第四十七話 ボンネット6×4ダンプのパワーアップと練習で峠に行って
速い車が好きな百合ちゃんとそのお父さん。旧車のパワーアップ頼んで来ちゃった。
夜に走り方を聞きに来た愛理沙ちゃん。初めて乗るサンゴちゃんは?
オフロードコースを楽しんだ次の日、会社で仕事していると工場に雅子がやってきて
「ねえ、愛理沙から注文が来ちゃったよ。2トントラックが事故に会って廃車にするからいい中古ないかって?できれば総輪駆動の保冷車」
「もしかしてエアサスにしろってこと?」
「うん、その通り」
と言っていると、カラカラカラという軽いエンジン音とともに美浜ちゃんで百合ちゃんが来た
「はあああ、聞いた?お父さんが隆弘さんの家の車庫で眠ってる3軸総輪駆動を譲ってもらったってここに復活頼むって。クレーン車に改造するの」
「はああ、またですかあ」
脱力してた僕らだった。
その夜、仕事を終えて帰ろうとしていると
「悟瑠。明日、船底と2軸トラクター借りるぜ。うちの3軸総輪駆動を公道復帰させるんだと。丸松建設の社長から親父のところに売ってくれって来ちまって親父も面倒見切れなくていたから手放すって。ワリイがノーパンクタイヤも借りるぜ。そうそう挙句の果てに鉄子ちゃんと同じサスにして欲しいとか。スタビとラテリンも」
「大変だなぁ。あ、そうだ。百合ちゃんが乗る4×2ボンネットダンプにもラテリンを入れてくれと言われてたな。ここに来てるんだからついでに入れちゃえ」
「ってことはラテリン入れた後に買って来た3台の6×4ボンネットダンプにも8トン、6トンのダンプにもメンテで入庫した時に入れるのか?」
「入れるんだろ」
「ねえ、お兄ちゃん。なんかさ2台8トンダンプ探してほしいんだって。キャブオーバーでいいから。2軸のほうがいいみたいで。3軸だと工事現場に入れないんだよ」
「まじかあ?いきなり?」
「うん、今の工事の場所の仮橋の関係で3軸の11tが使えなくて軽い3軸総輪駆動ダンプと2軸総輪駆動ダンプの鉄子ちゃんはフル稼働みたいよ。どうも最初は8t車をナンバー無しでそこの工事に使おうとしたんだけど、現場から公道に出ることなってることがわかって急遽探すの。できればKC-くらいのがあるかな?」
「分かったよ。それと3軸総輪駆動も公道再デビューでしょ」
「うん、あれはクレーン車にして譲さんのオフロードコース訓練車にもするの」
「ターボ付けてパワーアップしてって言ってこないよね」
「多分、ミッションもたないって。」
「120psじゃあ不足しないのかな?」
「それは聞いたわよ。50キロ出ればいいから、パワーはどうでもいいんだって。クレーン装置積んでクレーン車で登録するから。ナンバーは現場への移動の時自走する為よ。手持ちのじゃあ大きすぎて対応できないんだって」
「そう言うことかあ。なんでまた?」
「今、丸松建設で持ってるクレーン車って30トン釣りで大型の商業施設の建設に使えるようにしたんだけど、大き過ぎて個人の住宅建設の時、道路占有して作業するんだけど、いつも申請に苦労してて、そういうときはラフタークレーン借りるんだけど、それもこのところレンタル会社が廃業したりして残ってるところはめいっぱい出払っててなかなか借りれなくて仲間に借りているんで、かち合うと困るから自前で持ってることにするって。100キロくらい離れたところなら自走でいくって」
「そうか。クレーン装置はもう来るの?」
「うん、準備いいよね。装置はここに来週には来るの。それで上手くつけてだって。4.9tの5メートル。クレーンに荷台は要らないからね、余った所には上手く鉄板貼って欲しいって。大型特殊車にするんだって」
「わかったよ。あ、雅子、この前愛理沙ちゃんがトラック買ったお店からいい中古の2t車が入ったんで見に来てだって、U-LG8YS41改で保冷車仕様って言ってた」
「へええ、よさそうじゃん。明日、愛理沙と見に行ってくるね」
「雅子、お店に確認したけど総輪駆動はやっぱり高床になっちゃうよ。それでいいか見てきて。エアサスにするって言っても普通の位迄しか下がらないよ」
「それは仕方ないって。愛理沙に連絡するから。仕事あり過ぎよね。うちのトラクターのエンジン換装なかなかやる時間取れないよね」
「そうだな。早く丸松建設の車を片付けてだな、今週中にボンネット6×4ダンプを2台仕上げてだな。合間に修理依頼やリースメンテだな」
仕事の段取りがきめて、僕と隆弘、隆文といつものベテラン3人と新人3人、あろうことか社長の親父迄工場にこもって丸松建設の車の作業していた。
他の作業員はリース車のメンテ、飛び込みのお客さまのメンテや修理で大忙しだった。
先に4×2ボンネットダンプのターボ化を仕上げて納車に行った。
以前のマニ割マフラー独特のババババという叩きの音がきれいに消え去っていて、しかもターボのおかげで排気音はとっても静かだ。
その足で次にターボを付ける6×4ボンネットダンプを引き取って帰って来た、これは踏み込むと左右のマフラーからババババというマニ割の叩きの音が響く、ところがスロットルペダルを離すとピヨピヨという鳴きの音が聞こえるが、ターボにすると叩きの音と鳴きの音がちこ聞こえなくなる
この車は丸松建設のトラクターと同じメニューにするので楽なのだ。
「悟瑠、昔の車って結構エンジンルームにスペースあるからレイアウトは楽だよな」
6×4ボンネットダンプを引き取って来た次の日から、6×4ボンネットダンプのターボ化をやっていると隆弘が言う
「隆弘、その通りだよ。スペースあるからターボが収まる場所があっていいよ。エアコンもキャビンの体積小さいから小型用でいいもんな」
「そうそう、エアコンもつけてくれって言うとは思わなかったけどな」
「エアコン無いと夏場は暑くて大変からだろ。あ、エアコンと言うかクーラーだけどな」
「そうだな。クーラーだな」
僕らは、クーラーをつけてラテリンもつけてエンジンのターボ化の作業を進めていた。
そこに2t車を見に行った雅子が帰って来て言う
「お兄ちゃん、愛理沙は決断力すごいね。課長の綿貫さんよりも決断早くって、しかも見る場所わかってるからこれって決めちゃったよ」
そう言って、ニジュちゃんから降りてきたのは雅子だ
「もう決めたのか。さすがだな」
「そうなの。とにかくねえ、愛理沙はレディースの総長やってたでしょ、仲間を守るために喧嘩したほうがいいか、しない方がいいかってしょっちゅう判断してたんでポイントわかってる。それを仕事に応用してて決めるの早いよ」
「やるなあ。綿貫さんの見立て通り優秀なんだね。」
「うん、中古車のお店の人も綿貫さんに愛理沙を欲しいとか言ってて綿貫さんが困ってた。愛理沙までいなくなったら困るもんね。そうそう、愛理沙は年度の途中だけどもう主任に上がっちゃったよ。それで課長もさぼってばかりの大卒を他の支店に飛ばして新人を愛理沙につけたって」
「そうか、愛理沙ちゃんも楽になるのかな?」
「ううん、違うよ。綿貫さんのほうよ。楽になるのは。今まで係長兼主任兼もやってたけど主任兼がなくなるし、新人のことも愛理沙に頼める。愛理沙は総長やってたから部下の扱い上手いよ」
「そうだろうなあ」
「それで、見てきた車の保冷車なんだけど、エンジン換装してあってFD46だった」
「そうか、それならトルクもあって楽そうじゃん」
「エンジン換装と保冷車の公認取って有ったのと事故歴無くてフレームの狂いまでは見切れないけど下周りの錆がなくて、とてもいい個体なんで愛理沙が気に入って即決」
「これもエアサスにするんだろ。総輪かな?」
「うん、車は入って来たばっかりでナンバーついてたから、今日そのまま乗ってきてうちの駐車場に置いたよ。綿貫さんが隣に乗ってて愛理沙の腕の良さにびっくりしてた」
「もう乗って来たんかい?愛理沙ちゃんはドリフトやってるんだよね。それに大型も持ってて、雅子に運転聞いたんだろ。うまいに決まってるじゃん」
「そうよね。愛理沙は大型免許取った時は気合の一発試験場だから」
「すげー、やるなあ」
雅子に話を聞いているといつも板金メインの3人組がきて
「副社長、6×4ボンネットダンプのエンジン交換仕上がりました。ミッションはそのままでいいんですよね」
「うん。元々V10用26.5リッター用なんだよ。500ps180kgの生迄いける。十分だろ」
「良いですね。7速ですからね。水漏れオイル漏れもOKです。車検取りなおしですが」
「うん、それは公認取るなら仕方ないって。どうもありがとう。僕が納車行ってくる。今日買い取って来た2トン総輪駆動保冷車をエアサスにするの頼みたい。キーはこれ。丸松建設からもう一台くるんで残業になりますがよろしくお願いいたします。」
「副社長、仕事があってありがたいですね」
「うん、なんか雅子に聞いたら丸松建設が6×4のダンプカーをパワーアップするのは高速道の補修工事の仕事を取ったんだけど登りのきついところなんでアスファルト運ぶのにパワーがいるって言うことらしいですよ。ボンネットは予備車みたいだけど、工事の遅れは許されないみたいで」
「たいへんですねえ。11トン積みでも9トンくらいでやめるんでしょうね。総重量22トンが多いですよね」
「11トン車なんでそうでしょうね。すりきりでフルに積んでも9トンまでいかないとか言ってます」
「あ、そうか。砂と比べて比重軽いもんな。アスファルト運んだ後の洗浄が大変なんですよ。うちに洗浄の仕事きそうですね」
「スチームで洗浄でしょ。それはやりましょう。じゃあ納車行ってきます」
水漏れオイル漏れが無いことの確認も終わっているので、丸松建設にパワーアップした6×4ボンネットダンプを納車して次に作業する6×4ボンネットダンプを引き取って帰って来た。
「悟瑠、これもターボだったよね。部品は?」
「隆弘、部品は全部あるよ。フーセンちゃんと同じ仕様にするよ。ミッションも新型キャブオーバー用に交換する」
「早いなー、部品が全部あるんだもんな」
「もちろんだ。ああ、そうだ。雅子。8トン系のダンプって見つかったのか?なかなか出ないかな?」
「お兄ちゃん。全部大丈夫よ。ちゃんと笠木さんのお店で見つけてくれてた。KC-CK52AENDとKC-CVR80F2Dだよ」
「どっちもV8か。ありがと。それにしても8トンも6トンもボンネットのキャビンとフレームはしっかり防錆して仕上げたなあ」
「確かに、昔の車って錆との戦いだもんな。鉄板も今のより錆びやすいし。防錆ボンデ板なんて無塗装でもなかなか錆びないよな。あの3人はきちんと対処してるぜ」
「ほんとそれ、3人はよくわかってるよ。防錆メッキした上に防錆プラサフがっちり吹いて、塗装した後に水溜まりやすい場所には防錆パスターがっちり吹いてだよ」
「それなら安心だな」
僕と副工場長になっている隆弘は仕事の段取りを決めてやっていた。
2台の6×4のボンネットダンプのターボ化を進めて3日後、仕上がった6×4ボンネットダンプを丸松建設に納車して、4台目の6×4ボンネットを引き取って帰って来た
並行してアルバイト君たちには入って来た8トン4×2ダンプのKC-CK52AENDとKC-CVR80F2Dの名義変更手続きをやってもらっていた。
「お兄ちゃん。愛理沙の2トン総輪駆動保冷車のエアサスはどう?いつ頃出来上がる?」
整備工場に顔を出して注文を受けているスーパーの補充用兼直取り輸送車の2トン総輪駆動保冷車のエアサス化進捗を聞きに来た妹の佐野 雅子。
峠のバトラーからTSカップのレースに参戦するようになっていて、前回のレースではウエットコンディションをものともせず4勝目を上げて5勝目を目指す24歳。
雅子のTSカーはうちの会社でスポンサーしてて、他には元職場のスーパーと百合ちゃんの家の建設会社、新たに小笠原精肉会社からもスポンサーを受けている。
そんな雅子は今、オフロードに嵌って大型の2軸総輪駆動を買ってきて、エンジンをいじって、サスペンションをいじって自分好みにいじった。
その総輪駆動はV8の大排気量エンジン+ターボ追加してオンロードでもそこそこ速い車にしてある。
オフロード車は隆弘が詳しいのでエンジン特性やサスペンションのセッティングも勉強できてとてもたのしそうだ。
それが高じてオフロードコースを作って丸松建設の百合ちゃんと共同で運営すべく準備してコースを完成させてしまった。
雅子は親が経営している中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長になっている。
運転免許は大型2種免許と牽引免許を取った、他に2級整備士も持っている。
必要なら大型トレーラーや積載車を運転できるし納車前のお客さんの車をメンテもやれる。
それに、プログラム組むのも好きなので、実家の規模に合わせたいろんな経理システムを自分で組んでいて、両親も大助かりといっている。
自分のTSカーの脚を組むときに計算してスペック決めていたし総輪駆動では動きのシミュレーションもしていた
雅子は僕と仲間内からアジトと呼ばれている祖父母が経営していた製材所の跡に併設してある家に住んでいる。
そこから市内のお店に通っている、車は大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバス改造の移動倉庫のU-RP210GAN改280ps仕様か、エムエム君と呼んでいる、同じカテゴリーのバス改造の移動倉庫の○アロスターMMのU-MM618J改の300ps仕様、エンジンと足回りを改造した総輪駆動で藤子ちゃんと呼んでいるU-FZ2FJCA改の440ps仕様だ。
雅子の車を含めたうちの会社のディーゼルエンジンの車には以前勤めていたスーパーから買っている使用済みの食用油をリサイクルして作ったバイオ燃料を詰めて環境に配慮していて、使っている車全部に”環境にやさしいBDF”と書いたステッカーを貼っている。
「あと一週間かな?フレームの補強は終わったよ。念のためフロントにラテリン入れて走りやすさを出そうとしてるよ。あの3人が補強したところにZnメッキして防錆塗料塗ってるよ。フレームの狂いも直してあるよ」
「わかった。後、一週間くらいね?愛理沙に言っておくよ」
「うん、後はエアタンクとコンプレッサー積んでだな。この車はいいことにメカコンプレッサーが使えるんだよ。FE6のバス用が使えるから積んだ。念のため補助で電動コンプレッサーも併設する」
「へええ、2WD低床バンの時は電動だけだよね」
「うん、メカポンプでいいのが無くて仕方ないから容量の大きい電動を2つ使って作動頻度下げてどっちかトラブっても最低限ここの工場までは走れるようにしてある」
「お兄ちゃんって車作る時ってトラブルフリーって言うか?とにかく修理工場まで来れるようにするよね」
「そりゃあそうだよ、仕事で使うんだよ。なるべく路上で立ち往生しないようにするよ」
「悟瑠はそうだよ。ちょっと値が張るけど、とにかく何かあっても何とか整備工場までは走れるようにしてるよな」
「今日は4台目の6×4ボンネットダンプのターボ化だよ。錦君と同じメニューにするけどミッションは10PE用の6速にする」
「わかった。じゃあ、お兄ちゃん作業よろしく」
「おう」
6×4ボンネットダンプに積んである6QB1エンジンにターボを組んでラジエターを大容量に変更等、錦君と同じメニューを組み込んでいく僕:佐野 悟瑠は妹の雅子より4学年上の3月生まれの27歳。
地元の大学を卒業して家業の佐野自動車販売に就職して6年目、今は家業の中古車販売店、整備工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備が担当だ。
資格は2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。
フレーム修正機も使え板金もできる。
他にはへこみのリペア、カラスリペアと危険物の免許も資格を取って入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長になった。
免許は大型、けん引免許を持っている
オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していける。
またバスの管理士になれるので、中古の大型観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
他には丸松建設のバスの管理もやっている。
僕らの両親はどちらも車が大好きで中古車屋兼大型車や建設機械も整備する整備工場を経営している。
大型の入庫が多く、小型車を整備する場所が不足した時はアジトのガレージでやる。
そこもお店の工場にしてある。
アジトの車両をいじる設備はすべて中古で、大型車対応のボードオンリフトが2機、大型エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、グラインダー、エアツール一式、板金道具一式、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、油圧ベンダー&カッター、ボール盤、旋盤、フライス盤、20トン対応天井クレーン、3トン対応のリフター3機、ワゴン式工具箱、タイヤチェンジャー、バランサー、ユニフォーミティマシンまでそろっているので、小型車のメンテどころか大型車の改造迄できてしまう。
事実、僕らの総輪駆動はここで脚を組んだのだ。
アジトは元は製材工場なので木材搬送のために大型トレーラーが20台以上を悠々と停められる敷地の広さがあり、父親が中古車版売店、整備工場を始めた場所でもある。
「悟瑠、6×4ボンネットダンプのターボ化仕上がったよ、水漏れ、オイル漏れ確認すればOKだ。ラテリンも入れた」
「OK。ありがと。条件的には前置きインタークーラーとラジエターになってるからフーセンちゃんと同じものを組んでいるんで容量不足にはなんないだろ。雅子の計算上もバッチリいけるよ」
「ああ、このエンジンは400psも出せるんだろ。それの90%に抑えているからいいんじゃないか?」
「そうだよ。ラジエーター等の冷却系統の容量上は420psいけるよ、実力とは言え360psで使ってるからいいんじゃないか?」
「大丈夫そうだな。水漏れ、オイル漏れがないのを確認したら納車だな」
「次は愛理沙ちゃんの2トン総輪駆動保冷車のエアサス化まきいれるぞ」
「おうよ。その次は6×4ボンネットダンプのターボ化と3軸総輪駆動をクレーンにするんだな」
「そうだな。その後はやっとうちのトラクターパワーアップだ」
隆弘と段取りの話していると親父が来て
「悟瑠、隆義のところの3軸総輪駆動はクレーンにすると大容量のオイルポンプを回す必要あるからミッションのPTOのところから動力を取るんだぞ。前にもPTOあるけど不足だからな」
「ああ、親父、オイルポンプを何処に着けようか場所探してる。燃タンが邪魔で置き場がなくて」
「そういうときは燃タンを動かせばいいんだよ。この車はオプションで200リッタータンクがあって。100リッターの隣にもう一つ100リッターが着くんだよ。後ろ側のスペースに燃タンをずらせばいい」
「そうくるか」
「悟瑠、まだまだ甘いな」
そう言っている僕の父親。
佐野自動車の社長である父親は元大型車整備メインのディーラーにいたが、結婚を機に独立してこの店を立ち上げた。
若いころはマニ割をやっていて、今もその技術を使ってマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーに自分で改造してしまうほどのマニ割マニアっぷりを発揮している。
マニ割仕様のエギマニはステンレスパイプをベンダーを使って手曲げで作ってしまうほどの腕を持っている。
大型車メインの整備工場に勤めていた時にはマニ割車を100台以上作ってはお客さんに収めていた。
トータルでマニ割車を何台作ったか覚えていないというマニ割マエストロでもある。
その業界ではいまだに名の知れた存在で旧車のマニ割作って欲しいという発注がいまだに来る。
「さすが親父だよ。そうだ2軸トラクターに乗せるV10エンジンのマニ割よろしく」
「エンジン乗ったら言ってくれ、取り回しは現車見ないとな」
「狩野さんのV10ダンプで作ったじゃん」
「現車あったからだよ。エンジン見ながらエギマニのフランジは作っておくよ。補機類が当たんないかは改造車は現車見ないとわからんよ。ダンプとトラクターは周辺機器が一緒じゃないだろ」
「そうか、いわれてみればそうだな」
「3軸総輪駆動のタコ足を作っておくから。6⇒2⇒1の完全等長にする。それならちょっとはパワーアップするしマフラーも腐ってたからついでに作ればいいよ。そうだ。2軸ダンプの2台のマニ割はステンレス製のエギゾーストマニフォールドを作っておいたよ。現車に合わせてマフラーを組めばOKだ。昔の図面が残ってた、昔そのダンプで煙突にしたから」
「3軸総輪駆動はマニ割じゃなくて6⇒2⇒1か?えええ?もう?V8ダンプ2台のマニ割作ったって?早すぎだろ。やるなあ」
「悟瑠、クレーン車は作業で民家の側によく行くんだから作業中は静かにした方がいいだろ。タイコは2連装でオリジナルよりも静かにしたいな」
「そうだな。そう言えばV8はマニ割の方がパワー出るんだったな」
「そうだぞ。それからなあ3軸総輪駆動はイベントに行ってエンジンルーム開けたときにうねったエギゾーストマニフォールド見えるのはかっこいいだろ」
「やれやれ、そう言うところはミーハーだな」
と言っていると、百合ちゃんが工場に来た。
「こんにちは。お邪魔します。ねえねえ、雅子、悟瑠さん、相談なんだけど。狩野さんが持ってるV10ダンプをパワーアップしたいの。良い手ないかな?エンジン載せ替え?」
「百合リン、どうしたの?急に」
「狩野さんが自分が乗ってるダンプのエンジンが最近全然パワー出なくて。高速のお仕事で使うの大変なのよ。今はやむなくうちの予備車の6×4ボンネットダンプで仕事してるんだ。でもさあ、いくらKC-のエンジンって言っても排気量がV10に比べたらないじゃん。ターボ効かないと登りが結構大変で、自分のダンプで仕事したいからここで見て欲しいって。建機乗れる狩野さんは今日はお兄ちゃんと船底で建機を移動してて来れないからあたしが代わりに来たの。あたしは建機乗れないから。」
そう言っている百合ちゃん。
百合ちゃんは雅子の親友で高校の同級生で同じく車大好き
雅子と同じ地元の商業高校を百合ちゃんは2番目の成績で卒業して雅子と同じスーパーに入った。
販売部にいた時、提案した買い物難民救済用の移動販売車の成果が認められて主任になってキッチンカーの担当もしていたが、家業の人手不足もあってやむなく家業に転職した。
この百合ちゃんも大型バスにも嵌って2台買った。
2台ともV8エンジンで、V8の排気音が好きというほどの車好きだ。
百合ちゃんの一家も車好きで社長の百合ちゃんの父親の隆さんも旧車好き、且つ速い車が好きだ。
社長の奥さんで副社長の百合ちゃんのお母さんの美採さんも大型車好きでしかも旧車好きのオリジナル志向。
百合ちゃんの兄の譲さんも大型の旧車好きで、なんとマニ割好き。
この百合ちゃんのお兄さんは車を作るときはマニ割優先で出力よりも優先している。
「もしかしてもうV10ダンプに乗って来たの?」
「うん、乗ってきちゃった」
「百合ちゃん、いう通りにエンジンを換装しよう。V10のV25Cにしよう。僕んちのトラクターパワーアップ用は申請の関係でV26とV25の組み合わせにしたんだけど狩野さんのならV25Cそのままでいける」
「いいですねえ。すぐできそうなんですか?」
「あ、まったく、百合リンのせっかち。お兄ちゃん、エンジンの在庫あったっけ?」
「U-のV25Cならあるよ。僕らは申請の関係でV26Cのヘッドが欲しいから取り寄せた」
「そうかあ、じゃあミッションは?」
「トラクター用があるよ」
「悟瑠。ってことはマニ割作れってことだな」
「そうだなあ、パワーアップ狙うならタコ足かなあ。5⇒1かな」
「そうだよなあ、そうしよう。使い方から言ったらマニ割よりもパワーだな。狩野さんに確認だな。タコ足にして集合部をきちんとするとパワーでる」
「百合リン、狩野さんに確認よろしく。かえりはあたしのエムエムくんね。お兄ちゃん。今日は一緒帰るのよ」
「はいよ」
そう言ってる間に百合ちゃんは狩野さんに確認していた
「雅子。パワーアップ重視だって。等長マニフォールドの音もいいかなだって」
「OK、等長でパワー重視にするよ。」
「パワーアップの設計ならお兄ちゃんお得意じゃん」
「5気筒の場合は集合部をサージタンクにする方がいいんだよ。サージタンクの容量は計算するよ。1400rpmを上限でやってみるよ」
「お兄ちゃん、よろしくね」
百合ちゃんが帰った後、僕はサージタンクの管径と長さと集合した後に流速をあげるようテーパーにした後のパイプ径を計算していた
「お兄ちゃん。2台のダンプの名義変更終わったよ。とりあえず納車できそう?」
「取り急ぎは出来る。工事はどのくらいかかるんだっけ?とりあえず一台入れて残った方のエンジンをオーバーホールして終わったら納車、先に納車したほうを引き取ってオーバーホールしたいなあ。どのくらい汚れているかわかんないから、またレン君みたいなことになるなら」
「いうとおりね、百合リンに聞いてみるよ。もしかして狩野さんのV10ダンプもスラッジ詰まった?」
「え?U-だよね、詰まる要素ないはずんだけど。どうやって詰まるのかな?」
「そっかあ、こっちに来てから買ったんだよね。V8の方を手放して」
「V8も持ってるよ。元から狩野さんは適用地域外に住んでたからKC-は大丈夫だよ」
「そういうこと?」
「そうだよ」
「お兄ちゃん、それなら狩野さんはV8ダンプで仕事しないの?」
「雅子、狩野さんのV8ダンプは今車検切れ、忙しくて実家から車検に持ってこれないって言ってて」
「そうなの?言ってくれれば取りに行ったのに」
「それは仕方ないね。ってことで狩野さんのV10ダンプのエンジンおりたら開けてみようか」
「うん」
「副社長、今後の段取りは?」
「百合ちゃんの連絡待ち、わかってるのは一台はすぐ入れる。もう一台はすぐいるのか?後でいいかで変わるよ」
と言っていると雅子が来て
「百合リンに聞いたよ。レン君の二の舞は嫌ってことで、一台ずつオーバーホールしてから納車してだって。でも一台は直ぐに欲しいって。ボンネット総輪駆動2台はフル稼働で今も百合リンの徳次郎君(4×2ボンネットダンプ)も稼働中」
「OK、両方共にオーバーホール済のエンジン在庫があるから載せ替えて出荷しよう。急いで換装だな。オーバーホールしたのが1年前ならゴム部品も大丈夫だろ」
「そうよね。1台先に出して2台目出来たら1台目は入庫してもらってエンジン換装ね」
「それなら先に、RF8の4×2キャブオーバーを納車する。PE8の4×2キャブオーバーの方はエンジンを載せ替えてからだな」
「百合リンに言っておくね」
「よろしく」
「悟瑠、ついでにマニ割もだろ」
「もちろんだ。ラジエターとラテリンも。隆文、煙突左右出しもよろしくな」
「OK、久しぶりにマフラー作るぜ」
そう言って隆弘と隆文は嬉々としてエンジンを降ろして交換していた。
僕は雅子と丸松建設にRF8の4×2キャブオーバーを納車して、PE8の4×2キャブオーバーが出来上がったら一旦RF8の4×2キャブオーバーを引き上げてエンジンを交換すると百合ちゃんに伝えていた。
仕事を終えてアジトに帰ってまったりしていると
「え?ねえ、お兄ちゃん。愛理沙がまた峠の走りかた教えてだってあさってお休みだよね。明日の夜に教えるのいいかな?」
「へええ、愛理沙ちゃんはもっと速くなりたいってこと?」
「そうみたい。なんか、愛理沙がTSカーレースに出たいって言って来たの。車はKPA11を見つけてきたの」
「えええ?それじゃあ、ドリ車はどうすんの?両方出るの?」
「ドリ車は百合リンが乗るみたいよ。ドリに出るとか」
「ええええ?そうなの?」
「百合リンの性格からすると速い車が好きでしょ。600psでも乗るって。愛理沙が乗れるんだから大丈夫って言ってるの。峠の経験は百合リンの方があるのよね。かなり走ってたよ」
「へー、譲さんは出ないの?」
「出ないよ。百合リンいわく動体視力と反射神経は百合リンが遥かに良いんだって。百合リンは会社入って直ぐに中古の4BA-ZN6買って百合リンのママが走った峠を走っていたけど、譲さんは大学行ってて峠は走ってないよ。」
「そうなんだ。ってことは百合ちゃんはバトルの仕方も知ってるってことか」
「そう、それで最初は百合リンがドリ車に乗るって言ってたけど。バスに嵌ってバス買っちゃったでしょ。今は総輪駆動もいいけど、競技に出るのもいいかなって」
「そういうことか。それなら納得」
「お兄ちゃんに愛理沙から車作って欲しくているって。峠の練習の時に話すって」
「わかった。場所は?」
「春奈だって。愛理沙の地元。あたしは小型用のレッカーでいくから。無いと思うけど万が一のために」
「ありがと、僕はサンゴちゃんかな?雨なら三四郎くんだな」
「三四郎君は600psでしょ。愛理沙はドリ車で乗りなれているって言っても最初はビビるかも」
「トルクが半端ないからね。お店から直だな。愛理沙ちゃんの家の方向から登って下るんだろ」
「そうね。じゃあ、愛理沙には返事しておくよ。スーパーの仕事定時で上がってでしょ」
「そうだね」
次の日、僕は久しぶりにサンゴちゃんで会社に行った。
3000rpmくらいで走っても全く問題ないトルクと軽快なレスポンプでNAエンジンの良さが堪能できてしまう。
その日の仕事は狩野さんのV10ダンプのエンジンおろしと交換だ。
エンジンをかけてみたが、異音はなく、きれいに回っていた。
確かにパワーがない。その割には煙を吐く
「悟瑠、もしかして燃料吹いてないとか?」
「そうかも。ポンプがヘタっているのかも。それにしても煙はくよな。もしかしてエアクリーナー詰まってる?」
「そうだよね。何が起きてるのかひとつひとつ見ていこうよ」
「そうだな」
僕らは疑わしいところを探していた。
すると、EGRバルブが開きっぱなしでしかも、進角タイマーが固着して進角しない、噴射量が規定値の70%と不足していた。
「これじゃなー」
「うん、素直にV25Cに載せ替えよう」
「それが良いな、ええと。ミッションもあるんだよな」
「うん、あるよ。載せ替えさえしちゃえばあとは公認だけだ。いいことに3軸トラクターで設定あるから話が早いよ。基本形式一緒だから試験も一部免除だ」
「それなら、いいや。とにかく、エンジンおろそう。積んだ後に親父にタコ足を作ってもらって後は集合から先は僕らで作ろう」
「だな」
その日はエンジンおろしまでで終えて愛理沙ちゃんの待つ峠に行った。
待ち合わせ場所の湖に着くと
「悟瑠さん、どうもありがとうございます。あたしはGXE10できましたけどいいでしょうか?」
「最初は僕のサンゴちゃんでいきます」
「え?これですか」
「はい、乗ってください。雅子、GXE10見ててね。ちょっと行ってくる」
「はーい」
「ねえ、由香里。雅子先輩に何かあったら連絡よろね」
12代目というサンゴちゃんの窓からレディースの総長に声をかけていた。
「はい、7代目。任せて。7代目の車も先輩も」
僕は愛理沙ちゃんを隣に乗せて、事前に調べたデータを入力したゲームマシンでシミュレーションした通りに走っていく。
「ここはストレートが長いからスピードに乗る、ここで一気に減速。うーん、やっぱり狭いからなあ」
「狭いって言ってもこの速度ですか?」
「まあ。きついからねここは」
そう言って減速も兼ねたドリフトで向きを先に変えて進行方向に合わせるとフルダッシュ
「ひゅううう。スゴ」
「この峠の下りは実際に走るのは初めてなんで80%ね」
「えええええ?これでですか?」
「うん」
「ここは、対向車居ないなら右車線をめいっぱい使っていくと早い」
「うおお、やべえ、脳がバグる」
抑えていたのだろうが、レディースの総長だったらしい言い方が出る
「ここは名物の溝落としだ。速く走るのにも使えるけど結構シビアだよ」
「マジかぁ、こんな横G」
「ここが5連ターン。リズム崩すとスピンする」
「やべー、これくるくる」
「ここが最終一つ前の溝落とし」
「もうヤバいー、ひえええ」
「ラストここは自由度高いからガンガン行ける」
「はい、ハァハァハァ」
「大丈夫?怖かった?バドルならもっとだけど、こんなところだよ」
「ありがとうございます。これでも80%ですよね」
「そうね、ヒルクライムはゆっくり行くから、脇で見てて」
「はい、ありがとうございます」
僕は愛理沙ちゃんに走り方を伝授してゆっくり戻って来た。その後、運転を変わってサンゴちゃんを使って軽く70%くらいの攻め方で二往復して雅子達が待つ駐車場に戻って来た。
「7代目、お疲れ様でした。脚がふらついてますよ」
「由香里、この人の隣で80%の走りを味わってみるかい?ふらつく意味が分かるよ」
「あはは、愛理沙とかあたしならいいけど、お兄ちゃんの80%の走りされたら由香里はコーナー3つでバタンきゅーでしよ。あれは愛理沙がドリフトやってるから乗れるのよ」
「ええ?そうなんですか?7代目いいてすか?あたし乗ってみます。あたしもドリフトやりたいんで」
「ふふふ、良いわよ。どうなるかな?ちびっちゃだめだかんね」
「押忍、あたしも、7代目みたいに走りたいんです。自分に才能あるか」
「仕方ないわねえ。悟瑠さんお願いします」
「良いよ。60%で」
「そうですね、お願いします」
「シートベルトを締めてよ。いくよ」
「はい」
「怖かったら良いなよ」
「大丈夫です」
「じゃあ、まずはストレート」
1速でスタのート、サンゴちゃんリミット9500よりも低い8000迄回してシフトアップ
「ひえええ。えええええ?こんなスピード」
「ここは2速でこう入ると次につながる」
「は、はい」
雅子たちに言ったように60%くらいで抑えている。
「ううう、もう100キロ超え?やばい。ぶつかるうぅ」
そう言っている由香里ちゃんをしり目に7m/s2で減速
「うおおおおお、頭がバグる。なんだあぁ。おわあああ」
60%なのでそこまで攻めていないが、次のコーナーで
「す、すみません。もう勘弁お願いします」
「はいよ。じゃあ下までゆっくり行ったら戻ろうか」
「はい」
下まで降りてゆっくり戻ると、どうやら別のグループに絡まれているようだ。
リーダー格の車はCN9Aのようだ
「は?伸一。あたしと峠でバトル?ここで?あたしのホームだよ」
「あ。7代目。ここはあたしが」
4BA-ZN6に乗ってる12代目の由香里ちゃんが言う
「由香里、いいよ。ここはあたしが売られた喧嘩。あたしが買ってやろうじゃん。」
「俺様の車に勝てるのか?」
「愛理沙、サンゴちゃんでいきな。GXE10じゃきつい。お兄ちゃんいいよね」
「もちろんだ。」
「フン、何でもいいぜ。俺のに勝てるなら、どんときやがれ」
「先輩、いいの?」
「いいよ、愛理沙、いきな」
「あ、はい。先輩、悟瑠さん。いってきます」
「愛理沙が本気で行ったらコーナー3つで米粒ね。愛理沙が勝ったから」
「言ったな。よし。やってやろうじゃん」
いきり立ったようにいう相手、車はマフラー、ホイールは社外品。
エンジンはわからないがいじっていることは確かだ
「愛理沙、覚えてると思うけど。どんなところでもイメトレ大事。お兄ちゃんの隣に乗ってたんだから」
「はい、先輩」
そう言って、サンゴちゃんのコックピットに収まってシートベルト締める愛理沙ちゃんだった
朝の出勤で食肉運ぶ愛理沙ちゃん。
しかし、峠で練習しているとやって来たやつ
愛理沙ちゃんが受けて立つ
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