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走り屋の妹(全年齢版)  作者: 浅野 武一
28/73

第二十八話 ダンプカーの売却と仕入れとTSカーの進歩と

前回のレースでいきなり入賞した雅子

しかし、満足せずエキシビションでは全開で?

百合ちゃんの家のお仕事も順調で

次の日、出勤すると


「お兄ちゃん、ダンプカー見つかったってKL-FS1KKCD。これならいいんじゃない?2デフ」


朝一番に雅子が笠木さんのお店からの連絡を受け取っていた。


「うん。これいいかもね」


「もう一台KL-CW55XKUD改もあるって」


「これも2デフか。社長に選んでもらうのもいいよ。松尾さん誘って見にいこう」


「いいよ、連絡するね」


雅子が連絡するとなんと、すぐに行くと言っていて、1時間もしないうちに松尾社長自らリングちゃん(P-RU192AA)を運転して僕らを迎えに来たのだった。


「連絡ありがとうございました。今日は私がお連れします。娘からこのバスが難しいと聞いたのでこれ持ってきました。下り坂の練習します。新しいドライバーに伝授するんです」


「社長が自らですか?他にドライバーいるでしょ」


「ええ、以前は専任のドライバーいたんですが、高齢なのもあって最近おやめになったんですよ。かといってダンプのドライバーもめいっぱいで作業員配置やお弁当配りさせるわけにはいかないんです」


「そう言うことですね。人手不足はどこでも同じですね」


「そうですね。お世話になっていた整備工場から一人来ていただきました。でもホントに焼け石に水とはこのことです」


「わかります。うちも3人に来ていただきましたが足りなくてアルバイト君でしのいでますよ」


「そうなんですよね。うちにもアルバイト君居るんです。さすがに大型バスの運転はハードル高くて。娘に来て欲しいんですが今の会社で相当楽しくやってるようですので」


「うん、百合リンは移動販売車とキッチンカーのリーダー楽しくってしょうがないみたい」


「ですよね。娘が大型取ったときには喜んだもんですが」


「そうですね。アルバイト君じゃ免許の関係もありますからね」


としゃべりながら僕と雅子と松尾さんは笠木さんのお店に向かっていた


「登り坂がすごく楽になりましたね。パワーアップするとこんなに違うんですね」


「純正の最大のトルクでやめてますが、10キロ近く増えているのと40psアップなんで違うと思いますよ」


「娘がマキちゃん(U-LV270H)と呼んでるバスと比べたら非力ですけど、これはこれでいいかもしれませんね」


「はい、マキちゃん(U-LV270H)は排気量がこのバスの大凡倍位大きいエンジンなんですよ。その分パワーもあるし、下り坂では排気ブレーキが使えるんでいいんですけど、これは排気量が百合さんが普段使ってるマキちゃん(U-LV270H)と呼んでる車の大凡半分ですからその分補助ブレーキとしてはきついです。対策でリターダーを追加してますがやはりここまで急な坂の下りは4速で下るのには全く足りてませんね。2連装すればいいんですが」


「ですよね。マキちゃん(U-LV270H)は発進からトルクが段違いでしたから。それに普段の時は排気だけで停まれてブレーキほとんど踏まなくていいなんてこんなに楽かって思いましたよ」


「そうですね。マキちゃん(U-LV270H)にはパワーアップの対策でリターダー2連装しましたので大体の下り坂なら大丈夫ですよ。あ、松尾さん、下りなんで気をつけてください。この車は3速で降りてください」


「はい」


松尾さんは排気とリターダー使いながらブレーキを踏んでグオンとダブルクラッチで3速に落とすと、ぼおおおおっと3速でも排気とリターダーをフルに使ってゆっくり下っていく。

後ろではエンジンがワンワンとなっているが仕方ないだろう

さすがに大型の運転になれているだけあって危なげがない。


「なれてますね、お上手です」


「いやいや、年数だけですね。百合には補助ブレーキが頼もしいがマキちゃん(U-LV270H)といういいバスを作ってくださってありがたいですよ。大型車は下り坂でブレーキが効かなくなって暴走するのが一番怖いですからね」


さすがに経験豊富なだけあって危険なポイントがわかっている。

ゆっくりと下って笠木さんのお店についた。


「笠木さん、おはようございます。いつもお世話になってます。今日はダンプを探している建設会社の社長の松尾さんを連れてきました」


「おはようございます、はじめまして。ウッディパラソルの笠木です。よろしくお願いします」


「こちらこそ、丸松建設の松尾です。」


笠木さんと松尾さんが名刺交換していた。


「社長自ら早速いらっしゃるとは有り難いことです」


「いえいえ、実はこの年式の車の競争が激しいと聞いたんですぐに来ました。見せてもらいたいのですが」


「じっくりどうぞ」


「ありがとうございます。エンジンかけていいですか?」


「どうぞどうぞ」


笠木さんがキーを松尾さんに渡した。

松尾さんはKL-FS1KKCD近づいて行った。

なれた動作でガチャっとドアを開けてダンプカーのキャビンに座るとエンジンをかける

くうくうくうくう、グロロロッガロロローンとエンジンが目を覚ます。

ゴロゴロゴロとL6独特の不等間隔燃焼の音をたててアイドリングする。

グロローンとアクセルをあおる

ゴロゴロゴロとL6ターボ独特の唸りを上げてエンジンが回る。


「エンジン結構よさそうですね。ダンプしてみますね」


グロロロロロロッとアイドル回転が上がってグウォーンといいながら荷台が上がっていく


「これも問題ない。構内をちょっと」


と言って軽く走らせていた。


「いいですね。まずはこれ決定。笠木さん、買います」


「ありがとうございます」


「これも見せてください」


「はい、キーはこれです」


笠木さんがKL-CW55XKUD改のキーを渡した。

この車もくうくうくうくう、グロロロッガッロロローン、ゴロロローンとエンジンが目を覚ました。

ゴゴロローン、ゴゴロローンとKL-FS1KKCDよりも重めの音でエンジンが吹ける

その後一通りダンプさせたりして確認、その後軽く構内を走らせていた。


「いいですね。これも買います」


「どうもありがとうございます。2台ともまだナンバーを切って無いんで乗って帰れます。納車前は佐野さんのところで整備ですよね」


「ええ、その予定です」


と、僕が答える


「はい、佐野さんにお願いしますよ。佐野さん。お手数ですがこの2台回送お願いしたい」


「いいですよ。以降の整備はうちがやりますから。納車前点検から定期点検、車検もこちらでやらせていただきます。お任せください」


「そうですね。佐野さんのところにお願いすれば鬼に金棒です。笠木さん、急な訪問なんですけど見せてどうもありがとうございました」


「いいえ。まとめてお買い上げありがとうございます。佐野さん、車の手続きしましょう。佐野さんのところに現状渡しで販売ですね」


「はい、その後の整備はうちでやります」


「よろしくお願いします。査定書と点検記録簿はこれですので」


僕らは笠木さんに内金を払って2台引き取ると帰って来た。

雅子がKL-FS1KKCDに乗って、なんと社長はKL-CW55XKUD改を乗っていた。

僕はリングちゃん(P-RU192AA)で帰ってきた。

予想通り、リングちゃん(P-RU192AA)排気ブレーキが普段乗ってるバスたちと比べると効かないのでリターダーを駆使して、ギヤは3速固定にしてゆっくり下って来た。

雅子と松尾さんは軸数が多いのとKL-CW55XKUD改は21リッターの排気量があるのとKL-FS1KKCDはリターダーもあってしかも空車なのでリングちゃん(P-RU192AA)と同じくらいの車重ということもあり下りをグイグイ行ってしまった。

お店に到着すると、納整工場に2台入れて油脂類、液物交換の整備を頼んでおいた。

念のために、ブレーキその他も開けて給油が必要なものは給油、交換が必要な消耗品は交換して納車する準備だった。


「佐野さん、買ってきたダンプの面倒見お願いします。今使ってる新型のダンプは売りに出します。最新のは快適で安全性も高くて燃費が良いとディーラーの人に言われて買ったんですよ。ところが無理をかけてるのかわかりませんが故障続きで予備車がいるようなことになって使えないので売ります。このところの人手不足で建設会社も倒産しているようで生き残っている僕らに負担が凄いですよ」


「はい、承知いたしました。今のは排気量ちいさくって無理が効きませんからね。そうですね。たしかに」


「ええ、その弊害を実感しました。燃費もいいかと言われると思ったほどよくないです。回転上げないと現場では使えなくて結構回すんで悪いですね。それに登りところで発進するとシフトアップできなくて発進段に固定するんで尚更です。」


「ですね。下のトルクが無くてターボ効くまで回転上げて走らせる必要ありますもんね。それにシフトアップの最中に失速するんですよね、それじゃあ難しいですよね」


「そうなんですよ。スペック上のパワーはありますけど、実態は無いですね。高速を走る路線のトラックなら良いですけど」


「そうですよね。ダンプカーの場合は排気量の大きいエンジンを低回転で使ったほうが燃費良いですね」


「ええ。この2台もこれから整備お願いします。KL-FS1KKCDをV8にするのも」


「はい、ボンネット6×6(P-HTW12K)ダンプとボンネット6×4(K-TW53LD)ダンプも納車いそぎますね」


「あ、このボンネット6×6(P-HTW12K)ダンプもボンネット6×4(K-TW53LD)ダンプも予備車ですので急がなくて大丈夫です。それより今日引き取って来たダンプの名変と整備を先にお願いします」


「承知いたしました。どうもありがとうございました」


手を振って社長の松尾さんは帰って行った。


「お兄ちゃん、松尾さんところの総輪駆動に乗せるキャビン見つかったよ。廃車になった車が隣の県にあるって、見に行く?TXD33Aの5トンダンプだって」


「あるのかい?見に行く」


「この間、ニジュちゃん(U-RP210GAN)を買ったお店にあるんだって。もう何年も動かして無いからエンジンかかるかもわかんないし、荷台はもうボロボロで大修理が必要って言ってた。そうそう書類もないって」


「買う、それなら積載で行こう。平ボディなら乗るよ。即持って帰ろう」


「積載で行くのね。とにかく、お店に行くって言うね」


「ありがとう。すぐ、買いに行こう。どっちにしても錆を取ったり鉄板継いだりことに変わりない」


「承知。積載を暖機しておくね」


「ありがと。隆弘。悪いけどいい車を見つけたから買いに行ってくる。工場の仕切りたのんだぜ」


「悟瑠、任せろ」


「ありがと」


僕と雅子は積載でTXD33Aの5トンダンプ引き取りに行った。

その道中だ


「整備工場がレストア工場、車製作工場になっちゃったね」


「まあな。今はリフレッシュダンプって言うのがあるんだって」


「え?何それ?」


「今時のダンプって排気量が小さいだろ。今回松尾さんが買ったダンプは2台とも排気量21リッターだよ。今のってせいぜい13リッターだからぬかるみや登りでの発進の時に特に大変。ターボ効いて無いなら単なる小排気量気量エンジン」


「あ、そうか」


「悪いことにエンジンは2000位までしか回せない。クローラーギヤだと途中でシフトアップ必要なんだけど登り坂の発進じゃあ全然話にならない」


「そうなんだね。確かにリングちゃん(P-RU192AA)マキちゃん(U-LV270H)じゃあ発進のしやすさが全然違うもんね。下から大排気量に物を言わせてぶっといトルクで引っ張るマキちゃん(U-LV270H)とあくまでターボでエンジンの後押しするリングちゃん(P-RU192AA)とでは違うよね」


「うん。そうそう。ぬかるみや登りでの発進のしやすさとか通常の走行でも扱いやすい大排気量を買いたいっていう層がいるんで中古が熱いんだ」


「ふーん。そうか。よくわかるわ。ゴーゴーくん(RA552RBM改)って発進とかめっちゃ楽じゃん。それに4軸レッカーも27リッターエンジンでしょ。ええと次の交差点左ね。混んでるからちょっとはずすよ」


そう言って積載の隣で行先のナビをしている妹の佐野(さの) 雅子(まさこ)

峠のバトラーだったが、卒業してドリフト競技に参加、3回も優勝してしまった。

今はTSカーに乗ってみたいと言って車を探してきてTSカップに出るべく休日すべて使って僕と一緒に車を製作してレースデビューしてしまった23歳。

普段は家業に従事していて大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバス改造の貨物車、U-RP210GAN改275ps仕様、またはエムエム君と呼んでいるこれまたバス改造の貨物車の○アロスターMMのMM618J改の300ps仕様ので通勤している。

時には僕のバスコレクションから乗ってみたいバスを選んでは自分で運転して僕らが住んでいるアジトと言われている元祖父母の家から勤め先の大きな市内にある実家が経営している中古車版売店兼整備工場に通ってる。

家業では経理担当の副社長になっている。

普段は車両の仕入れ、売却、メンテナンス部品手配や整備した車の納車が主な仕事だが整備も好きで整備士の資格を取っているので、時には整備工場に来てお客さんの車をメンテすることもある。

工場が立て込んでいるときは僕らが住んでいるアジトと仲間たちから呼ばれているガレージでもお客さんの車を積載に乗せて来てメンテすることもある。

雅子は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、在学中に商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級を取っていて事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっている。

その雅子は進学せずに高校卒業後すぐ入社したスーパーでわずか4年チョイという異例の速さで係長に出世して、同期からは初の高卒30代女性役員誕生かとうわさされた。

しかし、当の雅子はいろんな車に乗る仕事したいと言ってあっさりスーパーを退職して家業についてしまった。

なぜなら雅子はスーパーでは出世することに全く眼中になく高卒ながら大卒でも7年はかかるはずの係長に5年目でなって大方の大卒5年目よりも多くの給料をもらっていたが事務所で仕事するのは性に合わないというのだ。

雅子は家業に従事してからは危険物、大型2種免許を取ってしかも整備士の二級免許、牽引免許も取ってしまったほどの車好きだ。

雅子はこのところGHATGTPやロボタイズのようなプログラム組むのが好きなこともあって自分のドリ車のエンジンの制御コンピューターも自分でプログラム組んでいた。

僕は雅子にエンジンを載せ替えたトラックのBCMのフルコンのセッティングをお願いしたらきちんと仕上げてくれた。

それに最新の点検機器も扱えるので整備の面でも助かる

他には実家の規模に合わせたいろんな経理システムを組んでいて、両親も大助かりといっている。

良かったのはしっかりと財務状況がわかるようなソフトを作って管理しているので今までは確定申告のときにバタバタだった準備作業が雅子の組んだソフトのお陰ですべてデータとして蓄積されていて簡単にネット上で申告できるようになっている。

確定申告では例年何日も夜なべして伝票整理、資料記入していたが、全くすることがないのだった。

部品の発注も整備の受注もネット上でできるようにしてあるので電話での対応も減っていてその分営業に時間がさけると営業担当の父親と母親は喜んでいるし、僕もネットで事前に不具合の状況を画像等でもらっているので修理箇所の予測がつけやすくなって仕事が早く進むと喜んでいる。

雅子は僕の古くからの友人で整備工場の副工場長をやっている隆弘がリーダーを務めるチームいて、そこでは僕と共にサブリーダーになっている。

ホームグラウンドでは断トツトップの速さで時には新たにチームに加入してきた後輩たちの運転指導もするようになっていた。

雅子が得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入ってアクセル全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに僕と雅子しかいない。

それにサーキットを走らせたタイムもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。

ドリ車を作ってでた競技で出場5回で3回の優勝してしまったほどの出来だった。

しかも優勝した3回はすべてドリフトとレース両方でトップという完全優勝だったのだ。

帰りのローダーの中ではもらったトロフィーを持って嬉しそうに笑っていて、やっぱり表彰台は真ん中がいいといっていた。

今度はTSカーでレースしたいと言っているのでこれも会社PRのためにスポンサーすることにしていた。

その雅子の普段の運転はとてもスムーズで隣に乗るとついつい寝てしまうくらいだ。

普段は車を労って走らせているのがよく分かる。

かつては大型バスを使ったスムーズドライブ競争でもプロに勝ってしまうほどのスムーズさなのだ。

僕:佐野 悟瑠(さとる)は妹より4学年上の3月生まれの26歳。

地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して5年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。

今は家業の中古車販売店、整備工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備もしていて、時には中古車の買い取り査定もする。

大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。

また、○ントリペアも勉強して資格もとった。

それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。

大型免許は大学在学中にとってさらに就職してから直ぐにけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。

キャリアトレーラーも中古車で買ったものでもある。

2級整備士の資格も取ってあるので運行の管理士になれるのもありバスも持ちたい放題だ。

それを良いことに中古だが、観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。

妹の雅子がメインで使っているバス含めて全部ターボにしてパワーアップと同時に黒煙対策している。

特に唯一のKL-規制対応のゴーゴーくん(RA552RBM改)はDPDが付いているのでエンジン本体での黒煙を減らしておきたかったのだ。

11台のバスにはパワーアップに対応して止まる方も強化としてリターダーを追加している。

家業の整備工場は大型車の整備もする関係で場所がいるので小型車のオイル交換等の軽整備は元々隆弘の親が経営していた整備工場に機器を移していてそっちでやることにした。

他に整備する工場としてはアジトと仲間から呼ばれている僕と雅子が住んでいるもと祖父が経営していた製材工場跡のガレージでやることになったのだ。

アジトと呼ばれているところには車両をいじる設備として、すべて中古ではあるが、大型車対応のボードオンリフトが2機、大型エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、板金道具一式、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、油圧ベンダー&カッター、ボール盤、旋盤、フライス盤、20トン対応天井クレーン、ワゴンしき工具箱、タイヤチェンジャー、バランサーまでそろっているので、メンテどころか改造迄できてしまう。

事実、ドリ車とTSカーはここでどんガラの状態から作り上げたのだ。

もっとも、スポット溶接機、レーザー溶接機、タイヤチェンジャー以外は祖父が現役の頃林業で道具や木材運搬車等が壊れると、そこで修理していたのでそれを受け継いだのだ。

2000トン油圧プレスは材木が反ってしまったときの修正用兼圧縮用でかなり大きいのだ。

油圧牽引機は木材で変形した運搬用トレーラーを直すためのものでその能力は200トンと聞いた。

この場所の敷地は搬送のために大型車が20台くらい悠々と停められる広さがあり、父親がこの場所を借りて中古車版売店を始めた場所でもある。

ここも整備工場として登録してある。

僕らの両親はどちらも車大好きでそれが高じて中古車屋兼整備工場を経営している。

父親はこのところ僕の趣味に感化されたのか中古のバスを3台も買ってきて全部をマニ割仕様して、それに乗ってどこどこ音をさせて営業に行ってしまっている。

それにレッカー車も買ってきて若いころやっていたマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーにしろと言うほどのマニ割マニアっぷりを発揮してしまった。

エギマニは自分でマニ割仕様をステンレスパイプをベンダーを使って手曲げで作ってしまうほどの腕を持っていた。

若いころは大型車が主な整備工場に勤めていてマニ割を相当数作ってはお客さんに収めていた、マニ割車を100台近く作ったというマニ割マエストロでもある

その業界ではちょっと名の知れた存在だ。

そんな父親なので、整備工場では僕が工場長になったのを良いことに隆弘の親が経営していた整備工場を買い取り本格的に大型車も整備するようになった。

父親は百合ちゃんの父親が経営する建設会社の重機の整備も請け負っていたのだ。

母親は独身の頃はドリフト競技に出ていたという位の運転好きだ。

競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時大型車メインの整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。

乗用車の整備工場では見てくれなかったが、大型車メインの工場なのにうちの父親が仕事を引き受けていたのだ

この両親を見れば僕と雅子が車大好き、運転大好きになってしまうのは当然だろう。


「佐野さん、お疲れ様です」


「ありがとうございます。これですね。TXD33A」


「ええ。倉庫に仕舞ったままで部品置き場になってましたよ。幸いブレーキは固着してないんで動かすのは何とかなりそうです。エンジンは無理ですね。燃料が腐ってて」


「固着がないのは助かります。外まで引っ張りだせればいいんですね」


「じゃあ、フォークで引っ張りますね。構内なら大丈夫です廃車を積むんで5トンなんですよ」


お店の人がゆっくりと5トンフォークリフトでボンネットトラックを倉庫から引っ張りだす

ダンプカーなので全長が短く積載に何とか乗りそうだ。

荷台をおろしてウインチで引き上げる。


「のったあ」


「何とかなりましたね。それでは契約しましょう」


「登録関係の書類でないのでどうしようかと思ってたんですよ」


「仕方ないですね。こっちで何とかしますよ。」


「これを直すんですか?これって多分ですがフレーム作り直しなんで部品取りですよ」


「僕らはキャビンが欲しくて買ったんです。全く問題ありません」


「そうなんですね。これはこれで」


僕らはお金を払って引き取って来た。

お店に着いた時、既に真っ暗で見えない

次の日におろすことにして工場に積載ごと入れてその日は帰って行った。

その週は僕と隆弘と隆文はKL-FS1KKCDとKL-CW55XKUD改の納車前整備をやっていた。

ナンバー変更は書類がそろってからやることにして取り急ぎ納めたのだ。

帰りに松尾さんから販売を委託されたダンプを乗って帰って来た。

QKGーCXZ77Aだった。


「これはトルクないや」


乗ってわかったのは発進する時のトルクが無い。


「7MTでもこれじゃあね。クラッチ焼くよ。一速多用だよ。これだけトルクないと無理効かないよな」


「うちで売れるかなー。とりあえずこれは笠木さんにも連絡しておこう。いつも探してもらってばかりだから」


「そうだな」


その週の残りの日でキャビンの載せ替えの仕事していた。

フレームとキャビンのマウント位置を調べ乗せるにはどうするか?考えていた。

週末、僕と雅子と隆弘達は高速で有名なサーキットに来てイベントに参加していた。

積載と高速道路が多いのでキューピーちゃん(KC-LV280N)できていた。

そのイベントでは車の展示とフリーマーケットもあるのだった。


「いろんな車見れていいよね。画像たっぷり撮って参考にしようね。え?この前の10位まで入った人は10週のエキシビションに出ろって」


「そうだね。え?エキシビション?やばいよ。ミッション変えてない。それにファイルも。今のままだとストレートで最高速度伸びないからまずい。すぐデフごと入れ替える5.182なんだよ。多分ストレッチの半分ちょっとで5速が吹け切っちゃう」


「わかった。いくつ?」


「4.556にする。ミッションはワイドのDDにしておく。5速9000回転で210キロは出るから大丈夫でしょ」


「うん、頼んだよ」


僕と隆弘、隆文はTSカーをピットに移動してミッションとデフホーシングを交換していた。

最高速が必要なこことこの前に走ったところではギヤ比に互換性は全くなく僕らは雅子が峠ように作ったソフトで乗り切っていたのだった。


「よし。サスとペラとデフのジョイントのトルクOKだ。ミッションは?」


「悟瑠さん。OKです。非常用でクレーンで釣っておくっていいですね」


「まあな、万が一の時に車が落ちてくるより良いだろ」


「隆文、悟瑠は安全きちんとするだろ。副社長だからな。従業員の安全には気を遣うんだよ。俺もそうだけど」


「そうか、兄貴は副工場長だもな」


「隆文、フリマでいいのあったら買っていいぞ。最もキューピーちゃん(KC-LV280N)に乗ればだけどな」


「悟瑠さんもすごいですよ。あのキューピーちゃん(KC-LV280N)にパワーゲートつけるんですからね」


「乗せ下ろし楽だろ」


「お兄ちゃん、車出来た?フリマでいいの買っちゃった。運ぶのお願い」


「いいよ。え?百合ちゃん?」


「あ、百合リン。どうしたの?」


ピットに現れたのは百合ちゃんだった。


「へへへ。来ちゃった。実はいいバス見つけちゃって買いに行ったかえりなのよ。パパは慰安旅行に行くんでのっかって来た。それで中古車屋さんの前でおろしてもらって雅子ならここにいると思って来ちゃった」


「んもう、あんた何を買ったの?」


キャブオーバー4WD(CVS19改)の特装バス。元はレントゲン車で総輪駆動。V10エンジンの330psだよ。山間部の移動検診車」


「何にすんのよ?」


「パパの会社で移動事務所にするんだって。最近現場が他県になることが有って連絡するのが困るから移動事務所にだって。総輪駆動はうちのお仕事ってダム関係もやってるでしょ。ほら、秘境みたいなところに行くから。それに自家発電装置積んでて最高じゃん」


「はああ、もしかして?このバスって言うかこれもうちに改造してくれってこと?移動事務所?」


「うん、お願いね。あ、そうそうキッチンカーもう一台いるって課長が言ってた。課長がバス見つけてあるの」


「えええ?」


「U-RB1WEAAの前後ドア、ターボだって」


「はああああ。これは何売るの?」


「うん、これはお惣菜。お弁当迄はいらなくてもお惣菜欲しい人用。測って販売するから調理は必要最小限。販売員の関係で準中で乗れるようにするんでこの車だって」


「百合リン。わかったわよ。7.5トン未満すればいいんだよね。よろしくね。お兄ちゃん」


「はああああ。はい」


とやっているとエキシビジョンの連絡が来た。


「百合リン、ちょっとごめん。あたしレースでるから着替えてくるね。見ててね」


雅子はキューピーちゃん(KC-LV280N)に入って着替えていた。


「お兄ちゃん、無線よろしく」


「はいよ」


着替え終わった雅子がコースに並んでいる車に乗り込む。

僕がベルトの締めるのを手伝う。


「本気にならない程度で行ってくるよ。ギヤ比の確認もあるからね」


「おう。そうだな」


「この車の最高速は計算上は210キロだよね」


「おう、その通り。5速9000で210キロにした。多分だけどストレートの200メートルくらい手前で210キロになるはず。4速で9500迄引っ張ればギリ行けるよ」


「OK、ありがと」


「じゃあ、何かあったら無線で頼むぜ」


ジョンと音を立ててドアを閉めた。

くううっ、ブロブロブロッとエンジンが目を覚ます。

ギヤ交換して間もないので温まっているはず。

ぴーーっとなってペースカー先導で20台の車がコースイン

最初に雅子のいるクラスの車が10台、後から1300cc以下のクラスが10台入って来た。

プロロローンと各車両が通過していく

雅子の車も快調に抜けて行った。

ぷーっとなってペースカーがピットに入る。

ブワワーンと各車両がフルスロットル。

エキシビションにもかかわらずみんな結構真剣に走っている。


「えええ?雅子はもう抜いてるし」


「レースそのものじゃん」


「トップも逃げ始めたぜ」


「すげー」


6番目からスタートした雅子は100Rでアウトからクリアその後はシケインを上手く最小の減速でクリアしてさらに一台抜いて行った。


「やるなー、雅子は」


「うん、アレがセンスだろ。周りにいないから完全に立ち上がり重視のラインで行ってるぜ」


「え?雅子の車ってあんなに速かったっけ?」


「あの2台は多分だけどこの前からギヤを変えてない。エンジンが吹け切ってるんだ。5速でめいっぱいだ」


「そう言うことか」


「うん、雅子は9500迄回してシフトアップしてるよ。他は見たところ9000か」


「そうだね。悟瑠のエンジンがいいからか?」


「あはは、それだけじゃないな、雅子の腕が一番効いてるよ」


「やるよな、雅子はほんと速い」


わー、わー、いけー

観客席からの応援。

6週目、雅子の車はトップを走っている車に追いついた。


「前の車ちょっとエンジン不調か?」


「そのようだな。雅子の車のパワーとの勝負じゃ無理だろ」


「ああ。後ろもバトルすげーじゃん」


「1300クラスもスゲーなー。1500クラスを抜いてるぜ」


「ストレートじゃかなわなくてもインフィールドは速いのか」


やれー、そこだー


「え?雅子のといい勝負?」


「待ってたのか?いいや違うな。最高速が伸びないのか。エキシビションだもんな。ここは見せ場だな」


「なんだ?あれ?ブレーキング競争?」


「やるなー、雅子も完全に本気モードだ。ブレーキ冷却も使ってるじゃん。ストレートでもラジエター冷却使ってるよ」


雅子の車から白煙が上がる

冷却用の水を噴射している


「最高速は雅子の方が上か。インフィールドはあっちはギヤが低めでシフト回数こそ多いけどコーナーとコーナーの繋ぎが速いのか」


「あ、雅子はいまタイヤ温存してるのか?」


「そうか、さっきのはもしもしかして相手のタイヤを?」


「かもな。ブレーキを遅らせて。あ、そうか。わかった相手のタイヤの具合を見たんだよ。どのくらい減ってるか」


「そう来るか。さすがだな」


「悟瑠さん、雅子ってバトってる最中でもそこまでやるのかな?」


「そうだよ。雅子の作戦はファイナルラップ一周前に最高速の伸びで抜く。なぜなら最高速の勝負となったら雅子が勝てる。相手が雅子を抜くとしたら第一コーナーの突込みのブレーキング競争だ。他にはシケイン。そこを抑えれば見る限りパワー差で勝てる」


「そうか、ストレートはしっかりブレーキが冷えるからがっちり踏める。しかし。相手のフロントタイヤが来てればシケインでは勝負できないってことか。第一コーナーさえおさえればいい」


「えええ?兄貴、雅子はそこまで考えて?」


「当然だろ。そうじゃなかったらあんなにドリフトで勝てないだろ。どうやってトップ取るか考えてるし、多分イメトレでこのコースも走ってるよ。悟瑠。そうだろ」


「ああ、雅子はゲームでここを何回も走ってるよ。今のゲームはリアルで車のスペックいれるとミューも計算して限界速度も出るよ。それで練習しまくってた」


レースはのこり2週を切った。

雅子はタイヤを温存するように相手に着いていく


「いいか、隆文、見てろ。雅子は最終は立ち上がり重視で抜けて行ってストレート前半で前を抜く、その後相手はスリップに入って第一コーナーで仕掛ける。それを抑え込む」


「うん」


僕が言った通り、雅子は前走車に邪魔されないようにシケインを抜けると後方からくる車が居ないのを確認して最終コーナーを立ち上がり重視のラインで抜けて行く。

ほとんど接触せんばかりに近づいていた雅子は3速で立ち上がり、そのまま一気に前走車を躱して行く

躱された相手は後ろについてスリップで引っ張られようとする。

それを嫌って雅子が進路を変える


「えええ?ここで10000まで?回すのか?」


「勝負とみたら雅子はやるよ」


エンジンを3速で10000迄回した効果で相手がスリップを使えない距離迄離れた

刹那4速にシフトアップして全開、テレメで見ているとエンジンは8000からリミットの9500目指して軽快に回転を上げて行く


「相手は上手くやられたって思ってるよ。今まで10000は温存していたからな。あっちは雅子に抜かれた時4速なんだろう。4速迄がやや低めでクロス、5速がやや離れてるんだろ。狙いはインフィールドだから」


「なるほど。悟瑠さん。雅子はそれも見切ってるのか?」


「ああ。何週か後ろついてみてたんだよ。1対1のバトルなら慣れているだろ」


「すっごーい。雅子って」


百合ちゃんが見ていたのをすっかり忘れていた。


「百合ちゃん、ワリイな。完全に雅子のことばっかりで」


「いいんですよ。雅子って走るの好きだもんね。ここでフルに走っていいんですか?相手に手の内さらすようで」


「いいんだよ。雅子はここ専用のセッティング見つけたよ。いい状態だ。多分セッティングのために走ったんだよ」


「はああ、雅子がまた遠くに行っちまったな」


「隆文、考えて走れって言うのわかっただろ」


「兄貴、まずは雅子に追いつくぞ。TSカー出る。○P61で行くよ」


「そうか。応援するぞ」


雅子は5車身引き離してファイナルラップに突入していた。

ファイナルラップを危なげなく走って戻って来た。

その後は雅子が買ったという部品をキューピーちゃん(KC-LV280N)に積んで、帰ってきた。

雅子は百合ちゃんが買った元レントゲン車のキャブオーバー4WD(CVS19改)に乗って帰ってきていた。

そのまま、百合ちゃんは僕らのアジトにお泊まりして雅子としゃべっていたのだった。

次の日からの仕事の段取り組しているうちに寝落ちしていた。

TSカーのギヤの選択はめっちゃ大変

家業ではキッチンカーの製作と総輪駆動のレストアにまい進する悟瑠達


いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。

今回はここで更新します。

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