第四十二話 雅子と百合ちゃんプロデュースのオフロードコース
つてをたどっていい土地を手に入れた雅子と共同出資した百合ちゃん
この二人が作ったオフロードコース
「お兄ちゃん、忙しくなるね」
「雅子、ホイールローダーの修理も出すからよろしくね。ママのデビちゃんもエアサスに」
「あ、先輩、補充用のトラックもエアサスにするのいいですか?野菜がって言うかイチゴに傷入っちゃうんで」
「ええええ?仕事があああ」
またまた仕事が増えて嬉しい悲鳴の僕らだった。
「百合ちゃんの建機メンテナンスは今のうちだからなあ、直ぐやらなきゃね。ええとうちの仕事整理しないとね」
「お兄ちゃん、補充用のトラックのエアサスなら直ぐかな?」
「悟瑠さん、デビちゃんは後回しでお願いします」
「うん、とにかく明日は仕事の整理するよ。今日は愛理沙ちゃん。優勝おめでとう」
「皆さんのおかげです。雅子先輩に悟瑠さんに自己流の壁に当たっていた時にアドバイスもらって走りが変わりました」
愛理沙ちゃんが言うと
「そうね。愛理沙は全然違ったもんね。お兄さんも準優勝おめでとう」
百合ちゃんも言う
「帰りは?どうすんの?」
「僕は積載乗って帰る。途中でお兄さんの車をおろして、アジトに愛理沙ちゃんの車運んで点検する」
「悟瑠、そのまま積載貸してくれ、隆文のドリ車を運ぶ。隆文。積載をお店に置くから後ろから付いて来いよ」
「それなら先に愛理沙ちゃんの車をアジトにおろすから、その足で隆文のドリ車積んでお兄さんの家に行ってくれ」
「そうだな。そっちが良いな。そうしよう」
「雅子はゴーゴーくんでみんなを送ってくれ。」
「はいよ」
「先輩、うちの上の子がなんかバスが好きみたいで、ゴーゴーくんに乗るってわかるとさっきからニコニコですよ。走りだしたら爆睡ですけどね」
「あはは、そうかあ。愛理沙と同じく大型の免許取るのかな?」
「そうかも」
「「あははは」」
僕らは車を積載に積んで、人はゴーゴーくんに乗せて帰って来た
雅子に聞くという通り、愛理沙ちゃんとその子供たち、お母さんはゴーゴーくんの中で爆睡だったらしい
次の日、会社に行って仕事の整理していた
「隆弘、デビちゃんのエアサスと補充用のトラックのエアサスは同時にやった方がよさそうだな」
「そうだな。建機の方はいつもの3人にお願いしてだな」
と言っていると、ヒューンとターボの音を響かせて百合ちゃんがレンちゃんに乗ってきた。
「すみません、パパの移動事務所のレンちゃんが調子悪くて。みてもらえませんか?」
見るとレンちゃんがマフラーから白煙を吐きながらやって来た。
煙の匂いからするとどうやらエンジンオイルを焚いているようだ
「はい、どうやらエンジンオイルを焚いている。下ろしてエンジンオーバーホールしないとだめかも。ターボ組んだ時に30年前に一回開けてて、ほとんど走ってないし、月に一回はエンジン回してるっていうからそのまま組んじゃったから」
「ですよね。やっぱり無理がかかったんでしょうか?このところ結構勾配のきついところ行ってましたから」
「そうかも。このところ忙しかったからかな?丸松建設の車はこれだけじゃなくて他の車もくたびれてるよ。このレンちゃんは総点検するから。預かるよ」
「ぜひ。パパのお気に入りなんで」
「百合リン、悪いけど今日はアサイー君乗って帰って。レンちゃんはエンジン開けないわかんないからね。ピストンいったかな?」
「うん、悪いわね。オーバーホールよろしくね。ターボにしたとき開けてないんだよね」
「そうねえ、その時は開けてない。という事は30年は開けてないはずよ。開けてから走行距離が1000キロくらいなら普通は開けないわよ」
「そうだね。エンジンがくたびれていた鉄子ちゃんは点検するため開けてゴム部品全部新品に替えた。それに乗りやすさ重視でクランクをロングストロークに変更したんだよ。この車は調子よさそうだったからなあ。バルブのクリアランス調整してポンプ交換してターボにしただけたから」
「開けて一年くらいで倉庫で眠っていたんでしょ。オイル交換とかメンテは年に一回はやってたとしても。30年の歳月が原因かしらね」
「そうだな。開けてみよう」
「よろしくお願いいたします」
そう言って百合ちゃんはアサイー君のマニ割りのブバババ、ピヨピヨ音をさせて帰って行った。
「雅子、ターボ付けたときにエンジン開けなかったのはまずかったかな?」
「そう言ったって、結構調子よかったじゃん」
「そうだけどね」
「それにポンプはかなり濃く噴くようになっていたから噴射量絞ったんでしょ」
「うん、ブーコンで絞ったよ。でもあんまり絞ってないかも。ターボつけても結構濃かったような気がする。今度は降ろしたついでに電制にするよ」
「そうか、悟瑠。建機がくる前にエンジンおろしてばらそう」
「お兄ちゃんと隆弘さんがやるの?」
「ああ、そうする」
「じゃあ、段取りはそれで。後は建機を取りにいくのはあの3人に任せておけばいいのね」
「うん、僕らはピットで移動事務所のエンジンをおろすよ」
「気をつけてね。降ろしにくいし重いから」
僕と隆弘は建機がくる前にということでレンちゃんのエンジンおろしをやっていたのだ。
エンジンオイルとLLCを抜き、燃料系を切り離していた。
その後にフロントのサスをおろしてエンジンマウントを外してプロパラシャフトとミッションの結合を外す。
降りてきたエンジンとミッションを見ると、ターボを組んだ時よりも汚れがひどく、あちこちにオイルがにじんだ跡がある
「隆弘。やっぱり結構ゴム部品が傷んでいるなあ。エンジンオイルのにじみが結構あるよ。掃除しないとだめだろ」
「そうだなあ。一回全部ばらそう。洗浄だな」
「そうしよう。よーいしょ、クレーンで釣るぞ」
僕らはエンジンを固定した台車をピットから天井クレーンで釣りあげて整備場に持ち込んでいた。
「うーん、悟瑠。クランクのところ結構オイル漏れてるなあ。アレ?オイルシールいってるのか?」
「ゴムの劣化は年月かもなあ。30年という年月かなあ」
「ってことは、オイルが燃えているのはステムシールが怪しいか?そこから漏れてるとか?」
「そうだなあ。他にはピストンリングか?これがガソリンならアイドルと踏んだ時で上がりと下がりが分けやすいんだけどね」
「そうだな。隆文、ワリイがばらすの手伝い頼む。」
「兄貴、部品の整理するんだろ」
僕と隆弘、隆文は突貫でエンジンをばらしていた
残業になったがある程度ばらし終えるとその日の作業をおえてアジトに帰った
「お兄ちゃん、レンちゃんのエンジンって相当来てたの?」
「ゴム部品が全部逝ってるなあ。経年劣化かもね」
「仕方ないよね。それじゃあ他は?」
「やっと、ヘッド取れたばかりだからわかんないよ、ヘッド開けただけで他はばらしてないよ。異様にエンジン内部が黒いんだよ。それにLLCも濁ってる」
「そうなんだ。何が原因かなあ?」
「もしかすると、この前に開けたときはライナーとピストンとメタルは交換したけどブロックとかヘッドの洗浄してなかったのかも」
「そうなんだ」
「ないとは思うけど、ヘッド回りの手入れ全くやってなかったとか。とにかく調べればわかるよ」
「それなら仕方ないかもね」
「それにさ、BDFを入れると頑固な汚れ迄溶かして落とすから仕方ないよ」
「それは仕方ないかもね、明日もバラしをやるんでしょ」
「うんヘッドをバラして洗浄してだな」
「よろしくね」
次の日から僕と隆弘、隆文はレンちゃんのエンジンのヘッドをバラして見ていた。
「やっぱりヘッドを洗浄してないよ。それにステムシールは交換してない。50年以上前のじゃないか」
「だな。これじゃオイル下がりするよ。オーバーホールしたって言う情報を信じちゃだめかあ」
「そうだな。いい勉強になったよ。腰下も見よう」
オイルパンをはずし、エンジンをさかさまにしてクランクからキャップを外しピストンを抜いていた。
「うわーオイルパンの底がドロドロじゃん。この様子じゃあブロックもヘッドも洗浄してないよね」
オイルパンとオイルストレーナーをみた隆文が言っていた
「あ、悟瑠。オイルに剥がれたデポジットが混じってオイルリングにヘドロがまとわりついて機能してないよ。ピストンとメタルは減ってない」
ピストンを見た隆弘も言っていた
「それじゃあ、オイル上がりもおきるじゃん。オイル上がりと下がりの二つが起きてるんじゃあ白煙吐くよ。ピストンは再利用できるか。うわ、ピストン側面がオイルでべとべとじゃん。それでピストンは減ってないのか」
「勉強になったよ。開けたと言ってもどこまで交換したかだな。多分だけどライナーとピストン系とメタルだけが?」
「あり得るな。本によるとこの車が設計されたときは砂利道が多くて砂ぼこり吸って段べりするからそっちの交換はしょっちゅうだったらしい。雅子に言ってあるから良いけどシール類は全部交換だなあ。後は洗浄もだよ。このエンジンおろしにくいのもは否定しないけどこれじゃあねえ」
「そうだなあ。ブロックとヘッドばらして洗浄だね。LLCもヘドロになってたもんな。ラジエターは交換したんだよなあ」
「うん、ターボ付ける時に交換したよ。よし、とにかく全部洗浄しよう。え?オイルのリリーフのところも落ちたスラッジで詰まってるよ。オイルが過剰に回って燃焼室に入っちゃう」
僕らは大型洗浄機にブロックとヘッド、オイルパン、クランク、ピストン、コンロッドを入れて洗浄していた。
「お兄ちゃん、レンちゃんの状態は?」
「エンジン内部にオイルのスラッジ付きまくっていてどうもそれがはがれたみたいでオイルリングが機能してない、ステムシール交換してないからヘタってそっからオイルが燃焼室内部に駄々洩れ。それにオイルポンプのリリーフも詰まってるんだよ」
「うわー」
「もっというと冷却水って言うか、ブロックのLLCがヘドロになってるから洗浄中」
「ブロックだけ?」
「へッドも一回もばらしてから洗浄する。見る限りだけどバルブ交換してあるよ、シートも交換してあったからそこは楽だ。ヘッドも多分冷却水がヘドロになってくっついてる思う」
「百合リンに言っておくよ3日はかかる?」
「そうだね。3日はかかるかな?在庫にシール類はあるから全部交換しちゃう。ラジエターは交換済だから楽は楽だよ。メタルとピストン系は交換不要だから洗浄して組めばOK」
「百合リンに交換部品と納期を言っておくよ。そうだ、お兄ちゃん、隆弘さん。相談乗って。オフロードコース作りたいの。コースのポイント教えて欲しくって。元々は百合リンの会社で重機のオペレーターを育てるのが目的なんだけど、それだけじゃあもったいないから開放してキャンプ場やバーベキューもできるようにしたいのよね」
「ダンプの泥んこ道運転の練習ならコースなら笠木さんのお店のコースがいいと思うよ。オフの登りとか泥んこの発進とか。三段腹のうねりとか。他にはハイスピードにするとか?条件がわかんないとアドバイスのしようがないって」
「悟瑠の言う通りだよ。ハイスピードにするとどうしても横転対策とかコースアウト対策とかいるんだよ。低速専用だとそれが要らないとかね」
「そうかあ、モーグルとかヒルクライムが主なんだけどな。ダ-トトライアルコースだと速度乗るのか?バギーもいいかなって思うの。そこだとそんなに痛まないだろうし」
「わかったよ。その前に僕らをコースの候補地に案内してくれ」
「そうね。まずは百合リンが撮ったドローン動画見てよ。ここは廃業した百合リンちの仲間の会社が持っている山林。杉とか檜を出荷してたんだけど人手不足で放置なんだって。格安で売りたいって言うから買って若手の訓練施設とレジャー施設にしようと思うの。オフロードコースの整備は重機運転の訓練」
「なるほどね。路面の整備は訓練の一環でやれば良いってことか」
「そのつもり、それなら運営コストさげられるでしょ」
「そう来るか、いい手だね」
「それならできるでしょ」
そう言ながら会社のパソコンで丸松建設と共同で購入した土地のドローン画像を見ながら、ここにこのコースを作ってとかキャンプ場はこうやってとか嬉々としていっている妹の佐野 雅子。
TSカップのレースに参戦している24歳。
参戦しているTSレースで既に3回も優勝してしまった。
雅子のTSカーはうちの会社でスポンサーしてて、他には元職場のスーパーと百合ちゃんの家の建設会社からもスポンサーを受けている。
そんな雅子は今度はオフロードに嵌って大型の2軸の総輪駆動を買ってきて、エンジンをいじって、サスペンションを自分好みにいじった。
その総輪駆動はV8の大排気量エンジン+ターボ追加してオンロードでもそこそこ速い車にしてある。
オフロード車は隆弘が詳しいのでエンジン特性やサスペンションのセッティングも勉強できてとてもたのしそうだ。
それが高じてオフロードコースを作って丸松建設と共同で運営したいといっている
雅子は親が経営している中古車販売店兼整備工場の経理、整備の段取り担当の副社長になっている。
運転免許は大型2種免許と牽引免許を取った、他に2級整備士も持っている。
必要なら大型トレーラーや積載車を運転できるし納車前のお客さんの車をメンテもやれる。
それに、プログラム組むのも好きなので、実家の規模に合わせたいろんな経理システムを自分で組んでいて、両親も大助かりといっている。
自分の車の脚を組むときに計算してスペック決めていたし総輪駆動では動きのシミュレーションもしていた
雅子は僕と仲間内からアジトと呼ばれている祖父母が経営していた製材所の跡に併設してある家に住んでいる。
そこから市内のお店に通っている、車は大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバス改造の貨物車のU-RP210GAN改280ps仕様か、エムエム君と呼んでいる、同じカテゴリーのバス改造の貨物車の○アロスターMMのU-MM618J改の300ps仕様、エンジンと足回りを改造した総輪駆動で藤子ちゃんと呼んでいるU-FZ2FJCA改の440ps仕様だ。
雅子の車を含めたうちの会社のディーゼルエンジンの車には以前勤めていたスーパーから買っている使用済みの食用油をリサイクルして作ったバイオ燃料を使って環境に配慮している。
全部に環境にやさしいBDFとステッカーを貼っている。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の3月生まれの27歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して6年目、今は家業の中古車販売店、整備工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備が担当だ。
資格は2級整備士、MIG溶接機、レーザー溶接機、ガス溶接、玉掛。
フレーム修正機も使え板金もできる。
他にはへこみのリペア、カラスリペアと危険物の免許と玉掛けも資格を取って入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長になった。
免許は大型、けん引免許を持っている
オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していける。
またバスの管理士になれるので、中古の大型観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
他には丸松建設のバスの管理もやっている。
僕らの両親はどちらも車が大好きで中古車屋兼大型車や建設機械も整備する整備工場を経営している。
大型の入庫が多く、小型車を整備する場所が不足した時はアジトのガレージでやる。
そこもお店の工場にしてある。
アジトの車両をいじる設備はすべて中古で、大型車対応のボードオンリフトが2機、大型エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、グラインダー、エアツール一式、板金道具一式、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、油圧ベンダー&カッター、ボール盤、旋盤、フライス盤、20トン対応天井クレーン、3トン対応のリフター3機、ワゴン式工具箱、タイヤチェンジャー、バランサー、ユニフォーミティマシンまでそろっているので、小型車のメンテどころか大型車の改造迄できてしまう。
事実、僕らの総輪駆動はここで脚を組んだのだ。
アジトは元は製材工場なので木材搬送のために大型トレーラーが20台以上を悠々と停められる敷地の広さがあり、父親が中古車版売店、整備工場を始めた場所でもある。
社長である父親は母親との結婚を機に独立してこの店を立ち上げた。
若いころは大型の整備工場でマニ割造りをやっていた。
今もその技術を使ってうちのトラクターをマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーに自分で改造してしまうほどのマニ割マニアっぷりを発揮している。
親父のマニ割仕様のエギマニはステンレスパイプを油圧ベンダーを使って手曲げで作ってしまうほどの腕を持っている。
大型車メインの整備工場に勤めていた時にはマニ割車を100台以上作っていて、トータルでは何台作ったか覚えていないというマニ割マエストロでもある。
その業界ではいまだに名の知れた存在で旧車のマニ割作って欲しいという発注がいまだに来る。
営業担当の副社長の母親は、独身の頃にドリフト競技、ラリーに出ていたという位の運転好きだ。
かなり上手く何回か入賞する位の腕を持っていたらしい。
ドリフト競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時大型車メインの整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。
乗用車の整備工場では見てくれなかったが、大型車メインの工場なのにうちの父親が仕事を引き受けていたのだ
この両親を見れば僕と雅子が車大好き、運転大好き、競技に出たいとなってしまうのは当然だろう。
雅子の小学校からの親友で高校の同級生の松尾 百合ちゃんも同じく車好き。
百合ちゃんは雅子と同じ地元の商業高校を2番目の成績で卒業して雅子と同じスーパーに入った。
販売部にいた時、提案した買い物難民救済用の移動販売車の成果が認められて主任になってキッチンカーの担当もしていたが、家業の人手不足もあってやむなく家業に転職した。
この百合ちゃんも大型バスにも嵌って2台買った。
2台ともV8エンジンで、V8の排気音が好きというほどの車好きだ。
百合ちゃんの一家も車好きで社長の百合ちゃんの父親も旧車好き、且つ速い車が好き。社長の奥さんで副社長の百合ちゃんのお母さんも大型車好きでしかも旧車好きのオリジナル志向。
百合ちゃんの兄も大型の旧車好きで、なんとマニ割好き。
この百合ちゃんのお兄さんは車を作るときはマニ割優先で出力よりも優先している。
それに百合ちゃんの家の会社の車と建設機械のメンテもうちの仕事になっている。
もう一つの定期的な仕事として雅子の元職場のスーパーのリース車両、事業用車両のメンテを引き受けた。
雅子が辞めた後は後任がリース車を各店舗で管理してメンテする方式にしたが、車検切れさせたので、元通り本社で一括管理にしてそのメンテナンスをうちで引き受けた。
その仕事もあって人員も増強したがそれを上回る仕事量で嬉しい悲鳴を上げている。
「雅子、わかったよ。レンちゃんは木曜の夜にはできるから金曜に納車兼ねていってみよ。交換部品がシールのみだから後は組むだけだよ」
「そうだね」
「それなら一緒いこうよ。このレンちゃんの納車の場所の近くなんだ」
「雅子。そこにはどんな車が入れる?」
「総輪駆動なら確実なんだけどなあ。バスはデフロック有ってもぬかるんでたら難しいかも」
「隆弘、念のため総輪駆動で行こう。藤子ちゃんとまゆかちゃんで行こう、納車するレンちゃんと3台連なってだな」
「うん、いってみよう。隆文も見たいだろうから。隆文も連れて行こう。まゆかちゃんで嬉々としてくるでしょ」
「よし。僕らはレンちゃんの仕立ててだ」
僕らはレンちゃんの修理を進めてエンジンを組み立て終わって車体に積んで漏れチェックしていた。
漏れがなく、オーバーヒートも問題ないことがわかって白煙も全くでないので納車に行った。
「雅子、こんなところで?」
「うん、今は百合リンのパパはドライブ君で仕事してるって」
「それは大変。じゃあ喜んでいるよね」
待ち合わせ場所に止めて待っていると百合ちゃんとお母さんが美浜ちゃんで引き取りにきた。
「雅子、悟瑠さん、ありがとう。レンちゃんのエンジン調子よさそう」
「急なお願いなのに直してもらってどうもありがとうございます」
「良いんですよ。勉強になりましたよ。オーバーホールしたって言うことを鵜呑みにしては駄目だってことで」
「悟瑠さんそうなの?」
「百合リン。そうよ。ゴム部品は経年劣化もあるから30年エンジンあんまりかけてないって言ってもシール類は劣化するの」
「そうなんだ」
「今回はゴム部品の劣化なんで修理完了までが早かったんだよ。いいことに見たらバルブも交換してあったから鉄物は交換してないで洗浄しただけ」
「もしかして開けてない車はゴム部品の交換が必要ってこと?」
「そうだね。点検の時に漏れで来たのがわかってからで大丈夫。時期から言ったら次の車検でマキちゃんオーバーホールしたほうが良いね。全くゴム部品は何もしてないから」
「そうかあ、ドライブ君あるから時間かかってもOKね。ドライブ君たちはエンジン全部オーバーホールしたから交換してあるのか。」
「そうそう、バスでいうとリングちゃんとかラムちゃん、武蔵くんはゴム部品全部新品入れたから良いけどね」
「もしかして美浜ちゃんは?」
「そうかあ、これは交換してなかった」
「これもお願いね、6×6総輪駆動もでしょ。鉄子ちゃんは替えたのね」
「そうだ。6×6総輪駆動もやってないね。鉄子ちゃんはオーバーホールしたんで交換した。あ、ビーフさんは交換してない」
「車検時期がズレているからその時交換してね。」
「そうね、ところで、百合リン、買ったって言う山林に案内良いかな?」
「うん、それで美浜ちゃんで来たの。そこに行くって言うから雅子は藤子ちゃんで、隆弘さんと隆文さんもまゆかちゃんで来たのね」
「入れなかったら見れないじゃん」
「大丈夫。そこまでの道はお兄ちゃんとあたしが整備してダンプは通れるようにしたから。引き摺りじゃなきゃいけるよ」
「なんだー」
「重機積んだ積載が入れないと困るじゃん。
「そうなんだ。っていうかあ、百合リンの言う通りじゃんね」
「案内するよ。ママはレンちゃんパパによろしくね」
「百合、雅子ちゃん、皆さん。気をつけて」
そう言うと百合ちゃんのお母さんははわわわーっとタービンの音を響かせてさらに奥に向かって走って行った。
僕らは百合ちゃんの案内で土地の様子を見ていた。
川があるので河原を整えればキャンプやバーベキューもできそうだ
オフロードコースは川の水を引き込めばマッドにするのも簡単そうだ
「いいところじゃん」
「百合リン、この道に大型車をって言うか?重機積んだトラック入れたら崩れちゃうよね」
「油圧ショベルで馴らすのよ。くずれないように土を積むのも練習」
「言ってたね。コースメンテもトレーニングの一環でとか」
「聞いたら、コースメンテの費用が大変なんだって。それで大体は自前でやるの。やりきれないところは建設会社に発注するんだって。あたしの場合は百合リンの会社の研修の一環でやるの、そうすると百合リンの現場作業の腕も上がるし、いい事だらけ」
「なるほどね。それはいい考えだ」
「あたしの家のお仕事は大半が山の中の道路工事。橋梁工事とかダム攫いだよ。建物は工場建設とか」
「そうなんだね」
「廃業したところの人たち雇ったら大規模になっちゃった。お兄ちゃんなんて趣味の旧車ミーティングがなかなかいけないってなげいでる」
「そうかも、僕も小さい頃に行ったことあるけどほんと大型系のはマニ割が大半だよね」
「でしょ。それにお兄ちゃんが感化されてマニ割にしてるんだよ。ビーフさんはどうしても登り坂走るから車体の重さで仕方なくターボにしたけどね。伊吹君の方は大排気量に載せ替えてマニ割でしょ」
「そうだね。19リッターのV10とはね」
「ってことで、案内するね」
百合ちゃんはそこに停めてあるナナちゃんにみんなを乗せて案内していた。
「ロックンで来ればよかったか」
「え?ロックン?」
「そう。悟瑠が作った4WD。でもエンジンがパワフル過ぎてやばい位」
「まあまあ、いいだろ」
「そうか。この車は狩野さんか乗って来たの。狩野さんがここで重機でコース整備の練習してるでしょ。重機の運転も勉強中」
「おおお、ここは?見たことあるような雰囲気」
「ここは笠木さんのお店のコースを真似したの。モーグルいいでしょ。マッドのうねりも作ったよ」
「雅子、これは楽しそうじゃん」
「なんだけど、相談したいのは高速コースとバギーコースなんだよ。出来ればこの辺りを切り開いて高速コースにしたいんだよね。10メートル幅で盛り土はなるべく減らして一周2キロから3キロ」
「雅子、盛り土なしはいいよ。地盤がちゃんとするから」
「なるほどね。バギーは転倒しないようにするのが一番だよ。高速はぶつかること前提でコース作った方がいいよ。エスケープなしで」
「そうか。大型がガンガン行けるやや硬めの路面でアップダウンは路面次第かな?」
「それでいいよ」
「ここからこのへんを切り開いていこうよ。それで行くよ」
「完成は1月後かしらね」
「研修の日程次第よ。新人研修の一環でやるし、ベテランのひとの錆び落としも」
「百合リン、コースオープン迄頑張ろうね」
「雅子、いいコースだよ。ここなら走ってみたいよ」
「隆文がここを?いいかもね」
「あたしも。練習にはいいコースにするからね」
雅子と百合ちゃんがコース設計して作るというところを見て帰って来た
その週の週末はいい天気であちこちで旧車ミーティングが開かれていたらしい
百合ちゃんお兄さんも久しぶりにビーフさんでいってニコニコして帰って来たらしい
月曜日、僕が仕事を始めて一時間半ほどして休憩を取ろうしたら
「お兄ちゃん、悪いけど丸松建設の本社に行ってもらっていいかな?できればレッカーで。なんか車の修理のお願いだって。動けないダンプを運んでだって」
「わかった。レッカーね」
「え?ちょっと待って。船底がいいみたい。百合リンから追加で情報来た。ボンネットダンプのエンジン壊れて動かないって」
「OK。いいよ船底で行ってくる。無理掛けたの?最新のエンジンに載せ替えたんだけど」
「あたしも行くよ。助手いるでしょ。今日は隆弘さんたちお休みだし」
「そうだな。親父に作業の段取り頼んで」
僕らは船底をけん引して百合ちゃんの家の会社の本社に行ったのだ
船底を引っ張った2軸トラクターを操って向きを変えて停めた
すると事務所から百合ちゃんが出てきて
「雅子。聞いてよ。お兄ちゃんがまたダンプカー買って来たの。今度もボンネット6×4」
「はあ?」
「昨日のオフ会で個人売買で買ったんだけど、エンジンが壊れてるのを買ったの。それを直すからいきなり雅子のお店に送るって言うから止めたのよ。いくらなんでも鉄くず送るなって。ところでこの車直せる?エンジンもミッションもボロボロなんだけど」
そう言って見せてくれたのは1970年代のボンネットトラックだった。
ボンネットを開けるとエンジンからオイルが噴き出した跡がある
「へええ、すげえ。いいよ。百合ちゃん。良いよ直すよ。エンジンとミッションは積みかえ決定だね。このエンジンブロックに罅入ってるじゃん。ミッションもケースに罅があって溶接した跡がある」
「悪いわね。マキちゃんのオーバーホールもあるのに。お兄ちゃんはこれでイベントに行ってうちの会社のプロモーションするんだって」
「いいよ。うちは修理工場だからなんでも直すよ」
「呆れたわよ。このダンプよろしく。お兄ちゃんだからいくら吹っ掛けてもいいからね」
「あははは。それなら完全に会社の車でしかもプロモーションならお仕事って言えるもんな。百合リンのお兄さん考えたわね」
「雅子、悪いけど二週間したら、マキちゃんの車検とエンジンオーバーホールよろしくね。とうとうエンジンのタペットカバー当たりからオイル漏れてきたって」
「良いよ。それならゴム部品が限界なのかもね。交換しよう」
「お願いね」
僕らはお兄さんが買ったというボンネットダンプトラック;T901DDを船底に積んで帰って来た。
積んできた車を3人の職人が車を見ると
「これは、元薄井建設の車ですね。昔イベントに結構でてましたよ。それを丸松建設で買ったんですね。ということは依頼者は若ですね。修理します。フレームもキャビンも。この車は薄井建設では大事にされていましたよ。フレームの狂いも見ますから」
「お願いします。エンジンは僕らが探します。8DC系ならなんとかなると思います。ミッションも」
「お願いします」
また、ボンネットダンプのレストアが来たのだった。
しかもイベントにもつかうのでマニ割煙突左右ダブルのリクエスト付きだった。
そしてもう一人、そのダンプカーを見てなにか企んでいるいたずらっ子の顔していた親父がいた。
またダンプ?
百合ちゃんのお兄さんって好きものですねえ




