第二十二話 雅子のドリフトを卒業と百合ちゃんがバスに嵌って
雅子の友人百合ちゃんがどうやらバスに嵌ったようで
ドリフトを卒業して?次に雅子が嵌ったのは中古車屋らしい選択でした。
「うん、百合リンにも教えておくよ。明日の午後には引き取ってきて来れるから、お店についたら軽くお掃除しよ。百合リンには早引けして見に来るか聞くよ」
「だね」
僕らは手分けして僕は親父に、雅子は百合リンという女子に連絡していた。
すると
「え?明日は百合リンお仕事休みだから一緒に笠木さんのところにバスを見に行きたいって」
「百合リンって娘この場所しってるの?アジトから直行なんだけど」
「うん、知ってるよ」
「朝の7時に出発だけど来れるかな?」
「連絡するよ」
雅子が連絡すると来ると言うので僕らと一緒に行くことにしていたのだった。
「お兄ちゃん。明日は何で行こうか?」
「そうだな。今度は錦君でいくか?320ps仕様も良いだろ。これは高回転の伸びがいいぞ。」
「そうね。それもいいか。寝よう。おやすみ」
僕らは昼間の競技会の疲れで爆睡していたのだ。
次の日、6時ごろ起きた僕らは笠木さんのお店に行くべく準備していた。
ご飯を食べ終わって、錦君の暖機していると百合リンという娘がきた。
「お世話になります。百合です。」
「百合リン、どっちがいい?左のかぶりつき席と右のと」
「もちろん、左でしょ。大型車の運転見たいじゃん」
「いうと思ったわよ。左ね。運転はあたし」
「え?雅子が?」
「うん、いいでしょ。行くわよ」
「雅子、行こうか」
「シュッパーツ」
ぷっ、ぎんっという音ともにギヤを2速に入れてシュッとブレーキを開放、ゆっくりクラッチをつなぐ
スムーズに走り出した
ぐおおおおんと1600まで引っ張ってプッシュプッシュというエアアクチュエータの音とと主に3速にいれてぐおおおおんと1600まで引っ張るとひゅーんとタービンの音が聞こえてくる。
タービンの音とともにググっともりあがるトルク。
大凡9.5トンのボディーを軽々と引っ張り上げる。
プッシュプッシュぐおがららら4速にシフトアップ。
4速でもターボが効いて登り坂をものともしないで加速する。
制限速度+となったところで雅子は5速に入れた。
「すごーい、これ5速で行けちゃうの?」
「そうよ。お兄ちゃんがいじったからね。320psでトルクが118キロ、ボディーが10トン切ってて軽いから楽よ」
「そうなんだ。あたしが買う車ってどうなの?」
「多分出力関係は似たり寄ったり、でも観光系は大体11トン位あって重いからちょっと遅いかも。確か330の110キロ。あ、そうかあっちはグロスか。この車はシャシ台で320出てるからこっちがかなり速いわ」
「そうか。ねえ雅子、この車みたいにターボって付けられる?」
「うん、それは百合ちゃんが望めばやるよ」
僕が答える。
「お兄さん、お願いします、ぜひターボにしてください。実力で450くらいいけるかな?」
「多分、だいじょうぶだよ」
「450にするのは良いけど。乗りこなせるの?ターボはトルクの塊になるから登りでもガンガンいっちゃうよ。でも、下りはターボ無しと一緒だからね。ギヤ落として排気使っていないとブレーキ効かなくなって刺さるよ」
「そうなの?」
雅子はそう言いながら4速と5速を使って登りを登っている。
後ろに行って黒煙の状態を見ても雅子がフルスロットルで走っているにも関わらず、ほとんど見えなくていい状態のようだ。
「そうよ。大型に強化ブレーキなんて無いからせいぜいやっても補助ブレーキ強化するくらいよ。ほらこれだってこの坂を4速で行けるんだよ。後ろの車が抜いて行ったけど多分あっちもフルに踏んでるはず。この車はそんなに速くないけどゴーゴーくんなんてめちゃっぱやだかんね。80キロ出ちゃうんだ」
「えええ?この登りで?」
「うん、そうよ。排気量あるから排気が効いていいけど気をつけないと危ないくらい出るよ。580psは伊達じゃないって」
「えええ?そうなんだ。これで320って言ってたよね」
「うん、トルクが112キロだから結構出てるでしょ」
「ターボないなら3速かな?登って来たギヤで下れって言うもんね」
「そうよ。あ、下りに来た。ここからは排気とリターダーつかうから。きちんとこの車は効くからブレーキ踏まずに済むけど」
「へええ、こんなに減速するの?ほんとだ。補助ブレーキで行ける」
「これはね。お兄ちゃんが排気とリターダー両方付けたから。そうでもしないと危ないって。4速で下るの楽勝でしょ」
「そうなんだよ。雅子が言うように乗用車みたいにブレーキ強化ってできないから。補助ブレーキを強化して停めるんだよ」
「そうなんだ。お兄さん。あたしのにもリターダーつけて」
「わかった。ミッションいいのあるか探してみるよ」
「お願いします」
ぶばばばーっ、くいーんと雅子は排気とリターダーを駆使して下っている。
「百合リン、いいかな?こうやるとほとんどブレーキ踏まないで行けるでしょ」
そう言ってスムーズにバスを運転で僕らを乗せて笠木さんのお店に向かっている妹の佐野 雅子。
以前は峠のバトラーだったが、今はドリフト競技に嵌っていてドライバーとして競技に参加している23歳。
普段は大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバスの改造車の貨物車、U-RP210GAN改275ps仕様、またはエムエム君と呼んでいるこれまた元バスの○アロスターMMのMM618〇改の300ps仕様の貨物車、時には僕のコレクションから乗ってみたいバスを選んでは自分で運転して僕らが住んでいるアジトと言われている元祖父母の家から市内にある実家で経営している中古車屋に通っている。
既に整備士の資格を取っているので、時には整備工場に来てお客さんの車をいじることもある。
アジトでもお客さんの車を積載に乗せて来てメンテすることもある。
雅子は高校卒業後すぐ入社して4年チョイ務めて異例の速さで係長に出世して、同期からは初の高卒30代女性役員誕生かとうわさされたスーパーを車に乗る仕事したいと言ってあっさり退職して家業についてしまったのだ。
今は家業の中古車屋では専務となって経理関係全て見ているし、納車や部品手配も時には軽整備もする。
妹は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級と事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっていた。
それなので、進学せずに地元資本の大手スーパーの経理部に学校推薦で入って、高卒ながら5年目で係長になって大卒5年目よりも多くの給料をもらっていたが、もともと車を運転するのが大好きでいろんな車に乗れる家業に転職した。
家業に従事してからは危険物、大型2種免許を取ってしかも整備士の二級免許、牽引免許も取ってしまったほどの車好きだ。
スーパーでの実績は入社3年目で、各店舗から集まる情報処理集計システムを自分で組んでしまい、今まで買っていたソフトが不要になった。
しかも妹が作ったソフトのほうが勤めていた会社の事情に合っていたのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とメンテナンス費用が浮いた。
その成果が認められ、高卒の3年目の途中に主任に昇格して、部下を持ってその指導もするようになった。
4年目の7月からは入ってきた自分より年上の大卒を部下にもってチームを組んで仕事しているのだから驚く。
スーパーにいた頃の所属は経理部だが、5年目の4月からなんと係長に昇格して全社の業務効率化のリーダーに抜擢されていた。
そのチームで売り上げ仕入れ管理システムのソフトを雅子達が自力で組んでしまってさらに業務効率が上がったのだった。
それだけプログラム組むのが好きなこともあって自分のドリ車のエンジンの制御コンピューターも自分でプログラム組んでしまった。
それなので僕はエンジンを載せ替えたトラックのBCMのフルコンのセッティングをお願いしたらきちんと仕上げてくれた。
家業の方でも、いろんな経理システムを組んでいて、両親も大助かりという。
特にしっかりと財務状況がわかるようなソフトを作って管理しているので今までは確定申告のときにバタバタだった準備作業が雅子の組んだソフトのお陰ですべてデータとして蓄積されていて簡単にネット上で申告できるようになっている。
例年夜なべして伝票整理、資料記入していたが、全くすることがないのだった。
部品の発注も整備の受注もネット上でできるようにしてあるので電話での対応も減っていてその分営業に時間がさけると母親は喜んでいるし、父親もネットで事前に不具合の状況を画像等でもらっているので修理箇所の予測がつけやすくなって仕事が早く進むと喜んでいる。
走りの面では妹は峠を走り始めて既に6年目になっていて、僕の古くからの友人で整備工場の副工場長をやっている隆弘がリーダーを務めるチームで僕と共にサブリーダーになっている。
ホームグラウンドでは断トツトップの速さで時には新たにチームに加入してきた後輩たちの運転指導もするようになっていた。
雅子が得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入ってアクセル全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに僕と雅子しかいない。
それにサーキットを走らせてもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。
今はドリ車を作って競技に参加するほどに嵌っている。
この前はなんと出場4回目で2回の優勝してしまったほどの出来だった。
しかも前と同じくドリフトとレース両方でトップという完全優勝だったのだ。
帰りのローダーの中ではもらったトロフィーを見て嬉しそうに笑っていたのだが、やっぱり表彰台に乗る時は真ん中がいいといっていたくらいの負けず嫌いだ。
このドリ車はうちの会社でスポンサーしていて会社のPRの一環としてやっている。
雅子の普段の運転はとてもスムーズで隣に乗るとついつい寝てしまうくらいだ。
普段は車を労って走らせているのがよく分かる。
かつては大型バスを使ったスムーズドライブ競争でも勝ってしまうほどのスムーズさなのだ。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の26歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して5年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今は家業の自動車工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備もしていて、時には中古車の買い取り査定もする。
大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。
また、○ントリペアも勉強して資格もとった。
それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。
大型免許は大学在学中にとってさらに就職してから直ぐにけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。
キャリアトレーラーも中古車で買ったものでもある。
2級整備士の資格も取ってあるので運行の管理士になれるのもありバスも持ちたい放題だ。
それを良いことに中古だが、観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
妹の雅子がメインで使っているバス含めて全部ターボにしてパワーアップと同時に黒煙対策している。
特に唯一のKL-のKL-RA552RBM改はDPDが付いているのでエンジン本体での黒煙を減らして起きたかったのだ。
僕らの両親はどちらも車好きでそれが高じて中古車屋兼整備工場を経営している。
父親はこのところ僕の趣味に感化されたのか中古のバスを3台も買ってきていじってマニ割仕様して、それに乗ってどこどこ音をさせて営業に行ってしまっている。
それにレッカー車も買ってきて若いころやっていたマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーにしろと言うほどのマニ割マニアっぷりを発揮してしまった。
エギマニは自分でマニ割仕様をステンレスパイプを手曲げで作ってしまうほどの腕を持っていた。
そんな父親なので、整備工場では本格的に大型車を整備するようになった。
大型車の整備をする関係で乗用車等は元々隆弘の親が経営していたエンジン整備工場に機器を移してそっちでやるか、アジトとチーム員から呼ばれている僕と雅子が住んでいるもと製材工場でやることになったのだ。
母親の独身の頃はドリフト競技に出ていたという位の運転好きだ。
競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。
この両親を見れば僕と雅子が運転大好きになってしまうのは当然だろう。
「雅子の運転ってめっちゃスムーズだよね。よくこんなにバスをスムーズに運転できるね」
「任せてよ。練習したもんね。ドリフトとかやってるとスムーズに走らせないといい成績と取れないんだもん」
「そうだね。隆文が雅子に追いついてないのは抉った走りするところだからね」
「そうなんだ。雅子ってすごいんだね。昨日も優勝でしょ」
「何とかね。隆文も速くなったし、ドリフトも上手くなったんだよ」
「へええ、隆文さんってチームのヒルクライム担当でしょ。あたしのチームでも速いって言われてたよ」
「そうだよ、大パワーの扱いは上手いし、コーナーの抜け方もうまいんだけど、どうしても一気にアクセル踏む癖が抜けてないから」
「そうだな。あいつは4WDの経験が大半だから」
「ふーん、そうか。あ、そう言えばサザン君って4WDだよね」
「うん、そうよ。ほとんど中味はGTRかな?」
「そうだね。と言っても快適重視でいじったから、百合ちゃん乗ってては快適でしょ。燃費悪いのがちょっとだけど」
「そうよね。速いっていっても快適性を重視しててそんなにカリカリにしてないよ」
「ふーん、そう、静かで速くてパパが乗ったときにもう速すぎてビビってた。エッちゃんですら速すぎッていうんだもん」
「まあねえ。エッちゃんも100ps超えてるからね。車重が770キロでしょ」
「そうなんだね。速くってママったらなんかあおって来たのをちぎってやったとかいってるわよ」
「あははは。雅子もアジトに帰る時やってたもんな」
「まあね」
と、だべっていると、雅子はブレーキを踏まずに下り切り笠木さんのお店に着いた。
「後ろに悪いことしたかな?この車ブレーキランプ点かないから」
「そうかもね。排気で下ったらそうでもいいんじゃない?」
「まあね。お兄ちゃん。駐車場に入れるよ」
「あの枠だな」
雅子はぐおんぐおんとエンジンをあおりながら危なげなくバックすると駐車枠に入れていた。
プシューとエアが抜ける音とともにドアが開く
3人で降りてお店に入る
「笠木さん、おはようございます。いいバスがあるとか?」
「佐野さん、いらっしゃいませ」
「初めまして、お世話になります。松尾 百合です」
「笠木さん、百合はあたしの元居た会社の同期なんです。移動販売車運転したくて自分で免許取って、練習できる車って言うことで見に来ました」
「それなら、これなんかもいいかもしれないですね」
と言って見せてくれたのは15型HD-1ボディのU-LV270Hだった。
いわゆる9メートルの観光バスで車幅は大型と同じで長さが短いのだ。
「へえ。これってエンジンは何ですか?」
「これは8PDです。275ps仕様ですね。V8です」
「へええ、これもいいかも。すみません。もう一台あるとか」
「はい、これはP-RU636BBです、エンジンは高出力のEF750の330ps仕様です」
「実力でどのくらいですか?」
「うーん、どうだろう?乗った限りはそんなにパワー落ちてるっていう感じしなかったんで。実力なら数値の八掛けかな?」
「ええ?そうなんですか?」
「U-LV270Hも似たり寄ったりですよ。グロスですから。8かけ位ですね」
「そうなんですか?」
「百合リン、どうする?」
「ちょっと待ってね。これいかほどで?」
「それぞれこのくらい」
「え?こんなに安いの?」
「まあ、古いのとどっちも結構売れた車なんですよ」
「ちょっといいですか?」
そう言うと百合ちゃんはどこかに電話していた。
満面の笑みで戻ってくると
「笠木さん。2台買います」
「え?」
「雅子、雅子って何とか管理者になれるよね。あたしの2台のバスの管理者よろしくね。整備は全部雅子のお店に出すから」
「そう来たか。ところでどうすんの?まさか今日持って帰るとか?」
「佐野さんが来るって言うんでナンバー残ってますから乗って帰れますよ」
「決めた。雅子。乗って帰るから協力してね」
「はあああ。いきなり2台も買うの?」
「うん。ってことで2台にターボつけてね。あとリターダーも」
「えええ?もう?予算大丈夫なの?」
「もちろん、ふへへへへー楽しみ」
「百合リン、あのスーパーの給料じゃあたかが知れてて」
「雅子、何言ってるの?あたしだってもう主任だよ。今年に昇格したの。雅子の後任ってことで。というかさ知ってるでしょ。あたしたちって同じ商業高校の出身でしょ。雅子は別格で大学に行くのかなって思ってたら同じスーパーに就職してるんだもんね」
「百合リン?もしかして2番手って百合リン?」
「そう、雅子はぶっちぎりだったからね。その次があたし。あのスーパーは商業高校のTOP2を取ったの」
「そうなのね」
「そうよ、雅子のすぐ下にいた大卒が実は使えなくてそれであたしが主任になって経理回してるんだよ」
「そう言うことね。百合リンも優秀だもんね。主任になるなんてすごいじゃん」
「まあ、あのスーパーもあたしにまで抜けられたら困るからでしょ。あたしが気に入らなかったら辞めてパパの会社に入って仕事すればいいんだからね」
「え?あ、そうか。そうね。お兄さんが継ぐんだっけ?」
「そうよ、でもさ。うちの会社も人手不足なんだよ。いつパパから戻って来いって言われるかわかんない」
「そうか、あのスーパーであたしと百合リンに辞められたら大変ね」
「そうよ。と言っても仕方ないけどね。課長が必死なのよ」
「そうか」
と駄弁っていると笠木さんが書類を持ってやってきた。
笠木さんに百合ちゃんは内金といってお金を払っていた。
「どうしようかな?」
「こうしよ。百合ちゃん。この錦君を運転してきて。排気を使うときはこれをあげる。排気とリターダーは2段目にする。リターダーを更に使うときは3段目にするんだよ」
「リターダーが2段なんですね」
「そうよ。リターダー2連装なのよ」
「あたしのバスにもお願いできますか?」
「いいよ、やりましょう」
「お兄ちゃん、どこの道で帰るの?」
「いつも通りかな?あ、でもそうか。来た道帰ろう」
「そうね。U-LV270HとP-RU636BBの2台とも排気だけだよね」
「うん、そう。それ考えると山道になれていない百合ちゃんには排気とリターダーついている錦君の方がいいよ。安全だよね」
「そうね。多少ミスっても排気とリターダーで何とかなるもんね。百合リン、万が一下りでミスったらギヤは何速でもいいから入れるの、それに排気とリターダーをフルに使って思い切りブレーキ踏んで、いったん踏んだら停まるまで離しちゃだめよ。そうすれば助かる確率上がるの」
「うん、わかった」
「雅子、出よう」
「そうね。百合リン、登りは錦君が一番パワーあるから楽だよ」
「そうだね。雅子。雅子はU-LV270H乗ってくれ。こっちの方が重量に対して排気量でかいから」
「うん、お兄ちゃんは一番難しいP-RU636BBをお願いね」
「任せろ」
「すみません。お願いします」
僕らは先頭に百合ちゃん、二番目に僕、しんがりは雅子で笠木さんのお店から帰って来た。
「百合リン、下りって難しいでしょ」
「うん、雅子たちがゆっくり下るのよくわかったわよ。補助ブレーキがっつりきくから安心だった」
「でしょ。二台はターボね。お兄ちゃんが仕上げるから耐久性とか他は大丈夫よ」
「お願いね。2台とも29人以下で」
「もちろん」
お店の工場にバスを入れて隆弘といじる相談していた。
「悟瑠、このU-LV270Hは部品あるから良いとして、P-RU636BBはブロック剛性弱いから新しいF17Dに載せ替えればいいかな?」
「だね、ミッションは最新のバス用の6速か?」
「リターダー付きの7速がいいよ。トルク的には持つはずだよ」
「そうか、7速で行くか」
「U-LV270HはトラックのV10用の6速を入れるよ。ワイドになるけど」
「そうだな。2台ともリターダー2連装だろ」
「そう、初心者だから安全重視で」
「よし、わかった。それでいこう」
僕らは2台のバスをいじる計画を立てて部品を発注していた。
その日はP-RU636BBを分解始めていた
仕事を終えてアジトに帰ると
「お兄ちゃん、あたし、ドリフト卒業って言うか面白いの見つけちゃった」
「なんだ?」
「ヒストリックカーレース」
「おいおいそれやるって?」
「うん、えへへへもう車は見つけてあるの。310」
「クーペ?」
「もちろん、アメリカから買っちゃった。左ハンドルだけど右にできるかな?」
「やってみるよ」
「よろしく。車体補強もよろしくね」
「雅子、やるんなら一旦どんガラ迄ばらしてどぶ漬けして一旦塗料全部剥がしてメッキしたほうがいいよ」
「えええ?そうなの?」
「うん、一回状態見てだよ。レギュレーションも見てどこまでやっていいかだね」
「そうね。エンジンはA型でしょ」
「そう、排気量もみないとわかんない。予想だけどいいところ1.4かな?」
「そうか、1.4のNAでしょ」
「大パワーじゃないからね」
「いいよ。そのほうが。イチゴちゃんやドリ車で500ps以上でやって来たけど、バス乗ってパワーって言うかさ、大パワーでねじ伏せるよりも使い切って走るって言うのもいいかなって思うんだ」
「やるなー、雅子も成長したね。やってみるけどまずはばらしてみるよ」
「あたしもやるよ。お店が休みの日には」
「板金もやるからね。廃車体から高張力板探してこよ」
「なるほどね」
「サイドシルとかサイドメンバーを強化してフロアの張替や骨格部分をシッカリさせればいいはずなんだけど。後ろがリジッドなんでそこもしっかりだね」
「やることいっぱいね」
「来シーズンからの参戦かな?」
「うん、そうでいいわよ。お兄ちゃんはレーザーでシームレス溶接してってやるんでしょ」
「もちろんだ。そう言ってもイチゴちゃん達よりは柔いかな?しなること前提で足作る」
「いいわね。ドリ車は隆文が乗るって。650迄あげるんだとか言ってるよ」
「そうか。まあ、そこまでやるならヘッドを4バルブにしないと」
「そうね。隆弘さんが頭抱えてるよ」
「隆文は一回優勝すればいいんだろうな」
「そうね。あたしが抜けたら優勝だなんて言ってるよ」
「はあああ、甘いなー」
「うん、隆文さんもこの脳天気めって呆れてた」
「そうだよな」
「とにかく、百合ちゃんのバス仕上げてだな」
「うん、百合リンもバスに嵌るとはね」
「楽しいのは確かだよ」
「そうね。パワー使い切って走る。面白いよ」
雅子は今度はヒストリックカーに乗りたいというのだった。
僕はエンジン部品、駆動部品の確保に奔走することになったのだ。




