第三十二話 雅子が総輪駆動に嵌って
総輪駆動とオフロードに興味示した雅子
運転大好きなのでつい嵌って車買っちゃった
もう一人バスに嵌った人もいてそっちで悟瑠は大変
僕らは洗車場で2台の車の泥を落とすと4軸レッカーに買ったエンジンとミッションを積んでお店に帰ってきていた。
帰り道、キャブオーバー4WDは雅子が運転してきたのだが、リターダーひとつでも排気とシフトダウンを使って全く危なげなく急坂の連続を下ってきていたのだった。
「お兄ちゃん、普段ターボでパワーあるのに乗ってるとつい比べちゃうね。生ってちょっとパワー的には物足りないけどレスポンスはめっちゃいいのね。それにマニ割の鳴き重視もいいね。なんか総輪駆動でオフロードもいいなあ、って思っちゃった。隆弘さんに聞こうかな。総輪駆動探しちゃえ」
お店でにっこりしながら言う雅子だった。
それから雅子は時間を見つけると総輪駆動を探していた。
休みの前々日のこと
「お兄ちゃん、総輪駆動見つけちゃった。除雪隊のパトロール車上がりのトラック、これも笠木さんのお店にあるって」
「笠木さんのお店はすごいね。ネットワーク優秀だよ。直ぐ車見つけるね」
「そうね、お兄ちゃん。見つけたのはちょっと古いけどこれが良いかなって思うの。中型の2軸で大きさも手ごろだし。型式はU-FT3HGAA」
「中型総輪駆動トラックか、これはいいじゃん。H07DのNAで195psだね、ターボにするか考えよう。ミッションを大型用にすれば285psの75キロは行ける」
「でもさ、これミッションが5MTなんだよ。これだと実質4MTだよね。高速は無理かな?もう一台U-FZ2FJCAも見つけたの。これは除雪車あがり。これもミッションは5MT」
「雅子は両方欲しいとか言うんだろ」
「あはは、バレちゃった?これってルーシーちゃんとおなじエンジンなんだよ。ミッションの強度を考えると485psは無理かな?」
「大型元除雪車総輪駆動はミッションの強度考えるとね、あんまりパワー上げられないよ。会社の2軸レッカーには8TDっていうハイパワーエンジンがあったし、ミッションは丈夫なほうだからそのミッション使ってターボに出来たんだよ。大型元除雪車総輪駆動の方は雅子が乗る前提でKL規制のF21Cのミッションにして450psの150キロがいいところかなあ」
「それでいいからやって。340と195じゃあパワーが不足」
「任せろ。部品は何とかする。中型総輪駆動トラックはH06Cの部品を使ってターピンはJ08のを使っちゃう・インタークーラーはp09の300ps用、ポンプもp09の300ps用使う。クラッチとミッションは大型元除雪車総輪駆動から外したのを使う」
「もう、プランあるのね。明日見てこよ。笠木さんのお店には言っておくから」
「わかった。もしかしたらそのまま持って帰ってくるには3人必要か。かといって隆弘にはなあ。2人じゃ1日がかりだよ」
「そうか、それなら明後日にしよ。そうすればお店がお休みだから1日使える。2回行けばいいじゃん」
「往復するか?」
「うん、そうしようかなって思うの。」
「笠木さんに言っとくか」
「あたしが言っておくよ、あたしの車だし」
「行くなら久しぶりにゴーゴーくんだな。パワーあると長距離は楽でいいよ。このところTSカーで忙しい隆弘には頼めないな」
「うん、2台ともあたしのだからね。え?あれ?百合リン?何かな?」
「どうした?百合ちゃん?」
「百合リンがなんか相談あるんだって。明日うちに来たいんだって」
「まあいいけど」
「じゃあ、明日の夜来るっていうからアジトにお泊まりね」
「OK」
僕は丸松建設にテストが終わったキャブオーバー4WDを納め、性能をユーザーの専務に説明すると雅子と二人で木材倉庫に眠っていた元レントゲン車を船底に積んで帰って来た。
「隆弘。これもやるぞ。後はキャブオーバーバスが待ってるよ。」
「すげえなあ、次から次に仕事が来る。そうだ。悟瑠、雅子が何かオフロード行きたいとか言ってるぞ」
「ああ、レースするかは別として総輪駆動のトラックに興味示したよ。レッカーじゃないけど2台車見つけたとか言ってる。ホロつけてショートのトラックにするとかいってるよ。ラリーのカミオンカーみたいにだって」
「ええええ?そうか。なるほどね。それで俺にオフロード教えろってことか?」
「そうらしい。雅子は何でも乗りたいっていう方だから」
「仕方ねーなー。わかったよ。俺にクロカン車が今はねーぞ。あっても悟瑠のロックンだろ」
「練習はさっき言った雅子が笠木さんのお店で買うって言ってる車で頼む、足回りとかいいアドバイスあれば頼むぜ」
「ああ、この前に行ったお店か。いろんな車あったもんな」
「2台も見つけて買ってくる気満々」
「それじゃあねえ。オフロード乗りたいから走りかた教えろって言うわけだ」
「だろ、雅子は一度走り始めるとブレーキ効かないから」
「わかったよ。そうかもしかしてあのお店のコースで嵌ったか?」
「その通り。見事に嵌ったな」
「はあああ、わかったよ。任せろ、教えるから。でもな、雅子はオフロードもすぐ俺より上手くなりそうじゃん」
「あはは、天性のドライビングセンスだからなあ」
「それは俺も認める。やってみせるとその通りできちゃう」
「それだけじゃないぜ。あのお店で救援にマッドに入っただろ、マッドを総輪駆動で走るの初めてなんだよ。それでもちゃんと救援しきった。僕の予想の遥かに上だった」
「えええ?そうなの?初めてでか?天性の運転センスだな」
「だろ。まあいいや。頼むぜ」
「おう。ところでこの元レントゲン車は今は自走無理なんだろ。おろすには小型のレッカーでゆっくり引っ張るか?」
「だな。船底のウインチ使ってブレーキかけながらゆっくりおろす。おろしたらフォークで前から引っ張ってピットだな。先にエンジンおろして整備したほうがいいな。自力で動ければ楽だろう」
この工場はいいことにお客さんの車を出し入れしやすいようにピットやリフトには工場のどっちからでも入るように両面にシャッターをつける工夫がされている。
レッカー車で引っ張ったままでも整備の場所に入れられるようにするためなのだ。
「そうだな。自力で動けるようにした方がいいからな」
「頼むぜ。今はお弁当用キッチンカーを先に仕上げてくれ。よろしくたのむぜ」
「任せろ。こんだけ仕事あると忙しいけど安心だな」
「ああ、ありがたいよ」
僕らはその日も軽食用のキッチンカーの製作と、後2軸引摺りローリーの名義変更を並行で流して、その合間に移動販売車の大型ノンステロングに買って来たRG8エンジンを積むためにエンジンルームの構造が似ていて、実際にV8を積んでいる車種もある獅子丸君と実際路線のシャシにV8を積んでいるニイナちゃんを調べていた。
今日の主な仕事は僕とアルバイト君で軽食用のキッチンカーの部品をそろえて先にサスをエアサスをセットして、構造変更の申請をだしてエアサスへ改造した公認を取る準備するのだ。
サスペンションの変更理由は先に納車した小型キッチンカーと同じくこれもキッチンカーなのでフロアの水平を荷物の有り無し関係無くいつでも保つ必要あるためとしていた。
軽食用のキッチンカーの6BGTエンジンは確認すると幸いにも手入れが良く、しかも一度全部ばらした跡があったので油脂類の漏れチェックと交換で済んだのは納期短縮になってよかったのだ。
夜になって先に僕がニイナちゃんでアジトに帰ってくるとドリュドリュドリュドリュというV8フルデュアルの排気音が聞こえてきた、百合ちゃんが武蔵君でアジトの駐車場に入って来た。
その後ろから雅子が獅子丸君で入って来た。
3人で夕食を食べながら百合ちゃんから話を聞くと
「実はママもバスに嵌ったみたいで自分で笠木さんのお店に頼んでバスを見つけてもらったんです。ボロボロでもいいって言うんで。っていうか、ママは実は旧車大好きなの。それを自分でもレストアするのが」
「はい?」
「それで見つかったのはDR15の最終モデル、古いんだけど。激レアなんでママが気に入っちゃった。F重のR13モノコック、自家用の前ワンドア」
「えええ?それって、そのバスが遅いと言われてもターボは無理だよ。エンジンもミッションも予備無いから。オイルブレーキでエアアシスト無いからね」
「うん、いいよ。それにもう一台DB100も見つかって。DR15もDB100も74年式」
「ええええ?はあああ。これまた古すぎでしょ。どっちも最終型」
「百合リン。いきなり2台も、買うの?」
「うん。両方とも今は自走出来ないから持ってくるには船底いるんだけど、それは会社の貸し出すから明日お店で見てよかったら船底乗せて引っ張ってくれない」
「わかったよ。船底にはウインチあったよね。いいよ。明日は笠木さんのお店に行くから。バスを見よう。船底は2軸トラクターしか引っ張って走れないから峠超えはゆっくり走るよ。2往復だな」
「やったね。雅子は総輪駆動買うんでしょ。あたしも明日は雅子の車の回送手伝うから。笠木さんが言ってた。仮ナン持ってきてって。無いなら貸すって。明後日ママのバス引き取る時に返せばいいから」
「お兄ちゃん。相談ってこれだって。聞いて困ったわよ。お店に置き場作らなきゃ。仮ナンは2台分持って来たけど」
「はああ、完全にうちはレストア屋になってるよ。DR15のFのR13なら直せる、部品なんとかするよ。DB100の純正ボディはできるかなあ?」
「百合リン、この2台はどうすんの?個人用?」
「ううん。一台は会社のバスにするの。建物とかの完成披露の送迎用。車で来られちゃ祝い酒飲めないじゃん。その時使うの」
「はあああ、そういうこと?」
「そうよ。最高でしょ。レトロな激レアバスで送迎するの。ラムちゃんもレトロでいいけどね、狭いところはやっぱりコンパクトなほうがいいでしょ。リングちゃんもあるけど現場で大忙しだから使えないの」
「はあああ」
「まあいいや、とにかく明日は笠木さんのお店に行こう。百合リン、明日はゴーゴーくんで行くからね。空で行くから馬鹿っぱやよ」
「良いよ。ママはあたしにバスを任せた状態。それに普段バスを運転するのは新しく入ってきた狩野さん。ママは今は狩野さんに聞いて練習中。貨物のってただけあってめっちゃうまいよ」
「え?狩野さん?」
「うん、なんか隣の県で働いていたんだけど会社が規模縮小するって言ったんでやめてうちに来たの。バス乗れる人を社員募集してたのよ。狩野さんって自前でダンプ持ってるんで今は運転専用でお願いしてる。朝に職人を運んだらその後はダンプで土砂運び、夕方職人の撤収。ママは現場にお弁当配るんだけど早くキッチンカー作って売りに来てとかいってるよ」
「あああ、世間は狭い。狩野さんね」
「え?雅子は狩野さんって知ってるの?」
「うん。奥多〇ロードマッチョのメンバーだったの。スムーズドライブバトルしたことがあるよ」
「アハハ、そうなのね。道理で雅子のことって言うか佐野自動車販売って知ってると思ったのよね」
「そう言うこと。狩野さんのダンプをマニ割りしたのパパだよ」
「えええ?世間は狭い」
「でしょ。じゃあ、百合ちゃん。明日は9時に笠木さんのお店につくようにいくからね」
「うん」
次の日、僕んちのお店が休みな僕らはスーパーのお休みの日を合わせた百合ちゃんと一緒に雅子の運転でゴーゴーくんに乗って笠木さんのお店に向かっていた。
「雅子って上手いよね。こんなにスムーズに走るのすっごいじゃん」
「今日は空だから登りもめっちゃ速いよ。だいたいだけど車重とトルクを20で割ると600キロのボディに10キロのトルク。約30psだけどNAの軽は無理、それにリッターカーのNAも無理ね」
そう言ながらフルサイズのバスで急坂を登る妹の佐野 雅子。
免許取って最初4年は峠のバトラーだったが、負け無しのまま卒業してドリフト競技に参加。
対戦クラスで3回も優勝してしまった。
次からはクラスを変えて出場すると言っている。
それに飽き足らず、TSカーを作ってTSカップのレースデビューもしてしまった24歳。
普段は親が経営している中古車販売店兼整備工場で経理、整備の段取り担当の副社長している。
お店には大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバスを改造した貨物車のU-RP210GAN改275ps仕様、またはエムエム君と呼んでいるこれまたバスを改造した貨物車の○アロスターMMのU-MM618J改の300ps仕様に元職場から買っているバイオ燃料を詰めて問題ないか見ながら通勤している。
時々、僕の大型バスコレクションの中から乗ってみたいバスをバッテリー上がり防止と言って乗るのだ。
家業についてから大型2種免許と牽引免許を取っているので自分で大型車を運転して僕らが住んでいるアジトと言われている元祖父母の家から大きな市内にある実家が経営している中古車版売店兼整備工場に通える。
必要ならトレーラーを運転して買い付けた車の引き取りもするのだ。
いま、雅子は自分で営業して取引を始めた雅子の元職場のスーパーから調理に使った油をリサイクルして作ったバイオ燃料を買うことにして問題ないか僕のコレクションのバスにも詰めて結果をみている。
今のところ問題なく、そのうちに会社で使ってるトラクターやバス達、積載車にも使う予定だ。
雅子の中古車店での仕事は車両の仕入れ、売却、メンテナンス部品手配や整備した車の納車が主だが、整備も好きで整備士の資格を取っているので、時には整備工場に来て納車前のお客さんの車をメンテすることもある。
工場が立て込んでいるときはアジトと仲間たちから呼ばれている普段僕と雅子が住んでいる元製材工場を改装したガレージまでお客さんの車を積載に乗せて来てメンテすることもある。
雅子は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、在学中に商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級を取っていて事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっている。
その雅子は進学せずに高校卒業後すぐ入社したスーパーでわずか4年チョイという異例の速さで係長まで出世して、同期からは初の高卒30代女性役員誕生かとうわさされた。
しかし、当の雅子はいろんな車に乗る仕事したいと言ってあっさりスーパーを退職して家業についてしまった。
なぜなら雅子はスーパーでは出世することに全く眼中になく車好き、運転好きなので1日中事務所で仕事するのは性に合わないというのだ。
家業なら買い付けとか、売却、納車でいろいろな車に乗れるのでそれが楽しみだと言っていたのだった。
雅子は家業に従事してからは運転免許の他に危険物、整備士の二級免許、牽引免許も取ってしまったほどの車好きだ。
雅子はこのところGHATGTPやロボタイズのようなプログラム組むのも好きなこともあって自分のドリ車のエンジンの制御コンピューターも自分でプログラム組んでいた。
僕は雅子にエンジンを載せ替えたトラックのBCMのフルコンのセッティングをお願いしたらきちんと仕上げてくれた。
それに最新の点検整備機器も扱えるので整備の面でも助かっている
他には実家の規模に合わせたいろんな経理システムを組んでいて、両親も大助かりといっている。
何せ、しっかりとお店の財務状況がわかるようなソフトを作って管理しているので、今までのように確定申告のときにバタバタだった準備作業が雅子の組んだソフトのお陰ですべてデータとして蓄積されていて簡単にネット上で確定申告できるようになっている。
確定申告の時期は例年何日も夜なべして伝票整理、資料記入していたが、全くすることがないのだった。
部品の発注も整備の受注もネット上でできるようにしてあるので電話での対応も減っていてその分営業に時間がさけると営業担当の父親と母親は喜んでいるし、僕もネットで事前に不具合の状況を画像等でもらっているので修理箇所の予測がつけやすくなって仕事が早く進むと喜んでいる。
雅子は僕の古くからの友人で整備工場の副工場長をやっている隆弘がリーダーを務めるチームいて、そこでは僕と共にサブリーダーになっている。
ホームグラウンドではいまだに断トツトップの速さた。
新たにチームに加入してきた後輩たちの運転指導もするようになっていた。
雅子が得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入ってアクセル全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに僕と雅子しかいない。
それにサーキットを走らせたタイムもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。
ドリ車を作ってでた競技で出場5回で3回の優勝してしまったほどの出来だった。
しかも優勝した3回はすべてドリフトとレース両方でトップという完全優勝だったのだ。
帰りの積載車の中ではもらったトロフィーを持って嬉しそうに笑っていて、やっぱり表彰台は真ん中がいいといっていた。
次はTSカーでレースしたいと言ってデビューしているのでこれも会社PRのためにスポンサーすることにしていた。
このところは大型の総輪駆動に興味を示して自分で車を持とうとしている。
雅子の普段の運転はとてもスムーズで隣に乗るとついつい寝てしまうくらいだ。
普段は車を労って走らせているのがよく分かる。
かつては大型バスを使ったスムーズドライブ競争でもバスドライバーや、トラックドライバーのプロに勝ってしまうほどのスムーズさなのだ。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の3月生まれの27歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して6年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今は家業の中古車販売店、整備工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備もしていて、時には中古車の買い取り査定もする。
大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。
また、○ントリペアも勉強して資格もとった。
それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。
大型免許は大学在学中にとってさらに就職してから直ぐにけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。
キャリアトレーラーも中古車で買ったものでもある。
2級整備士の資格も取ってあるので運行の管理士になれるのもありバスも持ちたい放題だ。
それを良いことに中古だが、観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
妹の雅子がメインで使っているバス含めて全部ターボにしてパワーアップと同時に黒煙対策している。
特に唯一のKL-規制対応のゴーゴーくんはDPDが付いているのでエンジン本体での黒煙を減らしておきたかったのだ。
11台のバスにはパワーアップに対応して止まる方も強化としてリターダーを追加している。
家業の整備工場は大型車の整備もするようになった関係で場所がいる。
そのために小型車のオイル交換等の軽整備は元々隆弘の親が経営していた整備工場に機器を移していてそっちでやることにした。
他に整備する場所としてはアジトと仲間から呼ばれている僕と雅子が住んでいるかつて祖父が経営していた製材工場跡のガレージでやることになったのだ。
アジトと呼ばれているところには車両をいじる設備として、すべて中古ではあるが、大型車対応のボードオンリフトが2機、大型エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、板金道具一式、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、油圧ベンダー&カッター、ボール盤、旋盤、フライス盤、20トン対応天井クレーン、ワゴンしき工具箱、タイヤチェンジャー、バランサーまでそろっているので、メンテどころか改造迄できてしまう。
事実、ドリ車とTSカーはここでどんガラの状態から作り上げたのだ。
もっとも、スポット溶接機、レーザー溶接機、タイヤチェンジャー以外は祖父が現役の頃林業で道具や木材運搬車等が壊れると、そこで修理していたのでそれを受け継いだのだ。
2000トン油圧プレスは材木が反ってしまったときの修正用兼圧縮用でかなり大きいのだ。
油圧牽引機は木材で変形した運搬用トレーラーを直すためのものでその能力は200トンと聞いた。
それにアジトの敷地は木材搬送のために大型トレーラーが20台くらい悠々と停められる広さがあり、父親がこの場所を借りて中古車版売店を始めた場所でもある。
ここもお店の整備工場として登録してある。
僕らの両親はどちらも車大好きでそれが高じて中古車屋兼整備工場を経営している。
父親は元は大型車メインのディラーにいたが独立してこの店を立ち上げた。
このところ僕の趣味に感化されたのか中古のバスを3台も買ってきて全部をマニ割仕様して、それに乗ってどこどこ音をさせて営業に行ってしまっている。
それに会社のトラクターも若いころやっていた技術を使ってマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーに自分で改造してしまうほどのマニ割マニアっぷりを発揮している。
エギマニは自分でマニ割仕様をステンレスパイプをベンダーを使って手曲げで作ってしまうほどの腕を持っていた。
若いころに大型車が主な整備工場に勤めていた時にはマニ割車を相当数作ってはお客さんに収めていた。
トータルでマニ割車を100台近く作ったというマニ割マエストロでもある。
その業界ではちょっと名の知れた存在だ。
そんな父親なので、整備工場では僕が工場長になったのを良いことに運送会社をやっている隆弘の親が経営していた整備工場を買い取り本格的に大型車も整備するようになった。
加えて父親は雅子の親友の百合ちゃんの父親が経営する建設会社の重機の整備も引き受けた。
以前建設会社の重機の整備をやっていた会社が廃業して、重機の整備が出来ないと困っていた話を聞いてその会社の重機の整備も請け負った。
親父は困った人見ると黙っていられないらしい。
母親の独身の頃はドリフト競技、ラリーに出ていたという位の運転好きだ。
かなり上手く何回か入賞する位だったらしい。
競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時大型車メインの整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。
乗用車の整備工場では見てくれなかったが、大型車メインの工場なのにうちの父親が仕事を引き受けていたのだ
この両親を見れば僕と雅子が車大好き、運転大好き、競技に出たいとなってしまうのは当然だろう。
「ほら、あおってきたよ。いいけどさ。次の登りフル加速してみるよ」
登りを流していると早くいけとばかりに一台の軽乗用車があおって来た
「雅子、いくらなんでもこの大きさで?」
「できちゃう。見ててよ」
「え?何この加速力、バスなの?」
雅子が全開までアクセルを踏み込みレブリミット迄回す。
制限速度はあっという間に超える。
登坂車線に入って譲るように見せて後続をあっさり引き離す。
「すごすぎ、こんなにパワーあるの?」
「このゴーゴーくんが速すぎなのよ」
「全開で走るとはやいよねえ。燃料に100%再生燃料使ってるとは言っても」
「燃料もいいじゃん。百合リン、いい燃料ありがとう」
「良かったわよ。ママも地球にやさしいってことでこの燃料入れたいって言ってる。スーパーの車でこの燃料使えるのは全部これ入れてるよ。そうだ、あの小型キッチンカーにも使ってるけど、エンジンかけっぱなしでも煙くないからこの燃料いいよ」
「うん、キッチンカーには最適の燃料だよね」
「雅子、下りだよ。排気とツインリターダーの出番だよ」
「任せて」
雅子が全くブレーキを踏まずに排気とリターダーを駆使して下っていく。
「雅子ってスムーズドライブだよね。うまいよ」
「百合リン、褒めたって何もでないわよ」
「ほんとだって、あたしも雅子を見習うんだ。練習しよう」
と喋りながら笠木さんのお店に行った。
「おはようございます。今日は雅子の車と百合さんのお母さんの車ということで見に来ました」
「お待ちしてました」
「笠木さん、お世話になります。よろしくお願いします」
「松尾さんですね。よろしくお願いいたします。佐野さんの総輪駆動と松尾さんのバスを準備しました。これでいいか見ていただければ」
「雅子、先にママのバス見ていいよね。お兄さん貸してね」
「うん、あたしはどれかわかるから見てるよ。笠木さんのお店で買った車は確かだから」
「そうね。雅子。悪いけど、先に。お兄さん、来てもらっていいかな?直すのを佐野自動車販売にお願いするから」
「良いですよ」
僕は百合ちゃんについて見つかったというバスを見ていた。
DR15の方は屋根とエンジンルーム、ボディ後ろの錆が結構ひどいしDB100はフロントのフェンダーが朽ちている。
2台とも結構ボディの錆が来ているのがわかったので長期間のレストアが必要だ。
このレストアは丸松建設のバスを整備していた3人に任せた方がいいと思っていた。
「あらら、リアエンジンとボンネット?お兄ちゃん。ボネットはトラックにはあるけどバスは初めてね。残ってるのって○すゞが多いよね」
自分で総輪駆動を見てきた雅子が合流した。
「そうなのよ。今回はどっちも同じメーカーなのよね」
「うん。ここに来る前に調べたけど。2台ともちょっとエンジンが非力って言われているよ。とにかく一旦分解して洗浄するよ。必要ならブロックの削り直しとかも」
「さすがですね。スリーブ作っちゃうんですか?」
「うん。必要ならブロックに補強も入れますよ」
「よろしくお願いいたします。エンジンいじると止まんないですね。雅子が言う通り」
「いやははは」
「お兄ちゃんは何でも速くしちゃうんだもんね。パパはマニ割だーとか言うかも」
「これでマニ割はやばいでしょ。送迎車なんだから」
「そうね。百合リンのお兄さんの総輪駆動はマニ割の鳴きも重視よ」
「うん、エギゾーストノート聞いたよ。お兄ちゃんは重低音が好きなのよね。なんで発進の時の叩きが最高って言ってたよ」
雅子と百合ちゃんがしゃべっている間に僕は2台のバスをみて大凡の修理費用を見積もっていたのだった。
2台ともエンジンの調子は良さそうだが、念のためゴム部品は全部交換してシリンダーブロックの変形やずれ等を見る必要あると思っていた。
それに長期に使うならエアクリーナーを新しいモデルのに交換してしまおうとも思っていた。
予算との兼ね合いになりそうだ。
その後はミッションもオーバーホールしてデフに割れがないかみてとプランを検討していた。
「雅子の総輪駆動は?」
大凡の修理費用がわかったところで雅子に聞いた
「見たよ。2台ともすっごくいい個体よ。お兄ちゃん、エンジンオーバーホールとターボ化よろしくね」
「雅子のは全部ターボで速いもんね」
「まあね。速いのがいいの。百合リンもでしょ」
「そうだけどね」
「仕事がいっぱいで嬉しい悲鳴状態」
「そうか。スーパーの移動販売車のエンジン換装もあるんでしたよね」
「うん、大丈夫だよ。いいことに大型ノンステロングに積んでるエンジンの最大トルクが買って来たエンジンよりもでかいのがいいんだよ。公認が楽に取れちゃう」
「じゃあ。もう一台の移動販売車の中型ノンステロングの方が大変ね」
「そっちも楽、9.2エンジンの生で公認取っちゃう。出力トルク両方とも今のターボより小さいから簡単。その後ターボにする」
「そうか。ターボは補機扱いだもんね」
「そういうこと」
「そうか、お兄ちゃん上手くやってね」
「もちろん。今日は百合ちゃんは軽くてギヤがローギヤでクロスしている中型総輪駆動トラック乗って帰ってね。僕は元除雪車の総輪駆動のる。雅子はゴーゴーくん頼む」
「そうね。百合リンは軽くて排気が有効に使える方がいいもんね」
僕ら3人は雅子の総輪駆動2台を買って仮ナンバーで帰ってきた。
仕事が溜まってきた。
嬉しい悲鳴だった。
何でも乗ってしまう雅子
悟瑠は仕事が増えて嬉しいやら困るやら
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
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