から降ろしたV8をV6の代わり載せる」
「2台っていうことか。キャブオーバーには8DC8が載ってるってことか。純正は8DC2のはずだから」
「そうだ。依頼者もトラクターなんていってわかりづらいからごめんと言っていたよ」
「わかったよ。ミッションごと交換って感じだな。エンジンは2基オーバーホールだな」
「今日からは先週見積もりした車達の作業だろ」
「ああ、全部生のままでいいからまだ楽だよ」
「4台のエンジンをオーバーホールするんだろ」
「もちろん、その間にフレームの確認するよ。全部エアサスだから傷みはリーフよりも良いと思うけどな」
「それなら3週間後かな?予約うけれるか?」
「多分。大丈夫。エンジンは3人でやれば2日だよ」
「それで行くか、3週間後って言っておくよ」
「OK」
僕は大凡の段取りを確認すると既に入庫しているV106×4デコトラの分解作業に取り掛かっていた。
「悟瑠。結構いい個体だなあ。ちょっとキャビンに錆が出てるけどまあいいところだ。フレーム系は手入れがいいなあ。」
隆弘が言う
「副社長、副工場長。そうですね。これはいい個体ですよ。フレーム、キャビン、架装もしっかりしてます。フレーム系は定期的に防錆塗料を塗ってたみたいですね」
いつもの板金が得意な3人も言っている
「そうですねえ。それでは、鈴木さんたちはフレーム系の錆確認と亀裂確認、塗りなおしをお願いいたします。僕らはエンジンをオーバーホールします。ミッションも調子いいですね」
おろしたV106×4デコトラのエンジンを天井クレーンで運んでエンジンスタンドに固定する
3人がかりでエンジンをどんどんばらしていく。
他にはリース車両のメンテや飛び込みの修理があるが、その段取りは雅子に任せて僕ら6人は4台のアートトラックの再生に集中していた。
「悟瑠、エンジン再生の交換予備部品は全部OKだな」
「ああ、既に倉庫にあるよ。親父に頼んで等長のエギゾーストマニフォールドの製作してもらった。そしたら昔のデータがあったらしくてもう作り終わってるよ。V8の6×2デコトラとV106×2デコトラもデコトラベース車用もエギゾーストマニフォールド作ってたよ。」
「早いなあ。KC−だと排ガスの余計なデバイスないから簡単なんだろ」
「ああ、それから隆文にはサージタンクから先の煙突マフラーの製作も頼むよ」
「悟瑠さん、サージタンクの長さはどうします?煙突のレイアウト検討に使うんで」
「高回転の抜けを重視って言われたよ。太目で短くする。計算して出すよ」
「ってことは、なるべくまっすぐレイアウトってことですね。曲がりも緩くして」
「そう。2台は煙突だけど2台はサイド出しだぞ。隆文。右サイド出しのレイアウトが結構難しいかもな」
「兄貴、そうだな。左バンクのも右に排気だろ。レイアウトは見ながらだな」
と、言いながら作業していた。
すると工場に雅子が来て
「お兄ちゃん、愛理沙から保冷車の注文が来ちゃった。エンジンブローして、しかも保冷装置も壊れて廃車だって。4t車の保冷車の代わりを欲しいって」
「笠木さんのお店にお願いかな?」
「うん、いいのあるかな?」
「後はニジュちゃんを買ったところは?あそこも在庫豊富だぞ」
「そうね、聞いてみる」
「普通車扱いのトラックが欲しいんだね」
「そうなの。高速乗って朝取り野菜の買い付けに行くの。要冷蔵の商品の配送も。そのままスーパーに並べるのよ。移動販売車にも積むの」
「なるほどね」
「愛理沙もびっくりは、その保冷車はP-だったの。40年近くたってたみたいで、このところ稼働率高くて調子悪くても直せずいたんだって。P-FC144AA改」
「それなら、デーキャブ系がいいよねえ。うーん。いいのあるかな?」
「うちで架装は?いいシャシがあればそれに乗せるとか?」
「そうか。うちのデーキャブ4トンは稼働率低いからこれに保冷設備架装する手があるぞ」
「それは良い手ね、うちのならBDF使えるようになってるよね。」
「そのとおり。架装部品の中古探せばいいのさ」
「架装部品の中古と同時に念のため車も探すわよ」
「よろしく」
というと、雅子のスマートフォンに連絡が来た。
「ねえ、お兄ちゃん。KC-FK618H改の保冷車あるって」
「それにしよう、それなら早い。KC-FK618H改なら排気量でかい6D17だ。それならトルクもあるから乗りやすいよ」
「愛理沙に連絡してみる。見てよかったらすぐに買ってくる。仮ナンバー持ってくかな」
雅子が愛理沙ちゃんに4トンの保冷車が見つかったと連絡していた。
「そうだね。愛理沙ちゃんならすぐ来るっていうかも」
するとすぐに雅子のスマートフォンに返信が来て、それを読んだ雅子が
「うん、あはははは。愛理沙がすぐに来るって」
「じゃあ、デーキャブ4トンでいってきな。たまには乗ってあげようよ」
「そうね」
雅子は仮ナンバーと内金を準備するとデーキャブ4トンを暖機していた。
ほどなく愛理沙ちゃんが会社の2トン4×2保冷車で着くと一緒に長野さんも乗ってきていた
「あ、そうか。長野さんは今は愛理沙ちゃんの上司ですもんね」
「うん。課長に言って一緒に見に行くことにした。雅子さんがいるから大丈夫と思う。念の為だけど。それにいいのがあれば2台運転するから運転手兼」
「え?愛理沙?どういうこと?」
「先輩。実は、もう一台トラックがいるんですよ。」
「そうなんだ?早く言ってよ」
「急に決まったんですよ。保冷車でなくていいんですけど、野菜を積むトラックがいるんですよ。今までは輸送会社に頼んでやってたんですよ。でもこのところ配送のトラックの運賃が高騰して、費用が掛かりすぎるってことで自前で配送することになったんですよ。BDFも実は増えてて売っても余り気味なんです」
「そうなのね?組織改正あったの?」
「はい、今あたしが居る販促部に物流課ができて補充と地場野菜の引き取りと県内店舗への配送をやるんですよ。軽自動車でもやってたんですけど追いつかなくて大きくするんです」
愛理沙さんが言うと長野ちゃんも
「そうなんですよ、実はこの辺の農家さんも高齢化で、本社倉庫までの納品が大変ってことで畑まで取りに行くことにしたんです」
「そうかあ、それでトラック増車だな」
「すみませんが、もし、保冷車がエアサスでなかったらエアサスにするのと、もう一台もエアサスにして欲しいんです」
「はい、承知いたしました。雅子、いいトラックかどうか確認よろしくね。保冷車のエンジンオーバーホールしたほうがいいときは言ってよ。総輪エアだよね」
「うん、もちろんよこのへんしか走らないならKC-でもいいよね」
「はい、できれば2台とも総輪エアサスに変更お願いします。排ガスは規制地域にはいかないんで気にしないでいいです」
「OK、愛理沙、長野さん、行きましょう。車はうちのデーキャブ4トンで。普段は部品運び用なんだけど3人乗りだからOKでしょ。たまには走らせないとね」
「はい、じゃあ行きましょう。うちの車は駐車場でいいですね」
「もちろん」
雅子は暖機が終わっているデーキャブ4トンに愛理沙ちゃんと長野さんを乗せるとフオオオオという等長エギゾーストマニフォールドの規則的なエギゾーストノートを響かせて車を見に行った。
「ってことはだよ、愛理沙ちゃんの2台と見積もった4台の再生を早くやって親父が言ってた古い車をやってか?」
「アルバイト君たち呼ばないと無理だろ。若手の3人組は飛び込みとかの対応で再生には手がつかないだろ」
「そうなんだよ。それにTSカーのメンテもろくすっぽやってない。次のFに行くにしても定時で上がってアジトでやらないと」
「そうだな。3週間後には2台入ってくるから、エンジン関係の一部アルバイト君に頼もう。百合ちゃんの車もリーフじゃあ厳しいよ」
「おう、アルバイト君たちには部品磨きとかお願いできるな、フレームの磨きも」
「ばらしたやつを洗浄機に入れて終わった後のエア飛ばしもできるよな」
と段取りを組みなおしていると、鈴木さんがやって来た
「工場長、この個体の状態ならもう一台入れてもいいですよ。フレーム系は錆が無くて表面を磨いて塗りなおすだけですんですぐに処理が終わります。キャビンも錆は軽傷で落としてメッキしますよ。10年は錆が来ないように」
「そうですか?それならV8の6×2デコトラを入れますよ。連絡してきますね」
「はい、お願いいたします。」
僕はさっそくV8の6×2デコトラのオーナーに連絡を入れた
すると、いいことに今日の夕方遅くに自分で乗ってくるというのだ
代車が欲しいというので、雅子が帰ってきたらデーキャブ4トンを貸しだそうと思っていた。
夕方になって、V8の6×2デコトラがくる前に中古トラックを見に行った雅子が帰ってきた
「お兄ちゃん、もう持ってきちゃったよ。2台」
「雅子、お疲れ、2台?お店に良いのが有ったの?」
雅子が工場にやってきて来ていう。
「うん、4トン保冷車と4トンアルミブロックを買って来た。どっちもいい個体だと思うよ」
「そうかあ、今日V8の6×2デコトラがくるんだよ。デーキャブ4トン代車にするよ。普段あんまり走ってないから」
「そうね。このところ部品配達に頼ってるからね。。お兄ちゃん。デーキャブ4トンの稼働率低いから、V8の6×2デコトラの代車で走ってもらうのも良いかもね。愛理沙、4トン保冷車を先に整備するよ。アルミブロックは待ちね」
「どっちにしても、スーパーでは4トン保冷車は急ぎでしょ。4台の再生の間にうまくやるよ」
「悟瑠さんどうもありがとうございます」
「お兄ちゃん。無理しないでよ。幸い百合リンのところが今はメンテくらいで落ちついているからいいとしても」
「まあ、アルバイト君を呼んだから、エンジンの洗浄やら部品並べ、フレーム系の磨き作業をお願いするよ」
「わかったわ。この前みたいに倒れないでよ」
その日は6時頃にやってきたV8の6×2デコトラを受け取って代車にデーキャブ4トンを貸し出して、4トン保冷車のエンジンを降ろして、フレー厶の洗浄準備まで2残になったが終わらせた。
アジトに帰って、雅子と買って来たお弁当を食べていた
「雅子、明日の朝の出勤には僕が荷物運搬車乗っていくよ。念の為荷物運搬車をお店に置いて部品搬送出来るようにする。それなんで行くのは別々の車ね」
「いいわよ。あたしはニイナちゃんで行くわ。いいでしょ」
「だな。よろしく。帰りは乗せてよ」
「OKそれで行こうね」
次の日から僕と隆文は愛理沙ちゃんがオーダーした4トン保冷車のエンジンをバラしていた。
「悟瑠、このエンジンEGRの汚れがひどいねえ。もうパイプが完全に詰まって全く作動してないじゃん」
「だろ、僕もそう思ったよ。EGR系の詰まりがひどすぎだ。それに比べると吸気系は綺麗だよね。ピストンも」
「吸い込み式のエンジン洗浄剤使ってたのかもね」
「そうだな。エンジン洗浄剤を頻繁に使っているように見えるなあ」
「まあ、手入れは良いほうだろう。悟瑠はどう思う」
「そうだなあ、オイル管理はしっかりしている個体だなあ。わかんないけどEGRが詰まりまくってるから吸気系に煤っていうかデポが入ってこないのかな?」
「ん?それにこの車はEGRを量をコントロールする吸気の絞り弁が無いよ。取っ払ってるじゃん。U-の部品?か?」
隆弘が吸気系をバラしてみていた
「そういうことかあ。これじゃあEGRパイプが詰まるわけだよ。EGRバルブが全開になっても吸気絞りがないんじゃ狙った量は吸わないって。ってことはこの状態で長い事使ってたらオイルミストが混じったEGRガスが細いパイプに詰まって塞がるよ。一旦ふさがりだしたら完全に詰まるまで行っちゃうよな」
「なるほどなあ。悟瑠、これはどうする?」
「うーん、どうしようかねえ。作動させるにしても再生するかなあ?部品あればいいけど」
「まあいいや。見なかったことにしよ。今更交換部品なんて無いだろ」
「そうだな、淡々と消耗部品を交換しよう」
「そうだな」
僕と隆弘はクランクメタル、バルブ、ステムシール、シリンダーライナー、ピストン、クランクのオイルシールを交換して、必要な場所は攫って面を出して組み直していた
すると板金をやっていた3人が来て
「工場長、V106×4デコトラ仕上がりました。エンジン回りの漏れの確認も終わってます。」
「どうもありがとう。納車します。ええと明日の朝に納車するよう段取りしますよ」
「はい。その次は4トン保冷車のフレーム系の確認ですね」
「はい、お願いします。この車は電動で冷気を作るタイプです。バッテリーがでかいタイプです。よろしくお願いします」
「渡辺がざっと見ましたがこれもいい個体ですよ。フレームに亀裂も無くていいですよ。キャビンとフレームの塗替えで済みそうです。半日あれば仕上がります。前もエアサスにするんですか?」
「フレームは早くできそうですか?リアがエアサスなんで前をどうしようか考えています」
「はい、エアサスにするにしても、部品がそろうまで時間ありますから、その間はV8の6×2デコトラにも手がつきます」
「承知しました、まずは直ぐこちらもエンジンを組みますよ。隆弘に頼んでフロントのエアサスレイアウト検討してもらいますよ。部品が何が要るか調査してですね」
「そうですね。部品がそろってから入庫してもらって交換の方がよさそうですね」
「雅子に言っておこう、次はV8の6×2デコトラのエンジンおろしだな」
「はい。僕らはエンジンおろしてその後に架装おろすか。車あげたほうがいいか見ますよ。ここの天井クレーンがいいんですよ。丸松の社長が重機の整備もお願いするっていうことでこのいいクレーン入れたんですよね。元の職場は後継者いなくて廃業ですからね。社長には拾ってもらったようなものですけど」
「そんなことないですよ。皆さんはどこでも通用しますって」
「ありがとうございます。あの工場にはいい板金の腕の職人いたんですけど、歳で亡くなったんですよ。私たちの師匠ですよ。悪いことに婿取ったはずが別れちゃって。私たちは独立してって言うのは考えられなかったんですよ。」
「皆さんが居るからこの工場が仕事できるんですよ」
「それでは仕事やりましょうか?エンジンおろしてですね。スタンドにつけますから」
「ありがとうございます。おろす前にマニ割のマニフォールドつけて煙突のレイアウトお願いします」
「はい、そうですね。マフラーは隆文さんですよね。板金お上手ですよ」
「どうもありがとうございます。すみませんがよろしくお願いいたします。僕らは4トン保冷車のエンジン仕上げます」
「フレームの研ぎは終わってるので念のためフレームの中にも防錆剤塗っておきますよ。と言うか高圧噴射器あるんで楽です。洗浄は済んでますので」
「よろしくお願いいたします。」
僕と隆弘はばらした6D17エンジンの組み立てをやっていた。エムエム君のエンジンと同じなのでその知見をフルに使っていたのだ。
痛みは経年通りベアリング、ライナー、ピストン、バルブ回り、ゴム部品の交換と整備していた。
「隆弘、ポンプとノズルをばらして修理してもらったけどなんか噴射する燃料の量が増えたのか?黒煙多いなあ」
「多分、増量されたかもな。スモーク調整してかな?」
「うん、そうだな。噴射圧力はそろえたからいいはずなんだけどな。そろってる感じはあるなあ」
エンジンを単体で指導してみると吐き出す黒煙が分解前よりも多いので何が起きたのか考えていた。
「悟瑠、そうだなあ、絞ってパワー出てるならいいんだよな。調整してみようぜ」
「そうだな。じゃあ、次は積んで水漏れ、オイル漏れ試験だな」
「今は隆文はV8の6×2デコトラのマフラーレイアウト検討中か、手伝いは無理か」
「そうだな。隆弘、今回は二人で積もう。漏れがないなら納車の連絡しておこう。次はV8の6×2デコトラのエンジンだろ。隆文はマフラーのレイアウトをやってるだろ。雅子が作った画像から部品を設計するソフトで」
「雅子には感謝だよ。隆文が簡単に作っちまうからさ。悟瑠自慢の妹だな」
「あはは、作業が速くていいぜ。僕らは4トン保冷車漏れ試験をやったら、噴射量調整して納車準備だな」
「そうだな」
「あれ?なんだこれ?親父が等長ステンエギゾーストマニフォールド作ってあるよ。なんだよステンでマフラー迄作って有るぜ。ご丁寧にEGRバルブもつけて」
「あはははは、それはいいなあ。よし、それもつけるか」
僕らは4トン保冷車にエンジンを乗せて親父が作った排気系をつなぐとエンジンをかけた。
3時間くらい放置している間にV8の6×2デコトラエンジンを降ろしてクレーンで運ぶとスタンドに組んでいた。
「隆弘、これは排気系結構いい加減だなあ」
「ああ、マニ割が左右同じ位置でやってるからどうしても片側のバンクで排気干渉するよ」
「これじゃあ、パワー出ないって。右と左で割り方変えないとね。知らないのかなあ?」
「とにかく、社長が作ったマニ割のマニフォールドつけていくんだろ。割り方わかってるじゃん」
「そうだよ。それだけでも右はパワーアップするよ。エンジンも開けよう」
「おう。悟瑠は右バンクだな。俺は左バンクをやるよ」
「OK。隆弘。左をよろしく」
僕らは積んであったエンジンをばらしていた。
この車も手入れの状態は良くブロックの痛みはなかったが、メタルやライナー、ピストンはそれなりに減っていたのだった。
バルブシートにも虫食いが起きていて修理が必要だった
「悟瑠。年式相応の痛みだなあ」
「そうだな。隆弘、ゴム部品もだめじゃん。交換しよ。ヘッドのひずみも見て必要ならそろえてかな?」
「それがいいよ。きちんとすればいいけど単純に組みなおすのはなあ。問題はこのヘッドはボルトで力かけたらきちんとなるようになってるんだよなあ」
「そうだな。軽くさらう程度かな?」
「だな。V10よりもいいだろ」
「そうだな。部品は雅子がそろえたからブロックは洗浄してオイルと湯垢落としてだな」
「うん。悟瑠。洗浄機が二つあってでかい方は直6のブロックも洗浄できるのはいいよなあ」
「そう思うよ。D16のブロックが入るって言うのを買ったらしい。重機用のV12も洗えるようにしてあるとか」
「それはいいや。よしやるぞ」
僕らはエンジンをばらして洗浄機に入れてその日のV8の6×2デコトラの仕事は終えて、次はアルミブロックのエンジンを降ろしていた
「へえ、直4のターボか。それなら楽だなあ。2V仕様か」
「悟瑠、ってことは4V仕様もあるのか?」
「KK-に対処する奴は4Vらしい。ターボなんで結構空気過剰率高いだろ」
「ふーん、2Vか」
「隆弘、2Vなら部品少なくて楽だし。いいことにOHVだとヘッド外すのも楽だよ」
「だな。こいつは総輪エアだよなあ」
「フロントはバス用のリーフ+エアがあるだろ。それで行こうよ」
「おう、そうしよう。フレームの補強要るか見ればいいよ」
「隆弘。補強要るか見ればいいな。コンプレッサーはバス用使えばOKだよ。FEエンジンのが使えるから。2トン総輪駆動保冷車と同じだよ」
「それでいい、エアタンクも大きめにするんだろ」
「もちろん、バスのエアサス用にすればいいよ」
隆弘と次の段取りを話していると
「兄貴、明日には4トン保冷車納車できそうだ。悟瑠さん、すみません。燃料ポンプは噴射量全開だったらしいです」
「やれやれだな。それじゃあだめじゃん。絞ったけどそれでいいんだな」
「はい、ノズルも洗浄して噴射圧もあげてあるそうです。スモーク調整すればいいですよ」
「ありがと。調整はしたのか?」
「はい、スモーク50%未満にしました。」
「OK、じゃあ納車だな」
雅子に連絡すると愛理沙ちゃんが長野さんと二人で今日のうちに取りに来るという
「じゃあ、外に出してBDF入れておこう」
「やっておきます」
そう言っていると定時になった。
その日の仕事を終えて愛理沙ちゃんに4トン保冷車を渡してその時に次のFはエントリーするか聞いた
すると高速になれるため参戦するというので車の慣らしも兼ねて土曜はミニサーキットで走行会すると言っておいた
同じことを雅子も百合ちゃんに言うと出るというので同じく走行公に来るようにといっておいたのだ
「明日の休みの日はTSカーのメンテだよね」
「そうだよ。さて、隆文の車は高速だと空力で不利だろ」
「ああ、それだな。ボディパーツ変えようと思う」
次の休みの日僕と隆弘、隆文は3人でTSカーのメンテしていた
「兄貴、俺のは空力で不利なんだな」
「そうなんだよ。百合ちゃんの方が空力はいいからそれにピッチングを抑えた方がいいんだがどうするかだなあ」
「隆弘、それなら、後ろは伸び重視で縮みは弱めがいいんだろ」
「だよなあ。そうするか」
「こっちは雅子のセッティングを愛理沙ちゃんのにコピーなんだよ。すると速くていいらしいよ」
「それじゃあ楽だなあ。でもさあ。KPとKEは違い過ぎて無理だ。リンクとリーフじゃあ」
「考え方を合わせようぜ。ばねとショックだけでも」
「そうだな。百合ちゃんのはリーフを上手く使えればいいんだけどね」
「レギュレーション見ようか。もしかしてラテリン追加OKならワットリンクに出来るぜ」
「そう言うことか?聞いてみよ」
隆弘は主催者に車両規定を聞いていた
「悟瑠、取り付け点を変えない前提ならリーフをリンクにするのはOKだってよ。ラテリン追加も」
「それでいくか。ロールしたときにアンダー方向にすればいいんだよな」
「ってことはちょっと待て、そうするとブレーキかけると上に上がるのか?」
「そうだな。好都合だろ。姿勢はフラットになりそうだ」
「やってみるよ」
「ぶっつけ本番になるけど。おかしかったらリーフに戻せばいいよ」
「もちろん。百合ちゃんには言っておこう」
僕らは後ろのサスを変更するからぶっつけ本番になると言ったおいた
「ワットリンク作ってだな」
「おう。リーフの取り付け点を使ってやってみよ。隆文のもロールしたらアンダー方向にしてか」
「狙いはフリクション減らすんだからさ」
「そうだな」
「隆文、これ作れるか?」
「いけるよ。何するんだい?」
「百合ちゃんの車をリンクサスにする。リーフのところに合わせてワットリンクにするんだよ」
「OK。いいライバルだな。悟瑠さん。愛理沙ちゃんの車すごすぎでしょ。僕のを抜いていくんだから」
「そうなんだけどね。あれは空力がいいんだよ。もう一つはサスが雅子のと似てるからセットアップが楽なんだよ。それにシャシ剛性が高いから雅子の車よりも素性は良いよ」
「そうかあ、それじゃあ熟成が早いのか」
「隆文、KPもサスジオやるぞ。雅子と同じ様にアンチジオを組み込んでみる」
「そうかありがと」
「この前の様に路面に合わせてウェイト位置を重心から後ろのアクスル上にしなくても良いように」
「そうかあ、よーし。次は雅子に勝つぞ」
「そうだな、その意気だ」
僕らの休みの日はTSカーのメンテとセッティング変更に追われていた。
KEの後ろのサスの改造は終わったが、ホーシングごと交換すると元に戻せるようにして走ってみることにした。
雅子と愛理沙ちゃんの車にはKE、KPと同じくSPRとショックの取り付け部を補強するブレースを追加していた。
改造が終わった週末、近くのミニサーキットに集まって今回の変更を乗ってもらってレースに臨めるか確認していた。
プーン、ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ、フォンフォンと4台のTSカーのタイヤがなる音が途切れなかった。
僕と隆弘はピットで4人の走りを見ていた
「隆弘、百合ちゃんのタイムがめっちゃ上がってんじゃん。この前よりも1秒近く短縮だよ」
「おう、隆文のもそうだよ。ブレーキの効きもよくなってるよ。トラクションがかかるのか?脱出も速い」
「それに、雅子と愛理沙ちゃんの車は突込みが半端ないね、ちょっとアンダー出るけどトラクションの掛かりもよさそうじゃん」
「車が進化したのについていく雅子と愛理沙ちゃんもいいセンスだなあ」
90分の走行時間めいっぱい走った4台が戻って来た。
車を降りて汗を拭いている百合ちゃんに聞いてみた
「百合ちゃん、どうかな?これは。リンク追加してみたんだけど」
「うん、悟瑠さん。いいですよ。トリプルワットリンクって安定がすっごいですよ。姿勢が安定しててグッドですよ。これでいきます。ブレーキングもばっちりだし、トラクションが全然違いますって」
「そうかあ、よかったよ。だめなら戻そうと思ってたから。あ。隆文も戻って来たな」
「隆文、どうだよ。具体的にどこが良くなった?」
「兄貴、アンチジオっていいなあ。前回に欲しかったけど。ブレーキングでずっと安定してるよ。それに加速でも逃げないって言うのかな?ドンドン前に出る。悔しいなあ思いつかないなんて」
「仕方ねーだろ、自分で思いつけるようになったら雅子に勝てるよ。とにかくいい車になったようだな」
「雅子、乗った感想は?」
「お兄ちゃん、いいよこれ。スタビリティー上がったからガンガン行けちゃう。コーナリングの最中でもブレーキ踏めるし、ちょっとアンダー強いから後ろにロール剛性持って行ってトラクション重視の脚が組めるわよ。コーナーでもアクセル踏めちゃうから立ち上がりが段違いに速いの」
「ブレース一枚でこの違いか。ってことは車体が歪んで力が逃げていたんだなあ。愛理沙ちゃんは?ブレース追加したんだよ」
「そうそう、俺も聞きたいよ」
「悟瑠さん、隆弘さん。元から安定してましたけど、更に安定しましたよ。コーナーにブレーキ残したまま突っ込めます。これは大きいですよ。今までより1メートル先に突っ込んでブレーキ踏めます。後ろががっちり食いつくんで立ち上がりでも今までよりも早いタイミングでアクセルが踏めますよ」
「みんな。いいところだな。狙い通りに仕上がっているじゃん。じゃあ今日はこれで引き上げよう。エンジンもいいし良かったよ。帰ったら洗車してレースに備えるぞ」
「次が楽しみね」
次の日から僕らは4台の再生と愛理沙ちゃんのアルミブロックのエアサス化に追われていた。
すると、雅子が工場に来て
「ねえ、お兄ちゃん。百合リンからドライブ君をパワーアップできないかって相談来ちゃったよ」
「うーん、純正にターボがあったからそれの部品見てやるしかない。と言っても160ps、50kgだからなあ。30psと8kgアップだよ」
「それでもいいかもね」
「まあ、焼け石に水って感じだけどね」
「そうなのね。百合リンにはそのくらいでいいかって聞くよ」
「ああ、ターボ用の噴射ポンプがないからそれで勘弁ね。それ以上は他が持たないから勘弁してくれだな」
「ってことはインタークーラーとオイルクーラーいるのね」
「もちろん、手配よろしくね」
「タービンは?良いのがあるの?」
「タービンは最大風量見て探すよ、エギゾーストマニフォールドはもうターボ用の部品がないからタービンに合わせて親父に政策を頼むよ。ラジエターも容量あげないと」
「はい。クラッチとか駆動系はそのままね」
「そうするよ。クラッチやミッションが対応できるくらいにしておくよ。壊れちゃあだめでしょ。それにしても今更ドライブ君をパワーアップって?ドライブ君が元から非力なのはわかっていたはずだけど」
「そうなんだけど、実はこのところオフロードコースに行くことが増えちゃって、登りで30キロくらいしか出なくて困ってるの。ラムちゃんとか武蔵くんも出動するんだけど泥ついたら車内の掃除が大変なのと、やっぱりデフロック有ってトラクションかかるって言っても軸重大きいから駐車場に暗渠無いから雨上がりはぬかるんで簡単には入れないの。万が一動けなくなったら総輪駆動2台で救助が必要よ」
「それでか?ドライブ君なら総輪駆動の6×6が1台あれば引っ張れるもんな」
「そういうこと、コース内の駐車場にもスクラップコンクリート敷く前に、暗渠を組もうかって言ってるよ。オフロードコースの入口に駐車場兼積載車からの荷下ろし場所はあるけどそこはガッチリ暗渠効かせてコンクリートスクラップ敷いてあるんだよ。そうそう。コースに着くまでの誘導路も同じで暗渠組んでコンクリートスクラップ敷いたんだよ」
「そうかあ。コース近くの駐車場に暗渠作るためには時間がかかるってことか」
「そう言う事、2ヶ月位はかかるのよね。それにラムちゃんと武蔵くんたちは重いから高速コースの路面を傷めるって言うんで乗り入れはまずいよね」
「しかたないね。それ言ったらマキちゃんもギリでしょ。わかったよ。ドライブ君にフィットするいいタービンとインタークーラー、オイルクーラーを探すから、見つかり次第作業に取り掛かるだね。」
「OK。百合リンにはそう言っておくよ」
また、仕事が来たのは良いけど、作業する人が足りなくて困っているのだった。
仕事が増えて喜んでいいのやら
多過ぎる仕事の佐野自動車
次回は6月8日更新予定です
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