第四十三話 ボンネットダンプのレストアと百合ちゃんと旧車イベントに行って
ボンネットダンプをレストアする悟瑠達
百合ちゃんのお兄さんの譲さんに誘われて大型旧車のイベントに行った悟瑠たち4人
出展された車を買ってきた譲さんのおかげで仕事が来てさらに忙しくなる
僕らはお兄さんが買ったというボンネットダンプトラック;T901DDを船底に積んで帰って来た。
積んできた車を3人の職人が車を見ると
「これは、元薄井建設の車ですね。昔イベントに結構でてましたよ。それを丸松建設で買ったんですね。ということは依頼者は若ですね。修理します。フレームもキャビンも。この車は薄井建設では大事にされていましたよ。フレームの狂いも見ますから」
「お願いします。エンジンは僕らが探します。8DC系ならなんとかなると思います。ミッションも」
「お願いします」
百合ちゃんのお兄さんからまた6×4ボンネットダンプのレストア依頼が来たのだった。
しかもイベントにもつかうのでマニ割煙突左右ダブルのリクエスト付きだった。
そしてもう一人、その6×4ボンネットダンプを見てなにか企んでいるいたずらっ子の顔していた親父がいた。
「親父、マニ割作るぞって顔してるぞ」
「懐かしくってな。これは薄井建設で使ってた車で俺がディーラーに居たころ丸松建設が持ってるのと同じ型のTW52と争ったんだよ。他の2社にボンネットダンプにV8エンジンが無くてな。その社長がV8欲しがっていたんだよ」
そう言っている僕の親父
社長である親父の父親は元は大型車整備メインのディーラーにいたが、結婚を機に独立してこの店を立ち上げた。
若いころはマニ割をやっていて、今もその技術を使ってマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーに自分で改造してしまうほどのマニ割マニアっぷりを発揮している。
マニ割仕様のエギマニはステンレスパイプをベンダーを使って手曲げで作ってしまうほどの腕を持っている。
大型車メインの整備工場に勤めていた時にはマニ割車を100台以上作ってはお客さんに収めていた。
トータルでマニ割車を何台作ったか覚えていないというマニ割マエストロでもある。
その業界ではいまだに名の知れた存在で旧車のマニ割作って欲しいという発注がいまだに来る。
副社長の母親は、独身の頃にドリフト競技、ラリーに出ていたという位の運転好きだ。
かなり上手く何回か入賞する位の腕を持っていたらしい。
ドリフト競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時大型車メインの整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。
乗用車の整備工場では見てくれなかったが、大型車メインの工場なのにうちの父親が仕事を引き受けていたのだ
この両親を見れば僕と雅子が車大好き、運転大好き、競技に出たいとなってしまうのは当然だろう。
「親父。ボンネットじゃなきゃV8あったじゃん。そっちはどうだったんだい?」
「あの会社は家を建てるときは自前の天然の木材を使うんで道のないところを切り開いて行く土木部と木を切る営林部があってそのボンネットダンプは土木部で使うんだよ。ボンネットは万が一落石に衝突した時のクラッシャブルゾーンなんだよ。木を切る時は間伐って位置づけでやるんだよ。天然林でもくっつきすぎていると風で木々が揺れた時お互い擦りあってそっから火事になることが有るんだよ」
「あ、そうか」
「火事にならないようにくっつきすぎている木の片方を切り倒す。他には老木を切る。そうしないと若木が倒れてきた老木で曲がっちまう。あんまり手を入れると山がおかしくなるからその辺のバランスが難しいけどな」
「そうかあ。そう言った車たちを親父は見てたのか」
「まあな。この6×4ボンネットダンプは、例の3人がいた整備工場で整備しててしかも3人が担当で見てくれてたんだよ。それ考えたら任せた方がいいな。あの整備工場は建機専門だったんだけど社長には娘さんしかいなくて、後継ぎいなくてねえ。廃業だよ。一番面倒なのは土地が社長個人の物だったから登記が大変で。元から家族経営だから」
「そうしよう。それでか仕方ないね」
「そこの建機整備の設備と大型車整備の設備はうちが買ったけどな。隆義に運んでもらったんだよ。隆義の運輸会社とうちはいいことに駐車場続きだろ。それもあってあっちのエンジン整備部門引き取って若の二人に来てもらってる」
「そうか、そう言えば親父はよく隆弘の家に大型のエンジン修理で行ってたな」
「まあな、隆義も同じディーラーに居たんだ。あいつは物流部に居たから家業の修理工場のところに運送会社つくったんだよ。小学校からの同級生だから腐れ縁だな、あははは」
僕らは件の3人に建機の整備と6×4ボンネットダンプのレストアを頼んで雅子にエンジン探しを頼んでいた
次の日の朝、起きてきた雅子がスマートフォンを見て
「きたああ、さすが笠木さんミッション付きで見つけたよ。KC-のエンジンで8DC9。バスに積んであったみたい。来たばっかりで現状渡しでいいなら送ってくれるって」
「よし頼もう。どっちにしてもシール類交換するんでばらすからいいよ」
その日は僕はロザン君、雅子はなごみちゃんで会社に向かっていた。
会社について
「隆弘、悪いけど隆文に6×4ボンネットダンプのエンジンばらし。あ、そうか愛理沙ちゃんの補充トラックのエアサス仕上げだな。今日迄か」
「ああ、仕方ない。今は百合ちゃんに聞いてデビちゃんは作業を停めてる。6×4ボンネットダンプのミッションがって言うかペラが合うかだな。合わなきゃ特注で作ればいいだろ」
「そこだよね、愛理沙ちゃんは明日に補充トラックを取りに来るって?」
「うん、引き取りに来るって。補充トラックのエアサス終わっちゃえば百合ちゃんちのエンジンオーバーホールか」
「そうだなあ、この6×4ボンネットダンプの修理やってか。エンジンは笠木さん所に有ったよ」
「ああ、聞いたよ親父のトラックが取りに行ったよ。3トンでいいだろ。親父が気分転換とか言って自分でトラック乗って行っちまった。行きはいいとして帰りはゆっくりだな」
「だな。夕方か?行きは速くても帰りは飛ばせないよ」
「そう聞いてる。エンジンばらし二人でやるか。どっちにしても2機バラすことに変わりない」
「そうだな。雅子。部品を頼むぜ。ゴムとピストン、ライナー、メタルとバルブだな」
「うん、頼んであるよ。お兄ちゃん。カムはどうしよう?」
「それはエンジンからはずして見るよ。ほしいのはリフト量で作用角じゃないから。そうか。マニ割なら作用角でかい方がいいのか」
「そうだね。勝手なイメージだけと、8DC2のほうが作用角大きそうだなあ。プレコンバッションだろ。2500迄回すなら」
「俺もそう思うよ。圧縮比18と低いけどね。DC9の方が圧縮高いよ。カムはばらして見てみよう」
「そうか、エンジンの到着待ちだな。その間にデビちゃんのエアサスだな」
「そうね。途中まででもいいからね。あたしは百合リンとオフロードコースの設計しよう」
そう言ながら丸松建設の百合ちゃんとオンラインで丸松建設と共同で購入した土地のドローン画像を見ながら、ここにこのコースを作ってとかキャンプ場はこうやってとか嬉々としていっている妹の佐野 雅子。
TSカップのレースに参戦している24歳。
参戦しているTSレースで既に3回も優勝してしまった。
雅子のTSカーはうちの会社でスポンサーしてて、他には元職場のスーパーと百合ちゃんの家の建設会社からもスポンサーを受けている。
そんな雅子は今はオフロードに嵌って大型の2軸の総輪駆動を買ってきて、エンジンをいじって、サスペンションを自分好みにいじった。
その総輪駆動はV8の大排気量エンジン+ターボ追加してオンロードでもそこそこ速い車にしてある。
オフロード車は隆弘が詳しいのでエンジン特性やサスペンションのセッティングも勉強できてとてもたのしそうだ。
それが高じてオフロードコースを作って丸松建設と共同で運営したいといっている
雅子は親が経営している中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長になっている。
運転免許は大型2種免許と牽引免許を取った、他に2級整備士も持っている。
必要なら大型トレーラーや積載車を運転できるし納車前のお客さんの車をメンテもやれる。
それに、プログラム組むのも好きなので、実家の規模に合わせたいろんな経理システムを自分で組んでいて、両親も大助かりといっている。
自分の車の脚を組むときに計算してスペック決めていたし総輪駆動では動きのシミュレーションもしていた
雅子は僕と仲間内からアジトと呼ばれている祖父母が経営していた製材所の跡に併設してある家に住んでいる。
そこから市内のお店に通っている、車は大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバス改造の貨物車のU-RP210GAN改280ps仕様か、エムエム君と呼んでいる、同じカテゴリーのバス改造の貨物車の○アロスターMMのU-MM618J改の300ps仕様、エンジンと足回りを改造した総輪駆動で藤子ちゃんと呼んでいるU-FZ2FJCA改の440ps仕様だ。
雅子の車を含めたうちの会社のディーゼルエンジンの車には以前勤めていたスーパーから買っている使用済みの食用油をリサイクルして作ったバイオ燃料を詰めて環境に配慮していて、使っている車全部に”環境にやさしいBDF”と書いたステッカーを貼っている。
僕と隆弘は6×4ボンネットダンプからおろしたエンジンをばらしていた。
親父の言うように大切に扱われていたのは確かでエンジン内部の汚れも落としてあるし、ゴム部品も交換してあった。
しかし残念なのは、製造品質が悪かったのか?エンジンとミッションに罅が入っていてこのままでは壊れるのは時間の問題だった。
「悟瑠、8DC9はトラクターにも使っていたよねえ」
「結構息の長いエンジンだぞ。ターボも有ったよ」
「ボンネットにターボはなあ。百合ちゃんならやるだろうけど」
「アハハ、そうだな。がっちりターボつけて400かな?」
「だな」
ネットで昔の修理書を取り寄せて数値を測って調べていた
「カムがほとんど減ってないじゃん。リフト量もちゃんとしてるじゃん」
「悟瑠。すげえなあ、ってカムがオイル漬けだよ。どうしてなんだ?」
「ほんとだ、カムフォルダー内はオイルまみれじゃん。どこかから漏れて来てる?」
「あ、ほら、ここだよ。ここに亀裂あってここからギャラリーのオイルがじゃじゃ漏れじゃん」
「そうか、それが良かったのか?オイルのお風呂の中でカムが回ってるんじゃあ減らないよ」
「ブロックはもう駄目か、ヘッドはいけそうだな」
「あれ?そうかDC2はプレコンバッションだよなあ」
「悟瑠。ヘッドが違うんじゃあ流用は厳しいかな?在庫だな。非常用かもな」
「ああ。隆弘。見ろよ。これ。ここに鋳物の巣があるよ。これじゃあだめじゃん」
「あああ。これはひどいなあ。ここまでスカスカじゃあなあ。亀裂入るよ。外れか」
「だな。隆弘。ブロックは廃棄だな。使える物は洗浄して鉄物は在庫でゴムは交換と同時に廃棄だな」
「そうだな。それがいいよ、面倒なくて」
僕と隆弘は車の状態を見て修理の判断していた。
夕方に隆弘のお父さんが運転した3トン車がエンジンとミッションを積んで帰って来た。
「隆文、今日は来たエンジンもばらすからな。エンジンとミッション切ってクラッチの交換要るか見てくれ。僕と隆弘はエンジンをばらすから」
「はい。悟瑠さんクラッチの在庫ってありましたっけ?」
「雅子に聞かないと僕も覚えきれてない。ターボ用はあるよ」
「雅子に部番聞くよ」
「使っても問題は出ないよ。ペダルが重いかな?」
「ありがと。あ、クラッチのエアアシストないのか」
「うん。ないんだよ。さて悟瑠。ばらすぞ。これだと高回転重視がいいのかな?」
「この会社のエンジンは上回んないからそのほうが乗りやすいかもね」
「ミッションのギヤ比も離れ気味だな。それなら回転域多く取れる方がいいか」
「ポンプもいじった方がいいかもな」
「百合ちゃんに話を聞こう」
エンジンをばらしてゴム系部品の交換している僕:佐野 悟瑠は妹の雅子より4学年上の3月生まれの27歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して6年目、今は家業の中古車販売店、整備工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備が担当だ。
資格は2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。
フレーム修正機も使え板金もできる。
他にはへこみのリペア、カラスリペアと危険物の免許と玉掛けも資格を取って入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長になった。
免許は大型、けん引免許を持っている
オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していける。
またバスの管理士になれるので、中古の大型観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
他には丸松建設のバスの管理もやっている。
僕らの両親はどちらも車が大好きで中古車屋兼大型車や建設機械も整備する整備工場を経営している。
大型の入庫が多く、小型車を整備する場所が不足した時はアジトのガレージでやる。
そこもお店の工場にしてある。
アジトの車両をいじる設備はすべて中古で、大型車対応のボードオンリフトが2機、大型エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、グラインダー、エアツール一式、板金道具一式、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、油圧ベンダー&カッター、ボール盤、旋盤、フライス盤、20トン対応天井クレーン、3トン対応のリフター3機、ワゴン式工具箱、タイヤチェンジャー、バランサー、ユニフォーミティマシンまでそろっているので、小型車のメンテどころか大型車の改造迄できてしまう。
事実、僕らの総輪駆動はここで脚を組んだのだ。
アジトは元は製材工場なので木材搬送のために大型トレーラーが20台以上を悠々と停められる敷地の広さがあり、父親が中古車版売店、整備工場を始めた場所でもある。
「悟瑠。カムを入れ替えてかな?」
「作用角はこっちが広いと思うけどな」
「とにかく、洗って調べよう」
「結構汚れが来てるなあ」
隆弘と一緒にばらしていた。
ドンドンばらして洗浄機に入れていく
「隆弘、隆文、洗浄終わったらパーツにスーパーチェックかけて罅がないか見ようぜ」
「そうだな、このエンジンはKC-の最終版のエンジンだろ、大体は大丈夫だと思うけどね」
「そうだよな」
エンジンのヘッドも全部ばらして大型の洗浄機に入れ、洗浄する
”パチン”とスイッチを入れるとグオオオオーンといううなり音
洗浄液がのぞき窓を汚していく
「うああ、もう真っ黒じゃん」
「すげえ、遠心分離機にもゴミがどんどんたまって行くじゃん」
「やっぱり洗浄が大事だよなあ」
「丸松建設のマキちゃんのエンジンオーバーホールもあるよなあ。その時もばっちり洗浄しよう。ターボ組んだ特にそのまま組んじゃんったからなあ」
「そうだな。トラクターもナンバー切ってあるのをまた取るんだろ。エンジンのオーバーホール頼まれてるぞ。レンちゃんの時みたいにならないようにゴム部品交換と洗浄頼まれてるよ」
「そうだな。それもやるんだよな」
「そうだ。隆弘のラッシー君も洗浄してないだろ。って言うかエンジンのゴム部品替えてないぞ。雅子のコースに行ってオイルブチ撒きはまずいだろ」
「おおお、やべえなあ。交換の時にばらして洗浄しよう」
「その次に百合ちゃんの美浜ちゃんのオーバーホールもあるよ」
その日はちょっと残業になったが洗浄終わったパーツにスーパーチェックかけて再利用に問題ないことを確認していた
百合ちゃんにエンジンのレブリミットが2600から2400に下がるのでその旨を伝えるとFDをハイギヤに変更できないかと聞かれた
調べると同じ車種にギヤ比がワンランク高いものがあってそのレシオは今でも他のダンプで設定されていることがわかった
いいことに近くの解体屋に件のファイナル有ったのでホーシングごと買って来た
「隆弘、いいことにホーシングがそのまま使えるじゃん。この車のホーシングと入れ替える。レシオが約10%上がる。ホーシングが解体屋に有ったんで買って来た。これなら楽だよ」
「それはいいじゃん、見ると現車のホーシングにはあちこち酷く錆びているところがあるなあ。何回か再生はやっているようだけどな」
「悟瑠さんの買って来たホーシングって結構程度いいですねえ」
隆文が言う
「隆文、これはリコールで交換してろくすっぽ走らないうちに事故にあって廃車になったらしい。前輪のハブが逝って壊れたらしい、エンジンもミッションもおかしっていって廃車だよ」
「このころのハブが弱いのは仕方ねえな。交換で外したホーシングは在庫にしてもどうしようもないだろ」
「そうだな。ホーシングは丸松建設に返すのが一番いいよ」
「そうしよう、要らないって言われたら解体屋行きだな」
「隆文エンジンの方はどうだ?」
「アルバイト君と4人で組んでいる。夕方には終わりそう」
「カムは付いてきたエンジンのをそのまま使ってやってるよね」
「うん、この外したカムはどうするの?」
「隆弘のに使おう。そうするとNA用の予備が増える」
「そうだな。いいことにヘッドの在庫もあるからいいかもね」
僕らはフレームの修理をやっている3人に聞いていた
「如何ですか?」
「これはいいですよ。若干くるっていたんで修正しましたよ。そこには補強板入れないとヤバいですね。このころのこのメーカーの弱いところなんで」
「そうですか。丸松さんに聞いて入れるか決めてもらいますよ」
僕は丸松建設に連絡を入れた。
すると長く乗りたいので入れて欲しいということなので補強板を入れておいた
補強板は見事なもので、がっちり補強したいところは厚くして端の部分は応力集中しないように段階的に薄くするという技の効いたものでしかも亜鉛メッキも入れて防錆に気を使っていた。
ほとんど突貫で仕上げたボンネットダンプを走らせてオイルや水の漏れがないか確認すると納車していた。
「雅子、場所は会社でいいのかい?」
「うん、丸松建設の本社」
僕と雅子はいい子ちゃんと2台で納車に行った
到着して教えられたところに停めて事務所に行く
「百合リン、6×4ボンネットダンプ仕上がったから持って来たよ」
「あ、雅子、悟瑠さん。どうもありがとうございます。お兄ちゃん。6×4ボンネットダンプ仕上がって来たよ」
百合ちゃんがお兄さんを呼ぶ
雅子の小学校からの親友で高校の同級生の松尾 百合ちゃんも同じく車好き。
百合ちゃんは雅子と同じ地元の商業高校を2番目の成績で卒業して雅子と同じスーパーに入った。
販売部にいた時、提案した買い物難民救済用の移動販売車の成果が認められて主任になってキッチンカーの担当もしていたが、家業の人手不足もあってやむなく家業に転職した。
この百合ちゃんも大型バスにも嵌って2台買った。
2台ともV8エンジンで、V8の排気音が好きというほどの車好きだ。
百合ちゃんの一家も車好きで社長の百合ちゃんの父親の隆さんも旧車好き、且つ速い車が好き。社長の奥さんで副社長の百合ちゃんのお母さんの美採さんも大型車好きでしかも旧車好きのオリジナル志向。
百合ちゃんの兄の譲さんも大型の旧車好きで、なんとマニ割好き。
この百合ちゃんのお兄さんは車を作るときはマニ割優先で出力よりも優先している。
それに百合ちゃんの家の会社の車と建設機械のメンテもうちの仕事になっている。
奥の方から百合ちゃんのお兄さんの譲さんが出てきた
「悟瑠さん、ありがとうございます。今度の日曜日に河原で大型旧車のオフ会があるんですよ。一緒に行きましょうよ。前回のオフ会で買ったこの6×4ボンネットダンプの完成披露もしたくて。百合には叔母の家から引き揚げた2軸のボンネットを運んでもらいます。佐野自動車もPRしますよ。そうそうマニ割してもらったV10ダンプのドライバーも親父さんと一緒に来るそうです」
譲さんにオフ会に誘われた。
「ぜひ。場所の地図をお願い致します。」
「悟瑠さんも何か佐野自動車のいい車乗ってきてくださいよ。このケーテン君とか、このいい子ちゃんとか」
「どうもありがとうございます。車は何にするか決めます。年式の制限はありますか?」
「できればU-よりも前がいいです。KC-がギリでしょうか?1900年代の車でお願い致します」
「どうもありがとうございます、雅子と加藤兄弟も連れていきます。もしかすると、前の整備工場に居た3人も来るかもしれません」
「それならいいかも、URL送りました。展示枠を佐野さんのぶんの4台取っておきます」
「どうもありがとうございます」
雅子と一緒にお店に戻る途中
「お兄ちゃん、隆弘さんも誘っていくの?」
「もちろん。総輪駆動4台で行くのもいいかなっておもってさ」
「それがいいかもね。」
「前回のオフ会って行ってないからさ、どんな雰囲気か見たいよね。KC-ならいいかもって言うから。バスよりもいいんじゃないかなあ」
「そうよね。パパも誘ったら来たりして。2軸トラクターか2軸のレッカー車に乗って」
「そうか、そうだな。親父にも言っておくか」
僕と雅子はお店に戻ると親父に
「親父、今度の日曜に河川敷で旧車の大型車って言うかトラックのオフ会があるって。そこにはこの前マニ割にしたV10ダンプも親父さんを乗せて来るって」
「そうか。それなら俺も行くかな?悟瑠たちは何で行く?」
「僕らは総輪駆動で行くよ。ちょうど4台仕上がった」
「そうだろうが、隆弘のラッシー君はエンジン開けてないだろ。ってことはゴム部品やばいんじゃねーか?」
「さすが親父だな。オフ会から帰ったら交換するよ。部品洗浄やって罅のチェックも。丸松建設の車もやって無いのあって連続でくるよ。この前のレンちゃんのことで相当懲りたみたいで」
「隆弘の車のエンジンの罅は大丈夫だろう。粘る方向に鋳鉄変更したから。あのエンジンはとにかく丈夫だから」
「そうか。良かった。じゃあ親父のぶんも展示枠頼んでおくよ」
「大丈夫だ。主催は俺のダチだ。俺から行くっていけば場所はある。2軸のレッカー車で行くよ。本当はマニ割がいいんだがレッカーみたくがっちりお店の名前が無いからな」
「さすがだな。親父の顔の広さは。それにお店の名前も大事だよね」
「4軸でもいいんだが、12メートルフルでしかも回転半径でかいから」
「そうだな」
日曜日、僕と雅子、隆弘、隆文と親父は河川敷の会場に行った
僕らが乗って行った車は藤子ちゃん、サイバー君、ラッシー君、まゆかちゃんだった
会場には主催者発表で大凡200台のデコトラが集まっていた。
ランプを全開でつけている車たちの側では発発が全開で回っているようだ。
その中でも異彩を放っていたのが僕の家の2軸のレッカー車と4台の総輪駆動だった。
特に隆文のまゆかちゃんはかなりのレア車でこのメーカーのV8エンジンの総輪駆動は珍しがられたのだ
しかも車高を3.5インチ上げているのもポイントが高いらしかった
うちの2軸のレッカー車もV10のマニ割でなくターボということで注目されていた。
もう2台は丸松建設の2台のボンネットで結構なレア車なのと丸松建設のPRをがっちりやっていた。
「そろそろかな?エンジン始動タイムだ。5分だけどな」
「僕のはターボで静かだけど隆弘の総輪駆動と隆文の総輪駆動はマニ割で結構来そうだな」
「103dBだろ」
「そうだけどね」
「ボンネット2台もだろ。97dBにしたはずだけどな」
「大丈夫か」
”それでは参加者の皆さん、ご自慢の車のエンジンを始動お願い致します”
あちこちからくうくうくうというスターターの音とババババン、ピヨピヨピヨというマニ割叩きと鳴きのの音が響く
「ターボはさすがに静かだな」
ゴロゴロゴロロロとうなる僕と雅子の総輪駆動の脇で、グロウグロウグロウと叩きの音を響かせるまゆかちゃん
「隆文のはたしか100dBあるよ」
「えええ。そうかやっぱり。マニ割は叩きがうるさいよね」
脇で聞くとまゆかちゃんの叩きの音量は空ぶかしでも隆弘のラッシー君のよりもはるかに大きい
「その通りだな。左右出しだもんな」
エンジン始動タイムが終わって僕らも見に行く
「そうか、鳴かせるための延長か?」
一台のデコトラで排気管長を4メートルにしているのがあった。
「そうみたいだね。いろいろあるね」
「そうだね」
「フリマもあるじゃん。あれ?譲さん?えええ?あの6×4のボンネットダンプ買っちゃうの?さっき見たら写真だけでエンジン壊れてるから取りに来れる人限定だったな」
「ああ、そうかも。あれも廃業した建設会社の車じゃん。たしかZM103Dでしょ」
と言っていると、僕らを見つけた百合ちゃんが雅子と一緒に走って来た
「はああ、悟瑠さん。お兄ちゃんがまたボンネットダンプ買っちゃった。しかもエンジン壊れてて動かないの。修理お願いしますだって」
「うん、覚悟してたよ、取りに来れる人って書いてあったけど」
「実はそのお、レッカーでだって」
「お兄ちゃん、パパにサイバー君乗って帰ってもらえばできそうだよね」
「だな。はああ、まあいいや」
と言ってるとニコニコ顔の譲さんが来て
「いやあ、ほとんど捨て値で買えましたよ。悟瑠さん。社長。買ったZM103Dの整備お願いします。EK100エンジンがブローしてるそうなので最新のK13Dにでも載せ替えていただいて」
「いいですよ。悟瑠。2軸のレッカー車で持ってきて。お店に置けばいいよ。ここに持ってこなくていいから」
「わかったよ。雅子。一旦撤収して譲さんが買ったボンネットダンプの引き取りだな」
「この2軸のレッカー車に乗って行って来い。雅子と悟瑠の総輪駆動は俺たちが運ぶから。そろそろ康子が丸松の親父と奥さん連れてくる。隆に帰りの時にお店まで乗ってもらうから。譲君の車を運びに行ったんだからうんというよ。隆の枠を取るの忘れてたから丁度いい。デビちゃんで来るとか」
「わかったよ。行ってくる」
僕は2軸のレッカー車で買ったというボンネットダンプの引き取りに行った。
また、レストアの仕事が来たのだった。
また車増やす譲さん
レストアが追いつかないのでは?
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。
お気に召しましたらイイネや感想いただけると更新のモチベーションアゲアゲになります




