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走り屋の妹(全年齢版)  作者: 浅野 武一
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第十三話 ついつい見つけたバス

バスを見にいって何をやってるのやら?

「雅子、悪いけどまたあの大型車のお店に行くから付き合ってくれ。今日はこの前買った車の調子を見るのも兼ねて」


「あのお店?また、買ったの?このところしょっちゅうお兄ちゃんのスマートフォンに電話きてんじゃん。何かあると思ったけど」


「あははは、お見通しだな。ついつい2台買っちまった。どっちも観光バス」


「はああああ、回送するのね。まあいいやそうだこのバスにニックネーム付けたよ。形式はKC-RU3FPCBだよね。ロザンくんね」


「もう付けたのかよ。まあいいけど」


「いいでしょ。また全開で走ってみるの?」


「もちろん、この前エムエム君(U-MM618J)で行ったところにも行くよ。あのきつい登りで問題ないなら大丈夫。念のためトランクに1100キロ積んである。室内にも1100キロのおもり積んだ。40人乗った状態にしてあるよ」


「やるわねえ。まあいいかな?ところでパワーはどのくらいにしたの?」


「ミッションの関係で520psトルクは190キロでやめてる。クランクも持つかどうかわかんないし。これもエンジンのボルトの重要なところはきちんと塑性角度法にしてあってこれ以上やりようがなくて。ブロックにクランクキャップ倒れ防止のプレートとバンク間バーは入れた。ミッションは最新型のトラックのミッションを入れてみた。耐トルクは200キロって言ってるけどちょっと余裕持たせた。実力で190キロあるから」


「やること早いわねー」


「実は同じエンジンが隆文のところに有って補強やターボ関連つけて交換しただけ。ターボ関係は560psのトラクター用のもの流用したから。ところで、ドリZはどうだ?おかしいところはないか?」


「ドリZは調子良いわよ。何せお兄ちゃんがセッティングしたんだもん。エンジンがシボレーとは思わなかったけど。それにV8って気が付かなかった。ドロドロしてなくてなんか甲高いって言うかイチゴちゃんの音と振動に似てたから4発入れたのかと思った」


「あのエンジンフラットプレーンクランクキットが有ってそれを組んだんだよ。そしたら一気にパワーが上がったんだよ。元からエンジン重量が軽いからいいよ。フラットプレーンにしたら振動は4発×2だよ」


「へえ、やるわねえ。道理でなんか音と振動が違うって思ってたの。」


「親父に聞いたら昔はトヨ○のUZエンジンが良かったって言ってた。軽いから。今はなかなかないからなあ」


「すごいじゃん、エンジン重量軽いっていいよね。」


「そうだね。それにOHVだとヘッドにカムが無いからエンジンの重心低いからね。しかも4Vなんでガンガン来るもんな」


「すっごいじゃん、お兄ちゃんはよく仕上げるよね」


「突貫でやったからクランクの倒れ防止やってない。次はつく○だよね。」


「うん、今回は○固一徹クラスかな?」


「そうか、バス引き取って帰ってきたらドリのエンジン開けるよ。今度買うバスも社用車で会社の研修に使うんだからいいんだよ。修理の練習」


「うん。ってお店の仕事優先だかんね。お父さんも賛成なんだね。」


「もちろんだ。今日は販売のこともあって行くんだから。うまくすると隆弘の居る会社とうちの販売店の整備工場連携するから」


「そうなんだよね。聞いてる。隆弘さんの居る方が大型の設備いいんでしょ」


「そうなんだけど、実はうちの整備工場を改装して隆弘のところと機械を入れ替えて大型車専門にする。東南アジアと連携してトラック輸入やるから、隆弘の工場は小型に特化してやる」


「小型は全部?」


「ああ、フレーム修正みたいな重整備は隆弘のところに委託する。オイル交換みたいな軽整備ならアジトでやるし、うちの大型車メインの工場でできるからそこでやるよ。隆弘のところは敷地が狭くて大型用の設備が置けなくて無理だ。それに今は無理やりやっているからどうしても1台が限界でしかもエンジンは別の場所でおろさないと無理なんだよ。トラックのフレーム修正できるのはここの工場位の広さないと。それに部品の在庫置けないよ。」


「トラックもフレーム修正やるんだね」


「もちろんだ。そのためにここを拡張するんだよ。隣の敷地も買ったらしい。そこに倉庫立てるって。場所とるけど利益率はいいからね」


「やるわねー。まあ、ちょっと今年は売れすぎちゃったから損金増やさないと税金やばいからね」


「そうなんだよ。雅子が入ったら結構売り上げ増えたもんね。ドリ車だけじゃなくて若い女子も増えたね」


「まあ、看板娘ってことで。スーパーのお客さんが来てくれたの。明日行くんだよね。お店探すからね。へへへ食べるの楽しみ」


「やれやれ、明日行くから。現地で長野さんたちと待ち合わせする。長野さんがバス乗って来るとか言ってた」


「それも買うなんて言わないよね」


「言わないよ。もうと言ってもアジトに置く場所はあるからなあ。20台置けるもんなー」


「はあああああ。やりかねない」


呆れ返っていた雅子だった。

仕事を終えてアジトに明日乗って行くバスで帰って来た

ご飯を食べていると


「ねえ、今度買う予定のバスって型式何なの?」


「ええと2台だから日○のKCーRA531MBNで西○92C1 ボディ、エンジンはRG8 V8それと日○のU-RU2FNABで日○純正 F17E V8 だよ。どっちもいい個体のはず。観光バスだよ」


「はああ、観光バスね」


「それらも改造して定員を29人にする。みんなの整備の練習用。」


「でもさ、お兄ちゃんはターボつけるんでしょ」


「もちろん、黒煙対策が主だから。DPFつけるにしても本体で減らさないと大変なんだよ。再生が頻繁で。本体で減らしてそれでも減らしきれなかった分をDPFで取る。」


「そうなんだ。そうよね。そうすれば再生回数減って耐久性上がるもんね」


「まあ、それも仕方ないって言ったらそうだけど。とにかく黒煙対策しないとやばいからね。ターボは有効だよ」


「そうでしょうけどね。対策無くてもいいんじゃない?」


「そうしないと、この前の奥多○みたいに途中から山奥超える羽目になる。黒煙規制地通れなくて」


「そうか、道理でいきなり狭いところ行ったもんね。なんでこんなところって思ってたんだよ」


「そう、捕まっちゃ面倒だから、上手く抜ける必要あるからね。ゴーゴー君(RA552RBM改)はどこでも行けるけどね」


「お兄ちゃん、そう言ったところはよく見てるんだから、さすがだね。明日ね。出発早いんでしょ」


「うん、とはいっても、明日はここから出発だからまだ楽だよ。いったん会社行ってからじゃないから」


「そうね、それはいいけどええと。でもさ、明日は最初からあの峠抜けるの?道的にはそっちでも行けるよね」


「帰りにする。行きはこの前会社から行った道に出て、そこから山一つ超えていく。帰りは買って来たバスを会社に置くのと、この前に狩野さんが見ていたトラクターにターボつけたんでマフラー付けるんで車を隆弘のところに持ってくるんだって。その前にあの峠を一回走らせる。重量20トン積んだトレーラー引っ張るんだって」


「へえ、あの峠って結構狭いよねえ、トレーラーで通れるの?登りのすれ違い結構大変なところ有ったよね」


「まあ、でもそれも試したいみたいだよ。狭いところでのすれ違いのために登りで止まったときに発進できるかやりたいらしい。念のために短い方トレーラー持ってくるとか言ってた」


「ふーん、まあいいや。それなら行こうね」


「おう」


僕らは次の日に備えて早めに寝ていた。

朝起きるとご飯を食べて出発した。


「お兄ちゃん、すごいじゃん。このトルク。40人乗っているのと同じだよね。でもこの前の空車の時よりも断然早いじゃん」


雅子が初めて520psにしたロザン君(KC-RU3FPCB)を運転しながら言う。


「それいったらこの前のゴーゴー君(RA552RBM改)も同じだよ。って言うか、ゴーゴー君(RA552RBM改)は50人乗った状態にしてたよ。それでもあんなに走るんだから良いだろ。」


「えええ?そうだったの?すげえ、満席状態であんなに走るの?お兄ちゃんはどんだけ―って感じね」


「うん、雅子は後ろに行かなかったから見なかったんだね。室内にもおもり積んでたんだよ。トランクに1.5トン積んだからね」


「そうね、ほとんど運転してたし、途中でロザンくん(KC-RU3FPCB)に乗ったし」


「そうだったね」


「だよね。お兄ちゃん、ところでこのロザンくん(KC-RU3FPCB)の仕様は?」


「ええと、F20Cにターボつけてインタークーラーは560ps用、タービンも同じく560psの流用。でも燃料ちょっと絞って520psとトルク190もやるしキロで切っているよ。ミッションはトラックというかトラクターから流用した7MT。バス用よりは耐久性あるかなと思って。リターダーはトラクター用だからめっちゃくっちゃ効く」


「馬力が520でトルクは190キロだよね。7MTね。リターダー付きにしたんだね」


「うん、まあこれ以上は多分クランクが持たないよ。念のためタフトライド加工したクランクにしてあるけどどこまで持つかわかんない。コンロッドもゴーゴー君(RA552RBM改)と同じく鏡面加工しておいた」


「まあ、さすがね。今日はガンガン回していいんだよね。」


「もちろんだ。そのために来たんだから。僕の見立てで壊れない限界にしてみたから」


「それ、そうだよね。それならガンガン行ってみよ。ところで長野さんとは何時に待ち合わせなの?」


「現地に10:00頃だから十分に間に合うだろ」


「多分ね。500馬力オーバーだと結構走るよね」


「もちろん、結構フラットなトルクだからパワーはわかりづらいかも」


「そうかもね。このトルク特性って結構乗りやすいよ。高回転まで引っ張らなくってもいいし。いざとなったらガンガン行けるし」


「そうかもね」


「あ、へええ、あ、でも1000回転以下のトルクはゴーゴー君(RA552RBM改)大きいよ。排気量近いよね。どうして?」


ゴーゴー君(RA552RBM改)はツインシーケンシャルターボなんだよ。カムがNA用なんで普通のタービンだと低速かったるくなっちゃう。タービン4つ使っているよ」


「そうなんだね。」


「うん、このエンジンは単なるツインターボでカム換えてないからちょっと低速が弱いんだよね」


「そうなのね。登りじゃあちょっと900下回るときついからこういうところ速く走るにはそれ以下使わないようにすればいいのね」


「そう言うこと、ゴーゴー君(RA552RBM改)は元々最大トルクが1200で発生してたけど、このロザン君(KC-RU3FPCB)は1300だからね。でも意外に高速伸び悩むんだよね。クランクプーリーとフライホイールについてるバランスマスのせいかな?ゴーゴー君(RA552RBM改)はクランク特注で作って取っ払ったけどこの車はそのままだから」


「ふーん、それにしてもこのバスも静かだねー。このエンジンはちょっと高速が伸びないけど極端にうるさくなんないね」


「そう、そこがこの会社のいいところ、とにかく静か」


「そうなんだね。それはいいかもね。」


「キューピーちゃんも回って静かなエンジンだよ」


「そうか、あのエンジンも回るもんね。この前行ったときに平たん路でもレブに当てないようにするのに一苦労だった。エムエム君(U-MM618J)はレブ当てる方が難しかったなあ」


「そう、きちんとやってるメーカーは違うよ。エムエム君(U-MM618J)の会社はそんなセッティング。そこはメカポンプだからいじって無い。そうだエムエム君(U-MM618J)は300psになったから」


「そうなのね。速くなるのね」


雅子はニコニコしながら聞いていた、このところ大型バスを自分でも運転するので興味がわいているのだろう

そんな妹の佐野(さの) 雅子(まさこ)、普段はKZJ77Wのチューニングカーまたはこの前から稼働している雅子専用で|エムエム君と呼んでいるバスのエアロスターM○のMM618Jでアジトから麓の市内にある実家で経営している中古車屋に通っている。

入社して4年チョイ務めたスーパーを車に乗る仕事したいと言ってあっさり退職してしまった23歳。

今は家業の中古車屋では専務となって経理関係全て見ているし、納車や部品手配も時には軽整備もする。

勿論、いろんなシステムを組んでいて、両親も大助かりという。

妹は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級と事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっていた。

それなので、進学せずに地元資本の大手スーパーの経理部に学校推薦で入って、高卒ながら5年目で大卒5年目と同じ給料をもらっていたが、もともと車に乗るのが大好きでいろんな車に乗れる家業に転職した、家業に従事してからは危険物、大型免許を取って今は整備士の免許も取るべく勉強中だ。

スーパーでの実績は入社3年目で、各店舗から集まる情報処理集計システムを自分で組んでしまい、今まで買っていたソフトが不要になった。

しかも妹が作ったソフトのほうが勤めている会社に事情に合っているのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とメンテナンス費用が浮いた。

万一、おかしなことが起きても、雅子がすぐに治せる。

それも褒美もあって、雅子は高卒では異例の速さで主任に昇格してしまったのだった。

それに集計の自動化を進めた結果、各店舗の仕入れと売上関連のほとんどが一目でわかるようになって社長も大喜び。

その成果が認められ、高卒の3年目の途中に主任に昇格して、部下を持ってその指導もするようになったという。

4年目の7月からは入ってきた自分より年上の大卒を部下にもってチームを組んで仕事しているのだから驚く。

所属は、経理部だが、5年目の4月から係長に昇格して全社の業務効率化のリーダーに抜擢されて売り上げ仕入れ管理システムのソフトを雅子が自分のチームで組んでしまってさらに業務効率が上がったのだった。

しかし、当の雅子は出世には興味が全くなく、スーパーは給料のためと割り切っていたが、やっぱり好きな車の仕事がしたいといってあっさりとスーパーを辞めてしまった。

スーパーではなんと課長待遇にするから残ってくれと言われたらしいが出世に興味がない雅子はスパッと辞めたのだった。

もちろん、部下にシステムの使い方、直し方すべて引き継いでいるので大きな発展は無理かもしれないが、将来ビジネススタイルが変わっても最低限の対応はできる様にしてきたという。

妹は峠を走り始めて既に5年がたっていて、僕の古くからの友人がリーダーを務めるチームでサブリーダーになっている。

ホームグラウンドでは断トツトップの速さで時には新たにチームに加入してきた後輩たちの指導もするようになっていた。

得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入って全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに雅子しかいない。

それにサーキットを走らせてもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。

今はドリ車を作って競技に参加するほどになっている。

この前はなんと初出場で入賞してしまったほどだった。

帰りのローダーの中ではもらったトロフィーを見て嬉しそうに笑っていたのだ。

このドリ車はうちの会社でスポンサーしていて会社のPRとしてやっている。

僕:佐野 悟瑠(さとる)は妹より4学年上の26歳。

地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して5年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。

今はそこで中古車の納車前整備や修理をしていて、時には中古車の買い取り査定もする。

大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになったし、○ントリペアも勉強して資格もとった。

それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので去年4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。

大型は在学中にとってさらに就職してからけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。

それも中古車で買ったものでもある

商売柄、中古車で市場では人気がないが、程度のいいFR車を見つけては整備して雅子の走り仲間へ売っている。

時にはミッションの換装もやっている。

改造車検も取って、合法的に乗れる仕様にして販売している。

3級整備士の資格もあるので運行の管理士になれるのでバスも持ちたい放題だ。

両親はどちらも車好きでそれが高じて中古車屋兼整備工場を経営している。

バスを走らせていると坂道の登りとカーブがきつくなって来た。

雅子はほとんど4速か3速で登っている。

ゴーゴー君(RA552RBM改)より遅いとはいってもバスとしてはかなり速い方だろう。

後ろの席に行って黒煙を見てもうっすら位で何とかなるかなと思っていた。

レブリミット近くではちょっと吐いてしまうのでリミット近くの燃調を薄い方に絞る必要がありそうだ。

高速ステージに入っても雅子はガンガン回す。

時には5速に入っているが全開のままで走る。


「さっきから営業の車なのかしらね。抜きたそうなんだけど抜けないみたいね。立ち上がりとストレートで離されブレーキングとコーナーリングで追いついてまたストレートで離されてみたいな感じだよ。高速じゃあ全然追いつかないでどんどん離れてく」


「まあ、この速度で走っているのを軽のバンで抜こうとしてもパワー足りないでしょ。それにあのドライバーDレンジいれっぱなしでしょ」


「それじゃあ、無理よね。4速ATじゃあ4速から2速に落ちる迄時間かかるし」


「多分ね、2速までキックダウンしている間にロザンくん(KC-RU3FPCB)に離されるって感じよね」


「そうね。マニュアル操作しないとね」


「あの車結構飛ばして走ってるって感じだけど、そこそこ走るのは慣れているってみえるね。でもDレンジ入れっぱなしじゃねえ、バスが速すぎッて思ってるかもね」


「そうよね。この速度で登ってるバスなんてないよね」


「あははは、ないねえ。ゴーゴー君(RA552RBM改)くらいかな?」


「Dレンジ入れっぱなしは仕方ないよね。マニュアルでガンガン走る人減ってるからね」


「そうそう、大型もAMT増えてるもんね、あれは故障するとすっごく厄介で結局MTにするところもあるみたいだよ」


「やっぱりそうだよね。そうだ、この前発売されたばかりの3軸トレーラーがミッショントラブルで発進できなくなって停まってた。二車線だからまだいいけど困るよね。荷物頼んだ人って」


「そうだね。でもさ、聞いたら下手が増えてクラッチ交換増えてるって。ほんと大変だよね」


「そうなの?はあああ」


ブバババ、グロロロンとデュアルマフラーから聞こえるV8エンジン独特の排気音を響かせて峠を登って行く雅子。

これが好きという人にはたまらない音だ。

雅子も結構好きという。

うちのV8のバスは全部フルデュアルにしているのでこの独特の音が堪能できる。


「お、雅子、下りだ。この前と同じように排気とリターダー使えよ。リターダーもトラクター用の液体式に交換しておいたから結構効くはず」


「へえ、排気って2段?」


「そう、2段式。排気はフルデュアルで抜いてるからバルブが2つある。同調は取ったけど多少のラグはご愛敬で。ジェイクは停めた。その代わりリターダーの容量あげてトラクター用に交換したから。3段目にするとリターダーも作動する。」


「その辺はさすがお兄ちゃんだよね。おほっお。排気とリターダーのセットめっちゃ効くじゃん。5速だよね。何この減速度」


そう言いながら雅子はぶばばばーと5速のまま排気とリターダーで減速、バッシュン、ぐおおおんと空ぶかししてダブルクラッチを使って4速に落としてぶばばばーと同じく排気とリターダーで減速していく。

またストレートだが4速のまま下ってストレートの終わりにはぶばばばー、バッシュンと排気を効かせて減速、余りを開放する音が響く。


「あれ?さっきの軽バンやばくね?抜いて行ったけど」


長めのストレートでさっき抜きたくてもパワーが無くて抜けなかった軽バンが下りを利用して抜いて行った。

しかし明らかにオーバースピードのように見える。

しかも、ブレーキが焼ける匂いもする。


「え?あ。前のブレーキから煙吐いてるじゃん。停まるの?」


「雅子、バス止めないとヤベえよ。前に突っ込んじゃう」


「もう駄目、あの速度じゃ減速間に合わない。ガードレールにぶつかったら停まるじゃん。よけないと突っ込む」


「うん。ブレーキフルに踏め」


「停まれええ」


抜いて行った軽自動車は予想通り減速しきれず、ガードレールに左前から擦るように突っ込んでいた。

ドン、ガギギギギー火花を散らしながらボディの左サイドをガードレールに擦ったままなんとか横転は免れ道に停まった。

それに追突してはまずいので雅子はロザン君(KC-RU3FPCB)のフットブレーキ、排気、リターダーもフルに使ってカーブの手前20メートル手前にハザードを焚いてバスを停めた。

プッシュウウウとドアを開けて降りて行く。


「おーい、大丈夫か?」


「すみません。はーはーはー」


「ブレーキフェードしてたよ。ブレーキから煙吐いていたからやばいかと思ったよ」


「自分のミスです。それにしてもこのバス速いですね。登りの区間じゃ直線で離されて抜けなかったからさっきの下りの長い直線で抜いたら止まんなくて」


「そうだろ、下りでブレーキ使って降りてきたんじゃフェードするよ。その状態で踏んだら止まんないよ。無事でよかったけど」


「会社と警察に電話します」


「いそいでたの?」


「まあ、はああ、初めてこの道走ったんでナビでこの直線見つけて」


「お兄ちゃん、警察には電話したから来るって。あたしの後ろで登りで追いつかなかったもんね。ワンボのATじゃ厳しいよ。下りもDレンジで下ってたんじゃ」


「え?この()ですか?バスのドライバー?」


「そうだよ。警察来るんなら後は任せよう。念のため病院に行ってみてもらった方がいいよ。三角表示板出してよ。今はこのバスがあるから良いけどなくなったら突っ込まれるかもしれないから」


「そうですね。あああ、左側見たくない」


そう言っていると、前からパトカーに乗って警察が来た。

事情を話して引き継ぐと僕らはお店目指して出発した。


「お兄ちゃん、抜かせてあげた方がよかったのかな?」


「微妙だね。抜かせても同じくどっかで突っ込んでたよ」


「そうねえ、それにしても排気とリターダーって効くよね」


「うん、僕もびっくり。ここまで効くとは思わなかったし。この車は排気とリターダー使うとブレーキランプ点くからなあ」


「そうなんだよね、ブレーキ一回も踏んでないよ。停まるんだもん」


「そう、だからいざとなったらガツンと踏めるからね」


「そうね、ゴーゴー君(RA552RBM改)もそうだった」


ゴーゴー君(RA552RBM改)もそのミッションはトラクターで使うから強力なリターダー使えるんだよ。今回のトラックのミッションもトラクターにもあるから強力なリターダー使えるんだよ」


「なるほどね。あ、お店着いたよ」


駄弁っているうちに僕らはお店に着いた。


「あ、どうも。」


「どうも、実はトラクターミッショントラブルで乗ってこれなかったんです。560psのミッションに交換です」


「そうですか。それはそれは」


「その代わり、今日はここで買い取りしてもらいたい車持って来たんです」


「へええ、え?これ?」


「はい、九州から来た個体です」


「うおおおお、これも欲しいなー」


「お兄ちゃん、何台買えば気が済むのよ。今日これまで持って帰るの?置き場ないじゃん。来週からうちの工場改装するんでしょ。隆弘さんの工場と設備交換するんだから置き場ないじゃん。」


「まあな。これは取り急ぎアジトに置こう」


「はああああ、止まんない」


「佐野さん、好きですねえ」


「これってこっちじゃあ見ないですよね」


「ええ。あ、これいいじゃん。長野。これいいよ」


「あ、中型幅のロングね」


「おう、しかも中スライドのノンステップ、ピッタリだ」


「KL規制だからどこでも使えるよ」


「何にするんですか?」


「これは移動販売車にしようと思ってるんです。バスの路線が減便されて買い物難民が増えてるんでそれなら買い物に行けない人のためにこのバスを改装して」


「それはいいですね」


「良いことに、これはスライドなんで出入り口付近が広いんです。それに幅がちょっと狭いから停めても邪魔になりにくいんで」


「なるほどね」


「うちの輸送会社に移動販売の委託が来ててトライとしてバス探してたんです。これはいいことにエンジン別置きのエアコンもあるんでこのスペース使って発発回して冷蔵庫の電源にするんです」


「なるほどね」


「長野。これを契約して帰る。ここに来たかいがあったよ」


「そうか、狩野。良かったな。うちの会社でも路線廃止あるからなあ。このバスももう使わないからって売ってこいだったよな。狩野のところでレンタルで使ってて」


「仕方ないだろ。いくら地域外で登録だって言ったってな。DPFはついてるからどこでも行けるけどな」


「そうなんですね」


「うん、このバスは佐野さんのところで引き取るということで」


「はい、いかほどで」


「10万で。廃車するよりはましってことで」


「はああ、これじゃあお兄ちゃんのコレクション止まんないわ」


「雅子、良いことにしろ。」


「これは?形式は?」


「ええと日○のKC-UA521NANでボディ西○の96MC RF8 V8。自家用」


「わかったわ。このままこれは狩野さん乗って帰るの?」


「うん、長野さんにうちで買ったのを乗ってもらえると助かります、回送料金払いますので」


「ロハでいいですよ。狩野、そのバスを乗って佐野さんのお店に行こう」


「うん、行く前に俺はこの中型ロング契約してくる。ざっと見たけどいい個体だ」


狩野さんは見つけたバスを契約して来週取りに来るとお店にいっていた。


「じゃあ、この前のルートですね」


「はい」


僕は日○のKCーRA531MBNボディ西○92MCC1 RG8 V8に乗って、雅子はロザンくん(KC-RU3FPCB)、長野さんは日○のU-RU2FNABボディ○野純正 F17E V8、狩野さんは乗って来た日○のKC-UA521NANでボディ西○の96MC RF8 V8で雅子の車を先頭に出発した。

傍から見たら車種もボディカラーもバラバラの4台のバスが列をなして走っているのだから、結構違和感たっぶりかもしれない。

パワーを試す道に来た。

さすがにターボで520ps迄増強した雅子の乗るロザンくん(KC-RU3FPCB)は早く僕が全開で走っても全く追いつかない。

後ろのバスたちは更にきつい様で徐々に引き離されていく。

僕が乗っているバスはエンジンが結構調子がいい様でリミットまでガンガン回る。

その代わり煙幕の如く黒煙を吐きあげる。

雅子の乗っているバスには後ろにカメラをつけているのでどのくらい黒煙が出たかわかるようにしてるので直接見なくてもわかるし、スモークメーターもあるのでアジトでデータを見ればいい。

雅子が登り切ったところに有る道が広がっているところにバスを停めて待っていた。


「お兄ちゃん、上から見ててもすごいねえ。忍者が煙幕張っているかと思ったよ」


「そうか、ミラーで見てもすごかった」


そう言っていると、長野さんが乗る日野 U-RU2FNAB改:日野純正 F17E V8が上ってきた。

このバスも煙幕のごとく黒煙を吐きながら登ってきていた。


「速いですねえ。あっという間に見えなくなりましたよ」


「雅子が乗ってるバスは実力で520あるんで速いです。黒煙吐かなくなって狙い通りです」


「うん、やっぱり2200超えると結構出るからタービンの容量が不足かも」


「そうか、560psのタービンなんだが。大きくするか?」


「うーん、そう言ってもこれ以上低速なくなると乗るのつらいしなー」


「高回転でちょっと絞ろう。リミット付近だから影響少ないかも」


「それならこのままでいいじゃん。リミット付近でしょ。そんなに回さないでしょ」


「まあな」


と言っていると狩野さんが乗ったバスが登って来た。


「すまん、ちょっとDPFのチェックランプ点いちゃって再生していいか?」


「そうか、再生か」


狩野さんは再生ボタンを押して再生していた。

もうもうと白煙が上がる。


「こっちもちょっとクーリングだな。雅子水温は?」


「まったく問題なし。さすがお兄ちゃんだね」


「ラジエターの容量足りてよかったよ」


「この前のバスも速かったですねえ。ロドスタでついて行ったけど結構回してしまったよ。」


「そうでしたね。あっという間に2400迄回るし」


「うん、ゴーゴー君(RA552RBM改)は速かったわよ。あれで50人乗った状態にしてるなんて思わなかった」


「そうですか。へえ、あれで50人乗り状態」


「まあ、最悪条件にしたんですよ」


「そうですか、やりますね」


「あ、再生終わった。よし、いいかな?」


「帰りましょう」


僕らはお店に帰って長野さんは固辞しようとしたが家の近くまでの電車代+飲み物代、食事代をそれぞれのカードに入れていた。

3台もバスが増えて母親も雅子とともに呆れていたのだった。

その後は雅子のドリ車をアジトに運び込んでエンジンの倒れ防止プレートの制作だった。

一気に3台も買ってしまった悟瑠

雅子はドリドリまっしぐら

走り屋の妹のストックがなくなったので更新は週一になる予定です


いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。

今回はここで更新します。

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