第二十六話 僕と隆弘、隆文のダウンとまた古いバスが来ちゃう
もう一人バスにハマる百合ちゃん
実はそのお父さんも?
修理依頼されたバスは一体?
大忙しの悟瑠達は?
雅子の3連勝の余韻に浸る暇もなく、僕は丸松建設のP-RU192AAのタービン交換、ラジエター交換、インタークーラー追加、オイルクーラー追加とポンプ交換していた。
このところTSカーやエントリーで休みなしなので疲れがたまっていたのだった。
何とか乗り切り、P-RU192AAは、H06Cエンジンをオーバーホールしてピストン、ライナー、バルブ、バルブスプリング、噴射ポンプ、親メタル、子メタルとスリッパ―等を交換しておいた。
当然、ボルト類、ガスケット類も新品に全部交換して噴射ノズルの圧力も各気筒合わせておいた。
ブロックは洗浄液につけて洗浄、ヘッドも同様に洗浄して狂いを調べ軽く掬って均したうえ、再利用していた。
エンジンを組み立ててあちこち調整して仕上げたのだ。
勿論、ミッションは最新の路線用の5速に交換しておいた。
思ったよりも時間がかかったが、週末の金曜日午後に百合ちゃんの建設会社にP-RU192AAを納車した。
雅子がP-RU192AAを運転、僕はトラクターの生エンジンマニ割仕様で船底を引っ張って帰れるようしていた。
「佐野です。P-RU192AAお持ちしました。エンジンのオーバーホールと各部の点検整備終わったので納車に来ました」
雅子が建設会社の事務所に行って目的を告げた。
「佐野さん、どうもありがとうございます。よかった。これでまた現場にいける。百合のバス借りていたから助かる。佐野さんの社長にはよろしくお願いいたします。」
僕と雅子が納車に行くと社長と呼ばれた人がやってきて受け取っていた。
多分、百合ちゃんの父親だろう
このP-RU192AAで現場に職人を連れていくらしい
「こちらこそ。もう一台のP-RA52Mは再来週に納車します」
「はい、お願いします。今日はボンネット6×6ダンプの引き取りもですよね」
「はい、船底に乗っていると聞いたのでトラクターで来ました。」
「場所迄案内します」
社長の案内で船底置き場に行った。
建設会社の資材、重機置き場の奥に既に船底に乗ったボンネット6×6ダンプが置いてあった。
「これです。昨年この車の面倒見ていた工場が旧車の取り扱い辞めていて面倒見れないのと予備車両なんでなくてもあんまり不便しなかったんですが今年から山間部の現場が増えてどうしても総輪駆動が2台稼働して欲しいのでこれの車検取ることにしました。今は小回りが利く2軸の5.5トン積みでまわしているんですが回しきれなくなって来たんです。それに今年新車入れたんですが結構故障多くて予備車ないと仕事にならないんでボンネット6×4ダンプの復活です。いい中古のダンプ探していただければ」
「承知いたしました。探します。まずはこれですね。雅子、連結するぞ。後方確認よろしく」
「はいよ」
雅子の誘導で僕が運転する生エンジンマニ割仕様をゆっくりと船底に連結する。
ガッシャーンとカプラーの連結終えるとエアホースをつないで船底のブレーキが緩解するのを確認していると
「実はもう一台直して欲しいバスがあるんですが、お願いできますか?」
社長に声かけられた。
「社長。はい、どれでしょう。うちで出来るなら」
「木材倉庫の中です。実は昔、と言っても30年ほど前に父親が建設現場でもらったバスを引き上げて来ておいたんですが、なかなか直す機会がなくて。泥を落として倉庫に入れて内装の掃除してまではやったんですが。父親と一緒に全部自分達でやろうかと板金も途中まで手を付けましたが仕事が忙しくなって断念したんです。もうずっと放置なんですが百合のバス見てて動かすのもいいと思ったんです」
「承知しました。先ずはバスを見せていただけますか?」
「はい、これです」
そう言って倉庫の中で見せてくれたのはなんと激レアのキャブオーバーバスだった。
76年式で最終仕様、ボディは富士〇の13型中後ドアの元レントゲン車だ。
車が保管されている場所は旧車を保管する観点から見ると雨風が当たらないところで、いいことに木材倉庫なので空気を常時入れ替え、しかも扇風機で風をあててたので錆びも少なく結構いい状態だった。
「これを直したくていたんです、敷地内で乗ったらかなり黒煙吐き出すんで対策を百合に聞いたらターボがいいと聞いたんです、それなのでターボつけていただきたくて。エンジンは一月に一回はかけてオイルのメンテはしてたんです。タイヤは重機のエアレスにしていつでも走れるようにしてました。」
「はい、やってみます。ターボにするなら最新のトラック用のミッション、クラッチがあるんで使えれば230psいけます。うまくインタークーラー着けば250ps位にできそうです?後はフレームの錆とエンジンルームのスペース見て決めますね。社長は丁寧に運転するんでパワーアップしても大丈夫と思いますが」
「お願いできますか?これよりも先にダンプ2台車検取ってからですね。ボンネット6×4ダンプは父親の形見なんで捨てられなくて。ずっと予備車両だったんですがボンネット6×6ダンプとともに面倒見てくれる所無くなって去年車検切らしたんです」
「はい、承知しました。任せていただきたく」
僕と雅子は船底を引っ張ってボンネット6×6ダンプを引き上げてきていた。
「お兄ちゃん、直ぐに船底返さないとね」
「そうだね。ボンネット6×6ダンプをおろしたら返しに行こうね」
「さっきの社長さんに返しに行くって言っておくよ。そういえば、倉庫に有ったバスアレ何年式?クラッシックだよね。あのバスって残ってたの?初めて見た」
「よろしく。僕はボンネット6×6ダンプをおろすね。そうだよ。銘板みたら76年式って書いてあった。僕も初めて見た」
工場にバックで船底を入れてバッテリーをつなぐとキーをひねってボンネット6×6ダンプのエンジンを始動した
くううっ、くううっ、くううっ、グロ、グログロッ、グロロロッ、グロロロッ、ガラララッ、グロロロッ、ガラララッ、ガラララッ、ガラガラガラと最初スターターも苦しそうだったが回しきってエンジンがかかりガラガラガラとアイドリング始めた。
カタカタカタとメタル打音のような音がする。
「隆文。おろすぞ、誘導たのむ」
「悟瑠さん。そのままゆっくりバック」
「行くぞ」
ゆっくりおろしていく
船底からおろし切ると隆文が自走でリフト迄走って入れておく。
そのまま、僕は船底を返しにいった。
建設会社に入って行くと社長かでてきて
「佐野さん、ボンネット6×4ダンプをこれに乗せておきますんで」
「そうですね。引き取りはまたトラクターできますね」
「よろしくお願いいたします。」
ハーネスとエア管を外してカプラーを切り離すと会社に帰って来た。
会社に戻ってきて
「お兄ちゃん、P-RA52Mは完成まであとどのくらいかかるの?」
「あと1週間くらいかな?頑張ってみるよ。部品はそろったし。480psポンプも着いたし、オーバーホールもしたから。組むだけ。それよりもキャブオーバーバスどうしようかな?部品あるかな?」
「よかった。百合リンが 武蔵君の練習したいって。勤務のお休みに合わせてアジトにくるの。それは車見て決めればいいよ。カムとか作れないかな?」
「そうだね。百合ちゃんの練習はお店の定休日の前日からにしよう。ないなら作ればいいや。隆弘の会社は元々いろんな部品作っていたんだ」
「うん、そうしよう。百合リンに言っておくね。百合リンにお泊まりで来てねって」
「そうだね。夜の峠と昼の街中練習かな?」
「そう。通勤の時は楽って言ってた。なんか阿吽の呼吸がわかるって言えばいいか」
「そうだろうな」
「あたしもそう思うよ。車線変更とか、慣れてると阿吽で入るのに入らないとか」
「うん、サンデードライバーが一番厄介だよ」
「そうかも、百合リンに今必要なのは峠走って車両感覚鍛えてかな?」
「そうだよ。9メートルよりも2メートル長いからね」
「ルートは先に旧道で後からバイパスかな?」
「それがいいよ」
「それで行こう」
「じゃあ、日曜の夜ね」
日曜日迄僕、隆弘、隆文はボンネット6×6ダンプとP-RA52Mに掛かり切りで整備、ターボにしていた。
P-RA52Mの整備内容はP-RU192AAと同じくピストン、ライナー、バルブ、バルブスプリング、噴射ポンプ、親メタル、子メタル、プッシャー、スリッパ―、ボルト類、ガスケット類だ。
ブロックは洗浄液につけて洗浄、ヘッドも同様に洗浄して狂いを調べ軽く掬って均したうえ再利用だ。
幸いにもこのバスもオイル交換をきちんとやっていたのだろう、エンジン関係の手入れが良く、カムとクランクは全くと言っていいほど減っていない。
冷却水の交換もきちんとしていたようでブロックの湯垢も少ないのだ。
とはいってもヘタる部品はヘタるので交換しておいた
「悟瑠、このP-RA52Mのパワーはどのくらいの予定だ?」
「隆弘、出力は455ps/2300rpm、トルクは155kg/1400rpmの予定。ミッションの関係でこれくらいだな。」
「それなら冷却系は余裕だな。後で例の坂に問題ないか見に行くんだろ」
「ああ、見に行く。マフラーはタイコにMD92の300ps用使うから。フルデュアルなんだが排気口はノーマル形状にするよ」
「それもよし、だな。ゴロゴロ言うけど静かってパターンだな」
「そうだよ。それが狙いだから。エギゾーストパイプは全部ステンレスになるから錆にも強いよ」
「いいことづくめだな」
僕らはP-RA52Mにターボと周辺部品を取り付け、冷却系を交換、その後に水漏れ、オイル漏れ確認するためにエンジンをかけっぱなしで放置していた。
並行してアルバイト君と隆文にはボンネット6×6ダンプの車検整備をお願いしておいた。
このトラックは年式相応でアイドリングでカンカンカンというピストンスラップの音が聞こえるのとカタカタカタとメタルの打音もするのでオーバーホールも必要になるとオーナーの社長に断って開けてみた。
開けてみると、買ってから一度もオーバーホールしてないだけあってピストンとライナーのクリアランスが既定の倍以上あってこれではスラップ音が酷いだけでなく始動不良やパワーが出ないのは当然なのだ。
幸いにもこの車のエンジンが6BGなので部品がまだ入手できる、すなわちオーバーホールも楽だ。
よくよく調べてみるとこの車のエアエレメントに着いているガスケットが一部で破れていてそこから埃を吸っていたようだ。
建設現場の埃で汚れた吸気系の掃除もしてもとに戻そうとしていたところ、依頼主の社長から電話が来てこのボンネット6×6ダンプもターボにできないかと相談されてしまった。
純正でこのエンジンに210ps仕様があるのでその部品を使えばいいと思って急遽雅子に集めてもらっていた。
問題は、エンジンルームが狭いのでインタークーラーと容量の大きいラジエターが入るかだ。
寸法を測って検討した結果、困ったことに大型用のインタークーラーが入らないのだ。
「悟瑠、どうしようか?インタークーラー無しのターボかな?」
「仕方ない、入るサイズのインタークーラー入れよう」
「圧損にならなきゃいいか」
「そうだな。230ps位ならHK〇のがあるんじゃないか?」
「それでいこうか」
「雅子、ワリイがHK〇の薄いインクラ手配頼む」
「いいわよ。百合リンのパパってリングちゃんのタービン交換したのに乗って思った以上に速くなったから全部にターボ欲しいとか言ってるんだよ。あ、そうだ、P-RU192AAはリングちゃんと呼ぶことにしたの。それに百合リンのマキちゃんにも乗ってるし」
「そう言うことか。リングちゃんもトルクが20%近く大きくなったからねえ」
「それに百合リンも速い車好きだもんね。サザン君乗ってるのはそのため」
そう言ってトラックを改造する部品の手配をしに事務所に行った妹の佐野 雅子。
免許を取ってしばらくは峠のバトラーだったが、その後はドリフト競技に嵌って2回も優勝してしまった、今回はTSカーに乗ってみたいと言って車を探してきてTSカップに出るべく休日すべて使って僕と一緒に車を製作してシェイクダウンしている23歳。
普段は大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバスの改造車の貨物車、U-RP210GAN改275ps仕様、またはエムエム君と呼んでいるこれまた元バスの○アロスターMMのMM618J改の300ps仕様の貨物車、時には僕のコレクションから乗ってみたいバスを選んでは自分で運転して僕らが住んでいるアジトと言われている元祖父母の家から勤め先の大きな市内にある実家が経営している中古車屋兼整備工場で経理担当の副社長になっている。
普段は車両の仕入れ、売却、メンテナンス部品手配や整備した車の納車が主な仕事だが整備も好きで整備士の資格を取っているので、時には整備工場に来てお客さんの車をいじることもある。
僕らが住んでいるアジトとチームの仲間たちから呼ばれているところでもお客さんの車を積載に乗せて来てメンテすることもある。
妹の雅子は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業していて、在学中に商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級を取っていて事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっていた。
その雅子は進学せずに高校卒業後すぐ入社したスーパーでわずか4年チョイという異例の速さで係長に出世して、同期からは初の高卒30代女性役員誕生かとうわさされた。
しかし、当の雅子はいろんな車に乗る仕事したいと言ってあっさりスーパーを退職して家業についてしまった。
なぜなら雅子はスーパーでは出世することに全く興味なく高卒ながら大卒でも7年はかかるはずの係長に5年目でなって大方の大卒5年目よりも多くの給料をもらっていたが事務所で仕事するのは性に合わないというのだ。
なぜなら、もともと車を運転するのが大好きでいろんな車に乗れる仕事がしたいといって、家業の中古車販売店、兼整備工場に転職した。
家業に従事してからは危険物、大型2種免許を取ってしかも整備士の二級免許、牽引免許も取ってしまったほどの車好きだ。
ちなみにスーパーでの実績は入社3年目で、各店舗から集まる情報処理集計システムを自分で組んでしまった。
いいところは妹が作ったソフトのほうが勤めていた会社の事情に合っていたのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とメンテナンス費用が浮いた。
その成果が認められ、高卒の3年目の途中10月に主任に昇格して、後輩を部下を持ってその指導もするようになった。
4年目の7月からは主任として新しく入ってきた自分より年上の大卒を部下にもってチームを組んで仕事していたのだ。
スーパーにいた頃の所属は経理部だが、4年目の4月から全社の業務効率化チームのサブリーダーに抜擢されて仲間と一緒に効率化、自動化を進めていた。
そのチームで売り上げ仕入れ管理システムのプログラムを雅子達が自力で組んでしまってさらに業務効率が上がったのだった。
当時は雅子の直ぐ上の係長がリーダーをやっていたが、効率化の褒美で雅子が入社5年目にの時には係長が課長に雅子が係長に昇格したのだった。
5年目からは係長になった雅子がリーダーでさらなる効率化と拡販手法の提案とスタディをやっていた。
雅子はプログラム組むのが好きなこともあって自分のドリ車のエンジンの制御コンピューターも自分でプログラム組んでしまった。
それなので僕はエンジンを載せ替えたトラックのBCMのフルコンのセッティングをお願いしたらきちんと仕上げてくれた。
最新の点検機器も扱えるので整備の面でも助かる
他には実家の規模に合わせたいろんな経理システムを組んでいて、両親も大助かりといっている。
特にしっかりと財務状況がわかるようなソフトを作って管理しているので今までは確定申告のときにバタバタだった準備作業が雅子の組んだソフトのお陰ですべてデータとして蓄積されていて簡単にネット上で申告できるようになっている。
例年夜なべして伝票整理、資料記入していたが、全くすることがないのだった。
部品の発注も整備の受注もネット上でできるようにしてあるので電話での対応も減っていてその分営業に時間がさけると母親は喜んでいるし、父親もネットで事前に不具合の状況を画像等でもらっているので修理箇所の予測がつけやすくなって仕事が早く進むと喜んでいる。
走りの面では妹は峠を走り始めて既に6年目になっていて、僕の古くからの友人で整備工場の副工場長をやっている隆弘がリーダーを務めるチームで僕と共にサブリーダーになっている。
ホームグラウンドでは断トツトップの速さで時には新たにチームに加入してきた後輩たちの運転指導もするようになっていた。
雅子が得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入ってアクセル全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに僕と雅子しかいない。
それにサーキットを走らせたタイムもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。
ドリ車を作って競技に参加するほどに嵌っていた。
この前はなんと出場4回目で2回の優勝してしまったほどの出来だった。
しかも2回ともドリフトとレース両方でトップという完全優勝だったのだ。
帰りのローダーの中ではもらったトロフィーを持って嬉しそうに笑っていたのだが、やっぱり表彰台に乗る時は真ん中がいいといっていたくらいの負けず嫌いだ。
このドリ車はうちの中古車屋でスポンサーしていて中古車屋兼整備工場のPRの一環としてやっていた。
今度はTSカーでレースしたいと言っているのでこれもPRのためにスポンサーすることにしていた。
その雅子の普段の運転はとてもスムーズで隣に乗るとついつい寝てしまうくらいだ。
普段は車を労って走らせているのがよく分かる。
かつては大型バスを使ったスムーズドライブ競争でも勝ってしまうほどのスムーズさなのだ。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の3月生まれの26歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して5年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今は家業の自動車工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備もしていて、時には中古車の買い取り査定もする。
大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。
また、○ントリペアも勉強して資格もとった。
それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。
大型免許は大学在学中にとってさらに就職してから直ぐにけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。
キャリアトレーラーも中古車で買ったものでもある。
2級整備士の資格も取ってあるので運行の管理士になれるのもありバスも持ちたい放題だ。
それを良いことに中古だが、観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
妹の雅子がメインで使っているバス含めて全部ターボにしてパワーアップと同時に黒煙対策している。
特に唯一のKL-規制対応のゴーゴーくんはDPDが付いているのでエンジン本体での黒煙を減らしておきたかったのだ。
家業の整備工場は大型車の整備もする関係で場所がいるので乗用車等の軽整備は元々隆弘の親が経営していたエンジン整備工場に機器を移していてそっちでやるか、アジトとチーム員から呼ばれている僕と雅子が住んでいるもと祖父が経営していた製材工場跡のガレージでやることになったのだ。
アジトと呼ばれているここには車両をいじる設備として、すべて中古ではあるが、ボードオンリフトが2機、エアーコンプレッサー、スポット溶接機、MIG溶接機、プロパン+酸素バーナー、レーザー溶接機、板金道具、定盤、2000トン油圧プレス、油圧けん引機、ベンダー、ボール盤、旋盤、フライス盤、ワゴンしき工具箱、タイヤチェンジャー、バランサーまでそろっているので、メンテどころか改造迄できてしまう。
事実、ドリ車とTSカーはここでどんガラの状態から作り上げたのだ。
もっとも、スポット溶接機、レーザー溶接機、タイヤチェンジャー以外は祖父が現役の頃林業で道具や木材運搬車等が壊れると、そこで修理していたのでそれを受け継いだのだ。
2000トン油圧プレスは材木が反ってしまったときの修正用兼圧縮用でかなり大きいのだ。
油圧牽引機は木材で変形した運搬用トレーラーを直すためのものでその能力は200トンと聞いた。
この場所の敷地は搬送のために大型車が20台くらい悠々と停められる広さがあり、父親がこの場所を借りて中古車版売店を始めた場所でもある。
僕らの両親はどちらも車好きでそれが高じて中古車屋兼整備工場を経営している。
父親はこのところ僕の趣味に感化されたのか中古のバスを3台も買ってきて全部をマニ割仕様して、それに乗ってどこどこ音をさせて営業に行ってしまっている。
それにレッカー車も買ってきて若いころやっていたマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーにしろと言うほどのマニ割マニアっぷりを発揮してしまった。
エギマニは自分でマニ割仕様をステンレスパイプを手曲げで作ってしまうほどの腕を持っていた。
若いころは大型車が主な整備工場に勤めていてマニ割を相当数作ってはお客さんに収めていた、マニ割車を100台近く作ったというマニ割マエストロでもある
その業界ではちょっと名の知れた存在だ。
そんな父親なので、整備工場では僕が工場長になったのを良いことに本格的に大型車も整備するようになった。
母親が独身の頃はドリフト競技に出ていたという位の運転好きだ。
競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。
乗用車の整備工場では見てくれなかったが、大型車の工場なのにうちの父親が仕事を引き受けていたのだ
この両親を見れば僕と雅子が車大好き、運転大好きになってしまうのは当然だろう。
「隆弘、P-RA52Mはどうだい?問題なしかな?」
水漏れ、オイル漏れ、オーバーヒートを確認していたバスの様子を隆弘に聞いた。
「うん、今のところ。リザーバーもみたよ。エアは抜けきった」
「じゃあさ、明日は休みだからあした百合ちゃんの運転練習の時に走らせよう。全開で走って問題ないか見てみる。問題ないなら納車だな」
「そうか、それならいいかもね。百合ちゃんにも運転してもらうのもいいよ」
「そうだな。それもいいや」
僕は雅子に言って乗って来た錦君ではなくターボを付けたP-RA52Mでアジトに帰った。
ごはんの準備しているとカラカラカラという軽い直6の音とドリュドリュドリュゴロゴロゴロというV8フルデュアルの排気音を響かせて雅子と百合ちゃんのバスが入って来た。
乗って来たのは雅子はエムエム君、百合ちゃんは自分の武蔵君だった。
僕は誘導してバスを停める
「お兄ちゃん、今日は武蔵君とラムちゃんで行くの?あ、忘れてた、P-RA52Mはニックネームはラムちゃんにしたよ。P-RA52Mアルファベットからラムちゃん」
「うん、武蔵君とラムちゃんの2台で行く予定。夜の峠を走っていつもの登りを抜けて明日の朝にここに戻ってくる」
「バイパスの下りは?」
「それよりも、草○街道の下りの方も結構急だから練習にはいいよ」
「そうだよね。お兄ちゃんはラムちゃんで走るのね」
「そう、コースは僕が案内するから百合ちゃんは僕の後に着いてくればいい。先にバイパスで行くから」
「わかったわ。脇であたしが百合リンにアドバイスすればいいのね。」
「うん。例の坂道は雅子がラムちゃんを運転してくれ。僕が後ろから煙の出方見たいから」
「OK。あたしは百合リンには武蔵君でリターダーと排気の使い方ね」
「それと車幅感覚と速度感よろしく。結構速度乗ってるから」
「うん、そうする。百合リン、ご飯食べたら練習行くからね」
「はい、悟瑠さんありがとう。」
僕らは食事を済ますとまずは武蔵君とラムちゃんでバイパスを全開で登っていた。
百合ちゃんの運転は危なげないので結構安心してみていられる。
バイパスでは武蔵君は黒煙の量も少なくいい調子で走っている。
「雅子、水温はどうだ?」
『正常よ、タコメーターのリミット付近はやっぱりニイナちゃんよりも回んないね。あと100回転』
「仕方あるまい。うまくパワーバンドで走ってくれ」
『うん、百合リン、このバスはリミットは2400だけど2300と思って走ってね』
『うん、わかった。レッド迄じゃなくてちょっと早目にシフトアップね』
『そうよ』
「雅子、その調子だ」
『OK、百合リン、いい調子だって』
峠を登り切って麗の坂にいく
ここは狭いので2.5幅だと11メーター車でも2速と3速しか使えない。
全開で走るにはいい場所だ。
途中で雅子にラムちゃんの運転を代わってもらって、僕が武蔵君を運転して後ろから付いていく。
夜なのでヘッドライトの光が頼りだが黒煙は殆んど吐かずに上って行く
「すごい、あのラムちゃんが煙吐かない」
「ターボにして良かったよ。雅子、水温、油温はどうだ?」
『お兄ちゃん、水温も油温も正常。いい調子よ』
「それは良かった」
『ラムちゃんのエンジンがリミットまで簡単に回るよ。いい調子』
「良かったよ、じゃあさ、笠木さんのお店に行く途中のサミットまで行って折り返そう。下りで百合ちゃんに武蔵君でリターダーと排気の使い方勉強してもらって」
『OK、サミット迄ガンガン踏むよ』
「テストだから行けるだけ踏んで」
『承知』
雅子がエンジンを上手くリミットまで引っ張って走る。出力では武蔵君が勝るが、車重ではラムちゃんが大凡500kg軽いので結構いい勝負だ。
「凄い。雅子ってあたしよりもはるかに速い。悟瑠さんもそうだけどそれでもギヤなりしないんだ」
「うん、回転が合うところがあるからそこで一気に入れると大丈夫」
「勉強になるなあ。雅子がドリの大会で優勝するのわかるわ。きちんとパワーバンド使って走ってる」
「そうだね。雅子はそういうのは天才的にうまいんだよ」
僕らはサミットのところでターンしてアジトに戻っていた。
前は雅子の指導受けながら百合ちゃんが武蔵君で下っている。
排気とリターダーになれないのか?時折百合ちゃんはついつい、ブレーキを踏んでしまう。
とは言っても2連装した、強力なリターダーがいい仕事していた。
僕が運転しているラムちゃんにリターダーは付けたが、単機なので排気とシフトダウンしたエンジンブレーキ、リターダーを駆使して慎重に急坂を下って行く。
いいのはこの車はロッドなのでフィンガーと違って速度で弾かれない、オーバーレブぎりぎりでもシフトダウン出来てしまう。
3速で排気とリターダーを使ってゆっくり下れば問題ないことがわかってほっとしていた。
後付したメーターの数値も正常だ。
無事に下りきってアジトに着いて爆睡だった。
次の朝、百合ちゃんの練習に付き合うために起きたがどこかだるい。
熱を測ると37度後半だった。
「雅子、すまん。熱があって百合ちゃんの街中の練習にいけない」
「わかった。あたしが行ってくるよ。百合リン、悪いけど街乗りの練習したらあたしをお店においてくれる?錦君で帰ってくればいいから」
「ありがと。悟瑠さん大丈夫?」
「多分、ちょっと疲れがたまったのかも」
「そうね。お兄ちゃん確かにこのところハードだったもんね。いいよ。神様が休めって言ってるの。ゆっくり寝てね」
雅子は僕にお昼ご飯を準備すると百合ちゃんと出かけて行った。
夕方まで寝たが直らず、雅子が全部世話してくれた。
休み明けの日、それでも僕の熱は下がらず、お店を休んでしまった。
雅子に聞くと隆弘と隆文もダウンしたらしい。
このところ忙しすぎたようだ。
それでも移動キッチンの製作やボンネット6×6ダンプの車検も有って仕事が溜まってしまっていたのだった。
ダウンしてしまった悟瑠たち
注文は待ってくれず
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。




