第五話 イチゴちゃんの進化
進化したイチゴちゃん
喜ぶ雅子
「お兄ちゃん、イチゴちゃん直してくれてありがとう、でもさ、なんかね、ここんところなんとなくパワーがないんだよね。」
「え?そうなの?ガスケットは全部新品にしたし、燃調も取り直して、第4に噴射量が少し多めのインジェクター入れたんだけど」
「そうなの?オーバーホール前よりは良いんだけど、やっぱり上が苦しそうで」
「そうか、わかった。もう一回燃調見てみるよ、タービンも新品あるから交換してみよ」
「ありがと」
10月、体育の日がある週の金曜の夜だった。
いつものように仕事から帰ってきた妹の雅子が、通勤用の軽自動車から降りるという。
イチゴちゃんのエンジンが調子悪いというので、オーバーホールしたら第4気筒目のピストンが溶けかかっていて、どうやら、そこだけ燃調が薄かったようだ。
ピストンとそのほかのガスケット類も全部交換して、組みなおし、燃調も取り直したので以前と同じようになるはずなのが、雅子は何となくパワーが無いと言う。
そういえば、ヘッドを開けたとき、シリンダーにクラックがあるかを確認するのを忘れていた。
言う通り、クラックが入ったのなら、ブロックの剛性が下がってどこかパワーが無いと言うのも合点がいく。
もしかするとタービンは掃除だけして組んだので、距離がかさんでシール類が痛んできたのかもしれない
「雅子、明日もう一回エンジン開けるから」
「うん、ありがと。今日さ、ちょっと練習行っていい?この前のバトルでやっぱりサンゴちゃんだとうまく曲がれるんだけど、イチゴちゃんは前が軽いのかな?うまく曲がんないの」
「ああ、いいよ、ロックん連れて行こう」
「教えてね。ちょっとね」
雅子はホームコースでの練習も怠らない、自分で課題を見つけてはそこを直す練習をする。
この前、イチゴちゃんが走れず僕のサンゴちゃんでバトった時に、イチゴちゃんより前が重いサンゴちゃんはターンイン初期の向きの変わりが速いので、その後、うまく舵角を減らしていけることを見つけたのだ。
同じようにイチゴちゃんでやろうとすると、どうしてもうまく頭が入らないと言っている。
ここの所、イチゴちゃんは踏んで行けるように、ややアンダー気味のセッティングにしている。
フロントにロール剛性配分を寄せているのだが、それでも不足ということはもう一ランクスタビを上げるか?それとも他に手があるか?サンゴちゃんとの仕様の違いを比べて考える必要があるかもしれない。
「雅子、まずは、空気圧をちょっと変えてみよう。イチゴちゃんとサンゴの違いを見たけど、アライメントも同じはずだし、フロントセクションはサンゴのほうが長いから、剛性上は不利なんだけどね。」
「OK、じゃさ、ロックんじゃなくてサンゴちゃんも出せる?比べてみたいの」
「ああ、いいよ、じゃさ、準備しよ、御飯は途中のコンビニで買えばいいよ。今日は2往復位で帰らないとイチゴちゃんのエンジン下ろせなくなるよ」
「そうね、さすが、お兄ちゃん、お着替えしたらすぐに出発ね。」
「だな、サンゴの準備するから、お着替えしてね」
「OK、じゃ、お願いね、あたしもイチゴちゃんの暖機しようっと。」
そういうと、僕らは出発の準備だ、ここ最近はサンゴちゃんを通勤にも使っているのでそのままエンジンをかける。
音を聞きながら、異常がないか確認して、異常がないとわかったらそっとリフトにうつして、持ち上げ、タイヤを浮かせるとギヤを2速にいれてアイドルのままエンジン水温が80度くらいになるまでまつ。
ミッションとデフも暖機するのだ。
雅子も同じようにエンジンをかけて、異常がないか聞いていた。
別のボードオンに乗せて後輪をあげると2速に入れてミッションとデフを暖機していたのだ。
「ねえ、お兄ちゃん、なんかね、このところ高回転って言っても8000以上だけどなんか音が鈍いのよね」
「うん、そうかも、まさこ、下手するとシリンダーブロックの交換かも」
「そうか、結構酷使したからかな?」
「うん、そうかもね、ちょっとボアも広げたから、ライナーがその分薄くなったのが負担になったのかもしれないな。ライナーの打ち換えやってないし」
「そうなのね」
その間、僕は店の名前が入ったつなぎを脱いで、いつものサポート用つなぎに着替える。
雅子もスーパーの制服を脱いでジーンズとドライビングシューズに着替えてきた。
妹の佐野雅子、普段はターボチューンされた軽自動車で会社に行っている入社3年目、4月生まれの21歳。
高卒ではいったスーパーの本社で経理をしている。
妹は地元の商業高校を1番の成績で卒業して、商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシックなら任せての技能をもっていたので、地元資本の大手スーパーの経理部に学校推薦で入って、高卒ながら3年目の今は大卒と同じくらいの給料をもらっている。
あろうことか?雅子は自力で各店舗から集まる情報処理集計システムを組んでしまい、今まで買っていたソフトが不要になった。
しかも妹が作ったソフトのほうが勤めている会社に事情に合っているのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とシステムのメンテナンス費用が浮いた。
万一、おかしなことが起きても、雅子がすぐに治せる。
それも褒美もあって、雅子は高卒では異例の速さで主任に昇格してしまったのだった。
それに集計の自動化を進めた結果、仕入れと売上関連の報告がほとんどが一目でわかるようになって社長も大喜び。
その成果が認められ、高卒の3年目途中で主任に昇格して、部下を持ってその指導もするようになったという。
7月からは今年入ってきた大卒を部下にもって指導しているのだから驚く。
その雅子が行くと言っているのは峠だ。
雅子は高校3年で免許を取ると同時に峠を走り始めて既に3年がたっている、あっという間に上手くなってその地域でトップクラスの速さになっていた。
得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入って全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中では雅子しかいない。
ダウンヒルなら、雅子が一番だ。
僕:佐野悟瑠は雅子より4学年上の3月生まれの24歳、。
大学を卒業してすぐに家業の中古車屋に就職して3年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今は実家の中古屋の整備工場で働いていて、中古車の納車前整備やトラブルが起きた車の修理をしていて、時には中古車査定もする。
大学のころから家業の手伝い=アルバイトしていてMIG溶接機や、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。
加えて、○ントリペアも勉強して資格もとった。
僕は中古車で人気がないが、程度のいいFRを見つけては整備して雅子の走り仲間へ売っている。
必要ならエンジンとミッションの載せ替えもやるのだ。
今、僕と雅子は僕の同級生がリーダーを務める走り屋チームにいる。
僕はそのチームの整備係になっている
「お兄ちゃん、ここに来るときに乗ってて気が付いたんだけど、イチゴちゃん7000あたりから音が割れるって言うのかな?変にガチャガチャ言うんだよ。今までなかったから。この前は8000超えないとわかんなかったけど今は下がってるよ」
「うーん、やっぱり、シリンダーブロック逝ったかも。予備は見つけてあるけど、加工屋さんに出さないとね。見た目のチェックだけでスーパーチェックかけてなかったからなあ」
「そうなのね、まあ、じゃこのエンジンで走るのも今日が最後で、次は載せ替えたエンジンね」
「うん、そうだね。そうだ。雅子、ちょっとふかしてみて」
雅子は乗り込んでエンジンの回転を上げた。
僕はそっとラジエターのリザーバータンクをみる。
LLCがリザーバーに吹きあげてくるようなことはないので、今のところは重症ではなさそうだ。
「うん、まだヘアクラック程度かな」
「OK、じゃ、今日帰ったらまた、エンジン下ろしてバラスのね」
「うん、その前にブロックを持って加工屋さんに行かないと」
「そうよね。まず、在庫のシリンダーを加工屋さんにもっていって、加工終わったら組むって感じかな?」
「そうだね。〇Rはアルミのせいかばらつきが大きくって加工が要るんだよ。ひどいとライナー打ち換えとか」
そういうと、僕らはアジトとしている祖父母が住んでいた家を出る。
約1年半前、祖父母は病院に通うのに不便ということで、僕らの実家に入った。
それと入れ替わりで雅子と僕が祖父母の家に住んでいる。
イチゴちゃんのヘッド、ピストン関係をオーバーホールした時、シリンダーにスーパーチェックをかけなかったことを悔やんでいる。
くたびれてきたのがピストンだったのだが、開けたついでにシリンダーも確認すべきだったかもしれない。
メタル関係とピストン関係をみていてシリンダーのことはなおざりになってしまった。
イチゴちゃんはボディの後ろの補強がかなりうまくいって後ろのスタビを強化できた、それでトラクションの掛りがよくなった。
加えて、後ろのばねを下げて、粘りをだすセッティングにしてある。
その特性は、向きがきちんと変わる前や舵角が大きいとき、アクセルオンするとプッシュアンダーが強めに出る。
雅子はその特性に既に慣れてガンガン踏んで行っているので、エンジンに負担がかかったのかもしれない。
今日出番のサンゴちゃんは○35○ーレルだ。
○34GTRの部品と80○ープラのT/M部品をつかっていじってある。
エンジンは特製のクランクと○B26用のビスカストーショナルダンパーを組んである、オセアニアむけ○ファリのブロックを使ったボア径87、ストローク86の3リッター仕様でヘッドに機械加工して9500まで回せるようになった。
ブロックはダミークランク+ダミーヘッドを組んでボーリングとホーニングしてありフリクションをがっちり減らしてある。
もちろん、ベッドは○B26ヘッドにしてある。
最高出力もNAながらも約300KWを8700回転で叩きだす。
見かけもワイドフェンダーに換装してあって、空力関係も純正のリアスポからGTウイングに、タイヤも広くなった車幅を利用して245/40-19を履かせている。
そのボディもいったんどんがらまでばらして、弱いと言われている、センターフロアとリアフロアのつなぎをしっかりさせたのだ。
空冷式オイルクーラーも組んでいて純正のインタークーラーの場所に組んであるので、オイルクーラーがあるとまではパット見では全く分からない。
しかし、室内を覗くと只ものでないことがよくわかる。
純正にない6MT仕様で冷却関係の各メーターがダッシュボードに並んでいるし、車内にロールゲージを組んである。
T/Mは○34GTRのおかまと80○ープラのお尻を組み合わせ、ペラは某製作所特注の強化競技用をサンゴちゃんのホイールベースに合わせて作ってある。
ファイナルは中速のトルクに余裕があるので3.7にしてある。
オイルポンプ焼付き対策でドライサンプにしてるのもこの車のポイントだ。
この車は後ろのボディーフロア構造がイチゴちゃんと同じなのでこれで強化の効果を試して、イチゴちゃんのボディー剛性アップになる様組んでいたのだった。
ブレーキも進化して○34用の19インチ大口径4ポットベンチに換装してある。
17インチ用のブレーキと違って余裕が増えて、いつもの場所ならフェードの兆候すら出なくなった。
この前のようにサンゴちゃんに各計測機器をセットしてホームコースに向けて出発した。
現地に着くと
「お兄ちゃん、イチゴちゃんね、なんか、あと1500回転かな?ってところで、苦しげなんだよね」
「そうか、レブは9000だよね」
「うん、そう、8500から上でこの前よりも伸びが無くなってる。なんか重いって言うのかな?ドンドン音が割れてるっていうのかな?」
「そうか、シリンダーだね。ごめんな。やばいなークラックが成長してきてるんだよ。シリンダーにも負担かかったんだよ」
「そうなんだ、ま、今日は軽く流すくらいだからさ」
「うん、見てみるよ、今日はイチゴちゃんとサンゴちゃんの違いを見るんだからね」
「OK」
そういっていると雅子と僕は現地についていた。
何時ものように下からゆっくり登っていく。
サンゴちゃんの計測機械をオンにしてデータを取っていく
僕は雅子の後ろで各コーナーでのギヤ位置とエンジン回転、スピードのデータも同時に取った。
GPSとヨーレイトセンサーも使って軌跡も記録した。
頂上に着くと、隆弘たちがいた。
「隆弘、悪いが、雅子の頼みでデータ取りたいんだ。ちょっとイチゴちゃん見ててもらっていいかな?」
「ああ、いいよ」
「それに、ちょっと調子おかしくってさ」
「そうなんだ、悟瑠が言うんならそうだろ」
イチゴちゃんを見ててもらって下りは雅子がサンゴちゃんのハンドルを握る
「うーん、やっぱりサンゴちゃん前が重いからかな?ちょっとイチゴちゃんより初期のターンインいいんだけどその後はアンダー出るね。イチゴちゃんはターンインで向きが変わんないんだよね」
雅子が少しづつスピードをあげる、本人は60%と言っているが、その走りの内容は21歳の女の子ではない。
トーヒールは完璧で全く回転にずれがなく、測っていると、時々7m/s2以上の旋回加速度でコーナーを抜けている。
ブレーキも同じで、踏み始めが優しいので気が付きにくいが、時には7m/s2以上で減速する。
以前より格段にスムーズなのだ。
「このへんってタイトが続くからね。この時はサンゴちゃんの方がアンダーになっちゃう」
「うん、多分、タイヤのせいかも。サンゴは19インチの40扁平だけど、イチゴちゃんは17インチの45だから」
「うーん、そうなるとサンゴちゃんのタイヤ履くとどうなるの?」
「うん、多分、雅子の言う通りになるかも」
「そうなのね、前だけでもサンゴちゃんのタイヤいけるかな?」
「うん、後ろならイチゴちゃんのタイヤつくはずだから交換してみよ」
「うん、そうね」
「イチゴちゃんなら前後のグリップバランス崩れるから50%で走るんだよ」
「はーい」
雅子は流しているので、連続するコーナーをほとんど3速で抜けて行く、2速主体のタイトから、3速、4速主体の高速コースへの切り替えもうまい
一旦ゴールまで走って戻る
「雅子、ジャッキ」
「はいよ、イチゴちゃんにも積んでるだもんね」
タイヤを外して交換していく、誤算だったのがサンゴちゃんの後ろには17インチが着かないのだった。
仕方ないのでリジッドラックを噛ませて後ろを浮かせておく。
タイヤは室内に入れておいた
「いいか、50%だぞ、スピンしやすいから慎重に切っていけ」
「はーい」
そう言うと雅子は下っていく
「さすがお兄ちゃんね、読み通り。ターンインの所がイチゴちゃんよりすっと入る。でもフロントが食いつく分やばいかも」
雅子が感心したように言う
「よーし、イチゴちゃんは18インチにするかな?」
「そうなの?17インチで扁平さげちゃ駄目なの?」
「うーん、ロードインデックス見ないとわかんないよ。ロードインデックス落ちると限界下がることが多いからね」
「さすがね。よく知ってるわね」
試走したあと、家で動画や取ったデータの分析をしていた。
雅子はエクセルデータ落としたらマクロで走行軌跡から速度、ギヤ位置、エンジン回転までわかる分析ソフトを作っていたので、分析中はコンピューターに任せていつものようにお風呂に入ると寝ていた。
次の朝、分析されたデータを見るとやはり、タイヤの性能さだった。
ロードインデックス上は幅を広げると何とか行けそうなこともわかった。
17インチでいいサイズがあったので、45扁平から40扁平にしてみることにした。
ホイールは○33GTR純正鍛造品を使うことにした。
イチゴちゃんはワイドフェンダーにする必要がありそうだ。
その日、僕と雅子はイチゴちゃんのエンジンをばらしていた。
前回と同じく水とオイルは前の晩から抜いておいて、ラジエターを先におろす、そのあとハーネスを外して、残った配管も外してミッションとの結合も切ってエンジンを下ろす。
エンジンスタンドに固定してバラシていく。
ここには電動ホイストもあるので作業が楽だ、それにごく低速モードがあるので、微妙な高さ調整も楽ちんなのだ。
午前中補機類を取り外してお昼ご飯のあと、ヘッドを外す。
前回と同じくばらした限りではヘッドには問題はなさそうだ。
ヘッドのひずみも測ったが、全く狂いがないのでこのまま使えそうだ
次に腰下をばらしていく、スーパーチェックを吹いて待っていると現像薬に何か所かクラックが出てきた。
予想通り、第3シリンダーと第4シリンダーの間だった。
4番シリンダーがオーバーヒートしていたので予想通りここに負担が掛かったようだ。
大きいところはクラックが見事に一ミリ以上に広がって来ていて、目で見てもわかる、このシリンダーはもう使えないことが分かった。
ただし、燃調関係は大丈夫のようでカーボンの付着も少ない。
「あ、これやばいや、ここまで広がったらいつLLCが漏れてもおかしくない」
「え?結構重症?」
一緒にバラシの作業していた雅子が聞く
「うん、このシリンダーブロックはもう使えない。交換しないと」
「そうなんだね」
「雅子がおかしいって気が付かなければ、途中でLLC噴いてレッカーだった」
「よかった、イチゴちゃんごめんねー、酷使したから」
「ま、仕方ないって、在庫のブロックは」
「これでしょ。」
「うん、あ、そうか、このエンジンもあるんだよな」
僕は片隅に置いていたエンジンを思い出した。
○24○ャラバン用の縦置き○Aで20と24両方ある。
24はストロークが98もあるので、20のクランクのほうがよさそうだ。
「雅子、エンジンの排気量ちょっと上がるけどいいかな?」
「え?どうしたの?」
「いいエンジン見つけちゃった。○ロワーのフルカウンタークランクもあるから、2.1リットル仕様になる」
「へー、なんか面白そうじゃん」
「カムもいいのがあるから、9500までいけそうだよ、アメリカから、輸入したんだ。」
「そうなの?面白そう。今までのよりも回るの?」
「うん、そうだよ。よし、作ってみよ」
その週はエンジンの組み立てのため、内燃機屋さんにシリンダーをもって加工をお願いしていた。
サンゴちゃんと同じようにダミーヘッドとダミークランク付けて削りなおすのだ。
預けている間、別のシリンダーでマウント位置の確認していた。
若干の違いはあるが、マウント位置の違いはブラケットの馬鹿穴で対応できるくらいの違いなのでごまかしておいた。
次の週、シリンダーが仕上がってきた。
「お兄ちゃん、これ組むの?」
「うん、そうだよ、エンジンがちょい重くなるから、その分アンダー増えるけど、サンゴのエンジンよりは軽いからまあ大丈夫でしょ」
「まあね、へー、大きさって変わんないね」
「そうだよ、ブロックがアルミから鋳鉄になる分はちょっと重くなるけど、材料差分とまではいかないよ。けど鉄の方がじょうぶだから排気量が大きくなる」
「へえ。いいじゃん。」
そういうと、雅子と僕はエンジンを組みたてて、セッティングしていく。
雅子の分析ソフトの結果を入れて燃調や点火時期も決めていく
タービンもちょっとサイズの大きい新品にした。
次の日の夕方組みあがったエンジンをイチゴちゃんに乗せて早速始動するために準備していた。
「へー、なんかブロック叩いたけど静かだよね」
「うん、鋳鉄は音も吸収するよ、でもアルミでもうまく作ってあれば同じだよ」
「へー、なんかいい感じね」
雅子の目が輝いてきた
「雅子、乗せるよ」
「うん、あたしはミッションの方をみればいいの?」
「そうだよ、ボディーに当たらないようにしてね」
「はーい」
雅子と一緒にイチゴちゃんに組んだエンジンを載せていく。
きちんと収まって、次は冷却関係の接続だ。
ゴムホースをもってきて現車に合わせて切った、貼ったしていく。
全てつながったところで、エンジンアライメントを確認してエンジンをかける
「どうよ、まさこ」
「へー、いい感じじゃん」
「よーし、このまま、暖機したら試走するぞ、今日はサポートはななちゃんでいくぞ」
「はーい」
イチゴちゃんに僕がのって燃調におかしなところが確認する。
いつもの峠までゆっくり流す。
高速に乗って、踏んでみて異音がないか見ていく
うまくったようで、全くおかしな音は出ていない
いつもの峠に着く、頂上にななちゃんをおいて一緒に乗って試乗する
「へー、このエンジンいいじゃん、ここまで静かで、へー簡単に回るのね。馴らしは?」
「これからだ。終われば9500目いっぱいまで行ける、エンジンの慣らししながら雅子の慣らしだよ」
「やったー、へー、凄ーい、まずは3000かな?」
「4000迄はいけるよ。おおー良い具合だ。ん?雅子、燃調薄目だから。今は上まわさないでよちょっとセッティングしなおしだ」
「はーい、エンジンが重くなったっていってもあんまり影響ないわよ。このままでも行けるわよ」
「そうか、もう大Rじゃん、アンダーに気を付けろ」
「OK、おりゃー」
雅子は大Rを5速に入れたままきれいなドリフトで抜ける。
「さすがだよ。雅子は」
「いいじゃん、いいじゃん。これー」
気に入ったようで、嬉々として走る雅子。
下まで行って戻る。
「雅子、どうだよ?」
「前のイチゴちゃんって、5000近辺までのトルクがあんまり無いって感じだったけど、今のはいいわよ。4000でもググってくるのがわかる。多分パワーバンド下に広がったのね。でねー、なんかサンゴちゃんに近くなったかも」
「乗りやすかったか、さすがだよ、あっという間に乗りこなしてるんだから」
「お兄ちゃんのセッティングって、乗った感じが似てるんだもん。サンゴちゃん知ってればすぐ乗れちゃうわよ」
「雅子のセンスだよ」
「お兄ちゃんって、走れるからセッティングうまいんだろうね」
「雅子、気に入ってくれてありがと、帰ったら燃調ちょっと濃くしてマージンとるから。後は1000キロ慣らしだな。それまでこの特性になれるんだよ」
「うん、燃調は頼むね。へへー進化したイチゴちゃん次のバトルが楽しみね」
「まったくー。調子乗ってるぜ」
「あははは、そうね」
僕らは帰宅する。
家に着くや否や雅子は嬉々としてあーでもないこーでもないとサスペンションをいじる計画を立てている。
イチゴちゃんの進化に満足したらしい
しかも新しいエンジンで、パワーバンドも広がって乗りやすくなったのが気に入ったと言っている。
「慣らしをするんだから通勤にも使っちゃお。早くならせる」
「雅子は好きになったね」
「もちろんよ。このエンジン素性よさそうじゃん。ふへへへへー楽しみ」
にっこりして言う雅子だった。
このエンジンがどう出るか?
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。