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走り屋の妹(全年齢版)  作者: 浅野 武一
38/73

第三十八話 本格的にオフロード車を仕上げる

久しぶりに車いじりする雅子たち

そこに百合ちゃんも来て。

さて?

「お兄ちゃん、やっとこの2台いじれるね」


「そうだな、ここ1年ばかり忙しすぎた。隙間時間でエンジンは何とかやっできたけどね」


僕と雅子は久しぶりの長期の休みが取れてアジトで2台の総輪駆動トラックをいじっていた。

どちらも2軸の元除雪車でU-FZ2FJCAとKC-CF531XHだ。

U-FZ2FJCAは僕のバスのルーシーちゃん(U-RU2FNAB)とほとんど同じメニューでチューニングしている。それはツインターボと480ps用インタークーラー、ラジエターを使って440ps/2200rpm、153kg/1400rpmまでアップしてF21C用の総輪駆動用5MTミッションを組んでいる。

ミッション強度の関係でパワー、トルク共に抑えているのはご愛敬だ。

もう一台のKC-CF531XHはなごみちゃん(RA531MBN)と同じメニューで特製クランクとコンロッド、 ツインターボ、RF8TB用タービン、インタークーラー、ラジエター、後付オイルクーラー。560ps用ポンプと480psのノズルを組み込んで515ps/2200RPM、トルク180kg/1300RPM にしている。

ミッションはGH11TC用のH/L6速MT+リターダーにした


「やっぱり、ニックネームを総輪駆動にも付けたいなあ。何がいいかな?えーとU-FZ2FJCAはうーん。そうかU-FZ2()()()A使って藤子ちゃんにしよう。うーん、うーん。KC-CF531XHはKC-CF5()()()()を使ってサイバー君にしよ。お兄ちゃん。どうかな?」


「良いと思うよ。ニックネームあった方が愛着沸くし。そうなると丁寧に使うでしょ」


「でしょでしょ、あたしもそう思うの。隆弘さんの総輪駆動にも付けちゃおうかな?」


雅子がいう総輪駆動とは隆弘が雅子から買った元道路パトロール隊用のU-FT3HGAAでJ08用のターピンとp09用のインタークーラーとポンプで、285ps/2900rpm、75kg/1700rpmにしてある。ミッションはパワーに対応してF系エンジン用の5MTに換してあるのだ。


「型式はU-FT3HGAAだからええと、U-FT()()()()Aを使って無理やりだけど美浜ちゃんにしよう」


「それも良いかもね」


僕らはまず雅子が乗りたいという藤子ちゃん(U-FZ2FJCA)をリフトで上げて後のサスをおろしていた。

すると、グロウグロウグロウというエンジンの音が聞こえてきて、なんとK-TSD45が入って来た。

やってきたのはあろうことか?雅子の親友の百合ちゃんだった。


「おっはあ、雅子。今日はお願いがあってきたの。実は雅子から買ったドリ車を愛理沙(ありさ)に売ることにしたの」


車から降りると言う百合ちゃん


「え?愛理沙(ありさ)があのドリ車買うの?」


「うん、知っての通り愛理沙(ありさ)も大の車好きで走りたいんだって。それは愛理沙(ありさ)のお兄ちゃんと元旦那の影響だけど、実は愛理沙(ありさ)のパパも車が大好きなんだよね」


「そうかあ。それでもしかしてドリ車買って競技に出るの?愛理沙(ありさ)はシングルマザーだよ?費用どうすんのよ」


「うん、出たいって。最近まで知らなかったんだけど、愛理沙(ありさ)のおじいちゃんってあたしたちがいたスーパーの創業者。それに愛理沙(ありさ)の家って家業が食肉加工会社で実は社長令嬢」


「え?愛理沙(ありさ)と創業者の苗字違ってるよね。もしかしてスーパーの取引先?あ、小笠原食肉から仕入れてたよね」


「そう、それは愛理沙(ありさ)のママがそこにお嫁に行ったから。そうよ、実はスーパーで売ってるお肉はそこから買ってるの」


「あ、そうか。そう言う関係なんだね」


「今はおじさんがスーパーの社長。愛理沙(ありさ)はコネ入社って言われるの嫌で黙ってたんだけど、あたしがスーパーを辞めたからこそっと教えてくれたの」


「そうなんだ。そうは言っても愛理沙(ありさ)は実力で入ったんでしょ?」


「もちろん、愛理沙(ありさ)の仕事ってきっちりしてるじゃん」


「なるほどね。それじゃあねえ」


「今、愛理沙(ありさ)は移動販売車の商品補充専用車作るみたい。軽トラじゃあ補充が追いつかないって言ってて。それでトラックとかバスをどうやって買ったか聞いてきたんであたしは雅子に頼んだって言ってあるの」


「なるほどね」


「ごめんね。話がそれちゃった。それでここで預かってもらってるドリ車を愛理沙(ありさ)の家に運んでほしいのよ」


「いいよ。じゃあ愛理沙(ありさ)のお休みの日を聞いて運んでおくよ。ところで今日は百合リンお休み?」


「うん、たまにはこれ乗んないとやばいと思って」


「そうね。これもBDF?排気が臭くないよね」


「もちろん、あたしの車は全部そうよ。うちにもBDFタンクあるの。もとは灯油タンクだけど」


「今日はもしかしてこれだけのため?」


「バレちゃった?実はあたしの車も弄りたいじゃん。アドバイスほしいのよ」


「それならもうすぐ隆弘さんがくるからその時聞けばいいよ。そろそろだから。そうだ百合リン、この総輪駆動にもニックネーム付けようよ」


「雅子、それいいわねえ、何にしようかしら型式はK-TSD45だよ」


「うーん、百合リン、K-()()D4()をつかって鉄子ちゃんは?」


「まあ、それもいいか。それでいこう」


と言っているとフロロロという排気音を響かせ、隆弘が美浜ちゃん(U-FT3HGAA)に乗ってやって来た。

それだけならいいが、美浜ちゃん(U-FT3HGAA)だけでなく、ドリュドリュドリュドリュというV8の排気音、隆文が仮ナンバーをつけた結構ボロボロのどう見ても元除雪車らしい車を運転してやって来た。


「おいおい、隆弘、隆文なんだこれ?」


僕が、隆文が乗って来た車を指して聞く


「隆文が見つけて買ったんだよ、かなり古い除雪車で総輪駆動。部品が結構残ってるから買ったらしい。親父に交渉して運送会社の敷地に置くことにしたって」


「隆文。これもしかしてターボにしろって?もう部品ないだろ」


「いいや、悟瑠さん。エンジン載せ替えとマニ割やりたい。今積んでるのは8PAなんだけどトルク無くて非力なんでパワーのある8PEにしたくて。エンジンも買って積んできた」


「やれやれ。ねえ、隆文。これの脚もいじるの?ここが結構いっぱいなんだけど?百合リンも来てるんだよ」


「ええ?今日は百合ちゃんも来てるの?」


「こんにちは、隆弘さん隆文さん」


「そうなんだよ、5台も総輪駆動が揃っちゃったよ」


「まあそうだねえ。みんなショートボディだからまだいいけど」


「よし、それならみんなでここの2階に行って車の状態を整理して今後の段取り考えよう」


僕らは、ガレージからアジトの2階にある、昔製材所の頃に職人を住まわせていたところに上がって話をしていた。

行ったのは大部屋で作業の段取り表が貼ってあって朝の打ち合わせやそこで昼の休憩もできるようにしてあるのだ。


「雅子、ここにはこんなお部屋あるのね。へえ。ここってお泊りもできちゃうの?」


百合ちゃんが20畳ほどの広さの簡易キッチン付きの部屋に初めて案内されて入ったところで言う。

僕、雅子、百合ちゃん、隆弘、隆文の5人はその大部屋のソファーで自分の車のやりたいところと必要な部品はなにかを話し合っていた。


「うん、そうよ。そこに簡易バスもあるでしょ。後は寝室も。夜遅くに職人さんが帰ってきて、次の朝早くから仕事ってなったら家に帰るよりもここに泊って仕事ができるようにしてたの。」


「へえ、いいじゃん。お布団持ってくればいいのね」


「アハハ、百合リンがここに入り浸るの?」


「いいかもね。オフロードに遊びに行ったりした帰りにとか」


「おいおい、みんな話がそれてるぞ。まずはみんなの総輪駆動の話しようぜ」


「おう、まず、僕と雅子の車はエンジンの整備とパワーアップが終わっていて、残ってるのは脚だ。できれば隆弘の言う通り伸びを重視してエアサスで縮みのアシストにしたいな」


「あたしも、雅子たちと同じです。もうエンジンは完成してるんで脚だけです」


百合ちゃんが言う


「そうか、俺のもエンジンとミッションは強化してある。ってことは4台はエンジン整備とパワーアップ終わってるんだな。百合ちゃんもラテリンとスタビいるよね。隆文のはエンジン換装してエギマニ作ってだろ。これが結構時間かかるなあ」


「兄貴、そうだけど脚のメニューは俺のもみんなと一緒だよ。エンジンはオーバーホールして積みかえ、公認取ってだよ。ミッションはいいのあったからそれも買って来た。エンジン整備が先かな?」


「そうか。ってことはおれの美浜ちゃん(U-FT3HGAA)を先にやってそれをコピーがいいか?」


「ちょっと待てよ。隆弘の美浜ちゃん(U-FT3HGAA)は縮みのエアアシストじゃなくリーフだろ。エアアシスト欲しいのは?雅子と僕と百合ちゃん?」


「うん。お兄ちゃん。あたしの藤子ちゃん(U-FZ2FJCA)にはエアアシストほしいし、ユリリンの鉄子ちゃん(K-TSD45G)にもでしょ。隆文のはどうすんの?」


「俺のはロングリーフで行きたいな。縮みはオーソドックスにリーフでやりたい」


「ってことは悟瑠、雅子、俺の美浜ちゃん(U-FT3HGAA)後回しか?美浜ちゃん(U-FT3HGAA)ってニックネームなんだな。確かにいいかもな。いちいち型式とか車種で呼ぶよりも。トラクターヘッドや会社のレッカーとも区別つくし。ところでデフロックは?俺のは後ろはあるけど前が無いから欲しいんだよね」


「それって雅子の藤子ちゃん(U-FZ2FJCA)も後ろだけだろ」


「うん、藤子ちゃん(U-FZ2FJCA)とお兄ちゃんのサイバー君(KC-CF531XH)にもでしょ。百合ちゃんの鉄子ちゃん(K-TSD45G)には?」


サイバー君(KC-CF531XH)には前にもデフロックついてるから要らないよ。無いのは雅子のと隆弘のだろ。百合ちゃんの鉄子ちゃん(K-TSD45G)は?」


「あたしの鉄子ちゃん(K-TSD45G)にはデフロック前後ついてるからいいわよ。それより伸びのストローク不足するからそこ直したい。パパが手放した理由の一つ」


「百合ちゃんの鉄子ちゃん(K-TSD45G)は伸び重視のセッティングだね。デフロックは要らない。隆文。買って来た車の型式は?」


「ええと、K-SKS390改だよ。デフロックは最初から前後についてるから百合ちゃんのと同じく脚だけ。あと、エンジン非力だから換装してほしい。マニ割の煙突ダブルにしたいなあ。エンジンはKLー規制のを買ってきてある」


「ふーん、そうなんだね。うーん、この車にもニックネーつけちゃおうよ。この車は型式がアイドルユニットに近いからそれ取って、しかもボディカラーが黄色だし、隆文はうちの走りチームのサブリーダーでもあるから”あゆかちゃん”にしよう。マニ割の煙突にするんでしょ?パパにマニ割は頼めるけど煙突は自分で作ってよ」


「はあああ。雅子それって?アイドルユニットからか?わかる人ならわかるけど。煙突マフラーは出口に蓋もつけるよ。下に水の排出口も」


「それでいいでしょ?隆文もうちのチームのサブリーダーなんだから。アイドルグループは隆文の車と同じ黄色チームでしかもチーム名と色と型式が一緒じゃん」


「隆文。煙突はまかせた。マニ割のマニフォールドは社長に作ってもらうのがいいよ」


「隆文さん。この車のニックネームあたしは良いと思うの。キャビンも可愛いわよ。錆びとって塗りなおすともっといいわよ」


百合ちゃんが言っている。


「うーん、まあいいか、なんとか48は好きなほうだから」


「じゃあ決まりね。3と9足しても4と8足しても12だからちょっと数字のお遊びもできて」


「あのなあ、いくら型式がK-SKS390改って言っても」


「良いじゃん。隆文のあゆかちゃん(K-SKS390改)はエンジン載せ替えとマニ割と脚ね。マニ割のエギマニはパパに頼んでおくよ。趣味の世界で作ってくれるから」


「はいはい、俺はあゆかちゃん(K-SKS390改)のエンジン終わるまではキャビンとフレームの錆取りするか。脚はロングシャックルとロングリーフか」


「そうだな。内外の車のリーフとシャックルでいいのないかスペック調べるよ。なかったら特注かけるよ」


「そうだな。加藤運輸のつてもあるし、うちも親父のつてもある」


「親父に聞いたたら、シャックルは鉄工所でもいいの作ってくれるんだよ。特注リーフなんて大型専門の整備工場とか改造工場ではよくやってるからな」


「隆弘、脚を伸ばすのにコイルならバネ定数を下げるといいが、リーフも同じか?」


「ストローク取るならやっぱりリーフの長さ伸ばしてシャックルの長さ伸ばす。そのうえでメインリーフのバネ定数下げる」


「なるほどね。そうすると強度の問題出るだろう」


「そこが難しいところ。かといってリーフ辞めてコイルだけにはできないよ。後二軸ならもっと楽なんだな」


「プロペラシャフトがむずいだろ」


「まあそれはあるな。ペラの長さ足りないと結構難しい」


「そうか。隆弘さん。ってことは車の重量重い方が不利?」


「そう、それがあるから縮みをエアかコイルか何かでアシストする。大型は重量重いからなあ。増しのリーフは伸び側にあんまり影響しないのもあるけど、ばねした重量重くなるんだよなあ。それに摩擦が増えるから。よし、やることは決まった一旦ガレージ行こうぜ。まずは車を見よう。雅子の藤子ちゃん(U-FZ2FJCA)リフトに乗ってたよな」


僕らはガレージに戻って車を見ていた。


「そうか、そうだよねえ。エアで縮み側をアシストね。確かにサスペンションの摩擦少ない方が良く動くよね」


そう言ながら持ち上げられた自分の総輪駆動の藤子ちゃん(U-FZ2FJCA)の足回りを見ている妹の佐野(さの) 雅子(まさこ)

峠のバトラーからスタートして、チーム戦では負け無しのままバトラーを卒業、その後はドリフト競技に参加して対戦クラスで3回も優勝してやっぱり自分にはレースの方が自分に向いていると言って、卒業。

ドリ車は百合ちゃんに売ってしまった。

今はTSカーを作ってTSカップのレースに参戦している24歳。

直前の耐久レースでは自分で燃費とタイヤのマネージメントする方法を考えて実践してそれが見事に当たってベテラン勢の作戦を躱して優勝してしまった。

雅子のTSカーはうちの会社の他にも元職場のスーパーと百合ちゃんの家の建設会社からもスポンサーを受けているのだ。

もう一つ、雅子はオフロードに嵌ってしまって大型の総輪駆動を買ってきて走るためにいじる情報集めもしている。

買って来た総輪駆動をエンジンからサスペンションまで自分好みにいじってしまうのだろう。

その車はV8の大排気量エンジンでパワーが有って早い車好きの証でもある。

うちの会社にはオフロードに詳しい隆弘がいるのでサスペンションのセッティングも勉強できてしまいそうだ。

親が経営している中古車販売店兼整備工場では、経理、整備の段取り担当の副社長担っている。

大型2種免許と牽引免許、整備士の資格も取っているので必要なら大型トレーラーや積載車を運転して買い付けた車の引き取りもできるし、時には整備工場に来て納車前のお客さんの車をメンテすることもある。

それに運転だけでなくプログラム組むのも好きなので、実家の規模に合わせたいろんな経理システムを自分で組んでいて、両親も大助かりといっている。

今、雅子は僕といっしょに仲間内からアジトと呼ばれている祖父母が経営していた製材所の跡に併設してある家に住んでいる。

そこから市内のお店に通っているが、使う車は大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバスを改造した貨物車のU-RP210GAN改280ps仕様か、エムエム君と呼んでいる、大型9メートルカテゴリーのバスを改造した貨物車の○アロスターMMのU-MM618J改の300ps仕様だ。

この2台には以前勤めていたスーパーから買っている使用済みの食用油をリサイクルして作ったバイオ燃料を使って環境に配慮している。

その燃料はしばらく雅子の車で使ってみて全く問題が出ないことがわかったので、今は会社で使ってるトラクターやバス達、積載車にもつかっていて環境にやさしいBDFとステッカーを貼っている。

僕:佐野 悟瑠(さとる)は妹より4学年上の3月生まれの27歳。

地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して6年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。

今は家業の中古車販売店、整備工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備もしていて、時には中古車の買い取り査定もする。

大学のころから2級整備士を取って家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金もできるようになった。

会社にはいってから、へこみのリペア、カラスリペアと危険物の免許と玉掛けも資格を取っているので入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。

免許は大学在学中に大型をとってさらに就職してから直ぐにけん引免許もとっている。

オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していく。

使っているキャリアトレーラーも中古車で買ったものでもある。

またバスの管理士になれるので、中古の大型観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。

ほ他には丸松建設のバスの管理もやっている。

僕らの両親はどちらも車が大好きでそれが高じて中古車屋兼大型車の整備もする整備工場を経営している。

その関係で僕と雅子が住んでいるアジトのガレージもお店の工場にしてある。

アジトの車両をいじる設備はすべて中古ではあるが、大型車対応のボードオンリフトが2機、大型エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、グラインダー、エアツール一式、板金道具一式、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、油圧ベンダー&カッター、ボール盤、旋盤、フライス盤、20トン対応天井クレーン、3トン対応のリフター3機、ワゴンしき工具箱、タイヤチェンジャー、バランサーまでそろっているので、メンテどころか改造迄できてしまう。

事実、ドリ車とTSカーはここでどんガラの状態から作り上げたのだ。

僕等の大型の総輪駆動の改造もそこでやろうとしている。

もっとも、スポット溶接機、レーザー溶接機、タイヤチェンジャー以外は祖父が現役の頃、林業で使う道具や木材運搬車等が壊れると、そこで修理していたのでそれを受け継いだのだ。

アジトの敷地は木材搬送のために大型トレーラーが20台以上を悠々と停められる広さがあり、父親がこの場所を借りて中古車版売店、整備工場を始めた場所でもある。

社長である父親は元は大型車整備メインのディーラーにいたが、結婚を機に独立してこの店を立ち上げた。

若いころはマニ割をやっていた。

今も技術を使ってマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーに自分で改造してしまうほどのマニ割マニアっぷりを発揮している。

マニ割仕様のエギマニはステンレスパイプをベンダーを使って手曲げで作ってしまうほどの腕を持っている。

若いころに大型車メインの整備工場に勤めていた時にはマニ割車を100台以上作ってはお客さんに収めていた。

トータルでマニ割車を何台作ったか覚えていないというマニ割マエストロでもある。

その業界ではいまだに名の知れた存在で旧車のマニ割作って欲しいという発注がいまだに来る。

副社長の母親は、独身の頃にドリフト競技、ラリーに出ていたという位の運転好きだ。

かなり上手く何回か入賞する位の腕を持っていたらしい。

ドリフト競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時大型車メインの整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。

乗用車の整備工場では見てくれなかったが、大型車メインの工場なのにうちの父親が仕事を引き受けていたのだ

この両親を見れば僕と雅子が車大好き、運転大好き、競技に出たいとなってしまうのは当然だろう。

雅子の小学校からの親友で高校の同級生の松尾(まつお) 百合(ゆり)ちゃんも同じく車好きでもある

百合ちゃんは雅子と同じ地元の商業高校を2番目の成績で卒業して雅子と同じスーパーに入った。

販売部にいたときに提案した買い物難民救済用の移動販売車の成果が認められて主任になってキッチンカーの担当もしていたが、家業の人手不足もあってやむなく退職して家業についている。

この百合ちゃんも大型バスにも嵌って2台、自分で買ってしまった。

V8エンジンの排気音が好きというから筋金入りの車好きだ。

百合ちゃんの一家も車好きで社長の百合ちゃんの父親は旧車好きでしかも速い車が好き。社長の奥さんで副社長の百合ちゃんのお母さんも大型車好きでしかも旧車好きのオリジナル好き。

百合ちゃんの兄も旧車好きで、マニ割好き。55年近く前の元送迎車のフロントエンジンキャブオーバーバスを見つけてきててそのバスのレストアも頼んできた

この百合ちゃんのお兄さんは車を作るときはマニ割で出力よりもマニ割を優先してほしいというのだ。

それに百合ちゃんの家の会社の車と建設機械のメンテもうちの仕事になっている。

もう一つの仕事として雅子の元職場のスーパーで使っているリース車両のメンテを引き受けた。

雅子が辞めた後はリース車を各店舗で管理してメンテするようにしていたが、車検切れさせたのがわかって、元通り本社で一括管理することにしてそのメンテナンスをうちにお願いしてきたのだ。

その仕事もあって人員も増強したがそれを上回る仕事量で嬉しい悲鳴を上げている状態だ。


「とにかく、雅子の藤子ちゃん(U-FZ2FJCA)を先に仕上げて、それを他の車にコピーしよう。ところでラテリンとスタビはみんな入れる?」


「うん、お兄ちゃんと百合リンも入れるよね」


「ってことは総輪駆動は全部の車にラテリンとスタビ入れるんだろ」


「そうだね。隆弘、総輪駆動じゃなくてもあった方がまっすぐ走るんだろ。それってネットにあって、親父も知ってるぞ」


「そう。総輪駆動の専用じゃないよ。フロントがリジッドなら全部使えるよ」


「隆弘さん、ラテリンとスタビってうちのダンプトラックにも効くんですか?」


「ダンプはあんまり効かない。何故ならストロークが少ないから。でも有ったほうが楽になるのは変わらないよ。バスの方が効き目が大きいよ。特にリーフで前軸が車軸式のバス」


「そうなのね。確か、武蔵君(P-RU636BB)は独立だから要らないとしてラムちゃん(P-RA52M)はリジッドなんで欲しいかも。リングちゃん(P-RU192AA)もほしいなあ。後は会社の古いバスを改造したのも。念のためダンプもやっちゃえ」


「分かったわよ。百合リン。順番決めて持ってきてお兄ちゃんいいよね」


「雅子、ありがとう」


「隆弘さん、あたしのニジュちゃん(U-RP210GAN)や積載車とか運搬車も有ったほうが良いんだよね」


「そうだな、ニジュちゃん(U-RP210GAN)はリーフか。それなら有ったほうが良いな。後は全部エアなんなよな。うーん」


「隆弘、僕と雅子のバスは全部やってあるよ。買ったときにドラリンとラテリンの軌跡合わせやって完成してるよ」


「え?そうなの?」


「ああ、キューピーちゃん(KC-LV280N)を見てネット調べたら情報が有ったから路線系は全部真似してやってある」


「全くもう、やることは早いんだから」


「ってことは、整理すると、百合ちゃんちはバスのラムちゃん(P-RA52M)リングちゃん(P-RU192AA)鉄子ちゃん(K-TSD45G)とダンプ4台。移動事務所のレン君(BD50改)伊吹君(CVS19改)の2台とドライブ君(DR15)デビちゃん(DB100)ビーフ君(BF30改)の3台で合計12台か」


「はい、そうです」


「今はドライブ君(DR15)の修理やってるからついでに入れればいいか。その次はラムちゃん(P-RA52M)だな。その後は鉄子ちゃん(K-TSD45G)をやって後は空いている時に持ってきてだな」


「そうだね。次はうちの会社で必要なのは運搬車2台とレッカー3台とトラクターヘッド2台と積載だな」


「隆弘、うちの小型用のレッカーと積載はもうやってある。それにトラクターヘッド2台とも。スタビも入れてある」


「悟瑠のやること早すぎだろ」


「そうよ、お兄ちゃんはこれだよ。いじるの大好きよね」


「実はな、親父もドラッグリンクとサスペンションの軌跡を合わせると良いっていうことは知ってて、トラクターヘッドは親父が2台ともやった。やって無いのは総輪駆動の2台のレッカーと運搬車2台だよ。親父はディーラーにいた頃からこそっとやったらしいよ」


「わかったよ。会社のは4台。後は俺たちの4台か。藤子ちゃん(U-FZ2FJCA)サイバー君(KC-CF531XH)美浜ちゃん(U-FT3HGAA)あゆかちゃん(K-SKS390改)だな」


「雅子、ニックネームはいいかもな。型式で呼ぶと長いから。ニックネームなら簡単だ」


「そう、その辺は雅子がうまいよ」


「無理やりもあるけどね」


僕らはまず雅子の藤子ちゃん(U-FZ2FJCA)から後軸をおろしてリーフの長さと反りを測定、その後前軸ではドラッグリンクの長さを図ったり角度を図っていたのだった。


「悟瑠、ところで親父さんは何で軌跡合わせを知ったんだ?」


「どうやらマイクロバスでドラッグリンクとラテリンの軌跡合わせをやっている車があると言うことでその車を借りて調べたらしい」


「やるなー」


「お客様のダンプで車高上げる必要有ったから上げたら、道路がうねってる所で真っ直ぐ走らないから調べたんだって」


「なるほどね。そこで見つけたか」


「まあ、その通りなんだよ」


「きっかけはそんなものだな」


「困ったときに見つかるよな」


「そうだな。軌跡合わせはラテリンの長さをドラッグリンクに合わせて、平行になるようにつけるんだよな」


「そう。そうやってドラッグリンクの軌跡とラテリンの軌跡を合わせることで上下にサスペンションが動いた時にタイヤに切れ角がつかない。一番効くのが橋の継ぎ目の段差でそこではふらつかなくなるよ」


「そうか。兄貴。俺が総輪駆動やってた時に一番困ったのそれなんだよ。リフトアップするとふらついて」


「なんだ。相談しろよ」


「そうだけどさ。理由がわかんなくて」


「ドラッグリンクがリフトアップで角度着いたのにラテリン入れないからだろ。ドラッグリンクの長さと角度が決まればレイアウトできるかだよ。総輪駆動はリンクをデフの分前にずらすから横力かかった時のアクスルステアアンダーが大きくなる傾向にあるからその分も考慮しないとな」


「そう言うことか。ホイールセンターに横力かかるとアクスルステアアンダーにいくのか。それに前軸をリバースシャックルにするとロールでもアクスルステアアンダーになるからその分も考慮しないとオンロードでとにかくドアンダーになるのか」


「そうなんだよ。路面干渉を考慮してフロントをリバースシャックルにしてロングシャックルする時の欠点はそこだよ。スタビを入れてロール角を減らすんだよ」


「奥が深いなあ。独立とは全く違う難しさがあるんだなあ」


「兄貴、俺ついていけねえよ」


「はあああ、おめえはほんと脳筋だな。もういいから車を作って乗って感じて身体で覚えろ」


「お兄ちゃん。百合リンもついて行ってないかも」


「雅子はわかるか?」


「うん、この前シミュレーションソフト作って軌跡合わせやってみた時にわかったの。リバースシャックルと延長リーフも」


そう言ってガレージにあるパソコンで動きをシミュレートしている動画を見せてくれた。


「さすがだな。リーフのたわみのところも計算にいれたの?」


「うん、簡易計算だからリーフとブッシュは線形バネでいれてある。フレームは剛体にしたの。それでも大体の動きがわかるでしょ。目で見てわかるのが重要よ」


「悟瑠、雅子は大学で機械工学学んでも良さそうだな」


「そうだな、実は僕の大学の時の応用力学の大たわみ理論の教科書読んで作っちまったんだよ。驚きだよ」


「うおおお、駄目だあ。何言ってるかわかんねー」


「うん、あだすもわがんねっす」


「あはは、これわかったら大学の工学部の講義についていけるって。工学部の専門用語がわかんないんだと思うよ」


「そうなの?こんなこと自分で勉強出来るなんて雅子が高校をダントツ一番で卒業したのわかるわよ。高校の頃はぶっちぎりだったもんね実習でも」


「うん。雅子はすげえよ。こんなことまで出来るなんて」


「動画の方がわかりやすいでしょ」


「くうう、俺が走りで勝てないのはこの理論で勝負できないからか」


「隆文。雅子のすごさわかったか?よし。フロントのレイアウトはこれで行こう。ブラケットの設計だ」


「隆弘さん。もう決めてあるよ。アクスル側の取付位置も」


「へ?」


「隆弘さん、これ見て」


「え?そうかなるほどね。ここにリンクを持ってきて、ブラケットとボルトを溶接か」


「さすがだな」


「さっきドラッグリンクの長さ測ったからその値を入れて角度入れると大凡の位置が出るの。図面も」


「やるよなー。このブラケット造るぞ。隆文、良いか?ブラケットの図面出るから」


「出すね」


雅子はプリンターで部品図をだしていた。


「俺造るよ。悟瑠さん、そこにあるリーフの一部使うけどいいよね」


「いいよ。そうか。ブラケットにはいい材料だもんな」


「隆文。ラテリンのブラケットよろしくね。鍛造ボルト買ってあるし」


「ラテリンはバス用?」


「長さが合えばそれで十分だね。元々はラテリンは無くてもいいからそんなに強度要らないもんね。長さが合わないなら作るよ」


「そう」


「車体側も設計出来てるの?」


「うん、図面出すね」


雅子が図面を出していた。

ガッシャーンとシャーリングマシーンで切ってギーッとグラインダーで鉄を削る音が聞こえる

あっという間に形が整っていく

またガッシャーンと響くシャーリングマシンの音


「俺たちはラテリンを造ろう」


「そうだな。ブッシュはどうしよか?」


「剛性もなるべく合わせる。片ピロかな?」


「ピロもあるから溶接したら圧入だな」


「任せてくれ」


「雅子、あたしの鉄子ちゃん(K-TSD45G)もそうやるのね」


「そうね。リーフを抜いてエアでアシストするから。フレームがどこまで持つかで改造規模も変わるよ」


「そうね。雅子。あたしの鉄子ちゃん(K-TSD45G)用のブラケット図面はもうあるの?」


「あるよ。任せてね。以前ここに来たときにフレームの狂い調べたの。その時のデータがはいってるから何処がどのくらいの厚さかもしらべてある」


「いつの間に?」


「お兄ちゃん。隆文。これもよろしく」


「雅子、これって?」


「百合リンの鉄子ちゃん(K-TSD45G)用のブラケット。この車はウインチベースがあるからそこにつけちゃう」


「そうきたかあ、この車はレイアウト見てないから先ずは木型でみようか」


「うん。念の為ね」


僕と隆弘は丸棒の長さを測って切って両端にブッシュのブラケットを溶接して色を塗って仕上げていた。

その後は百合ちゃんの鉄子ちゃん(K-TSD45G)のブラケット模型を作ってリフトで上げるとレイアウトを調べて干渉しないか見ていたのだった。

僕らの長期休みはほとんど雅子と百合ちゃんの鉄子ちゃん(K-TSD45G)の足回り改造に費やされていたのだった。

その間、百合ちゃんはここに泊まり込みで自分の車を改造する作業していて、仕上がった車に満足していたのは言うまでもない。


「よし、部品は揃ったな。後は隙間時間で悟瑠と俺と隆文の車の仕上げだな。隆文、親父さんに感謝だぞ。休み返上でマニ割りしたエギマニ作ってくれたんだから」


「おう、仕事やって恩返しだ」


「あたしも。助かったわよ。それにしても雅子のお店に仕事頼みっぱなし。ええええ?ちょっとなにそれ?またあ?」


ピンポーンと百合ちゃんのスマートフォンに着信が有り、それを見た百合ちゃんが呆れたような声で言う


「百合ちゃん、どうしたの?」


「お兄ちゃんがおじいちゃんちの納屋から旧い6トン積みのボンネットダンプ見つけて公道復帰させたいんだって。雅子に整備お願いしたいからってあたしからよろしくだって」


「まさか?それってダンプをレストアしてくれってこと?」


「そうみたい」


「えええ?また大型車のレストアかあ?」


「あたしの家はレストア屋さん?普通の修理工場なんだけど」


レストアのお仕事がいっぱいくる僕らだった。

趣味全開の雅子たち

いいリフレッシュ


いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。

今回はここで更新します。

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