第十七話 ドリ車を交換後の競技会と新レッカー車の稼働で
雅子がドリ車を交換して臨んだ大会
結果はいかに?
それと新たに稼働したレッカーは?
「悟瑠さん、安定しててすっごく踏める。ガンガン前に行くよ」
「でしょ。ちゃんとセッティング出すといいでしょ」
雅子が言っていたのだ。
走り終わってアジトに帰ってくると
「お兄ちゃんってセッティング上手いよね。ドリ車の乗り味今までのそっくりじゃん。それなのに動きが穏やかだからガンガン行けちゃう。このまま次の大会出るからね」
「そうか。気に入ってもらってよかったよ」
にっこりしている雅子は子供の頃の様だった。
次の競技会になった。
雅子はドリ車を積載に積んで僕はキューピーちゃんに部品を積み込んで会場に乗り込んでいた。
このバスというか?キューピーちゃんは貨物登録のバンなので高速道路の料金がバスよりも安い。
それに、貨物はシートベルト後席の規制がないので運転席のシートベルトが3点なら乗れてしまうのだ。
「お兄ちゃん、パドックにバスっていいよね。疲れたら中で寝れちゃう」
「まあな、折り畳みのベッド積んできたからね。後は部品と工具と電源とエアコンプも」
「それは安心。一発目行ってくるよ」
「おう、気を付けて」
雅子は交換したばかりのドリ車スカ○ーで競技に行った。
ジムカーナコースを使っているのでやや狭いのでとにかく如何にスピード乗せるかで勝敗が決まるところでもある。
雅子はそこでガンガン踏んでいってギャラリーがずっとわく位ド派手に振っていた。
しかもほとんどカウンター当てっぱなしで攻めたもんだから白煙で車が見えないくらいだったらしい。
午前の部で2回走って午後の10レースで勝敗を決めるのだという。
「お兄ちゃん、午後に向けてリアのキャンバー3度までつくかな?」
「多分、大丈夫だよ。アッパーは3度なら部品ある。アッパー交換してトーをイン2か?」
「うん、たぶんそのくらいかな?トラクション重視」
「わかった。やるぞ」
「おう、僕も手伝う。」
「隆弘は隆文の車やんないと」
「いいんだよ。あいつはいまちょっと突き放して自分でセッティング見つけるようにする。レースではドリ車のまんまだと踏めないって知らないから」
「そうかもね。あたしは前のドリ車でよくわかったよ」
「だろ、雅子は悟瑠から独立っていうか」
「雅子はイチゴちゃんの頃から自分の好みの設定見つけるんだ」
「そうなんだ」
「そうね、お兄ちゃんがセッティングするけど最後はあたしが決めるよ」
「それならいいけど」
「隆文って結局最後まで隆弘さんが決めてたよね」
「ああ、そうなんだよね。走る腕はいいけどメカはからっきしだめで」
「仕方ないかもな。よし、じゃあ、雅子これか?」
「うん、これくらい」
「おう」
「お兄ちゃん、帰ったら、ドリ車の足を戻すから。車体を見て」
「そうだな」
「雅子はちゃんとしてるなあ」
「お兄ちゃんのセッティング能力高いからだよ。注文通りにできるんだから。えへへへ」
そう言っている妹の佐野 雅子今はドリフト競技に嵌っていてドライバーとして競技に参加している23歳、普段は大型9メートルカテゴリーのニジュちゃんと呼んでいるバスの改造車バン、U-RP210GAN改275ps仕様、またはエムエム君と呼んでいるこれまた元バスの○アロスターMMのU-MM618J改の300ps仕様で住んでいるアジトと言われている元祖父母の家から市内にある実家で経営している中古車屋に通っている。
入社して4年チョイ務めて異例の速さで係長迄出世して同期からは初の高卒役員誕生かとうわさされたスーパーを車に乗る仕事したいと言ってあっさり退職して家業についてしまった23歳。
今は家業の中古車屋で専務となって経理関係全て見ているし、納車や部品手配も時には軽整備もする。
勿論、いろんな集計システムを組んでいて、両親も大助かりという。
妹は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級と事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっていた。
それなので、進学せずに地元資本の大手スーパーの経理部に学校推薦で入って、高卒ながら5年目で係長になって大卒5年目よりも多くの給料をもらっていたが、もともと車に乗るのが大好きでいろんな車に乗れる家業に転職した。
家業に従事してからは危険物、大型免許を取って今は整備士の免許、牽引免許も取ってしまったほどの車好きだ。
スーパーでの実績は入社3年目で、各店舗から集まる情報処理集計システムを自分で組んでしまい、今まで買っていたソフトが不要になった。
しかも妹が作ったソフトのほうが勤めていた会社に事情に合っていたのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とメンテナンス費用が浮いた。
万一、おかしなことが起きても、雅子がすぐに治せる。
それも褒美もあって、雅子は入社3年目という高卒では異例の速さで主任に昇格してしまったのだった。
それに集計の自動化を進めた結果、各店舗の仕入れと売上関連のほとんどが一目でわかるようになって社長も大喜び。
その成果が認められ、高卒の3年目の途中に主任に昇格して、部下を持ってその指導もするようになった。
4年目の7月からは入ってきた自分より年上の大卒を部下にもってチームを組んで仕事しているのだから驚く。
スーパーにいた頃の所属は経理部だが、5年目の4月からなんと係長に昇格して全社の業務効率化のリーダーに抜擢されていた。
そのチームで売り上げ仕入れ管理システムのソフトを雅子達が自力で組んでしまってさらに業務効率が上がったのだった。
しかし、当の雅子は出世には興味が全くなく、スーパーは給料のためと割り切っていたが、やっぱり好きな車の仕事がしたいといってあっさりとスーパーを辞めてしまった。
スーパーではなんと課長待遇にするから残ってくれと言われたらしいが出世に興味が全くない雅子はスパッと辞めたのだった。
もちろん、部下にシステムの使い方、直し方すべて引き継いでいるので大きな発展は無理かもしれないが、将来ビジネススタイルが変わっても最低限の対応はできる様にしてきたらしい。
走りの面では妹は峠を走り始めて既に5年がたっていて、僕の古くからの友人がリーダーを務めるチームで僕と共にサブリーダーになっている。
ホームグラウンドでは断トツトップの速さで時には新たにチームに加入してきた後輩たちの運転指導もするようになっていた。
雅子が得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入ってアクセル全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに僕と雅子しかいない。
それにサーキットを走らせてもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。
今はドリ車を作って競技に参加するほどに嵌っている。
この前はなんと2回目で準優勝してしまったほどの出来だった。
帰りのローダーの中ではもらったトロフィーを見て嬉しそうに笑っていたのだが、表彰台の真ん中がいいといっていたくらいの負けず嫌いだ。
このドリ車はうちの会社でスポンサーしていて会社のPRの一環としてやっている。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の26歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して5年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今はそこで中古車の納車前整備や修理をしていて、時には中古車の買い取り査定もする。
大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになったし、○ントリペアも勉強して資格もとった。
それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので入社4年目の4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。
大型免許は大学在学中にとってさらに就職してから直ぐにけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。
キャリアトレーラーも中古車で買ったものでもある。
2級整備士の資格も取ってあるので運行の管理士になれるのもありバスも持ちたい放題だ。
それを良いことに中古だが、観光バス4台と大型路線バス5台もってしまった。
妹の雅子のバス含めて全部ターボにしてパワーアップと同時に黒煙対策している。
特に唯一のKL-のゴーゴーくんはDPDが付いているので黒煙を減らして起きたかったのだ。
僕の両親はどちらも車好きでそれが高じて中古車屋兼整備工場を経営している。
父親はこのところ僕の趣味に感化されたのか中古のバスを買ってきていじってマニ割仕様して、それに乗ってどこどこさせて営業に行ってしまっている。
母親も独身の頃は競技に出ていたという位の運転好きだ。
雅子が運転大好きになってしまうのは当然だろう。
「お兄ちゃん、どう?」
「おう、いいか?ちょっと左のバネ強めにしてる。左コーナーはロール大きくなる分曲がりづらいけど右コーナはばっちりだ。踏ん張る方向にしてみた。乗ってみてセッティング変えるんなら今のうちだ
「うん。右コーナーが高速だからそっち重視ね。乗ってみるよ」
「悟瑠、さすがだよ。隆文にこういったこと考えてほしいんだよね」
「まあ、それいったら雅子を甘やかしてるかもな」
「でもさ。雅子がバネのスペック要求してるんだろ。成長してるじゃん。隆文は最初からどうすればいい?だぜ」
「まあね。雅子はこうしたいからこんなスペックかな?って言うんだよ」
「そうか。隆文を鍛えよう。俺も甘やかしすぎた。今日のレースいい課題だ」
「お兄ちゃん。練習行ってくるね」
「おう」
雅子が走りに行った。
ほとんど直ぐに僕らのピットに隆文の車が入って来た。
「兄貴、ちょっとオーバーで踏めねえ、良い手はないか?」
「隆文。良い手はないかじゃなくてダナ。自分で考えろよ。」
「うーん」
と隆文が悩みに悩んでいると雅子が帰って来た
「お兄ちゃん、いいよこれ。左を捨てて右重視で。旋回制動しながらシケインいけるからいいよ。スタビリティ重視」
「そうか、セッティングはこれできまりだな」
「うん」
「じゃあ、休んでてよ」
「うん、バスで一眠りかな?」
「おう、おつかれ」
「えええ?もう決まったの?」
「お前なあ、雅子と悟瑠の会話にヒントいっぱいあるだろ」
「え?」
「ボケっと聞いてるからだろ。ドライビングだけできればいいんじゃないだろ。雅子が自分の車のセッティングを悟瑠としゃべってただろ。思い出して雅子のいうことができるようになるにはどうするか考えろ」
「う、うん」
「いいか、聞くぞ。雅子の車のいいところは何だった?」
「安定してる」
「さっき隆文は何ていった?」
「後ろが行ってふめねえ」
「ところで聞くけど、車をどういう方向にしたいんだよ」
「踏んで、前に進ませたいんだよ」
「だろ。だったらどうするんだ?」
「うん、そうかスタビリティあげるにはどうするか考えるってことか」
「だろ」
「ええと、アンダー方向にするんだよな」
「そういうことだ。かといってアンダー強すぎてもだめだろ」
「うん、よしやってみよ」
「おいおい、今から無計画にあげたって間に合わない。今回は俺が見る」
「兄貴すまん」
「勉強だ」
そう言うと隆弘はパソコンからデータを引っ張り出してバネとスタビの仕様を選んでいた。
「悟瑠、交換頼む」
「おう、この仕様はキューピーちゃんに乗ってるよ。持ってくるか」
「おう、どのへんだ?」
「中ドアより後ろの右側の棚の2段目にバネショックアッシーと下段にフロントスタビライザー」
「今回はこれで仕方ない、キャンバーはこのまま行くよ」
「おうわかったよ」
「突貫だな」
「隆文、お前もだ作業やるぞ」
僕らは一緒に行ったメカニックとしてきているチームのメンバーと一緒に隆文の車の前後のバネとフロントのスタビを交換していた。
「隆文、これで何とか走って来い。後ろのキャンバーいじって無いからちょっと狙ったアンダーにならずにオーバーでるかもしれないけどそこは腕で抑えろ」
「兄貴ありがと。」
「このスペックを覚えておけ、前のスペックも。こう変えるとこうなることわかっていればできる」
「うん」
隆文がドリ車のフー○でコースイン、フルデュアルのマフラーから響くV8独特のゴロゴロした排気音
見えなくなると隆弘が
「悟瑠、ありがと」
そう言ってきた
「まあ仕方ないな」
「ふあああ、寝ちゃった。そろそろだよね」
と言っているとバスの中で休憩していた雅子が起きてきた。
「おう、そろそろ暖機して置けばいい。ドリの順位でポジション発表だ。ドリは雅子がトップじゃん」
「あ、来た。やったー。ポールポジションいただき―。ふへへへへー楽しみ」
電光表示板にグリッド順が表示されている。
雅子はポールポジションだった。
どうやら午前中のドリの結果でトップを取ったようだ。
隆文は5番グリッドからのスタート
前回つく○で雅子に勝った奴は3番目からだった。
前戦の北の方で優勝した奴が2番グリッド、準優勝が4番グリッドと上位陣はつわものぞろいだった。
「悟瑠。テレメトリーはそのままか?」
「ああ、そのままで行く。隆文の車と2台だから大変だけどね。メンバーにも見てもらうよ」
「お兄ちゃん、チャンネルは1?」
「うん、雅子、無線の感度はいいか?」
「うん。ばっちり」
「隆文の2チャンネルもいいぞ。雅子とチャンネル違うからいいな」
「よし、混線しない。」
「こっちも大丈夫」
「いいぞ。雅子、行って来い。冷却系はこの前より冷えないかもしれないから気をつけろ。車の前面の掃除はした。10週のショートだからガンガン踏め、ストレートは冷やすにはいい機会だから」
「はい、お兄ちゃんいい車ありがと」
隆文の車がピットに戻って来た
「兄貴、ありがと。ばっちり踏める。行ってくる」
「行って来い」
二台のドリ車が出てグリッドに着いた。
ブルン、ブルンと各車のエンジンが始動、先頭のペースメーカーがゆっくりと走りだしフォーメーションラップスタート
フォーメーションは一周で整い、ペースカーがピットに入ってシグナルがグリーンに変わってレースのスタートだった。
「全開だな。よし、雅子、いけえ」
「隆文、うまい。抜いたな」
隆文はパワー差を生かして4番手をストレートで躱して1コーナーで抜き返されないようにインをがっちり締めていた
「すげえなー。ドリフト連中がグリップで走るのもいいもんだな」
「ああ。おおお、やるなー」
3番手を走っていた車がなんとS字の切り返しで1個目をインを締めて走った2番手をアウトからまくって2番手に上がった。
既に5車身逃げている雅子を追いかける
「雅子、ベストタイムラインで行ける。後ろはこっちで見てるから前だけ見ろ」
『はいよ』
こっちは雅子に指示を出す。
徐々に後続を離す雅子
「よし、いけええ。そこだ。インをとれえ」
隣では隆弘が隆文に指示をだす。
さっき抜かれたばかりの北の優勝者がドライブする車をシケインのブレーキング競争で抜いて3番手に上がる。
最終コーナーを立ちあがって2番手を追う。
パワーに勝る隆文の車が2番手の車をあっさり躱して2番手に上がった。
「悟瑠。パワーならこっちのかちか?」
「何とも言えんがレスポンスならNAがいい、ストレートはパワー勝負だ。600にしてあるけど。見る限りさっきの車はギヤ比がここに合ってないなー。トップスピードが伸びない。4番手も同じだ」
「だよなあ、雅子のは?」
「550だからな。ギヤ比はあってるかはわからん。元々ドリ車は最高速度は捨ててるから。ここは超高速サーキットだから最高速の勝負にもなる」
「そうか。おっほー。ってことは隆文が一気に2番手じゃん」
最高速が違い過ぎるのだろう、あっさりと2番手に上がって引き離していた
「だろうな。多分、中速重視のターボだと伸びが無いからきついかもな。それにローギヤ設定だとエンジンが吹け切ってそこで終わりだ」
「そうか。隆文のは?おっとスリップか?」
「後ろとの距離に寄りけりだが第一コーナーの突っ込みでインはいられるかもしれないが」
「そこは隆文はブロック得意だろ、元々は峠のバトラーだ」
「だな」
「おおお、隆文もやるなー真横に向けていくか?減速も兼ねてか」
「だろうな。10周持てばいいならガンガン行くな」
「だな。よし。抑えきった。最終のシケイン迄パワーに勝る隆文の車なら逃げ切れる」
「ストレートで5車身離せば追いつかない。ベストラインで走れる」
「うん。さすがやるな。スリップか」
「隆文はやるぞ。やっぱり立ち上がり重視だ。後ろをがっちりブロックして最終はベストラインにしたいんだろう」
「え?悟瑠。どうやって?」
と言っていたらなんと既に入り口で向きを変え、一気にそのまま飛び込むように見せて逆ドリフトで一発で立ち上がる方向に車を向けて横移動して後続をブロック。
「よし、頭抑えて立ち上がり」
「ストレートじゃあついてこれないだろ。それなら次の第一コーナーからはベストラインでタイヤいたわって走れる」
「どのくらいストレートで離して行けるかだな」
「そうだな。5車身欲しいね」
「おっとお、さすが、雅子はええなあ。もうコントロールライン通過かぶっちぎりだなあ」
「ああ、ぶっちぎりだな。後は後続との距離みながら走ればいける。よっぽどじゃなけりゃそのままだ」
「そうだな。あとは隆文だ」
「パワーとギヤ比でストレートは逆らえないよ。オーバーヒートも大丈夫そうだ」
「テレメのデータは?」
「今のところ正常範囲内だな。雅子の車はこの前のようなことはないな。水温も油温も余裕だ」
「隆文の車もちょっとはバトルになってもいいか?」
「ああ、行けるよ。おお、3番手争いがすげえな」
「まあな。ドリフト状態でもコントロールするのが得意な連中の集まりだ。ガンガン来るだろ」
「おう、突込みも半端じゃないな。レーサーならやらないようなアウトからドリフトでの突っ込みも一気に行くな」
「そこだよね。いったあうまい」
「おっと、隆文も後ろを10車身離したから後はタイヤをいたわって走ればいけるな」
「いける。テレメの水温も油温もいい状態だ」
「それならいいかもな。逃げ切り体勢だ。その辺は隆文もわかってるよ。この距離じゃ雅子の車は追いつかない」
「そうだな。ストレートじゃすこし詰まるけどインは雅子が他よりも断トツで速い。この前のイチゴちゃんの引退レースで勝ったのも腕だな」
「隆文もわかったようだよ。無理して追いかけてないな」
レースは雅子がぶっちぎりで優勝、準優勝は隆文。
3番手争いはものすごく、ファイナルラップ迄タイヤを温存していた5番手につけていた車が一気に100Rのブレーキング競争で2台を躱して3番手に上がってそのままゴールだった
「雅子は念願の表彰台の真ん中だな」
「おう。見ろよあの嬉しそうな顔」
「隆文はレースの準優勝で加点されて3位で表彰台ゲットか。なんだよアイツ泣いてるぜ」
「あははは泣きすぎだろ。雅子が引いてるよ」
ボロ泣きしている隆文に引きながらも表彰台の真ん中で見ていた僕らに手を振る雅子
その笑顔は世界一輝いていたのだ。
帰り、途中のサービスエリアでご飯を食べていると
「お兄ちゃん。やったよ。優勝。完全優勝だって気持ちいいねえ。良い車ありがとう」
「雅子はさすがだよ。両方トップ」
「車がいいからよ。どこから踏んでもいいから楽でいいよ」
「レースじゃ雅子があっという間にぶっちぎって行ったからこっちは追いかけるのやめて2着死守にしたよ。勉強しよ」
「そうだぞ。お客さんのいうことをちゃんと修理できるようには自分の車をどうしたいか考えるんことができればいいんだよ」
「そうね。隆文。自分が乗りたい仕様をイメージしようね」
「うん。次は優勝だ」
「あははは、頑張れよ」
大会が終わった次の日、会社=実家のお店に行くと、親父が整備工場に来ていて
「悟瑠、いいエンジン見つけたからレッカーにするトラックのエンジン載せ替え頼む。排気は任せるよ」
レッカー用として買ったシャシのエンジンを乗せろと言われた
「エンジンどれだよ」
「エンジンはRH10だ。今はRH8だからラジエター移動とかいりそうだが乗るよ」
「ダーボにするか?」
「マニ割は無理か?ダブルのマニ割良い音するんだけどなあ」
「親父。何を引っ張るかだよ。高速道路で引っ張るか?それならパワー重視だろ」
「うん。それも考えてるんだよな。登録すれば公認の救援車になるから」
「なら、ターボほしいなあ」
「それだな」
「そうだ。中型のレッカーも買ったからそれはマニ割するか?」
「はああああああ。親父はこれだよ」
「良いだろ。ターボでよろしく」
「はいはい」
僕は買ってきていたKC-CB55Eのキャビンをいったんフレームから切り離しておろす
エンジン積みかえるので倒すよりもキャビンを全部とった方が作業が速く進む。
「よし。車の準備はOKだな」
「エンジンはオーバーホールいるだろ」
「在庫になかったか?」
「おう、有ったよ。KL用」
「そっちが好都合だ。こっちはどうやらKC-用だ」
「載せ替えだな」
「このエンジンはどっかで開けてみよう。最悪部品取りだ」
「そうだな。次はいけそうか?」
「うーん、やっぱりファンが苦しいなあ。グリルを前出しでもいいかな?」
「やっぱりファンは電動か?」
「ああ、ラジエターはスカニ○用でインクラもだろ。その分も何とかしよう」
「おう、電動ファンを4つ並べるか?」
「それがいいか?」
「そうだな。フレーム作って」
「隆文、ラジファンのフレーム作り頼む。」
「ペラを作んなくてもいいのは何とかなりそうだな。エンジン載せ替えだけだな」
「ああ、後ろのペラ作ってなんて難工事だ。次はエギマニ作ってかな?」
「それなら何とかなりそうだ。振れ止めつけて燃料系はそのままでいいよ」
「それなら簡単だな」
「ミッションはH/L付きの8速に換装だろ?」
「それで十分だろ。トルクは250キロでやめておくそれなら持つよ」
「それが良いな」
僕らは突貫でエンジンを載せ替えてターボ化していた
フレームとキャビンは錆を取って防錆メッキして塗りなおしていた。
手をつけてから約一月、レッカー車メーカーに運び込んでいた
後はメーカーで公認もとってくれるので僕らは戻ってくるのは待てばいいのだった。
「これでどこでも行けるな」
「うん、これならどんな雪でも行けるだろ。全部の軸にチェーンまけば」
「まあな、スノープラウはないけど総輪駆動だからな」
「よし。次の冬に合わせてだな」
と言っていると
「お兄ちゃん。中古のレッカー車来たよ。これも総輪駆動。これって大型?」
「あ。これってはああ、除雪車ベースじゃん。雅子。大型だよ」
「だな、2軸の除雪車か。よく見つけたなあ」
「KC-CVS80改のV10エンジンとは参ったぜ」
「悟瑠の親父さんの趣味か?違うな。どうやら前のオーナーがV8だと力不足で困って載せ替えたようだよ」
「やっぱりこの車もマニ割にするか?」
「はああ。そうだな。アウトリガーいらないから煙突左右デュアルか」
「おう」
僕らは雅子が乗って来た中古のレッカー車の整備+排気系の改造に追われるのだった。
ダブルのマニ割?
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。




