第十九話 移動販売車の受注と販売員雅子
雅子が営業活動?中古車?
と思ったらなんと
「どうもありがとうございます。僕らはこれで」
そう言うと雅子が運転してきた親父のケーテン君で帰って来た。
「お兄ちゃん。整備の売り上げばっちりね」
「まあ、よかったよ」
「そうそう、なんかさ移動販売車もう一台作って欲しいって」
「えええ?バスがあるかなー」
「探すから。今度は短い奴が良いって」
雅子がいたスーパーからまた移動販売車の発注が入ったらしい。
食料品は通販でも買えるのだが、生鮮品は自分で選びたいという需要には移動販売車がいいらしい。
僕らの整備と改造の仕事は続くようだ。
「雅子、具体的な仕様を聞いてるか?」
「うん、欲しいのは中型の9メートルだって、今回は住宅地の狭いところで使うんだって。なんか今まで運営していたあたしがいたスーパーとは別の会社のお店の建物が古くて耐震補強できなくて撤退だって。それでその辺の人が高齢者が多くて買い物できなくて困っているんで出すみたい。」
「わかったよ、いいバスあるかそれだけだよ」
「バスはまた笠木さんのお店にあるって。中型のノンステップって聞いた」
「また見に行くか?」
「うん、やっぱりノンステップがいいんだよね」
「うん、動線の問題もあるけどね。ノンステップが在庫にあるなら見に行って買って来よう。型式とメーカーの情報きいてる?」
「うん、聞いたよ。KC-RM211GAN改ノンスッテプだって」
「へー。ってことは日○デの西○ボディか。それいいかも。それ買おう。平地で使うならNAエンジンでも行けるな」
「まったくお兄ちゃんはどんだけ車のこと知ってるのよ、型式言うと細かいデータ言えるんだもんな」
「まあまあ、って言うかさ、このバスのようになるべくシンプルなエンジンのほうがいい。税金こそ高いけど後処理ない方が維持費が安いんだよ。税金差分は毎年のオイル代、アドブルー代、DPF、アドブルー設備の維持管理費で元が取れちゃう。それもあって僕が持ってるバスはちょっと古いのが多いんだよ。オイルは安いCDあれば充分なんだよ」
「そうなんだね」
「それに公認された後付のDPFあれば10都市には入れるから必要ならつければ良い。でも全く行かないなら無くてもOK」
「成る程ね。わかったわ」
「とにかくバスの状態見に行こう。笠木さんのお店なら程度はいいはず。何で行こうかな?」
「うん、今回はニイナちゃんにしよ。見に行くバスのエンジンはNAなんだね。ターボにしてるってことないよね」
「うん、改造はしてないはず。路線バス上がりって聞いたよね。中ドアは?」
「うん、中スライドだって」
「ますますいいじゃん。それ買って改造しよう」
「笠木さんに明日行くって言っとくね」
「おう。明日ね」
「そうそう、笠木さんから長野さんのバス会社と狩野さんの運送会社が提携したって連絡きてたよ」
「そうなんだ。まあ大変だもんな。運転手不足で」
「明日、トラックかなんか見にくるみたいね」
「へえ、また会うのもいいな。そうか、お互いの整備部門をくっつければ楽になるよね」
「あ、そうか、そういう効果もあるのね」
「ああ、隆弘の親がやってる運送会社の整備部門がうちに切り離されてきたでしょ。エンジン整備が主だったけど」
「そうね。そうか。二つの会社で同じことやってたら一つにしちゃえばいいもんね」
「うん、さて、明日も早いぞ、アポは9時だろ」
「そうね」
その日は雅子と僕はお風呂に入るとそのまま寝ていた。
次の日、僕らはニイナちゃんと呼んでいるKC-UA521NAN改で笠木さんのお店に向かっていた。
「おにいちゃん、これって480psだっけ?」
「うん、そう、リターダー使いたいからトラクターのミッション使ってる。なごみちゃんと同じミッションだよ」
「へえ、すごいじゃん、なごみちゃんといい勝負ね。速くて」
「うん、軽いからね」
駄弁りながら登って行く。
雅子は嬉々としてバスを運転している。
このバスはシャシは路線系だが、ワンドア仕様で車体は定番な富士◯製だ。
どうやら北日本から流れてきた個体の様でなかなかしっかり防錆しているので買ったのだ。
「路線仕様だからかな?ターボの音が結構車内に響くねえ。遮音は仕方ないかな?」
「うん、遮音は観光系にかなわないよ」
「だよねえ。それにしてもお兄ちゃんってきちんと作ったよね。480psかあ。ってあはは、また軽自動車が抜きたくても抜けないって必死ね」
「そうだね。これもいい勝負でしょ。軽いから」
「うん、それに実馬力で480でしょ」
「そうだね。大型用の計測器の結果だから結構シビアだよ。」
「そっかあ、あっちは何馬力か知らないけどカタログスペックだよね。それなら数字の90%くらいかな?それじゃあ抜けないって。大人3人乗ってるじゃん。このエンジンレッド迄ガンガン回るよね」
「そうかもね。3人乗りでNAなら無理でしょ。それにしても我ながらよく回るエンジンにしちまったなあ」
「ポンプ特性いじったんでしょ」
「うん、高回転でガバナーの動作を緩めっていうか急に回転絞らない様にした。噴射特性はREの初期型に合わせてる」
「ふーんそうか、それじゃあ回るじゃん。ってことはカムもいじってるでしょ」
「バレちゃってるなあー。REのカムにしてある」
「ってことはなごみちゃんもいじってるでしょ」
「あはは、お見通しかよ。カムと噴射特性はRDに合わせてある。」
「道理でブン回ると思ったのよ。2200回転なんてあっという間に超えてリミットまで行くんだもん」
「そうか、まあ、そっちの方が乗りやすいかと思ってね」
「これだよ。あーあ、後ろの軽自動車諦めたね」
「登坂車線に入って譲ったけど、抜けなかったね」
「空気抵抗でかいからかな?」
「多分。このバスが起こす風が向かい風の風量でかいからね。スリップでは良いかもしれないけど」
「そういうことなね、トルクないからねえ」
「そうそう、このバスは空車なら11トンちょっとしか無いからね。椅子も意外に重くって間引いたからな」
「その分軽いのね」
「そういうこと」
「さあ、下りだ。へええ、すっごいじゃんリターダー2連装?」
「うん、V8積んだのは液体式を2連装」
「これいいよ。ブレーキ要らないじゃん」
そう言って嬉々としてバスを運転している妹の佐野 雅子。
今はドリフト競技に嵌っていてドライバーとして競技に参加している23歳。
普段は大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバスの改造車の貨物車、U-RP210GAN改275ps仕様、またはエムエム君と呼んでいるこれまた元バスの○アロスターMMのMM618J改の300ps仕様の貨物車で住んでいるアジトと言われている元祖父母の家から市内にある実家で経営している中古車屋に通っている。
整備士の資格を取ったので、時には整備工場に来てお客さんの車をいじることもある。
高校卒業後すぐ入社して4年チョイ務めて異例の速さで係長に出世して、同期からは初の高卒30代女性役員誕生かとうわさされたスーパーを車に乗る仕事したいと言ってあっさり退職して家業についてしまったのだ。
今は家業の中古車屋で専務となって経理関係全て見ているし、納車や部品手配も時には軽整備もする。
妹は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級と事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっていた。
それなので、進学せずに地元資本の大手スーパーの経理部に学校推薦で入って、高卒ながら5年目で係長になって大卒5年目よりも多くの給料をもらっていたが、もともと車を運転するのが大好きでいろんな車に乗れる家業に転職した。
家業に従事してからは危険物、大型免許を取って今は整備士の二級免許、牽引免許も取ってしまったほどの車好きだ。
スーパーでの実績は入社3年目で、各店舗から集まる情報処理集計システムを自分で組んでしまい、今まで買っていたソフトが不要になった。
しかも妹が作ったソフトのほうが勤めていた会社の事情に合っていたのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とメンテナンス費用が浮いた。
万一、おかしなことが起きても、雅子がすぐに治せる。
その成果が認められ、高卒の3年目の途中に主任に昇格して、部下を持ってその指導もするようになった。
4年目の7月からは入ってきた自分より年上の大卒を部下にもってチームを組んで仕事しているのだから驚く。
スーパーにいた頃の所属は経理部だが、5年目の4月からなんと係長に昇格して全社の業務効率化のリーダーに抜擢されていた。
そのチームで売り上げ仕入れ管理システムのソフトを雅子達が自力で組んでしまってさらに業務効率が上がったのだった。
それだけプログラム組むのが好きなこともあって自分のドリ車のエンジンの制御コンピューターも自分でプログラム組んでしまった。
それなので僕はエンジンを載せ替えたトラックのBCMのフルコンのセッティングをお願いしたらきちんと仕上げてくれた。
家業の方でも、いろんな経理システムを組んでいて、両親も大助かりという。
特にしっかりと財務状況がわかるようなソフトを作って管理していているので今までは確定申告のときにバタバタだったが雅子が組んだソフトのお陰ですべてネット上で申告できるようになっている。
例年夜なべして伝票整理していたが、全くすることがないのだった。
発注も受注もネット上でできるようにしてあるので電話での対応も減っていてその分営業に時間がさけると母親は喜んでいるし、父親もネットで事前に不具合の状況を画像等でもらっているので修理箇所の予測がつけやすくなって仕事が早く進むと喜んでいる。
走りの面では妹は峠を走り始めて既に6年目になっていて、僕の古くからの友人で整備工場の副工場長をやっている隆弘がリーダーを務めるチームで僕と共にサブリーダーになっている。
ホームグラウンドでは断トツトップの速さで時には新たにチームに加入してきた後輩たちの運転指導もするようになっていた。
雅子が得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入ってアクセル全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに僕と雅子しかいない。
それにサーキットを走らせてもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。
今はドリ車を作って競技に参加するほどに嵌っている。
この前はなんと出場3回目で優勝してしまったほどの出来だった。
しかもドリとレース両方でトップという完全優勝だったのだ。
帰りのローダーの中ではもらったトロフィーを見て嬉しそうに笑っていたのだが、やっぱり表彰台に乗る時は真ん中がいいといっていたくらいの負けず嫌いだ。
このドリ車はうちの会社でスポンサーしていて会社のPRの一環としてやっている。
雅子の普段の運転はとてもスムーズで隣に乗るとついつい寝てしまうくらいだ。
普段は車を労って走らせているのがよく分かる。
かつては大型バスを使ったスムーズドライブ競争でも勝ってしまうほどのスムーズさなのだ。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の26歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して5年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今は家業の自動車工場で中古車の納車前整備や車検、修理、一般整備もしていて、時には中古車の買い取り査定もする。
大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになった。
また、○ントリペアも勉強して資格もとった。
それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。
大型免許は大学在学中にとってさらに就職してから直ぐにけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。
キャリアトレーラーも中古車で買ったものでもある。
2級整備士の資格も取ってあるので運行の管理士になれるのもありバスも持ちたい放題だ。
それを良いことに中古だが、観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
妹の雅子がメインで使っているバス含めて全部ターボにしてパワーアップと同時に黒煙対策している。
特に唯一のKL-のKL-RA552RBM改はDPDが付いているのでエンジン本体での黒煙を減らして起きたかったのだ。
僕らの両親はどちらも車好きでそれが高じて中古車屋兼整備工場を経営している。
父親はこのところ僕の趣味に感化されたのか中古のバスを3台も買ってきていじってマニ割仕様して、それに乗ってどこどこ音をさせて営業に行ってしまっている。
それにレッカー車も買ってきて若いころやっていたマニ割り+左右の煙突デュアルマフラーにしろと言うほどのマニ割マニアっぷりを発揮してしまった。
エギマニは自分でマニ割仕様をステンレスパイプを手曲げで作ってしまうほどの腕を持っていた。
そんな父親なので、整備工場では本格的に大型車を整備するようになった。
大型車の整備をする関係で乗用車等は元々隆弘の親が経営していたエンジン整備工場に機器を移してそっちでやるか、アジトとチーム員から呼ばれている僕と雅子が住んでいるもと製材工場でやることになったのだ。
母親の独身の頃はドリフト競技に出ていたという位の運転好きだ。
競技に出ていたころ、ドリ車の整備と改造を当時整備工場に務めていた父親に依頼したのが馴れ初めで結婚したのだ。
この両親を見れば僕と雅子が運転大好きになってしまうのは当然だろう。
「お兄ちゃん、ほんと乗りやすいよね。ブレーキ踏んでないよ」
「ここまで2連リターダー使えるとは思わなかったよ」
「そうねえ。液体リターダーの2連装は効くよね」
「お、雅子。そろそろ着くよ」
「そうね。ええと、ここ右だよね」
「うん、ここで曲がればいいよ。左側に見えてくるはず」
「間に合ってよかったわよ。お兄ちゃん寝坊しちゃうから」
「すまん。雅子の走りなら間に合うと思ってたよ」
「全くもう」
と喋りながら走っていくと笠木さんのお店が見えてきた。
雅子は器用に車を入れると駐車枠にピッタリと停めた。
プッシュウ、エアの作動する音とともにドアが開いて降りていく
「あ、佐野さん。いらっしゃいませ」
「お世話になります、またバス買いに来ました」
「いつもありがとうございます。このバスになります。」
そう言って案内してくれたバスは聞いていた通りKC-RM211GAN改9メートルのノンステップだった。
「いいですねえ。中スライドでばっちりです。これ買います」
「これも移動販売車ですか?」
「そうなんですよ。あ、あれは?」
「ああ、狩野さんが買いたいって」
「これ?お兄ちゃんこれってニジュちゃんと同じカテゴリーだよね」
「うん、U-RU3HJAAかな?何にするんだろ」
「やっぱり、9メートルが使い勝っていいらしくて。排ガス関係ないところで使うんだそうですよ」
「ですねえ、うちにも2台ありますから」
「たまたま、出たんですよ。それも佐野さんから聞かれたその日にうちに話来て。そしたら見たように狩野さんから電話きて」
「そうなんですね」
「佐野さんはどうします?」
「仮ナン持って来たんで乗って帰ります。内金です。残りは振り込みで」
「はい、よろしくお願いいたします。」
笠木さんと書類と交わしていると狩野さんたちが来た
「佐野さん、久しぶりです」
「久しぶりです。今日はバスですか?」
「はい。実はうちの北の事業所で使う精密機器運搬車にするんです」
「そう言うことですか?なるほどね」
「このバスのいいところは中4なんですよ。車内にレール付けてフロート台車つけるんです。」
「中4ならフォークが使えますね」
「そうなんです。大型でもいいんですけど、行先のクライアントの駐車場が狭いんで9メートルです」
「佐野さんは?」
長野さんが聞いてきた
「ええ、移動販売車です。今度は中型の9メートルで」
「それはそれは商売繁盛でいいですねえ」
「そう言えばあの9メートルは10都市に入らないんですか?」
「入りますよ。DPFは付けます。入れればいいんですよ。北関東支社の所属なんで普段はいらないから」
「ですよねえ。あ、書類できた。狩野さん。僕らはこれで帰ります。お疲れ様です。」
「お疲れ様です。長野、このバス運転頼んだぜ」
「え?これって」
「僕の趣味車です。まあ走りますから」
「そうですか。いいですねえ」
「でしょ」
狩野さんが乗ってきていたのはダンプカーで直6を積んだ車だった。それもマニ割していて結構な改造してある車だった
「いいですねえ」
「ダンプカーとはやりますね」
「エンジンは規制の関係でKL-のK13Cターボなんですよ。ほんとはV8欲しいけど残念ながらKL-には設定なくて」
「そうですね。ないですもんね」
「じゃあ、また。仮ナンバーで修理のためって言えは牽引で入れるんでこのダンプで入るんですよ」
「なるほどね」
「狩野さん。またどこかで」
「あ、雅子さんですね。うちに来て欲しいですよ」
「長野、まあ仕方ないって」
僕らは長野さんと狩野さんと別れるとお店に向かって走っていた。
件の坂道では買ったKC-RM211GAN改ではさすがにニイナちゃんは速く全くついていけない。
パワーが違い過ぎなのだ、登りきると雅子が待っていた。
「お兄ちゃん、ニイナちゃんすっごいよね。高回転の伸びがいいから各ギヤのつながりも良くて」
「だろうね。パワーバンド広いから」
「うん、ルーシーちゃんってちょっと高回転伸びないから、登りはちょっとシフトチェンジ早くしないと失速するんだもん」
「そうだね。ちょっと伸びがないんだよね」
「それいったら、MM君とケーテン君もそう。もうちょっと伸びてほしいところでちょっとって感じね」
「そうなんだけど、その代わり低速から粘り強く加速していくから早目にシフトアップしても走れるよ」
「まあね。そこがいいところでもあるけどね」
「でしょ。各会社の特徴出て面白いよね」
「うん、そう言えば錦くんの伸びもいいよねえ。ガンガン回るし」
「うん、あの会社は回るよ」
「ちょっとトルク欲しいけど」
「仕方あるまい。なるべくその特性を生かしてターボの設定したんだけどちょっと難しい」
「そうね。観光系って全部可変ノズルターボでしょ」
「うん、重いからね。低速のトルク欲しいからターボは可変ノズルにしてる。路線系ははシンプルにしたよ」
「やっぱりね。シンプルなのもいいかも」
「まあね。さて、KC-RM211GAN改も水温下がったしいくよ。ラジエター交換するよ。どこか詰まっているから手放したのかも。販売中は屋根のソーラーで発電するって言ってもエアコン回すときはエンジンでしょ。オーバーヒート対策しておくよ」
「うん、なんかね。電動機で回せないかって言われてるよ。エンジンは切りたいんだって。走ってる時に充電して、販売中はソーラーで補助して充電した電力で賄って」
「そうか。スーパーの跡地に停めるのはむりか?」
「そこは借りたって言ってるよ。そこには週3でKL-UA452PAN改をおくの。これない日はKC-JP250NAN(改)を週3で。KC-RM211GAN改は高齢者が買い物難民になってるところ専属で回るんだって。今までKC-JP250NAN(改)で回っていたところを回るって」
「なるほどね。そうか良い手だね」
「そう、生鮮食料品以外は受注で積んでいってその場で渡すの。受注で持っていったのは輸送費0円に」
「そうか、受注なら絶対はけるから外れないじゃんね」
「そうそう、あたしの同期の女子が考えたんだって。そこんちのお爺ちゃんが亡くなってお婆ちゃんが買い物できないって言ってて。近くの八百屋さんも魚屋さんも廃業しちゃって」
「そうだよね。まさに買い物難民」
「でしょ。食料品が手に入らないのはやばいってことで。そうそう、受注はネット使えれば簡単だけどバスの中に紙もあって○つけるの、それでもない時は品物の名前書いて定員さんに渡すんだって」
「そうか、考えたね」
「でしょ。あたしも感心しちゃった。それに一番後ろのところに受注品を積む場所にしてあるの」
「ああそうだね。スタッフ用で2席残したからね」
「社長ってやり手だったけどよくやるって思ったわよ」
「そうだねえ」
「売上は増えたみたいよ。撤退したところの駐車場借りてるけど、今度はお弁当販売もするかとか」
「えええ?」
「お惣菜は受注だけどレギュラーにしようかって」
「もしかしてまたバスがいるの?」
「そうかも。検討したら頼むって。あたしの元上司っていうか課長がリーダーになってやってるの。元々は買い物難民対策ってことで始めたんだけど、テレワークの人も使ってるって。子育ての人たちも買い物行くのが大変ってことで」
「うへー、予想外の需要ってやつね」
「そう、お弁当もその一環、お昼に農作業してる人はお弁当欲しいんだって、テレワークも同じでおにぎりとかピザとかお仕事しながら食べれるものとか」
「そう言うことか」
「でもいいけど、乗れる人って居るの?」
「それなんで今度はマイクロバス2台とか言ってた。それなら準中で乗れちゃうからハードル下がるみたいね」
「なるほどね、7.5トンなんていかないもんね」
「そうみたいね。ピザとかタコスとか売る車と純粋にお弁当、お惣菜売る車に分けるんだって」
「なるほどね。それはいい考えだね」
僕らは実家のお店に帰ってきて早速笠木さんのところから買って来たバスを移動販売車に仕上げていた。
その間にも車検だの故障修理だので忙しかったのだ。
KC-RM211GAN改を仕上げて雅子と納車にフーセン君で納車に行った。
雅子の元上司の課長さんと会って来た
「佐野さん、ちょっと雅子さんに調べてほしくて」
「はい?」
「販売データをお店みたいにリアルタイムで飛ばせないかと」
「課長、それならできますよ。ポケットWi-Fi使ってレジとつなげば」
「それがうまくいかなくて」
「ええ?それはおかしいです。あたしはWi-Fi経由でできるようにしたはず」
「ログインがうまくいかなくて」
「ちょっと見てみますよ。お兄ちゃん。ちょっと待ってて」
「雅子、このバスでやってみればいいじゃん。このバスで。レジとWi-Fiはあるでしょ」
「そうね。課長。タブレットください。つなぐから」
「おう、これかな」
「システム担当と電話してください」
「はい、出たよ。あ。綿貫だ」
『はい。あ、課長。何か商品で?』
「いいや、新しい移動販売車両入ったから今からログインの試験する。雅子さんに代わるよ」
『え?雅子さん?』
「ハーイ、雅子だよ。百合リン、久しぶり。元気してた?ログイン情報XXXX1XXの端末に送って!」
『あ、雅子。久しぶりじゃん。係長になったと思ったら辞めちゃうんだもんな。送ったよ。今は家業で専務だっけ?』
「そうよ。いいじゃん。いろんな車乗りたかったんだから。あ、来たね。それでログインっと」
『来たよ。じゃあ、ダミーのデータ送って』
「はいよ。DUMの6500」
『うん、来たよ。OK、受信可能。取り消しデータよろ』
「うん、DUMのー6500」
『うん、来た。取り消しOK。テスト完了かな?』
「課長できますよ。何がわるいのかな?」
「Wi-Fiの電波かな?場所によるんだよ」
「課長。あした、その場所にいってやってみましょう。百合リン、明日も出社?」
『うん、出社だよ』
「明日あのKL-UA452PAN改はどこにいくのかな?」
『ええと、主にみど〇に行くよ。運転は課長』
「課長なの?あたしもついていくよ」
「佐野さん、お願いします」
「はい、お兄ちゃん、明日お休み頂戴ね。ちょっとあたしもみてくる。納車した車がどうなってるかもね」
「雅子、頼んだよ」
「課長っていうかこの場合は綿貫さん。明日来るから。あ、ごめんね、このバスの置き場借りていいですよね。あたしの車って今はバスなの」
「ええ?もしかしてこの車も運転できるの?」
「はい、できますよ。」
「ちょっと調子見てほしいから行くとき運転お願いします。おかしいなら整備に出すんで」
「まあ、調子見るならいいですよ。じゃあ、失礼します。明日8時ですか?」
「積み込みは終わらせておくから8時半で」
「はい」
雅子が返事して僕らはフーセンちゃんで帰って来た。
「何が起きたのかしらねえ。普通は入れるはずだけど」
「だね。今日も簡単にログインできたよね」
「うん」
そう言いながら帰って来た。
仕事を終えてアジトに帰って
「前に乗ってたエッ〇を買ったのが電話に出た百合リンだよ。あの娘マニュアル大好きで。今はサザン君買ったみたい」
「えええ?」
「あたしも驚いたわよ。サザン君よ。サザン君乗ってた男子がナナちゃん買ったの。サザン君速すぎて捕まって免許危ないからって乗り換えたのよ」
「サザン君乗ってたらお父さんの車乗ってるように見えるかもね」
「あはは、そうかもね」
「明日は別行動だから、雅子は?」
「そうだ、獅子丸くんを借りていいかな?同じエンジン積んでるなら何かわかるかも」
「そうだね。明日は雅子は獅子丸くん。僕はなごみちゃんかな?
「そうね。このところ乗ってないかもね」
次の朝、雅子は6時に起きて獅子丸くんで元の会社に行っていた。
表向きは売った車の確認ということだった。
夕方、獅子丸くんで帰って来た。
「お兄ちゃん、わかったわよ。綿貫さんも一緒に行ってる人もWi-Fi経由にしてなかったの。それでデータ通信使い切って制限入ってたのよ。それでログインできなかったの」
「そうなの?」
「そうよ。それはいいんだけど。調子悪いって言うのはやっぱりDPDも再生不足。連続でアイドルのまま停まってるからすすたまっておかしかっただけ。停まってる時はちゃんとすす焼きしてって言っておいた」
「そうか」
「さて、来週は北で競技だから行ってくるね。隆文に負けないように走るからね。隆文はレースみたく走ると速いよ」
「目指せ2連勝ってとこだな」
「そうね。明日はイチゴちゃんで出勤するよ。百合リンと久しぶりにディナー行ってくる。ニジュちゃんじゃあいけないもんね」
「そうだね」
後で聞いたところ、雅子がレジの調子を見てると新入の販売員と間違われたそうだ。
それでもおすすめはきちんと売って来たらしい。
それと最初に寄ったところでは雅子が運転してきたもんだからお客さんたちは口をあんぐりさせていたらしい。
雅子の美貌と大型車はミスマッチかもしれない。
そう来たか―
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。




