第四十六話 6トン系ボンネットダンプのレストアと雅子たちのオフロードコース
コレクターになった譲さん
集めすぎでしょ
ところが引き取ったボンネットダンプでオフロードコースをはしったら?
「やっぱり、お兄ちゃん。譲さんは6トンダンプ引き取りヨロだって。どっちもボンネット」
「覚悟はしてたよ。とにかく持って来たボンネットトラックの2台のエンジン修理って言うか必要に応じて交換して納車だな。親父からは全く錆びがなくて脱脂して色を塗ってるって」
「うわあそれなら外観はすぐに終わりそうじゃん、その後にエンジン整備でしょ。それとこの2軸トラクターと3軸トラクターはエンジン交換でしょ」
「もちろんだ」
僕らの車いじりは止まらないのだった。
2日後、雨の日だった、僕と雅子はうちの2軸トラクターで百合ちゃんとの約束の場所に向かっていた。
「お兄ちゃん。この2軸トラクターは平たん路はいいけどやっぱり登りはパワー欲しいよね」
ブババババと2軸トラクターはマニ割の叩きの音をキャビンの両方から響かせ走っていく
登りの連続では、いったんスピードを落とすと回復が大変だ。
ほとんど全開で走っていてもスピードがなかなか乗らない。
「エンジンスワップしてV10の480psにすれば結構いけるはずだよ」
「そうよね。ターボにするとミッションもたないんだよね」
「そうなんだよね。新型用のミッションにするけどね。26エンジンは排ガス規制のせいかあんまり評判よくないんだよ。それなんでヘッドは26だけど中味は25にしたんだ。もう仕上がっている」
「そうなんだね」
「隆弘言うには520psとか言ってるけど測ると出ててもせいぜい450psだってさ。笠木さんも同じこと言ってて25の480psの調子のいい奴の方が乗るとパワーがあるって言うからニコイチしてみたんだ。時間があれば明日には積んでエンジンかける予定」
「楽しみね。2台の8トン車が錆びがなくて簡単でよかったじゃん。百合リンのママ用はエンジン載せ替えたけど残ってる2台はエンジンをオーバーホールしてゴム系交換だけでしょ」
「うん、メタル系も交換するよ。いいことに東南アジアで模造品だろうけどクランクとコンロッドのベアリングも作ってて手に入るんだよ。それにピストンも、コンロッドも」
「すごいねえ」
「あの時代の車って結構修理ができるから調子悪かったら悪い所を修理すればいいんだよ」
「そうよね」
「例えば、プランジャーポンプのシリンダーがおかしいなら銅パイプ削って作るとか、ピストンがおかしいなら銅板加工してとかして鉄工所に頼むと作ってもらえるんだよ。それで治っちゃう。Оリングは汎用品でOK」
「すごいよね。構造簡単だからでしょ」
「うん。噴射ノズルも作れちゃう」
「今のは無理よね」
と話しながら、交代で運転して約束の場所に行った。
僕らは時間より早めについたが、百合ちゃんと譲さんは復活したトラクターで船底を引っ張って既に着いていた。
引き取りに指定された場所はこの前の倉庫ではなくとちょっと離れたところにある昔ながらの食用油の工場の敷地だった。
場所がわかりにくいということで、待ち合わせは近くの大きな道路のチェーンベースにしたのだ。
今日引き取るのは2台の6トン積みボンネット車でTXD60DとDA100Dだ。
「雅子、悟瑠さん、いつもありがとうございます。雨の日で大変なんだからね。お兄ちゃん、わがまま聞いてもらってるんだかんね。帰りにお蕎麦くらいおごりなさいよ」
車を降りて自販機のあるところに行くと、百合ちゃんと譲さんが来て言う
「もちろん。一昨日はうちの仕事も頼んでそれに重機と鉄骨も運んでもらったからね。持ち込みバイトという扱いで。加藤運輸が港湾ストでトラックも運転手も全部出払っててんてこ舞いじゃあ仕方ないけどね」
「そうなんだけどね。今度引き取る6トン系もレストアお願いするんででしょ。エンジンは古いから載せ替えしないなら無理効かないからね」
「いいんだよ、ナンバー取らないイベント用だよ。百合のおかげでイベントに行く時間が出来たし、船底で乗せていけるから。聞いたら6トン積みでもせいぜい4トンしか積まなかったんだって」
「そんなこと言ってるし。お兄ちゃんもちゃんと牽引取ってよ。まったくもう。2回も試験落ちるんだもんなあ」
「やかましいわ」
「あははは、仲いいのね。百合リン。この前と同じで高尾さんがくるの?」
「うん。そうよ。高尾さんがくるよ。あれ?あのボンネットダンプって高尾さん?」
「ええとアレはこの前のボンネットダンプだな。見ると結構油まみれだよねえ。ついつい直したいっておもっちゃう」
「お兄ちゃんはこれだよ。どうしてみんなボンネットなのかしらね」
「ああ。多分だけど製油所の通路にある配管に低いところがあるからだともうよ。そこはキャブオーバーは車高高いから通れないのさ。大型だとみどりランプが邪魔でしょ。それに荷台を変えてるでしょ」
「あああ、そうなんだ。さすが悟瑠さん」
「百合リン、お兄ちゃんの予想は外れないと思うよ。って言うかベテランのひとの予想だからね」
と言っていると、この前と同じ6トンクラスのボンネットダンプが来て止まった。
やはりエンジン音からするとT412DDのようだ
「松尾さん、佐野さん。おはようございます。あいにくの雨ですけどいいですか?」
「高尾さん、おはようございます。ええ。大丈夫ですよ。今日もよろしくお願いします。」
「高尾さん、無理言ってすみません。よろしくお願いいたします。」
「高尾さん。今日もよろしくお願いいたします。」
「じゃあ行きましょう」
高尾さんが先になって僕らの案内を始めた
僕と雅子がついていくと予想通りと言うか昔ながらの食用油の工場だった。
門から入っていくと穀物を輸送するパイプだろうか?一部だけ継ぎ足して高くする工事したような跡が残っているところをくぐって奥の倉庫を目指す
「雅子。ここに改修した跡があるだろ。ここでつないで上にあげて大型のタンクローリーが通れるようにしたんだよ」
「なるほどね。さすがだよね。あの3人の予想って外れないじゃん」
「経験が違うんだろうな。僕なんかまだまだこれからだよ」
といっていると古びた木造の倉庫の前で止まった。
この中に2台の6トン車ボンネットダンプTXD60DとDA100Dが並んで停まっていた。
「この中に見える2台です」
中が狭い様でトレーラー2台は入りそうにない。
降りて確認すると、引き取る予定の6トントラックのタイヤには空気が入っていて走れそうになっていた
「タイヤが交換してあるんですか?空気入ってそうですけど」
「いいえ。これはここの工場の中でしか走らないんでノーパンクタイヤです。10年前までもみ殻とか搾りかすを運ぶ構内専用車として現役でした。引退した後も親父が気に入ってて残したんです。それに月に一回はエンジンかけてこの工場の中を走っていたんです」
「すごい」
と言っていると、工場の中からどうやらオーナーらしき70代後半と思しき方が傘をさして出てきた
「おはようございます。オーナーの高尾です。本日は引き取りどうもありがとうございます」
「おはようございます。丸松建設の松尾 譲です、こっちは妹の百合です。もう一台の船底を引っ張ってくれる佐野自動車の副社長の佐野 悟瑠さんと同じく副社長の雅子さんです。本日も社長の父親が再入札の対応で来れなくて申し訳ない」
「松尾 百合です。本日はよろしくお願いいたします。」
「佐野 悟瑠です。本日はよろしくお願いいたします。」
「雅子です。よろしくお願いいたします。」
「いやいや、お嬢さんたちがいらっしゃるとは思いもしませんでした。この雨の中、遠くからはるばるありがとうございます。佐野さんのお店はお隣の県では修理がお上手ということで有名ですから、安心してお任せできます。松尾さんにお譲りした3台の4×2|ボンネットダンプ達を修理していると聞いてます」
「親父。もうすでに4×2ボンネットダンプは公道再デビューしたって。松尾さんの奥さんが乗ってるって」
「そうか。あの車はエンジンが一発だめになっちまってなあ。予燃焼室に載せ替えたんだが」
「高尾さん。エンジンは積みかえました。松尾さんの奥さんは運転丁寧なんで安心です。燃料パイプが詰まってたんです。フューエルフィルターが不良品の様で破れてました。そこから油滓が入って詰まったようです」
「そうかあ。それは直って良かった。無事に復活ですか」
「はい。無事に復活です。いい個体ですよ。錆がなくて」
「そうか。松尾さんの奥さんも大型持ってるんだよな。喜んでもらえてよかったよ」
「高尾さん、では、さっそく積みますね。百合。倉庫に入れて」
「雅子、悟瑠さん。誘導頼みます。左いれなんで」
「ええええ?お嬢ちゃん運転かい?譲さんとやらは?」
「はい、お兄ちゃんはまだ牽引取れてないんです。あたしもやっと慣れてきたころです。今日はずっとあたしが運転です」
「こりゃあ、びっくりだ。気をつけてな。元康。引き渡し頼むぞ。倉庫が空くからそこにホッパーとローリー入るじゃろ」
「譲さん、はい。倉庫の中に車をお願い致します。キーはこれです」
「よし、百合リン、先に積んでね。あたしの言う通りに走ってね。まず1メートル前に出てね。」
雅子が誘導する。
「百合リン、ばっく。はい折って、45度。あ、もうちょっとあと15度折って。そのまま。そのまま。そろそろ起こしてゆっくり起こして。ストップ。一旦前出ようか?まっすぐになればいいでしょ」
雅子の言うとおりにトラクターをあやつる百合ちゃん。
百合ちゃんは雅子と同じ地元の商業高校を2番目の成績で卒業して雅子と同じスーパーに入った。
スーパーの販売部にいた時、買い物難民救済用の移動販売車の主任になってキッチンカーの運転担当もしていたが、家業の人手不足もあってやむなく家業に転職した。
牽引免許を一発で取ってしまったトレーラーガールでもある。
この百合ちゃんも大型バスにも嵌って2台買った。
2台ともV8エンジンで、V8の排気音が好きというほどの車好きだ。
百合ちゃんの一家も車好きで社長の百合ちゃんの父親も旧車好き、且つ速い車が好き。社長の奥さんで副社長の百合ちゃんのお母さんも大型車好きでしかも旧車好きのオリジナル志向。
百合ちゃんの兄も大型の旧車好きで、なんとマニ割好き。
この百合ちゃんのお兄さんは車を作るときはマニ割優先で出力よりも優先している。
それに百合ちゃんの家の会社の車と建設機械のメンテもうちの仕事になっている。
「雅子ありがとう。こうなれば見えるから。モニター付いてても左入れは難しいよね」
そう言いながら前進で体勢を整えてもう一度バックする。
きちんと乗せやすい場所に止めると僕と雅子が船底の足を降ろして乗せる準備する。
譲さんと高尾さんがバッテリーをつないでボンネットダンプのエンジンをかける。くうううううぅっ、グロウグロウグロウとエンジンが回りだした。
ガラララン、ガララランとあおる、音を聞く限り相当調子はよさそうだ。
倉庫でエンジンをかけているが燃料がKC-トラクターもボンネットダンプもBDFのせいか?トラクターとボンネットダンプから出る排気が煙くないのが幸いだった。
譲さんがボンネットダンプを船底にゆっくりと乗せていって既定の位置に止める。僕と雅子、百合ちゃんが治具で固縛していく、雨が降っているので念のためブルーシートをかぶせて紐でがっちり縛って倉庫から百合ちゃんの船底をだした
「雅子、うちの船底を倉庫に入れるぞ」
交代でうちの船底を入れていく、雅子が2軸トラクターのオペレーターだ。
「はいよ。お兄ちゃん誘導ヨロ」
「え?お嬢ちゃんも2軸トラクターのドライバー?こうりゃびっくりじゃ」
売り主が目を丸くして見ている
「窓開けたな。あと1メートル前に出して。ゆっくり折って10時、10時半。11時、11時半、0時」
「はいよ」
雅子は2軸トラクターと船底の角度をぴたりと合わせてバックさせてボンネットダンプを乗せる準備をしているのは妹の佐野 雅子。
峠のバトラーからTSカップのレースに参戦するようになっていて、前回のレースではウエットコンディションをものともせず4勝目を上げて5勝目を目指す24歳。
雅子のTSカーはうちの会社でスポンサーしてて、他には元職場のスーパーと百合ちゃんの家の建設会社、新たに小笠原精肉会社からもスポンサーを受けている。
そんな雅子は今、オフロードに嵌って大型の2軸総輪駆動を買ってきて、エンジンをいじって、サスペンションをいじって自分好みにいじった。
その総輪駆動はV8の大排気量エンジン+ターボ追加してオンロードでもそこそこ速い車にしてある。
オフロード車は隆弘が詳しいのでエンジン特性やサスペンションのセッティングも勉強できてとてもたのしそうだ。
それが高じてオフロードコースを作って丸松建設の百合ちゃんと共同で運営すべく準備している。
雅子は親が経営している中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長になっている。
運転免許は大型2種免許と牽引免許を取った、他に2級整備士も持っている。
必要なら大型トレーラーや積載車を運転できるし納車前のお客さんの車をメンテもやれる。
それに、プログラム組むのも好きなので、実家の規模に合わせたいろんな経理システムを自分で組んでいて、両親も大助かりといっている。
自分のTSカーの脚を組むときに計算してスペック決めていたし総輪駆動では動きのシミュレーションもしていた
雅子は僕と仲間内からアジトと呼ばれている祖父母が経営していた製材所の跡に併設してある家に住んでいる。
そこから市内のお店に通っている、車は大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバス改造の移動倉庫のU-RP210GAN改280ps仕様か、エムエム君と呼んでいる、同じカテゴリーのバス改造の移動倉庫の○アロスターMMのU-MM618J改の300ps仕様、エンジンと足回りを改造した総輪駆動で藤子ちゃんと呼んでいるU-FZ2FJCA改の440ps仕様だ。
雅子の車を含めたうちの会社のディーゼルエンジンの車には以前勤めていたスーパーから買っている使用済みの食用油をリサイクルして作ったバイオ燃料を詰めて環境に配慮していて、使っている車全部に”環境にやさしいBDF”と書いたステッカーを貼っている。
雅子のオペレートは見事で一発できちんと隣に停まった
「すごい。なんて腕なんじゃ。一発で入るのか?こんな娘たちが乗ってくれるんならボンネットも喜ぶだろ」
オーナーが目を丸くして見ていた。
「親父、俺もそう思ったよ。そうだ。ここで唯一残したボンネットダンプのレストアを佐野自動車さんに頼みたいな。エンジンもくたびれてるし」
「いいぞ。ほとんど毎日乗ってるから総点検もええじゃろ」
「先ほどざっと見ましたけど。錆がほとんどなくて手入れの良い個体ですよ。いいですよ。いつでも直しますから」
「これはなあ、もっとパワーのあるエンジン積んだT800FDもあったんじゃがV6が好きになれずに直6のこっちにしたんじゃ」
「そうなんですか」
「あの頃、V6は出たばっかりで結構トラブルあってなあ。ちょっと設計が古いけど信頼あるこの6DBエンジンがいいと周りが言うんでなこっちにした。力に余裕のあるV8は10トンになるんで3軸で長くなって狭いところ大変なんで買うのやめた。狭い田圃道とか入れないしな。ボンネットにしたのは昔の作りでそこの配管が低くてくぐれないんだ」
「そうなんですね。ダンプってもしかして狭いところに行くんで短いほうがいいからですか?」
「それもあるんじゃが、積んだもみ殻とかおろすの楽なんじゃよ。あの頃はコメとか蕎麦の実とか剥いた殻も運んでいたんでな。畑で燃やして肥料にする。その時にダンプすると楽なんじゃよ。あとは動物除けだな。野生動物は燃やした後の焼けた匂いがあるとこない。本能で火を恐れる。当たり前だが山火事になったら焼け死ぬからな」
「あ、そうか。燃やしてるところには来ないってことか」
「そうじゃよ。昔は木を切って囲炉裏や竈があったじゃろ。薪ストーブも」
「あった」
「今じゃあ考えらんないだろうが、クマよけに火を焚いていたんじゃ。かがり火とか」
「親父、昔話はいいや。あ。佐野さん。このボンネットダンプの再生お願いします。ついでに車検も来月なんです」
「はい。乗っていらっしゃいますか?」
「はい、たまには遠出もしようと思います」
「ぜひ、候補の日を連絡お願い致します。よろしくお願いいたします。」
「親父、たまにはこれで出かけてくるぜ」
「俺も時間合えば行くかな?佐野の社長にも会っておきたいな」
「ぜひ」
「雅子、出るぞ」
「うん、百合リン。今日は狩野さん居ないから途中までお兄ちゃんにそっちのトラクター運転してもらって。百合リンの負担減らすからね。このところ連チャンで疲れてるでしょ」
「ありがとう。そうね。お蕎麦やさん迄は悟瑠さんにお願いいたします。お兄ちゃんに悟瑠さんの運転見せて牽引の気を付けるところ勉強するのもいいわよ。あたしだけじゃあだめみたいだから。パパに聞いたらお店教えてもらったの。そば定が最高だって」
「そうね。そうしよう。譲さんが早く免許取れるように」
「出るよ。雅子。じゃあ2軸トラクター頼むぜ」
「はいよ」
「ええと。あたしは?」
「百合リン、こっちの2軸トラクター乗って。おしゃべりしながら帰ろ。それにお蕎麦屋さん案内してね」
「はい。悟瑠さん。うちのトラクターよろしくお願いいたします。」
「高尾さん、どうもありがとうございます。この2台を大事にします」
先に雅子が引っ張る船底が出る。
通りに出てフル加速したのだろう、ブババババっと2軸トラクターのマニ割の音が響く
僕は慎重に丸松建設のトラクターを発進させた。
通りに出て踏み込むとごろごろごろと丸松建設のトラクターはV8フルデュアルのエギゾーストノートを響かせ加速する。
トラクターのオペレーターしている僕:佐野 悟瑠は妹の雅子より4学年上の3月生まれの27歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して6年目、今は家業の中古車販売店、整備工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備が担当だ。
資格は2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。
フレーム修正機も使え板金もできる。
他にはへこみのリペア、カラスリペアと危険物の免許と玉掛けも資格を取って入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長になった。
免許は大型、けん引免許を持っている
オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していける。
またバスの管理士になれるので、中古の大型観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
他には丸松建設のバスの管理もやっている。
僕らの両親はどちらも車が大好きで中古車屋兼大型車や建設機械も整備する整備工場を経営している。
大型の入庫が多く、小型車を整備する場所が不足した時はアジトのガレージでやる。
そこもお店の工場にしてある。
アジトの車両をいじる設備はすべて中古で、大型車対応のボードオンリフトが2機、大型エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、グラインダー、エアツール一式、板金道具一式、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、油圧ベンダー&カッター、ボール盤、旋盤、フライス盤、20トン対応天井クレーン、3トン対応のリフター3機、ワゴン式工具箱、タイヤチェンジャー、バランサー、ユニフォーミティマシンまでそろっているので、小型車のメンテどころか大型車の改造迄できてしまう。
事実、僕らの総輪駆動はここで脚を組んだのだ。
アジトは元は製材工場なので木材搬送のために大型トレーラーが20台以上を悠々と停められる敷地の広さがあり、父親が中古車版売店、整備工場を始めた場所でもある。
丸松建設のトラクターはエンジンをターボをいじってパワーアップしたといっても16リッターの排気量なので20リッターのうちの2軸トラクターよりはちょっと発進トルクがない。
しかし、いっぺんターボが効けばガンガン加速するパワフルなエンジンでもある
「悟瑠さん、初めて乗るんですよね。それなのにこのスムーズさには脱帽ですよ」
「慣れですかね。いつもいろんな車動かすんで」
「うーん、そう言っても僕も結構動かすって言うかいろんな車乗るんだけどなあ」
「そうかもしれませんね。乗りなれているとか?僕はお客さんの車なんで千差万別ですよ」
「そうか。百合もうまいんだよなあ。あんなにスムーズに走らせるって」
「百合ちゃんは結構丁寧に運転しますよ。わかるような気がします」
「そうですが?そうだ。百合にお店確認しないと。電話しますね」
電話で何やらしゃべっていたが、
「お昼は、峠近くのお店に行きましょう。百合が案内するそうです」
ブババババと叩きのエキゾーストノートを響かせる佐野自動車の2軸トラクターとゴロゴロゴロゴロとV8固有のエキゾーストノートを吐く丸松建設の2軸トラクター。
雨の中をゆっくりとお店に向かっている。
登りがややきつくなってきたところで大型車が停められる駐車場があるお蕎麦屋さんに入った。
四人が席について
「佐野さん、ここです。今日は百合の言う通りうちで払います」
「回送費用頂いてますから。割り勘で。それにお仕事いっぱいもらってて」
「良いんですよ。うちも佐野さんのお陰で仕事が捗るんですから。重機の面倒も見てもらって、トラックのメンテナンスもやって頂いているので故障知らずで助かってます。旧い車使ってると腹8分目ってよくわかりますね。目一杯にすると故障増えますけど80%くらいだとほとんど故障しなくなるんです」
「そうですよ。目一杯よりも余裕有ったほうが良いですよ」
「お兄ちゃん、旧いダンプ壊しちゃったもんね」
「ああ、迂闊だったなあ。クラッチをドンってつないだらゴギッっていったもんなあ」
「6×4の中ではエンジンが一番非力でしたね」
「ええ、そうなんです。210psしかなくて無理効きませんでしたね。親父がいうには最新の9.8リッターのAMTよりは良いと言ってましたよ。ボンネットって冬にいいんですよ。ボンネットから来る暖かい風がフロントガラスに当たるんです。すると曇りにくいんですよ」
「そうなんですね」
「そう、ボンネットに乗ったことがあまりない人はへえって思うみたいです」
「そうよね。うちのママはそれに嵌ったのよ。冬に走りやすいって。旧い車ってボンネットのからの空気を上にも逃がしてるでしょ。バスもトラックもボンネット。モニターつけて直前の死角をなくするようにしてるよ」
「そうよね。ミラーはアメリカのっていうかオーストラリア向けのトーイングミラーでしょ。ドアミラーって言うところがいいよね」
「うん。その方が見やすいっていって。ねえ。みんなそば定がいいよね。追加ザルあるからね」
「ありがと」
僕らはそこで美味しいそばに舌鼓を打ってその後は雅子がお休みして僕と百合ちゃんで峠を登り切るまで運転した。
サミットで運転を交代して下りは僕が百合ちゃんの隣でアドバイスしながらトラクターのギヤを4速までにしてゆっくり下って来た。
「百合ちゃん。上手になったね。リターダー追加してあるって言っても排気量小さいから大変かと思ったんだよ」
「悟瑠さんが6×4ボンネットダンプを積んできたときよりはいいでしょ。マニ割してるから排気弱いんで」
「そう言っちまったらそうなんだけどね。親父はって言うか隆文が叩きにも排気を使えるようにしたんだよ。それなんで楽は楽だったよ。2軸トラクターは排気量が20リッターあるからね」
「へえ、そうなんですね。さすがですね。お兄ちゃんトラックコレクターになっちゃったわよ。それにしてもほとんど全部のメーカーがそろってるのはどうしてかしらね」
「昔は、系列がああったからじゃないかな?行先でトラックのメーカー分けていたんだよ。関係ないならいいけどね」
「そうなのね。しがらみ多くて面倒なのね」
「そうだよね。まあ、今はないみたいだよ」
「なくなったんなら良かったですね。お兄ちゃんあの高尾さんが乗ってたボンネットダンプ欲しいって言わなかったと思ってるの」
「多分、あのおじいさんが存命のうちは売らないって。高尾さんも相当気に入って乗ってるよ。ほとんど空で走ってるから買い物車になってるんじゃない?それにあの息子さんも気に入ってるようですよ。あの工場から出る廃棄する油を燃料にして動いてますよ。メンテもしっかりしてて、いい個体です」
「そうなんですね。そこまで気に入ってたら、売りませんね」
と、喋っていると無事にお店についた。
隆弘たちと一緒に積んでいた2台の6t車を船底から降ろした、百合ちゃんは譲さんを船底を牽引したトラクターに乗せて帰って行った。
「悟瑠。引取おつかれさん。前に引き取った8トンのTD50ADとKB112Dの2台はやっぱり油まみれ。鉄板に錆はほとんど無くていい個体だよ。シートは全部作り直しでブレーキ関係やればOK。エンジンは全部分解して洗浄だよ」
「ありがと。それならエンジンとミッションもだろ」
「そうだな。バラして見よう」
「工場長。今日引き取った2台もやっぱり油ですごいですね。エンジンも植物油で動いてたようでなんかねえ」
「だろうね。鈴木さんの予想通り製油工場でしたよ。配管が低くてくぐれなくてボンネットでしたね」
「ですよね。他には事故にあった時とかあるんですけどね。合理化でほとんどなくなっちゃいましたね」
「アメリカはボンネットが主流ですよね」
「自分でメンテするんですよね」
「それにはボンネットが一番ですね」
「ですよね」
「他には乗り降り楽ですよ。ほら小さいながらも梯子あるでしょ。左手のところには手すりも。油だらけだけどね」
「あ、そうか。ここに梯子がある、手すりも。なるほどね」
僕と隆弘は今日引き取ってきた6トンのDA100Dをみながら納得していた。
それから僕と隆弘、隆文、それに親父も一週間、先に引き取ってきたTD50ADとKB112Dを丸松建設に納車すべくエンジンばらしと洗浄組み立てに必死になっていた。
板金が得意な職人3人は丸松建設のカラーに塗っていた。
僕と隆弘、隆文は乗っていたエンジンの噴射ノズル迄ばらして掃除、調整してバルブも新品に交換、虫食いになっていたバルブシートも新品に入れ替えてラッピングして整えた。
エンジンを積んでラジエターにLLCを入れて放置して確認するところまできていた。
「なんとはここまで来たな。ナンバー取らないだけ楽か」
「そうだな。次は6トン系か。ええとこれもエンジン全部分解してだな」
「だよな。2台は両方ともプレコンバッションだな。ってことはノズルを分解して掃除できるな」
と言っていると雅子が来て
「お兄ちゃん。丸松建設から依頼が来ちゃったよ。6×4のボンネットダンプのK-TW53LDとTM65ZDとT901DDとZM103Dの全部をパワーアップできないかだって、それと昨日引き取って来たTXD60Dにナンバー付けてだって。百合リンのママが乗るんだって。そうそう百合リンのママが、乗ってる4×2ボンネットダンプは百合リンが乗るからターボつけてパワーアップだって。6×4のボンネットダンプたちはマニ割辞めて全部ターボでパワーアップだって」
「え?なにそれ?」
「だからあ、6×4ボンネットダンプは百合リンが管理することになったの。百合リンは遅いのはなんだかなーだから」
「そうじゃなくて、百合ちゃんのお母さんがどうしてって感じで」
「うん、俺もそう思った。結構気に入ってたって感じなのに」
「実は、百合リンのお母さんってプレコンバッションの音が良いっていうの。ダイレクトインジェクションより。ボンネットがいいのは聞いた通りでしょ。プレコンバッションの車を欲しがってて。それだとTXD60Dがあるじゃん」
「はああ、はい。じゃあわかった。TXD60Dのナンバー取るよ。ボンネットの6×4は全部パワーアップだね?」
「うん、だってさ百合リンと百合リンのパパが乗るんだよ。遅いのなんだかなーじゃん、4×2ボンネットもパワーアップよろしく。獅子丸君位いけるかな?」
「わかったよ。やってみる。390psもいけるの抑えているんだから十分出るよ。4×2ボンネットに入るミッション次第だよ」
僕らは急遽計画を変更してTXD60Dのナンバー取りとボンネット6×4ダンプのパワーアップの計画を練っていた。
計画に従って8トンボンネットの2台:TD50ADとKB112Dを先に船底に乗せて納車していた。
その後、TXD60Dのナンバーを取って自走で、DA100Dは船底に乗せて雅子と納車していた。
「雅子、ありがとう。この6×4ボンネットと4×2ボンネットのパワーアップよろしくね」
「百合リンのママって意外にマニアックなのね。プレコンバッションの音が好きとか」
「まあ、それはね。ママが教習所に居たころ大型免許取ったときによく乗ったのが予備車のTSD23なのよ。その音が気に入っちゃって」
「はあ、そうなのね」
「ボンネットが良いって思ったのもその影響。免許取ったときと同じエンジンの音がして、しかも同じスタイルの車が見つかったんでナンバー欲しいって」
「はああ、、そうかあ」
「あ、そうだ。明後日に時間作ってオフロードコースに来てよ。工事終わったよ。高速コースもできたし雅子の設計通りにできたか見てよ」
「いいよ。午後かしらね」
「うん、隆弘さんたちも来てって伝えてよ。みんなの総輪駆動で走ってみようよ。午後の方が湿気が抜けていいから。この前、お兄ちゃんのボンネットダンプを引き取りに行ったところの近くだから」
「いいわね」
僕と雅子は2台のボンネットダンプを引き取ってお店に帰った
「お兄ちゃん、いいの出来たわね。見に行こうよ」
「それはいいね。隆弘。隆文。明後日オフロードコースに午後から行くよ」
「おう。この前の場所だろ。いいよ行こう」
「この2台は?どうする?」
「ああ。計画作ってあるよ。6×4ボンネットは面倒だけどRE8からRF8に積みかえするよ。今のエンジンのままだとこれ以上のパワーアップは難しい。それなんでニイナちゃんと同じ仕様にして480psにする。4×2ボンネットは獅子丸君と同じにする。V8エンジンは在庫にあるし、PF6用のミッションも見つけた。補機は全部あるよ」
「全く、準備がいいぜ。明日はエンジンおろしだな。申請いるなあ」
「ああ、6×4ボンネットは2段階だな。KC-のエンジンだから出力は310psだけどトルクが110kgだから大幅には違わないよ。元から500psには耐えれる駆動系にしてあるんだよ」
「だよな。こっちは簡単だな。4×2ボンネット?」
「デフの容量からすると獅子丸君のパワーの350psがせいぜいだよ。これはターボだからエンジンの申請は要らない」
「部品はあるから組めばOKだな。とにかくミッション交換だな。明日着くんだろ」
「うん」
忙しく仕事してオフロードコースに行く日になった。
朝一に4台の総輪駆動で集合するとオフロードコースに入っていく
「みんな、ありがと。案内するからナナちゃんに乗って」
百合ちゃんが僕と雅子、隆弘、隆文をナナちゃんに乗せてコースに案内する。
高速コースはこの前に来た時は造成中で見れなかった、しかし今はがっちりと仕上がって登りあり下りあり左右のこぶありで走りごたえのありそうな雰囲気だった
「ここが高速コース。半分はフルに積んだダンプカーで走る練習もできるようにハードなダートコースにしたの。ローラーである程度は平らにするけどね。多少の凸凹が残るから土砂を落とさないように走る訓練とか、ほらこの登りを失速しないで走る練習もできるの。雅子のアイディアね。目的が一つだと限定されててね」
「いいじゃん」
「お兄ちゃん。ここは全部のコースで大型が走れるの。面倒だったけど路盤をがっちりコンクリートで作ってその上に暗渠が必要なところは全部入れたの。百合リンの会社の練習も兼ねて」
「そうよ。ここを作る時にあちこちの建設会社のひとに練習って言うことでやってもらったの。ここに走りに来たいって言うんだもんなあ」
「そうそう、ダンプのオペレーターも走りたいって。練習にはいいところって」
百合ちゃんが全部のコースを案内終わると
「そうだ。今日はお兄ちゃんがきてて、引き取って来た8トンボンネットでここを走る練習するって。ほら。もう入っていっちゃった」
「そうだね。4×2なら駆動軸少ないからね。いい練習じゃん。空車?」
と僕らが言っていると、譲さんはババババというマニ割の排気音を響かせて高速コースをゆっくりと一周走らせると無謀にもモーグルに入っていった
「え?モーグル?だめじゃん。いくらデフロックあるって言ったって。脚がノーマルじゃあ。登りのところで引っかかるって」
「もしかして、鉄子ちゃんで走ったとか?」
「そう、あたしが2WDのまま走ってみせたの。それなんで8トンボンネットもいけるって勘違いしたかも。ああ。んもう。やっぱりひっかかって路面削ってるし。完全にスタックしてるよ。ああなったらデフロックでも動かないってやばいじゃん」
ババババッ、ザザザッ8トンボンネットが藻掻く
「百合リン、救援行くよ。譲さんに連絡して」
と言ったときに譲さんがキャビンの窓を開けて
「百合、わるい。救援頼む」
「んもう、お兄ちゃん。無謀でしょ。鉄子ちゃんは伸び重視の脚にしてあるんだよ。デフロックあるからって言っても4×2ボンネットダンプは脚がノーマルよ。ストローク足りないの」
「ううう、すまん」
「じゃあ、僕の総輪駆動でいくか」
「悟瑠さんの?」
「うん、一番排気量大きいからね」
「お願いいたします。お兄ちゃんには罰ゲームね」
「隆弘、隆文。誘導頼むぜ」
ゆっくりとモーグルの出口からバックで入って引っ張る準備する。
「オーライ、オーライゆっくり」
バックで総輪駆動にしてゆっくり下がって4×2ボンネットダンプの前につけて2本の大型用ソフトロープでつなぐとゆっくりと引き出していく
「譲さん、駆動はかけないでそのままでいいですからコースをトレースお願いいたします。」
「はい」
僕はぐおおおっとエンジン音を響かせて総輪駆動の2速のローレンジを使ってゆっくり引っ張って無事に救援完了した
「お兄ちゃん。いくらあたしが鉄子ちゃんで2WDのまま行けたって言っても足が違うと無理なの。んもう。路面削ってるし。直して置いてよ」
救援された8トンボンネットから降りてきた譲さんに百合ちゃんがいう
「すまん。それにしても脚が良いって言うのはほんとだったなあ。この4×2ボンネットとは全く動きが違う」
「そうですね。百合ちゃんは隆弘の経験があったんでコース見切ってそのままいけたんです」
「うーん、そうか。百合がうまいのは走った場数がちがうからかあ」
「お兄ちゃん。次は総輪駆動買うなんて言わないでよ。うちので練習してよ」
「ああ。うちの3軸総輪駆動と鉄子ちゃんで練習するよ」
その後、僕らは自分の総輪駆動ですべてのコースを走って帰って来た。
雅子、隆弘、隆文は嬉々として走っていたのだった。
オフロードコースを楽しんだ次の日、会社で仕事していると工場に雅子がやってきて
「ねえ、愛理沙から注文が来ちゃったよ。2トントラックが事故に会って廃車にするから中古ないかって?できれば総輪駆動」
「もしかしてエアサスにしろってこと?」
「うん、その通り」
と言っていると、カラカラカラという軽いエンジン音とともに美浜ちゃんで百合ちゃんが来た
「はあああ、聞いた?お父さんが隆弘さんの家の車庫で眠ってる3軸総輪駆動を譲ってもらったってここに復活頼むって」
「はああ、またですかあ」
脱力してた僕らだった
雅子と百合ちゃんはコース運営上手くできるのか?
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