第三十三話 雅子がドリフト卒業して
オフロードに嵌ってドリフト卒業する雅子
TSカーはそのままでレースを楽しんでいる
熟成が進んだ隆文の車はどうなる?
「もちろん。今日は百合ちゃんは軽くてギヤがローギヤでクロスしている中型総輪駆動トラック乗って帰ってね。僕は元除雪車の総輪駆動のる。雅子はゴーゴーくん頼む」
「そうね。百合リンは軽くて排気が有効に使える方がいいもんね」
僕ら3人は雅子の総輪駆動2台を買って仮ナンバーで帰ってきた。
仕事が溜まってきた。
嬉しい悲鳴だった。
「お兄ちゃん。この総輪駆動2台はアジトに置こうね。お店に持って行くと大変だもんね」
「そうだね。百合ちゃん。運転どうもありがとう」
途中のコンビニで停まって休憩していた。
僕と雅子だけなら一気に行くのだが、山坂道に慣れていない百合ちゃんがいるので休憩をはさんでいた。
「雅子。これも面白いね。ギヤが低いのかわかんないけど、エンブレと排気がしっかり効いてリターダーなくても4速で降りれちゃうんだね」
「そうよ。百合リン。このトラック車重が大体3.5トンしかなくって軽いからね。これってリングちゃんの半分もないよ。このトラックの総重量でもリングちゃんの空車より軽いんだから」
「そうか。それだけ軽いのね。それじゃあリターダーいらないね」
「そうよ、ミッションもローギヤ。それなのに排気量はリングちゃんより多いからエンブレと排気があれば十分とまれるよ。後でターボつけるからブレーキ強化の一環でリターダーつけるよ」
「そうよね。停まるのは大事だよね。ねえ雅子。悪いけど明日ママのバスを2台引き取りいいかな?船底貸し出すから。ママに言っておくからパパの会社に寄ってね。あたしは明日は移動販売車で回るんで一緒行けないけど頼むね。ママはバスが来るの楽しみって言ってるよ」
「うん。お兄ちゃん。引き取りはあたしと二人で行った方がいいよね」
「そうだね。安全考えたらね。隆弘には明日の仕事の段取り頼もう。アルバイト君とで軽食用のキッチンカーの続きやる予定だったから」
「わかった。朝一に一旦会社寄ってからね。そのほうがいいでしょ」
「それなら隆弘にアジトに来てもらうよ。そのほうがいいよ。あ、そうか。今日はアジトで隆文とTSカーやってるよ。それに船底で渋滞の街中走るのはやばいよ」
「そうか、そうよね。危ないもんね」
「隆弘には悪いけど今日のうちに伝えちゃおう。整備部門の部長だよ。休みの日悪いけど話しておこう」
「そうしようね」
僕は雅子と車を交換してそのまま会社に寄って会社のKC-SH3FGEGで丸松建設から船底を引き取ってアジトに帰って来た。
雅子はどうやら百合ちゃんと久しぶりのおしゃべりデーになっているようでアジトできゃあきゃあおしゃべりしていた。
アジトに船底を置き場に入れるとガレージで隆文のTSカーを整備していた隆弘に、次の日に丸松建設からレストア頼まれたバスを引き取りに行くことになったことを伝えて、仕事の割り振りを頼むのと駐車場を2台分開けるように依頼の会話していた。
「それにしても悟瑠、丸松建設も嵌ったねえ。今度は旧車バスのレストアか。2台とは長期の仕事になるよな」
「うん。これは百合ちゃんのお母さんがはまったんだよ。しかも旧車好きだからもっと古いバスが欲しいって言って。どうも百合ちゃんのバスに乗ってバスもいいっておもってさらに古いバスってなったんだって。会社でも基礎上げの時に祝い酒振舞うだろ。そうしたら参加者を送る仕事も増えたんだって。百合ちゃんのお母さんはAE70のセダンも乗ってるんだぜ」
「おおお、そうだな。それにこのところ飲酒の取り締まり強化で自転車もNGだろ、そうなったら式典で祝い酒が飲めないってことになるんだよな」
「そう、今も2台のバスや時には百合ちゃんのマキちゃんが借り出されるって」
「へえそうか。そんなに人がいるの?」
「ああ。それは現場が狭くてぬかるんでいるとロングで重いラムちゃんは入っていけないでしょ。それに足場悪いとこに行ってスタックして動けなくなったら最低じゃん。デフロックは付けたけど」
「そうか、ロングのラムちゃんは重いのもあるから足場の悪いところには入っていけないよね」
「それもあって軽い9メートルクラスのバスがもう一台欲しいって言ってるところに見つかったんだよ。ボンネットの方は完全に母親の自分の趣味専用でどうも百合ちゃんのマキちゃんや武蔵君と同じ扱いみたいだよ。あの家族の好みがわかって面白いよ。百合ちゃんはマッチョなV8大好き。そのお兄さんは大排気量の多気筒のマニ割大好きで総輪駆動好き。それに古いの車も好き。お母さんは大の古い車好きでマニ割好きみたいだね、速さは二の次。百合ちゃんとお父さんは速いのが好き。サザン君いいねって言ってるんだぜ、それにダンプをターボにしてくれだろ。ボンネット6×4ダンプをパワーアップしたらニコニコだろ」
「そうか。そうだな。そうだ。雅子の総輪駆動はどうする?2台あるんだろ」
「それは2台ともここでエンジンおろして会社でオーバーホールしてこっちに持ってきてターボ組む方がいいな。中型総輪駆動トラックにはH06Cの部品が使えそうだ。そこまでなら会社で組める。元除雪車の総輪駆動にはルーシーちゃんのメニューを入れる。2台いじるには会社じゃ場所がない。レストアで3台やって並行でキッチンカー作ってその後にエンジン載せ替えだろ。合間に重機やリースのメンテナンス」
「だな。よし。明日は雅子と悟瑠はほぼ一日居ないんだね。スーパーのキッチンカー急がないとな」
「わりいな、ほんとは雅子には会社にいてもらって駐車場の段取りと部品手配してほしいんだよ、助手は隆文に頼みたいがちょっとな誘導が苦手なところもあってな。それにトレーラー交代であの坂道走れるのは隆弘と雅子位なんだよな」
「そうだなあ、隆文は大きいのはちょっと。それよりもそうか。もしかして隆文は空間認識力がちょっと低いのかも」
「そうか?牽引と大型取れるから良い方かとは思ってるけど」
「ああ、すまん。それ、俺や雅子と比べてっていう意味なんだ」
「ああ、雅子は母親譲りのセンスだよ。僕も驚くことがあるよ。比べちゃまずいって」
「そうだよな。隆文には言うに言えなくてだな。レースを見てると雅子はその空間認識力の良さで速いのかもって」
「なんでもそうだよ。その感覚の良さと三半規管のよさ、反射神経、集中力プラス頭の回転だな」
「そうかもな。雅子のすごさは天性だよなあ」
「それに僕よりも集中力が長持ちするのがいいけどな」
「そうだなあ、悟瑠は一発はめっちゃくっちゃつよいけど切れると腑抜けになってしまうんだよな」
「さすが付き合い長いからわかってるよな」
「その段取りで行こう。任せろ」
「悪いが行ってくるから。もしかすると百合ちゃんのお母さんがお店に来るかも。持って来たバスを見たいって」
「わかった。それは2往復目の時か、昼頃かな?」
「多分、社長の方は今週は事務所にいて仕事だとか言ってるよ。もしかすると一緒に来るかもね」
「そうかもなあ。明日は悟瑠の言う段取りで仕事して俺は軽食用のキッチンカーに入ってお弁当用キッチンカーは隆文にまとめ役やってもらおう。そうだな、元レントゲン車のレストアは完全にあの3人に任せよう。先にエンジンオーバーホールとエンジンルームの再生と言っておこう」
「頼んだよ。注文さばくからね」
その日の夕方に、隆弘と隆文はTSカーの整備を終えると積載に乗せて帰っていった。
同じく次の日仕事の百合ちゃんも武蔵君のドリュドリュドリュドリュというフルデュアルの排気音を響かせて帰って行った。
「お兄ちゃん、明日も7時に出発だよね」
「うん、そう。お寝坊さんしないでよ」
「大丈夫よ。お兄ちゃん行きはあたしが乗るから、帰りの積載状態はお願いね」
「もちろんだ。ばっちりリターダー2つ付けてあるからそれもフルに使って下るよ」
「早くねなきゃね」
「睡眠不足はお肌の大敵だぞ」
「アハハそうね。気をつけよ。じゃあお休み」
雅子はそう言って自分の部屋に戻って行った。
僕は明日の朝ご飯の準備して寝ていた。
次の日、天候に恵まれた僕らは雅子の運転で笠木さんのお店に向かっていた。
登りではアクセル全開にするとブバババとマニ割のたたきの音が響く。
雅子のドライビングセンスは抜群で全く不安がない。
下りでもしっかりエンブレ、排気、リターダーを使って下っていく
笠木さんのお店について
「おはようございます。バスを引き取りに来ました」
「お待ちしてました。先にDR15ですね。ブレーキの固着はないのでそのままウインチで引っ張れます。いいことにメカパーキングなのでいつでも使えます」
「いいですね。このウインチで引っ張るので」
「はい、ここまではうちのレッカーで」
そう言うと笠木さんはバスを倉庫からレッカーで引っ張ってきた。
ここのお店には屋根の付いた倉庫があってそこに希少車を仕舞っておく。
ちゃんと床からの湿気対策もしてあって錆が進みにくいようにしている。
百合ちゃんはそれを親に言ったのだろう。
ゆっくりとウインチで引き揚げ積んでいく。
「雅子、バスを船底に固定するぞ。」
「はいよ。ここね」
雅子と僕で固定ジグでバスを固定していく
8か所しっかり固定していた。
到着からバスをのせて固定する迄約1時間かかった。
「笠木さん、それでは午後にまた来ます」
「お待ちしてます」
僕らはゆっくりと船底を引っ張って実家のお店に向かっていた。
「お兄ちゃん。重そうだよね。排気音が言ってるよ」
「そうだね。雅子。バスのせたら総重量で30トンに近いからね。登りは結構苦手かも。4速がせいぜいでしょ。僕がオーバーホールして実力で355出てても」
急な登りでは全開でも4速迄しか使えずブバババと叩きの音を響かせて登坂車線を登っている。
「だよね。お兄ちゃん、2軸のトラクターにもターボ欲しいよね。さっきから4速で床までアクセルふみっぱ。それでも60キロ出るか出ないかよ」
「まあな。ほんとは3軸のトラクターでもいいと思ったけど届け出いるからね。16.5メートル超えちゃうんだよ」
「そうだよね。じゃあ次の引き取りは午後一番に向かおうね。おろすの隆弘さんと隆文に頼んでその間あたしたちはご飯ね。お弁当買って帰ろうよ」
「それならコンビニだな」
「うん、たまにはコンビニスイーツもいいかな?」
「いいことにそこのコンビニなら入れそう。大型用に停めるぞ。雅子、一緒に行こう」
雅子はコンビニの駐車場に頭から入ると一緒にお弁当とスイーツを買いに行った。
「どれがいいかなー。最近は美味しそうなのばっかりで迷っちゃう」
そう言ながらコンビニスイーツを選んでいる妹の佐野 雅子。
免許取って最初4年程は峠のバトラーだったが、負け無しのまま卒業してドリフト競技に参加。
対戦クラスで3回も優勝してしまった。
それに飽き足らず、TSカーを作ってTSカップのレースデビューもしてしまった24歳。
そこでも早速1勝あげていた。
雅子は親が経営している中古車販売店兼整備工場で経理、整備の段取り担当の副社長している。
雅子は僕といっしょに仲間内からアジトと呼ばれている祖父母が経営していたもと製材所に併設の家に住んでいるので親のお店には大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバスを改造した貨物車のU-RP210GAN改275ps仕様、またはエムエム君と呼んでいる、大型9メートルカテゴリーのバスを改造した貨物車の○アロスターMMのU-MM618J改の300ps仕様で通勤している。
この2台には元職場から買っている使用済みの食用油から作ったバイオ燃料を詰めていて、車に問題出ないか見ながら通勤している。
それは雅子は自分で営業して取引を始めた雅子の元職場のスーパーから調理に使った油をリサイクルして作ったバイオ燃料をうちのお店の車用に買うことにして使っても車に問題出ないか僕のコレクションのバスにも詰めて結果をみていた。
しばらく使っても問題が出なかったので、会社で使ってるトラクターやバス達、積載車にもつかっている。
雅子は時々僕の大型バスコレクションの中から乗ってみたいバスもバッテリー上がり防止と言って乗る。
家業についてから大型2種免許と牽引免許を取っているので自分で大型車を運転して大きな市内にある実家が経営している中古車版売店兼整備工場に通える。
必要ならトレーラーを運転して買い付けた車の引き取りもするのだ。
雅子は、車の整備も好きなので整備士の資格を取っている。
時には整備工場に来て納車前のお客さんの車をメンテすることもある。
お店の工場が立て込んでいるときはアジトに併設してあるガレージまでお客さんの車を積載に乗せて来てメンテすることもある。
雅子は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、在学中に商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級を取っていて事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっている。
その雅子は進学せずに高校卒業後すぐ入社したスーパーでわずか4年チョイという異例の速さで係長まで出世して、同期からは初の高卒30代女性役員誕生かとうわさされた。
しかし、当の雅子はいろんな車に乗る仕事したいと言ってあっさりスーパーを退職して家業についてしまった。
なぜなら雅子は出世することに全く眼中になく車好き、運転好きなので1日中事務所で仕事するのは性に合わないというのだ。
家業なら買い付けとか、売却、納車でいろいろな車に乗れるのでそれが楽しみだと言っていたのだった。
雅子は家業に従事してからは運転免許の他に危険物、整備士の二級免許、牽引免許も取ってしまったほどの車好きだ。
雅子はこのところGHATGTPやロボタイズのようなプログラム組むのも好きなこともあって自分のドリ車のエンジンの制御コンピューターも自分でプログラム組んでいた。
僕は雅子にエンジンを載せ替えたトラックのBCMのフルコンのセッティングをお願いしたらきちんと仕上げてくれた。
それに最新の点検整備機器も扱えるので整備の面でも助かっている
他には実家の規模に合わせたいろんな経理システムを組んでいて、両親も大助かりといっている。
何せ、しっかりとお店の財務状況がわかるようなソフトを作って管理しているので、今までのように確定申告のときにバタバタだった準備作業が雅子の組んだソフトのお陰ですべてデータとして蓄積されていて簡単にネット上で確定申告できるようになっている。
確定申告の時期は例年何日も夜なべして伝票整理、資料記入していたが、全くすることがないのだった。
部品の発注も整備の受注もネット上でできるようにしてあるので電話での対応も減っていてその分営業に時間がさけると営業担当の父親と母親は喜んでいるし、僕もネットで事前に不具合の状況を画像等でもらっているので修理箇所の予測がつけやすくなって仕事が早く進むと喜んでいる。
雅子は僕の古くからの友人で僕んちの整備部門の部長で整備工場の副工場長をやっている隆弘がリーダーを務めるチームいて、そこでは僕と共にサブリーダーになっている。
ホームグラウンドではいまだに断トツトップの速さた。
新たにチームに加入してきた後輩たちの運転指導もするようになっていた。
雅子が得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入ってアクセル全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに僕と雅子しかいない。
それにサーキットを走らせたタイムもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。
ドリ車を作ってでた競技で出場5回で3回の優勝してしまったほどの出来だった。
しかも優勝した3回はすべてドリフトとレース両方でトップという完全優勝だったのだ。
帰りの積載車の中ではもらったトロフィーを持って嬉しそうに笑っていて、やっぱり表彰台は真ん中がいいといっていた。
今はTSカーでレースしたいと言ってデビューしているのでこれも会社PRのためにスポンサーしていた。
このところは大型の総輪駆動に興味を示して自分で車を買ってきている。
エンジンからサスペンションまでいじってしまうのだろう。
オフロードに詳しい隆弘がいるのでサスペンションのセッティングも勉強できてしまいそうだ。
雅子の運転はとてもスムーズで隣に乗るとついつい寝てしまうくらいだ。
普段は車を労って走らせているのがよく分かる。
かつては大型バスを使ったスムーズドライブ競争でもバスドライバーや、トラックドライバーのプロに勝ってしまうほどのスムーズさなのだ。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の3月生まれの27歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して6年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今は家業の中古車販売店、整備工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備もしていて、時には中古車の買い取り査定もする。
大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。
また、○ントリペアも勉強して資格もとった。
それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。
大型免許は大学在学中にとってさらに就職してから直ぐにけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。
キャリアトレーラーも中古車で買ったものでもある。
2級整備士の資格も取ってあるので運行の管理士になれるのもありバスも持ちたい放題だ。
それを良いことに中古だが、観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
妹の雅子がメインで使っているバス含めて全部ターボにしてパワーアップと同時に黒煙対策している。
特に唯一のKL-規制対応のゴーゴーくんにはDPDが付いているのでエンジン本体での黒煙を減らしておきたかったのだ。
僕と雅子で持っている11台のバスにはパワーアップに対応して止まる方も強化としてリターダーを追加している。
家業の整備工場は大型車の整備もするようになった関係で場所がいる。
そのために小型車のオイル交換等の軽整備は元々隆弘の親が経営していた整備工場に機器を移していてそっちでやることにした。
他に整備する場所としてはアジトのガレージでやることになったのだ。
アジトには車両をいじる設備として、すべて中古ではあるが、大型車対応のボードオンリフトが2機、大型エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、板金道具一式、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、油圧ベンダー&カッター、ボール盤、旋盤、フライス盤、20トン対応天井クレーン、ワゴンしき工具箱、タイヤチェンジャー、バランサーまでそろっているので、メンテどころか改造迄できてしまう。
事実、ドリ車とTSカーはここでどんガラの状態から作り上げたのだ。
もっとも、スポット溶接機、レーザー溶接機、タイヤチェンジャー以外は祖父が現役の頃、林業で使う道具や木材運搬車等が壊れると、そこで修理していたのでそれを受け継いだのだ。
祖父も大型免許と牽引免許を持っているのだった。
整備や改造にも活躍する2000トン油圧プレスは材木が反ってしまったときの修正用兼圧縮用でかなり大きいのだ。
これがあるおかげで改造が楽なのは言うまでもない
油圧牽引機は木材で変形した運搬用トレーラーを直すためのものでその能力は200トンと聞いた。
それにアジトの敷地は木材搬送のために大型トレーラーが20台くらい悠々と停められる広さがあり、父親がこの場所を借りて中古車版売店を始めた場所でもある。
ここもお店の整備工場として登録してある。
僕らの両親はどちらも車大好きでそれが高じて中古車屋兼整備工場を経営している。
父親は元は大型車整備メインのディーラーにいたが、結婚を機に独立してこの店を立ち上げた。
このところ僕と雅子のバスコレクション趣味に感化されたのか中古のバスを3台も買ってきて全部をマニ割仕様して、それに乗ってどこどこ音をさせて営業に行ってしまっている。
それに会社のトラクターも若いころやっていた技術を使ってマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーに自分で改造してしまうほどのマニ割マニアっぷりを発揮している。
エギマニは自分でマニ割仕様をステンレスパイプをベンダーを使って手曲げで作ってしまうほどの腕を持っていた。
若いころに大型車メインの整備工場に勤めていた時にはマニ割車を100台以上作ってはお客さんに収めていた。
トータルでマニ割車を何台作ったか覚えていないというマニ割マエストロでもある。
その業界ではいまだに名の知れた存在で旧車のマニ割作って欲しいという発注がいまだに来る。
そんな父親なので、整備工場では僕が工場長になったのを良いことに運送会社をやっている隆弘の親が経営していた整備工場を買い取り本格的に大型車も整備するようになった。
加えて父親は雅子の親友の百合ちゃんの父親が経営する建設会社の重機の整備も引き受けた。
以前建設会社の重機の整備をやっていた会社が廃業して、重機の整備が出来ないと困っていた話を聞いてその会社の重機の整備も請け負った。
親父は困った人見ると黙っていられないらしい。
母親の独身の頃はドリフト競技、ラリーに出ていたという位の運転好きだ。
かなり上手く何回か入賞する位だったらしい。
競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時大型車メインの整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。
乗用車の整備工場では見てくれなかったが、大型車メインの工場なのにうちの父親が仕事を引き受けていたのだ
この両親を見れば僕と雅子が車大好き、運転大好き、競技に出たいとなってしまうのは当然だろう。
雅子の親友で同級生の松尾 百合ちゃんも同じく車好きでもある
百合ちゃんは雅子と同じ地元の商業高校を2番目の成績で卒業して雅子と同じスーパーに入った。
販売部に配属されて仕事していたが、雅子が辞めたので後任に引き継いだがやり切れずその主任として経理部に兼務で来たらしい。
販売部にいたときに提案した買い物難民救済用の移動販売車の成果が認められて主任になって今はキッチンカーの担当もしている。
百合ちゃんの一家も車好きで車を探してくれと頼まれたのだ。
それに親の整備工場を拡張した時に百合ちゃんの親が経営している建設会社に工事をやってもらった。
その会社で使っている建設用の重機やトラックをメンテナンスしていた工場が廃業したため、うちの工場で整備することになったのだ。
もう一つ、百合ちゃんはスーパーで使っているリース車両の管理もやっていて分散して各店舗でメンテするようにした雅子後任の方法ではメンテがおろそかになるのがわかって、本社で一括管理することにしてそのメンテナンスをうちの会社にお願いしてきたのだ。
その仕事も請け負ったので人員も増強したがそれを上回る仕事量で嬉しい悲鳴を上げている状態だ。
「お兄ちゃん、これとこれ買って帰ろ。そうか。ねえお兄ちゃん悪いけど先にご飯食べて。サミットまであたしが走る。下りはお願いするからその時にあたしがご飯食べる。バスをおろしたら取りに向かうからね」
「OK。そうしよう」
僕は助手席でお弁当を食べていた。
室内にはバババババというマニ割独特の叩きの音が響く
サミットについて雅子と交代する。
エンブレ、排気、リターダーをフルに駆使して下って会社についた。
船底のウインチでおろしたリアエンジンバスをレッカーでまずピットに入れてエンジンをおろす準備していた。
リアエンジンバスを降ろした後、直ぐに僕らは笠木さんのお店にいってボンネットバスを引き取ってきてこれは平置きできるところに置いて船底を返しに行く準備していると、百合ちゃんのお母さんが来ていてリアエンジンバスを見ていた。
「佐野さん、年式相応の痛み方ね。リアエンジンバスはモノコックですよね」
「はい、このリアエンジンバスから先に直します。今は元レントゲン車をやってますので、そっちが終わってからになりますが、スーパーのキッチンカーとエンジン換装早く終われば早く手を付けます」
「はい、ありがとうございます。百合のお仕事なのね。順番だからね。ボンネットバスに手を付けるとき言ってね」
「はい、エンジンはリアエンジンバスと一緒にやります。同じエンジンなので一緒にオーバーホールしたほうがいいんです。自力で動けるとこちらも助かりますんで」
「そうですね。お願いしますね」
「船底返しに行きますんでよろしくお願いいたします」
「そうね。場所開けるように言っておきます」
そう言って自分のAE70に乗って帰って行った。
僕は船底を引っ張って返しに行った。
その週は何とか軽食用のキッチンカーとお弁当用キッチンカーを仕上げてスーパーに納車していたのだ。
やっと2連休が取れた週末。僕と雅子、隆弘、隆文とチームの仲間は富士山の近くのサーキットに来ていた。
TSカーのレースがあるのだった。
「やっと仕上がって来たぞ。今度は雅子と勝負だ」
「いいよ。今日もがっちりね」
「雅子は好調だな」
「あたしのサンマルちゃんも仕上がって来たからね。今日は出来るだけ走ってみるから。クリアラップ取れなかったのも時の運だから」
そう言っている雅子。
いう通り予選の結果はクリアラップがうまく取れず2番手からのスタートだった。
車の熟成が進んだ隆文もクリアラップこそうまく取れなかったが雅子の後ろの4番手のスタートだった。
「クラス1に引っかかちまった。とにかく行ってみるよ」
隆文も言っている
「安藤君、大石君頼んだよ。テレメの情報見て」
「はい」
僕らの車たちには自動で車の状態を送る装置が着いている。
具体的には水温、油温、レブカウンター、4輪のタイヤの空気圧だ
ピーンとなってブルッ、ブルルルンと各車のエンジンが始動。
プオオオオーンと各車のエギゾーストノートが響き渡るフォーメーションラップがスタートした。
「よし、スタートだ」
「悟瑠。雅子のエンジンは?10000がリミットか?」
「そう、出力は9500で出るようにしたからちょっと下がないかもな」
「なるほど」
「ここが北関東なら中速のカムを組んだエンジンにするよ」
「さすがだな。高回転重視のエンジンか」
「雅子なら乗りこなせるよ。ここはストレートの速いほうが勝ちだから」
「そうだけどな。空力じゃあ隆文のはちょっとな」
「仕方あるまい」
と言っていると雅子は抜こうとするよりもまずは3番手以降を離す作戦に出た。
トップを走るのはこの前のエキシビジョンで雅子に抜かれた車だった。
この車はギヤ比を見直して来たらしく雅子の車のマイクが拾う排気音から想像すると高速のつながりを重視したのか?2速と3速のところよりも3速、4速、のギヤ比をクロスさせてきたようだ。
雅子はタイヤを温存しているようでがっちり攻めるというよりも少し引いた走りだ。
「注目のストレートだぞ」
「ああ、雅子は10000迄行くだろう。雅子には言ってないが10500までなら大丈夫だ。軽量合金のプッシュロッドと鍛造アルミの削り出しタペット使ってる」
「奇跡のプッシュロッドとはよく言ったものだな」
「そう思うよ」
雅子は前についていく、今のところ9000でシフトアップしているが離されることはない。
どうやらパワーでは雅子の車が勝っているようだ。
「後は雅子がどこで仕掛けるかだな。5周以内は無いと思うけど」
「まあ、そこはタイミング見てるよ。隆弘、隆文はどうもパワーに泣かされているな。ストレートはスリップでついていくのがぎりか?」
「うーん、やっぱりさ高回転の伸びが違う。見てると雅子のエンジンは9500超えても伸びるけどこっちは9000がいいところ。500回転以上の差がある。その分はきついな」
「表彰台はいけそうだけどな。多分3番手は重量で先にタイヤ使い切って失速するよ」
「うん、隆文もタイヤは温存してるな」
見ていると隆文は遅くならない程度にプッシュしていた。
3番手のタイヤを消耗させる作戦だろう。
「おっと、インをさしに行ったぞ」
「上手く抑えたな」
「隆文は落ち着いてるぞ」
隆文はブロックされても焦らず隙をつくような走りをしている。
後との差も見ていてつめられるようなことはないようにしている。
「悟瑠。雅子が不気味だな」
「うん、そこは何か狙ってるところがあるんだよ。多分だけど残り5周あたりで、ええええ?今行くか?」
ストレートの終わりで雅子が仕掛け一気に躱す。
この周回はトップが油断したのか、なすすべなく抜かれていた。
「そうか。わかったぞ。雅子はトップの相当アンダーに設定してるのを見たんだ。そこに付け入ったな」
「そうか。相手のターンインが終わってないならそこでアンダーになって曲がれないってことか」
「そう。踏んでいくこと重視のセッティングと読んで、ターンインの前に仕掛けたんだよ」
「すげえな。相手のセッティング見抜くとは」
「そこが凄いと、思う。おおおお、隆文が行ったぞ」
レースが中盤の終わりの13周目のこと隆文がストレートの終わりでインに飛び込んで一気に3番手を躱す。
『よし、雅子。いくぞ』
「隆文、水温、油温正常。9500迄いいぞ」
『おう、兄貴2番手とは?」
「5秒差だ、行ける」
『タイヤよし、行くぞ』
「悟瑠、隆文は追いつけるかな」
「うーん、むずいかもな。2番手には追い付いても雅子がこのペースなら無理だ。雅子の方が速い」
「仕方ねーな。隆文も成長したよ。2番どうした?雅子に離されてる。ペース落としてる」
「あ、もしかするとオーバーヒートかも」
「そうか、何が何でも2番手キープだな」
「だな。隆文はファイナルラップで追いつく。あっちは一周なら無理するだろう」
「そうか、そのためにクーリングラップで冷やしてるんだな。ストレートの長さあるからそこで冷やせばインフィールドで隆文が来ても攻めれる」
「そうだな。雅子を追いかけるのはやめて順目をキープか」
「ドライバーはベテランだろうな。無理しない」
そう言っているとレースはファイナルラップなった。
電光掲示板にファイナルラップと表示された。
「隆文やるなー、2番手に追いついたぜ」
「インフィールドは2番手は必死の走りになるだろ。がっちりタイヤを温存してる」
「そうだな。隆文はどうもタイヤ使い切ってゴールの読みだな」
見ていると隆文はまずヘアピンで仕掛けた。
しっかり締め走る二番手。
「隆文は多分、シケインで仕掛ける。今のは相手のタイヤを見たんだよ」
「悟瑠さすがだな。大Rを全開で行ってそこの突込みで勝負か?」
「そうだな。とはいっても一発勝負だ。多分隆文のタイヤも限界だ」
「だろうな。そこに賭けたな」
トップに立った雅子は危なげなく逃げ切ってぶっちぎりのトップでゴールインしていた。
そこから遅れることおよそ15秒。
「おおお、アウトから?」
「ああ、インを開けなかったな」
「最短距離いけるインが有利なんだが」
並走したまま最終コーナーを抜けてストレートへの立ち上がり
2台はともに譲らず全開
『ふけろ。4k』
隆文の声
「うーん、惜しい」
『鼻の差か』
わずかボンネット半分の差もなく逃げ切ったのは予選トップの車だった。
『くっそー。抜けなかったか』
「隆文もよくやったな。3番手か」
「そうだな。表彰台じゃん」
「だな」
車を片付け積載に積んで帰る時、迷いを振り切った表情で雅子が言う
「お兄ちゃん、あたし、ドリ卒業するよ。今度はオフロードやってみたいな。レースじゃなくてゆっくりでいいんだ。レースはTSでドリ車は百合リンに売っちゃうけどいいよね」
「いいよ。そのうち百合ちゃんもオフロードに来そうだな」
「あはは、そうかもね。親のボンネット4×4ダンプを分捕ってあたしも走るって言って」
「そうだね。オフロードのことは走りも車も隆弘にしっかり聞いてくれ」
「うん、ねえ、お兄ちゃんもやろうよ。実はそのために2台買ったんだから」
「そうなの?一緒にオフロードの勉強もいいかもな」
僕もたまにはオフロードを走るのもいいかと思うようになっていたのだった。
「楽しそうでいいでしょ」
「いいかもな」
やはり天性のドライビングセンスの雅子
次は流行りオフロード
TSカーではなかなか勝てない隆文は次どうする?
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。
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