第三十一話 総輪駆動車のレストアとオフロード
注文がはけても次の注文がやってきて本業にまい進する悟瑠たち
「トップは嬉しいね。隆文も表彰台じゃん」
「ああ、もっとタイヤマネージメント勉強だ。もう最後はずるずるでやばかった。雅子を追いかけられないんだよ」
「隆文、成長したな。以前だったらガンガン行ってたんだけどな」
「よし、雅子、帰ろう。今日はゆっくる寝ようぜ。トラクターで寝てていいから」
僕と雅子は6×4トラクターでTSカーを乗せたトレーラーを引っ張って、隆弘たちはフーセンちゃんでアジトにむかっていた。
「お兄ちゃん。6×4トラクターの運転ありがと」
そう言ってそっとほっぺたにキスしてきた雅子だった。
休日明けから僕らは注文をさばくべくやっていた。
「お兄ちゃん。キッチンカーエンジン載せ替えOKだよね」
「おう、このバスも改装終わったら例の坂に行って見るよ。エンジンスワップして出力アップしたから」
「後は窓の改造ね。他には?」
「サスにエアを追加する。リーフを一部抜いてバンパーラバーのところにエアベローズつける。必要ならスケルトンの補強もやるから」
「へえそうなの?」
「うん、後は調理用の什器を積むところをエアクッションでフルフロートにしておく」
「それはいいわね」
「エアクッションは走行時だけで什器を使うときはクッションのエアを抜いて固定するんだよ」
「さすがね。お兄ちゃんもしかしてお弁当用も?」
「もちろん、作り置きならべるところもエアでフロートをやってかな?そうすればお弁当が崩れにくい」
「百合リンのメニューにないよ」
「それはこっちから提案するよ。そうすると最初から作って持っていける。そうすれば注文来たらご飯だけ詰めるとかすればいいんだよ」
「お兄ちゃんさすが。頭いい、そうか。お惣菜を最初から詰めておいてご飯だけその場で盛るのね。ホカホカご飯を食べれるってことね」
「うん、どうだよ。そのためにはなるべくお弁当を陳列するとことを揺らさないようにする」
「うん、それいいわ。ちょっと高くなるけど」
「軽食の方もサスをリーフ+エアにする。元々エアサスの設定あるからそっから持ってくる。調理用の什器は走行中エアクッションで浮かせて振動減らす」
「さすがね。お兄ちゃん」
「これは僕のからの提案だよ。途中で什器壊れたら困るだろ」
「そうね。エアクッションってもしかして?」
「うん、工業用エアクッションセットがある。うちの不良在庫になりそうなのがあってそれ使っちゃう」
「全くう。ちゃっかりしてるわ。パパが前に精密機器運搬車を隆弘さんのお父さんの運送会社に入れた時の予備ね」
「そう。5機も余ってるんだよ。勿体ないから使っちゃう。それに置き場とってて邪魔だし、捨てるのはもったいない」
「いいわね。安くしてかな」
「ロハでもいいよ。処分料聞いたらべらぼうに高くって」
「そうね。それは損失ってことで」
「そうだ。松尾さんからあのキャブオーバーバスどうするか聞いてきたよ。移動事務所だって。キャブオーバーバスは松尾社長用。欲しいのは別電源とトイレ、簡易キッチン、簡易ベッドだってさ」
「そうなんだね。ラムちゃんたちは?眠ってるの?」
「どうやら、現場への送迎用で使うんだって。いいことに運転できる人が入ったとか」
「そうよね。サロンカーにしてもねえ。事務所にするには不便よね」
「でしょ。別電源が無いから走行用エンジンかけっぱなしになったり、トイレも無いんで。現場作業員用に行くけど作業員が気を使っちゃうからって。ベッド無いから寝れないとか」
「そうか。それはそうよね」
「さて、僕はキッチンカーの窓改装するよ。右の窓から売るって言うから下開きにする」
「タープも着けるんでしょ」
「もちろん。屋根に雨どい付けて雨どいにタープを引っ掛けるようにする、多少の雨でも販売できるようにするのと、夏でもバスの窓開けて売り場に冷房使えるように簡易テント出来る仕様だって」
「そうね、それなら排ガス対策しないと煙いよ」
「うん。それはバイオ燃料使うんでそのままでいいって。臭く無いし煙く無いから」
「それはいいじゃん。お兄ちゃんよろしく。終わったらこの車も例のところで試験ね」
「もちろん。燃料もバイオで大丈夫か見るよ」
「あたしもいくんでしょ」
「そう。小型のレッカーでついてきて。ついでに笠木さんのお店で頼まれてたローリー見るから」
「いいよ。いつごろ?」
「明後日かな?もうキッチンカーは80%仕上がっている。エンジンは完了。雨どいも完了。残りの窓もユニット交換で行ける」
「明後日ね。アジトから行くんだね」
「そうだよ。明日はキッチンカーにのって帰る」
「あたしは小型のレッカーで帰るのね」
「うん」
僕らは注文をさばくべく必死になっていた。
メキシコ料理のキッチンカーが出来上がったので雅子と僕は百合ちゃんに頼まれていたタンクローリーを笠木さんのお店に見に行きがてらキッチンカーの試験していた。
キッチンカーが出来たので試験するのとローリー見に行くと百合ちゃんに言ったら一緒に行くと言って前日のうちにアジトに武蔵君で来ていた
メキシコ料理のキッチンカーは排気量を少し増やしている効果と実力で純正+10psにしているので結構差がわかる。
発進のところからトルクが違うのだ。
最大トルクを1700から2800付近までフラットな状態を維持するようにしたので純正とは2000以上の伸びが全然違うのだ。
排気ブレーキにプラスして念のためのリターダーも追加していた。
ゆっくりと排気とリターダー使って3速にダウンして下れば最大の重量で急な長い下り坂でも問題ないことがわかってほっとしていた。
「お兄さん、結構速くなりましたね」
「うまくいったよ。最高出力でカタログ+10psだけど実力で175psだよ。2000から上が全然違うんですぐわかる」
「そうですよね。カタログだと数値の八掛けでしたね」
「そうだよ。帰り乗ったらわかるよ。全然違う」
僕と一緒にメキシコ料理のキッチンカーに乗っている百合ちゃんに言う。
このキッチンカーは主にイベントや祭りに使って普段は軽食の販売車にもなるのだった。
無事に笠木さんの店に着いて車を見せてもらった。
笠木さんのお店にあったのは、KC-FR1FKCDでF17Dエンジンを積んだ後2軸の引きずり仕様の短尺タイプだった。
「増トンって言うか大型の2軸はないんですね」
「あってもレアでほとんど出ないんですよ。流通してるほとんどが前2軸なんです。それだとやっぱり小回り効かないんですよ。このタンクローリーは後2軸の引きずりなんで小回りが利きます。デフロックもあるから雪でもだいたい大丈夫ですよ。それに排気量大きくて発進のトルクあってしかも2軸駆動よりもはるかに燃費良いですね」
「そうですか。うーん、V8かあ。よし、決めたこれにしちゃえ。」
「百合リン、V8エンジン好きねえ」
「いいじゃん。V8のバスって観光がほとんどで自家用ってあんまりないじゃん。」
「そうだけどね」
「笠木さん。これお願いします。現状渡しで」
「いいですよ。佐野さんのところで整備ですね。生なんでエンジン、ミッションの痛みは少ないと思いますよ」
「はい、うちで面倒見ます」
「乗って帰れます?」
「そう思ってナンバー切ってないです。どうぞ」
「はああああ。百合リン。この6×2タンクローリーをどこに置くのよ?」
「先ずはスーパーに置くよ。これだと上手くすると県内の全店舗一回で回れちゃう。小型だと集めきれないんだもん。そうだ。雅子にももっとバイオ燃料出すよ。試験してもらってるけど問題ないでしょ」
「うん、全然問題なし、あそうかこの車今日はアジトによるからそこに停めて。百合リンはアジトから武蔵君のって会社に行けばいいのよ」
「そうね。そうしよ。そうだ。お兄さんのバスにもバイオ燃料いかがですか?うちの会社だけじゃあ消費しきれなくて。捨てるのはもったいないの」
「それならうちでも買うよ。それに良かったら加藤運輸=隆弘の親御さんの会社にも紹介するよ。運送会社なら結構消費するはず」
「いいですねえ。この6×2タンクローリーで配達もできますから。パパの会社にも売ってるんだ。先ずはラムちゃんとリングちゃん、あたしのマキちゃんと武蔵君にも使ってるよ。移動事務所にはいいみたい」
「そうか、いいじゃんね。お兄ちゃんのバスにも使おうよ。百合リンは油を集めたり売るためにこの6×2タンクローリー買うのね」
「うん。雅子、この6×2タンクローリーの整備よろしく」
「笠木さん。買取で書類お願いします」
「はい、これです」
「早ッ。どうもありがとうございます。内金です」
「毎度、ありがとうございます」
「お兄ちゃん。どうする?」
「百合ちゃんにこの6×2タンクローリーのって帰ってもらう。名変と納車前整備するけど今日はアジトに乗って行って。明日僕らが持ってきて整備する。今日は工場の駐車場空けるから」
「はーい」
「それに17リッターあって今は空だよ、重量9トン位だから排気だけで下れちゃうよ」
「そうね。百合リン3軸あるからって油断しないでちゃんと排気使ってよ」
「うん、雅子、整備と名変お願いします」
「じゃあ、戻ろう」
僕らは3台で帰って来た。
3軸あって排気量が一番大きくエンジンブレーキや排気が有効に使える6×2タンクローリーは百合ちゃんが運転してそのままアジトに置いた。
百合ちゃんはそこから自分の武蔵君て会社に向かった。
僕らはそのままキッチンカーをスーパーに納めて、代車にしていたうちのいい子ちゃんを引き取ってお店にもどった。
「よし、スーパーの車一台捌けたぞ。次は軽食用のキッチンカーだ。隆弘、松尾さんのキャブオーバー4WDバスはどんな状態?」
「あとはマフラー作れば完成だ。内装は全部終わったし、公認も取ったよ。マニ割りは鳴きも重視だよな。」
「うん。よし、終わったら次は遅れてるお弁当用キッチンカーを頼む。僕とアルバイト君で軽食用のキッチンカー作る。これはエアサスにする」
「合間にリースのメンテと納入前整備とローリーの名変と整備か。この所仕事が詰まってるよなあ」
「すまんな。百合ちゃんちの車とスーパーのキッチンカー2台仕上がれば大分楽になる」
「仕事が有っていいけどな。このところエンジンスワップやりまくったって感じだな」
「ああ、確かにスワップして公認って多いよな」
「楽しいけどね。ここの4軸レッカーもRH8からRH10にしたもんな」
「そうだな。新しいダンプのスワップもやったな」
「おう、新しいエンジンを積みかえるのも面白かったけどな」
「隆弘、頼むぜ」
「うん。よーし。俺たちはキャブオーバー4WDバスの次はお弁当用キッチンカーだな。」
「よろしく。僕らは軽食用のキッチンカーの次はキャブオーバーバスのターボ化と移動事務所に改装だ。」
「私たちは?ボンネット4×4ダンプのあとは?」
「はい、松尾建設の専務からキャブオーバーバスのレストアの依頼来てますのでそれお願いします。ボロボロらしいので最低でも3ヶ月かかります。他にはKL-CW55XHUDとKL-FS1KKCDのターボ改造が待ってます。松尾社長は移動事務所がどうしても必要になったようでキャブオーバーバスを先にやってくれと言って来たんです」
「そうでしょうね。以前工場で一緒にやっていたのに聞いたらここ最近は現場を飛び回っていて途中でお弁当食べて仮眠してというそんな生活ですよ。金策から全部やってて」
「そうですね。松尾社長とにかく忙しそうですから。これから僕はスーパーに頼まれてる軽食用キッチンカーエアサス化と什器セットのエアフロート化やります」
「それでは僕らはボンネット4×4ダンプのターボ化とキャビン改造ですね」
「よろしくお願いします」
と職人達と話し合っていた。
すると雅子が来て
「お兄ちゃん。百合リンがお願いあるんだって。事務所来れる?」
「いいよ。すぐいく、悪いけど内装頼むよ。什器をエアクッションに乗せて固定」
「はい」
僕はアルバイト君に作業を任せて雅子と事務所に向かう
「事務所にもう百合リン来てるんだよ。急ぎだって」
そう言って僕と一緒に整備工場から事務所に向かっている妹の佐野 雅子。
免許取って最初4年は峠のバトラーだったが、負け無しのまま卒業してドリフト競技に参加。
対戦クラスで3回も優勝してしまった。
次からはクラスを変えて出場すると言っている。
もう一つ、TSカーを作ってTSカップのレースデビューもしてしまった24歳。
普段は親が経営している中古車販売店兼整備工場で経理、整備の段取り担当の副社長している。
お店には大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバスを改造した貨物車のU-RP210GAN改275ps仕様、またはエムエム君と呼んでいるこれまたバスを改造した貨物車の○アロスターMMのMM618J改の300ps仕様に元職場から買っているバイオ燃料を詰めて問題ないか見ながら通勤している。
時々、僕の大型バスコレクションの中から乗ってみたいバスをバッテリー上がり防止と言って乗るのだ。
大型免許と牽引免許も持っているので自分でバスを運転して僕らが住んでいるアジトと言われている元祖父母の家から大きな市内にある実家が経営している中古車版売店兼整備工場に通えるし、必要ならトレーラーを運転して買い付けた車の引き取りもするのだ。
いま、雅子は自分で営業して取引を始めた雅子の元職場のスーパーから調理に使った油をリサイクルして作ったバイオ燃料を買うことにして問題ないかみている。
良ければうちのトラクターやバス達、積載車にも使う予定だ。
雅子の中古車店での仕事は車両の仕入れ、売却、メンテナンス部品手配や整備した車の納車が主だが、整備も好きで整備士の資格を取っているので、時には整備工場に来て納車前のお客さんの車をメンテすることもある。
工場が立て込んでいるときはアジトと仲間たちから呼ばれている普段僕と雅子が住んでいる元製材工場を改装したガレージまでお客さんの車を積載に乗せて来てメンテすることもある。
雅子は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、在学中に商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級を取っていて事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっている。
その雅子は進学せずに高校卒業後すぐ入社したスーパーでわずか4年チョイという異例の速さで係長まで出世して、同期からは初の高卒30代女性役員誕生かとうわさされた。
しかし、当の雅子はいろんな車に乗る仕事したいと言ってあっさりスーパーを退職して家業についてしまった。
なぜなら雅子はスーパーでは出世することに全く眼中になく車好き、運転好きなので1日中事務所で仕事するのは性に合わないというのだ。
家業なら買い付けとか、売却でいろいろな車に乗れるののでそれが楽しみだと言っていたのだった。
雅子は家業に従事してからは危険物、大型2種免許、整備士の二級免許、牽引免許も取ってしまったほどの車好きだ。
雅子はこのところGHATGTPやロボタイズのようなプログラム組むのも好きなこともあって自分のドリ車のエンジンの制御コンピューターも自分でプログラム組んでいた。
僕は雅子にエンジンを載せ替えたトラックのBCMのフルコンのセッティングをお願いしたらきちんと仕上げてくれた。
それに最新の点検整備機器も扱えるので整備の面でも助かる
他には実家の規模に合わせたいろんな経理システムを組んでいて、両親も大助かりといっている。
何せ、しっかりとお店の財務状況がわかるようなソフトを作って管理しているので、今までのように確定申告のときにバタバタだった準備作業が雅子の組んだソフトのお陰ですべてデータとして蓄積されていて簡単にネット上で確定申告できるようになっている。
確定申告の時期は例年何日も夜なべして伝票整理、資料記入していたが、全くすることがないのだった。
部品の発注も整備の受注もネット上でできるようにしてあるので電話での対応も減っていてその分営業に時間がさけると営業担当の父親と母親は喜んでいるし、僕もネットで事前に不具合の状況を画像等でもらっているので修理箇所の予測がつけやすくなって仕事が早く進むと喜んでいる。
雅子は僕の古くからの友人で整備工場の副工場長をやっている隆弘がリーダーを務めるチームいて、そこでは僕と共にサブリーダーになっている。
ホームグラウンドではいまだに断トツトップの速さた。
新たにチームに加入してきた後輩たちの運転指導もするようになっていた。
雅子が得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入ってアクセル全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに僕と雅子しかいない。
それにサーキットを走らせたタイムもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。
ドリ車を作ってでた競技で出場5回で3回の優勝してしまったほどの出来だった。
しかも優勝した3回はすべてドリフトとレース両方でトップという完全優勝だったのだ。
帰りの積載車の中ではもらったトロフィーを持って嬉しそうに笑っていて、やっぱり表彰台は真ん中がいいといっていた。
次はTSカーでレースしたいと言ってデビューしているのでこれも会社PRのためにスポンサーすることにしていた。
雅子の普段の運転はとてもスムーズで隣に乗るとついつい寝てしまうくらいだ。
普段は車を労って走らせているのがよく分かる。
かつては大型バスを使ったスムーズドライブ競争でもバスドライバーや、トラックドライバーのプロに勝ってしまうほどのスムーズさなのだ。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の3月生まれの27歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して6年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今は家業の中古車販売店、整備工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備もしていて、時には中古車の買い取り査定もする。
大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。
また、○ントリペアも勉強して資格もとった。
それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。
大型免許は大学在学中にとってさらに就職してから直ぐにけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。
キャリアトレーラーも中古車で買ったものでもある。
2級整備士の資格も取ってあるので運行の管理士になれるのもありバスも持ちたい放題だ。
それを良いことに中古だが、観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
妹の雅子がメインで使っているバス含めて全部ターボにしてパワーアップと同時に黒煙対策している。
特に唯一のKL-規制対応のゴーゴーくんにはDPDが付いているのでエンジン本体での黒煙を減らしておきたかったのだ。
11台のバスにはパワーアップに対応して止まる方も強化としてリターダーを追加している。
家業の整備工場は大型車の整備もするようになった関係で場所がいる。
そのために小型車のオイル交換等の軽整備は元々隆弘の親が経営していた整備工場に機器を移していてそっちでやることにした。
他に整備する場所としてはアジトと仲間から呼ばれている僕と雅子が住んでいるかつて祖父が経営していた製材工場跡のガレージでやることになったのだ。
アジトと呼ばれているところには車両をいじる設備として、すべて中古ではあるが、大型車対応のボードオンリフトが2機、大型エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、板金道具一式、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、油圧ベンダー&カッター、ボール盤、旋盤、フライス盤、20トン対応天井クレーン、ワゴンしき工具箱、タイヤチェンジャー、バランサーまでそろっているので、メンテどころか改造迄できてしまう。
事実、ドリ車とTSカーはここでどんガラの状態から作り上げたのだ。
もっとも、スポット溶接機、レーザー溶接機、タイヤチェンジャー以外は祖父が現役の頃林業で道具や木材運搬車等が壊れると、そこで修理していたのでそれを受け継いだのだ。
2000トン油圧プレスは材木が反ってしまったときの修正用兼圧縮用でかなり大きいのだ。
油圧牽引機は木材で変形した運搬用トレーラーを直すためのものでその能力は200トンと聞いた。
それにアジトの敷地は木材搬送のために大型トレーラーが20台くらい悠々と停められる広さがあり、父親がこの場所を借りて中古車版売店を始めた場所でもある。
ここもお店の整備工場として登録してある。
僕らの両親はどちらも車大好きでそれが高じて中古車屋兼整備工場を経営している。
父親は元は大型車メインのディラーにいたが独立してこの店を立ち上げた。
このところ僕の趣味に感化されたのか中古のバスを3台も買ってきて全部をマニ割仕様して、それに乗ってどこどこ音をさせて営業に行ってしまっている。
それに会社のトラクターも若いころやっていた技術を使ってマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーに自分で改造してしまうほどのマニ割マニアっぷりを発揮している。
エギマニは自分でマニ割仕様をステンレスパイプをベンダーを使って手曲げで作ってしまうほどの腕を持っていた。
若いころに大型車が主な整備工場に勤めていた時にはマニ割車を相当数作ってはお客さんに収めていた。
トータルでマニ割車を100台近く作ったというマニ割マエストロでもある。
その業界ではちょっと名の知れた存在だ。
そんな父親なので、整備工場では僕が工場長になったのを良いことに運送会社をやっている隆弘の親が経営していた整備工場を買い取り本格的に大型車も整備するようになった。
加えて父親は雅子の親友の百合ちゃんの父親が経営する建設会社の重機の整備も引き受けた。
以前建設会社の重機の整備をやっていた会社が廃業して、重機の整備が出来ないと困っていた話を聞いてその会社の重機の整備も請け負った。
親父は困った人見ると黙っていられないらしい。
母親の独身の頃はドリフト競技、ラリーに出ていたという位の運転好きだ。
かなり上手く入賞する位だったらしい。
競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時大型車メインの整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。
乗用車の整備工場では見てくれなかったが、大型車メインの工場なのにうちの父親が仕事を引き受けていたのだ
この両親を見れば僕と雅子が車大好き、運転大好き、競技に出たいとなってしまうのは当然だろう。
「こんにちは、お兄さん。お願いがあります。大型ノンステロングの移動販売車をパワーアップしてほしいんです。300ps仕様なんですけど販売車でフルに積むと重くて坂道の発進が難しくてあたしは1速使ってますよ。頑固に2速発信する人がいてもうクラッチがやばいんです」
事務所に入ると待っていた百合ちゃんちが言う。
「そうか。排気量の大きいエンジンいるってことか。トラック用の2速ローギヤのミッションと多段にすればいいかな?承知いたしました。引き受けます。」
「できれば中型ノンステロングも排気量の大きい9.2のエンジンが乗るなら積み替えてもらえないかしら?」
「やってみます。在庫にNF6のターボエンジンがあるので」
「百合リン、会社の車そんなことしていいの?」
「うん、そうしないとこの販売車も排気量小さいでしょ、下手な人がいてクラッチ減らすんだもん。課長はなるべく運転させないって言ってるよ」
「なれないとそうだよね。クラッチ直ぐ減らしちゃう」
「そうなの。中型ノンステロングと大型ノンステロングの移動販売車はフルに積むと相当重いみたいでお店から出る時に商品積んで行くと上り坂で止まった時とか大変で」
「お兄ちゃん。大型ノンステロングは良いエンジン有ったっけ?」
「笠木さんの所にKL規制のRG8が有ったから買ってくる。ミッションつきなんで大丈夫だろ。予約した。」
「どんなエンジン?」
「V8で18リッターの生。ネットで320馬力でトルクは112キロのエンジン。KCーのパワーくらいは在りそう」
「それ良いじゃん。ミッションはトラック用の7速でしょ」
「うん、18リッターの排気量だから発進からトルクあるんでバッチリでしょ」
「明日買い付けね。もうすぐ仕上がるはキャブオーバー4WDバスの試験も兼ねてでしょ。」
「うん、隆弘も連れていく。雅子は4軸レッカーでついてきて。全開でのバイオ燃料の試験するのと、笠木さんのオフロードコース走る。河川敷を模したところで確認するそれに4軸レッカーの荷台にエンジンとミッション積むから、クレーン得意な隆弘連れて行く。4軸レッカーはフォークリフトが使えないから自前のクレーン使うよ」
「そうなのね、それに4軸レッカーは万が一キャブオーバー4WDバスがスタックした時の為ね」
「その通り。4軸レッカーは各軸のデフにデフロック入れたし後は前後軸ロックもある。キャブオーバー4WDバスは後のデフにデフロックあるけと前に無いから」
「明日ね。今日はキャブオーバー4WDバスと4軸レッカーで帰るのね」
「その通り。隆弘は僕よりもオフロード上手いよ。会社入って直ぐは親父さんの影響でクロカン4WDで遊んでいたから」
「そうなんだ。意外。峠じゃなかったのね」
「僕が峠に誘ったら峠とサーキットにはまったけどな。先輩がやっていたチームが今のチームだよ。隆弘がチームに入ってからは僕はラリーとジムカーナをやっていてあんまり峠には行かなくなったからね。チームに入っていたけど」
「へーそうなんだ。」
「じゃあ、雅子、お兄さん。よろしくお願いします」
その日は僕と雅子は出来上がったばかりのキャブオーバー4WDバスと4軸レッカーをそれぞれで乗ってアジトに帰った。
次の日、隆弘がアジトに来て一緒にテストするコースを通って笠木さんのお店に行った。
パワー的に少し不足だが、排気量が19リッターと大きいので排気ブレーキが有効に使え、下り坂は全く問題無くおりれた。
笠木さんのお店に着いて
「こんにちは。またお世話になります。」
「今度はエンジンですね。ミッションもですか?」
「はい。この4軸レッカーに乗せます。今日はオフロードコース借りれますか?キャブオーバー4WDバスの性能確認したくて」
「いいですよ。昨日マッドも整備したんでばっちりです。洗車場も使えます」
「ありがとうございます。今日はモーグルとマッドを借ります。確認したらエンジンを積んでいきます」
「悟瑠。もしかして俺にキャブオーバー4WDバスを乗れって言うことか?」
「そう、丸松建設の専務からどのくらい迄自力で行けるか調べてほしいって。よろしく」
「わかった。やるよ俺達が仕上げた車だ。任せろ。デフロックなしでモーグルの3段腹超えていけば本物だな。脚が十分伸びるってことだよ」
「その通り、次にモーグルの登りで発進テストだ。あとはマッドもよろしく」
「マッドはやや登っている所で発進できればいいんだよな?先にモーグルの3段腹行くぞ。その後にモーグルの登りで発進出来るか見るんだろ」
「その通り、頼むぜ。僕らは4軸レッカーで待機してるよ。よろしく」
「動けなくなったらヘルプ頼むぜ」
そう言うとバババババ、グオオオオンとV10のマニ割りの排気音を響かせて通称三段腹というモーグルコースに入っていく。
ウォーンという1速独特のギヤノイズを響かせゆっくりとコブを乗り越えて行く。
途中で対角スタックを起こして動けなくなったところでデフロックを入れたのだろう、またじわりじわりとまた動き出した。
「相変わらず上手いよな。路面と車を労って走ってる」
「そうね。隆弘さんのアクセルワーク上手いのこれのおかげなのね」
「佐野さん、加藤さん上手ですねえ。インストラクターにほしいですよ。コース取りもしっかりしてて腹打ちしないよう走っていく」
「そうですか?隆弘は上手いと思ったけどインストラクターレベルなんですね」
「あ、お兄ちゃん。やっぱりモーグル登りの発進は難しいのかな?」
「無理かも。前輪が片輪浮いてる。でも、見てて安心ですよ。さすがです。これ以上無理しないでゆっくり降りて来てますね」
「隆弘はわかっているよな、ゆっくりおりて来る」
ゆっくり降りてモーグルのコース抜けると向きを変えて次はマッドコースに入って行く。
「いやー上手ですよ。あの大きさをきちんと走らせてる」
「あ、お兄ちゃん、やばくね?」
見るとマッドコースで一旦止まって発進試験しようとしたらスタックしたようで動けない。
「隆弘、バックできるか?」
「やってみる」
バックランプがついてゆっくり動かそうする。
しかしバババババとマニ割りの音を響かせるがぐしょぐしょぐしょと4つのタイヤは虚しくその場で泥を掻いている。
これ以上やるとコースを掘り返してしまうので止める為に隆弘に声をかけようとすると先に隆弘が窓から
「悟瑠、わりぃ、デフロックも効かない。4軸レッカーでヘルプよろ」
「OK!隆弘、テストありがと。雅子、4軸レッカーで引っ張るからバックでゆっくりキャブオーバー4WDバスの後に着けてくれ」
「はいよ。お兄ちゃん、デフロックは?」
「雅子。念の為、後の左右を繋いで。マッドに入る前に総輪駆動にしてよ。後輪のデフロックは前輪の駆動と独立してていつでも使えるから」
「OK」
雅子は後2軸のデフロック作動させ、総輪駆動にするとゆっくりとバックでマッドコースに入っていき、キャブオーバー4WDバスに4軸レッカーを近づけた。
「雅子、そこで停めて」
僕と隆弘がマッドに入って4軸レッカーとキャブオーバー4WDバスをロープで繋いだ。
「よし、隆弘。ゆっくりバック、雅子ゆっくり前進」
グオオオオン。バババババッと2台の大型車がエンジンを唸らせた。
4軸レッカーの牽引力は本物でスタックしたキャブオーバー4WDバスをいとも簡単に引き出して行く。
「すごい。こんなに簡単にいくんですね」
「さすが元除雪車ですよ。全部の軸にデフロックあるんです。しかも後軸は前後の軸もロック出来るんです。今は後2軸のデフロックだけです」
「それにしても雅子さんのテクニックは本物ですよ。あのマッドの中でゆっくり引き出すのお上手です。ホイールスピンさせずに」
「あれは天性ですね。見てるだけでどう乗ればいいというのが本人にはわかるみたいです」
「すごい」
「オフロードコースも今日初めて走ってここまで出来る、僕の予想よりも遥かに上行ってますよ」
「ええっ?今日初めてオフロードコース走ったんですか?」
「そう。簡単に乗ってるように見えるのが凄いんだよ」
「凄い」
と言ってると雅子が乗った4軸レッカーは無事にスタックしたキャブオーバー4WDバス助け出していた。
「佐野さん、加藤さん、専用の洗車場どうぞ。走行料金に入ってますから」
「ありがとうございます。お兄ちゃん洗うんだよね」
「うん、じゃあ。雅子4軸レッカーを洗車場に持っていって」
「はい」
「隆弘、ありがとう。キャブオーバー4WDバスのフロントにもデフロック欲しいね」
「うん、そうじゃないと登りとかマッドはむり。と言っても足が短過ぎてモーグルには向かないよ。4軸レッカーの方は思ったよりも脚が長いし4軸にデフロックだろ。トラクション強力だよ」
「駆動軸倍だからなあ。元から牽引重視だよ」
「レッカーだかんな。車が自分のだったらもうちょっと行けるけどな」
「納車前の商品だから仕方ない。さて。これも泥落としたら4軸レッカーにエンジンとミッションを積んで帰ろう。」
「そうだな」
僕らは洗車場で2台の車の泥を落とすと4軸レッカーに買ったエンジン:ミッションを積んでお店に帰ってきていた。
帰り道、キャブオーバー4WDバスは雅子が運転してきたのだが、リターダーひとつでも排気とシフトダウンを使って全く危なげなく急坂の連続を下ってきていたのだった。
「お兄ちゃん、普段ターボでパワーあるのに乗ってるとつい比べちゃうね。生ってちょっとパワー的には物足りないけどレスポンスはめっちゃいいのね。それにマニ割の鳴き重視もいいね。なんか総輪駆動でオフロードもいいなあ、って思っちゃった。隆弘さんに聞こうかな。総輪駆動車探しちゃえ。デフロックつけよ」
お店でにっこりしながら言う雅子だった。
総輪駆動の威力と楽しさをオフロードで知った雅子は?
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。




