第十二話 次の進化は?
バス趣味にまっしぐらの悟瑠
なんでも乗っちゃう雅子
次に行ったところは?して
「ねえ、お兄ちゃん、スカウトきちゃったよ。あたしが卒業した教習所から。大型免許もってて、指導員出来て経理出来てシステムも組めるってことで」
「雅子、おかえりー。遅いと思ったらそんな話しあったの?」
「今日教習所の車を整備して納車に行ったでしょ。その教習所ってあたしが通ってたところなんで担当の人がスーパー辞めたの聞いたみたいでスーパーより良い条件にしますからって。ママがダメって断ったから良いけどね。会社辞めて家業やってるのにスカウト来るなんて」
「それだけ雅子が優秀だってことだよ。スカウト来るなんてすごいじゃん」
「まあ、そうかもしれないけど。そうだ、ママたち今日は会合で遅くなるって。もしかしたら飲みになってお迎えいるかも」
「わかった。ちょうどエムエムくんの初期の慣らしが終わったから迎えついでに全開走行もいいかもな」
「んもう、会館にバスで迎えにいくの?」
「良いだろ」
「あたしもいくよ。明日はお店定休日でしょ」
「そうだな、代行って言うだろうから船底連結で」
「車は飲むお店か会館に置けばいいじゃん。連結したらあたし乗れないじゃん」
「あ、そうか、雅子はまだ牽引免許無いもんな。車は飲むお店か会館に置こう、何かあったらロックンもあるしサンゴちゃんや三四郎くんもあるからいいか」
「そうよ、ゴーゴー君もキューピーちゃんも獅子丸君もあるじゃん」
「そうだな」
スムーズドライブバトルから一月程経ち、僕が4台目のいい出物の元路線バスを見つけてエンジン、ミッションをオーバーホールしてエンジンはターボ化、それにボディーの錆取り、防錆メッキ処理、外板色を塗り替えしてから大凡1000キロ走ってエンジンの初期慣らしが終わりオイルとフィルター交換していた時だった。
勤めていたスーパーを辞めて家業の中古車屋で経理兼営業をやっている妹の雅子がお店に帰って来た。
僕もお客さんのところに車両を納車してそのまま直帰してもよかったのだが、思ったよりも早く納車が終わってしまい時間が余ったのでお店に戻ってエムエムくんのオイルとフィルターの交換していたのだ。
「あ、そうか。ゴーゴー君もならし終わったけど最近稼働率低いんだよな。この前ロータリークラブの会合で草○温泉に行ったときから動かしてないや。ゴーゴー君もたまにはガンガン回して水温とか大丈夫かみたいんだよな。この前のバトルはスムーズドライブの時にはエンジン部品一部こなかったからな」
「そうね。ねえ、ところでこのエムエムくんって何か気を付けることってあるの?」
「ああ、このバスのミッションとラジエターの容量ギリだから6D24の路線バス用に載せ替えた。まあ変なことは無いと思うけど性能フルに使ったときにラジエターの容量足りるかわかんないんだよ。ミッションは大丈夫だよ」
「はああ?そうなの?でもオイルクーラーつけたんでしょ。それで行けるんじゃ」
「いけそうだけどね。この辺でエンジン全開で一気に登れるところって言うとやっぱりイロ○か金精道○かな?碓氷バイパ○でもいいかな?時間あれば調べたんだけど白○山行ってもいいな。標高高いしそこなら冷えにくいからわかりやすいかな?全開でガンガン行きたいんだよね。それでも問題なしなら安心だから。できれば真夏の首都高の渋滞とかも見たいなーって思ってるんだ」
「お兄ちゃんってとにかくオーバーヒートには気を付けるもんね。隆文のエンジンって結構ギリだから?」
その日は僕が食事当番なので工場での作業を切り上げアジトに戻ってご飯を準備して一緒に食べながら話していた。
エムエムくんとゴーゴー君が全開走行でもオーバーヒートしないか見ようという話をしていると
「まあそうだな。結構ぎりだよ。エムエムくんは高回転まで回してないから」
「ふーん、ねえそれじゃあまず、碓氷バイパ○でしょ。登りでガンガン回してみようよ」
「うん、そうだ、エムエムくんとキューピーちゃんでまず行ってみよう。エムエムくんが一番オーバーヒートが厳しいかな?ラジエターは容量の大きいのにしたんだけど最高回転高いから」
「そうなんだね。どうして?出力はそんなに出てないしラジエターは大きいエンジン用に変えたんでしょ」
「そうだけどね。ゴーゴー君もキューピーちゃんもターボ後付だけどエンジンの許容回転が一番高いのがエムエムくんなんだよ。回転高いと油温上がるんだよ。オイルクーラーは追加したけどさ」
「そうなんだ、そうか回転高いと不利なんだね。じゃあ、まずはエムエムくんとキューピーちゃんで行ってみよう。ってことは結構回していいんだよね」
「うん、ガンガン行こう。気温が上がる昼に行くから会社の休みの日に行くよ。」
「うん、行こうね。じゃあさ一番標高差激しくってあんまりスピード乗らないところだよね。1速はいいとして2速でしか登れない急坂とかあると良いね」
「雅子ってわかってるよね。走っててきちんと計器見てるからね」
「えへへへ、念のためママたちにレッカーの準備頼もうね」
「そうだな、この前見つけた大型のトレーラーヘッドの現車見てみたいとか言ってたからもしかしたら一緒に来るかもね」
「へー、確かにママたち好きだから来たいって言いかねないよね」
「親父たちには僕が言っておくよ、来週の休みの日に行ってみよう、メーターはしっかりついてるからデータも取れるし、行ってみよう。ルートは見る限り草○から白○山登って湯○で折り返しかな?そこで調子見てだめなら平たん路走って戻ろう。平たんなら大丈夫でしょ。雅子はロングドライブだけどいいよね」
「いいよ、この前だって隆弘さんたち大型免許持ってないからあたしがずっと獅子丸くんを運転してたよ。」
「そうか、今度は昼の長丁場だからね。夜と違うぞ。ってことでだ、来週のお店休みの日に行くからね」
「なるほどね。準備ばっちりしておくよ。大型バスが2台停めれてご飯いけるところ探しておくよ。信州なら蕎麦だよね。お店も検索するからね」
「ああ、ありがと。燃料も満タンにしとかないとね。タンク増設してないから予備もっていくか、念のため。工具セットも念のため持っていくかな?」
「お兄ちゃんとバトル以外でのドライブって久しぶりだよね。なんか楽しみ。お蕎麦美味しそう。でもこじんまりしたところはバスじゃあに入れないからね。それが残念かな?」
「あははは、それは残念。念のためオイルの状態も見てだな。あんまり汚れた状態だとよくわかんないから。そうだ、ゴーゴー君も交換しよ」
「あ、そう言うことね。万が一なんか起きたらやばいってことね」
「あはは、さすが雅子。そうだよね。とにかく全開で走らせるからね、標高低いところから全開で一気に駆け上がるってことだよ」
「ヒルクライムかー、いつもガンガン走るのダウンヒルばっかりに近いからね。ヒルクライムって面白いかも」
「雅子がヒルクライムってあんまりないよね」
「ところで、キューピーちゃんって405だよね。290のエムエムくんじゃあ追いつかないんじゃ?」
「ああ、そうかも。いくら2トンは軽いって言ってもトルクが全然違うからな」
「あ、そうか、確かにトルクが全然違うよね。キューピーちゃんと獅子丸くん、エムエムくんってトルクどのくらい出てるの?」
「ええとキューピーちゃんは142だったかな?エムエムくんは80なんだよ、排気量に大体合ってるよ。ゴーゴー君は200キロでやめてる。ミッションもたないから。獅子丸くんは125。あのクラスのバス用のミッション良いの無いから抑えてる。エムエムくんもミッションがやばいからそのくらいでやめているけどね」
「ふーん、お兄ちゃんってパワーアップしても壊さないようにするんだよね。大体どのくらいなら大丈夫そうってわかってるって言うか弄ってる経験値が違うのかもね」
「まあ、それはそれで。何にしてもバトルの最中に壊れたら困るだろ。ロックンとか結構ぎりで使ってるけどね。パワーアップのネックはミッションなんだよ。大型は流用が意外に難しくって」
「うん、そうだよね。そこまで考えて車作るからバトルでもガンガン踏めるんだよね。そうか、エムエムくんのトルクじゃきついのか?」
「調べてみたらどうも今の5速の耐えられる最大トルクは100キロ位が限界みたいだ。どうしようもないならエムエムくんも観光バスの6速に換装だね」
「6速もいいかもね。クロスミッションでしょ。5速だとめっちゃワイドじゃん」
「まあ、5速よりはクロスだよ。大型のミッションは結構ワイドだよ。それもあるからハイ、ロー切り替えもあるんだよ」
「そうなのね。そうかもね。エンジンって回っても3000チョイでしょ。それならそうかも」
「まあ、そうなんだよ。エムエムくんのメーカーのエンジンはパワーは数値通りって言われてるけど上が回らないから。最高出力回転数がレブリミットみたいだよ」
「そうなんだね。へええ、キューピーちゃんは結構回るよね」
「まあ、そのメーカーはとにかく回るんだよ。名物の毒舌設計者がいろいろ工夫したからね」
「そうなんだ。ゴーゴー君や獅子丸くんは?」
「うーん、エムエムくんとキューピーちゃんの中間っていうかいいとこどりかなあ、でもちょっと故障が多いのが難点だね」
「特徴あるんだね」
「そうなんだよ」
「ほかにメーカーは?」
「あとはトヨ○系のがあるけど、ミッションが弱いって言われてる。でも細かいトラブルがないから評判がいい。パワー無いのが玉に瑕だけど。日○馬力って言われてる」
「ふーん、そうなんだ」
「燃費そこそこでエンジンの性能的にはちょっとだけど特別悪いところはなく、でもずば抜けていいところもない。故障少ないから無事名馬って車かな」
「ふーん、そうか、そのメーカーのも乗ってみたいな」
「ああ、いい出物あったらな」
「うん、楽しみにしてるよ。お兄ちゃん」
雅子はニコニコしながら聞いていた、このところ大型バスを自分でも運転するので興味がわいているのだろう
そんな妹の佐野 雅子、普段はKZJ7○Wのチューニングカーまたはこの前から稼働しているバスのエアロスターM○のMM618Jでアジトから麓の市内にある実家で経営している中古車屋に通っている。
入社して4年チョイ務めたスーパーをあっさり退職してしまった23歳。
今は家業の中古車屋では専務となって経理関係全て見ているし、納車や部品手配もする。
勿論、いろんなシステムを組んでいて、両親も大助かりという。
妹は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級と事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっていた。
それなので、進学せずに地元資本の大手スーパーの経理部に学校推薦で入って、高卒ながら5年目で大卒5年目と同じ給料をもらっていたが、もともと車に乗るのが大好きでいろんな車に乗れる家業に転職した。
スーパーでの実績は入社3年目で、各店舗から集まる情報処理集計システムを自分で組んでしまい、今まで買っていたソフトが不要になった。
しかも妹が作ったソフトのほうが勤めている会社に事情に合っているのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とメンテナンス費用が浮いた。
万一、おかしなことが起きても、雅子がすぐに治せる。
それも褒美もあって、雅子は高卒では異例の速さで主任に昇格してしまったのだった。
それに集計の自動化を進めた結果、各店舗の仕入れと売上関連のほとんどが一目でわかるようになって社長も大喜び。
その成果が認められ、高卒の3年目の途中に主任に昇格して、部下を持ってその指導もするようになったという。
4年目の7月からは入ってきた自分より年上の大卒を部下にもってチームを組んで仕事しているのだから驚く。
所属は、経理部だが、5年目の4月から係長に昇格して全社の業務効率化のリーダーに抜擢されて売り上げ仕入れ管理システムのソフトを雅子が自分のチームで組んでしまってさらに業務効率が上がったのだった。
しかし、当の雅子は出世には興味が全くなく、スーパーは給料のためと割り切っていたが、やっぱり好きな車の仕事がしたいといってあっさりとスーパーを辞めてしまった。
スーパーではなんと課長待遇にするから残ってくれと言われたらしいが出世に興味がない雅子はスパッと辞めたのだった。
もちろん、部下にシステムの使い方、直し方すべて引き継いでいるので大きな発展は無理かもしれないが、将来ビジネススタイルが変わっても最低限の対応はできる様にしてきたという。
妹は峠を走り始めて既に5年がたっていて、僕の古くからの友人がリーダーを務めるチームでサブリーダーになっている。
ホームグラウンドでは断トツトップの速さで時には新たにチームに加入してきた後輩たちの指導もするようになっていた。
得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入って全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに雅子しかいない。
それにサーキットを走らせてもダウンヒルのタイムもチームの中では一番だ。
この前はなんと大型免許を取ったばかりにもかかわらずバスを使ったスムーズドライブバトルで勝ってしまうという何でも乗りなのだ。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の26歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して5年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今はそこで中古車の納車前整備や修理をしていて、時には中古車の買い取り査定もする。
大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機、レーザー溶接機、フレーム修正機はバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになったし、○ントリペアも勉強して資格もとった。
それに、カラスリペアと危険物の免許も取って玉掛けも資格を取っているので去年4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。
大型は在学中にとってさらに就職してからけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。
それも中古車で買ったものでもある
商売柄、中古車で市場では人気がないが、程度のいいFR車を見つけては整備して雅子の走り仲間へ売っている。
時にはミッションの換装もやっている。
改造車検も取って、合法的に乗れる仕様にして販売している。
3級整備士の資格もあるので運行の管理士になれるのでバスも持ちたい放題だ。
「雅子、明日はキューピーちゃんかゴーゴー君で会社行ってくれるか?」
「うん、いいけど。どうしたの?」
「エムエムくん見てるとちょっと黒煙濃いから噴射ポンプの状態を見るんで隆弘に預けるんだよ。もしかするとノズル交換かも」
「新しいのにするの?」
「うん、今のは交換してないからね。噴射圧上げて、黒煙減らしてパワーアップできないか見るんだ。制御は僕がやるけど燃料のノズル交換は隆弘に頼んだ。隆弘の会社も大型の外販整備増やすって言うから、うちの提携先としても良いか検討する」
「いいよ。煙減らすのね。ふへへへへー速いの楽しもう。そうねゴーゴー君の580馬力堪能しちゃお。じゃあゴーゴー君で行く」
「それなら、僕はコンド○の積載だな。ぶつけちゃって修理してほしいって連絡あったから見てきて多分コンド○に乗せて工場にもってくるから」
「じゃあきまり、お腹すいた。ご飯食べよ」
一緒にご飯を食べ始めた
僕らが今住んでいるところは走りや仲間がアジトと呼んでいる、そこは祖父母が現役の頃、林業を営むのに便利なようにそこに住んでいたのだった。
その家は祖父が節等が多く、売り物にならない木材にがっちり防腐剤と開発中の難燃剤をたっぷり含侵させた材料を100%使ってあり、しかも大型車が5台も入れる木材の倉庫、製材所も併設していたので、そこにピットを作り、リフトとクレーンは製材するのでもともとあったのを流用、修理ができるガレージとして使っている。
それに加えて、材木のそりを修正したり、圧縮に使う大型の2000トン油圧プレス、しかも100トンのミニプレスもあったのだ。
ガレージの上には居住スペースもあり、走り始めた当初はそこで寝泊まりしていたのだ。
夕食を食べていると
「お兄ちゃん。ねえねえいいでしょ、今度の行くところって観光地だよね。混んでないかな?行くなら渋滞の状態でもいいか見る様にゴーゴー君で行こうよ」
「渋滞かそれもいいね、そうだね、ゴーゴー君で下見行ってみよ。そう言えばお隣の県にトレーラーのヘッドを見に行こうって親父が言ってたよな」
「そうだよね、場所が近いなら下見兼ねていけばいいじゃん。それならお仕事で行っちゃえばいいじゃん」
「そうだね。親父に言って雅子といくことにしよ。ゴーゴー君で行こう」
「そうよね、たまにはゴーゴー君乗ってあげないと可愛そうでもんね」
わくわくした顔でご飯を食べながら言う雅子だった。
ご飯を食べると風呂にいく、家のお風呂もおじいちゃんがヒノキの売りものにならない端材をつなぎ合わせて作ったもので湯船、窓の桟、洗い場がヒノキなので木のぬくもりがいい。
入った後は換気扇を回して乾かす必要があるが、おじいちゃんがしっかりと防腐剤を含侵させてくれたおかげでいまだに腐りが全くない。
二人で交代して入って、それぞれの寝室に行く。
その日はこのところの疲れもあったのだろう、ベッドに入ると珍しくあっという間に寝落ち、そのまま朝までぐっすり寝てしまった。
次の日の木曜日、僕らはゴーゴー君で中古のトレーラーのヘッドをみるべく向かっていた。
置いてあるところは信州中○で、いいことに僕らがはしりに行くコースの折り返し地点そのものなので嬉々として出かけていた。
僕らは途中見つけたお蕎麦屋さんで一緒にご飯を食べていた、すると妹の雅子が言う。
「お兄ちゃん、2万1千cc+ツインターボって伊達じゃないよね。それにミッションのギヤ比もワイドだけど下のトルクあるんで制限速度+アルファ迄ならタコメーターのクリーンゾーン超えて回さなくても登っちゃってるよね。でもそれだとあんまりテストにはなんないか」
「ああそれね。この前全開で走ってみたからいいよ。今日はエムエムくんたちのコースの下見だよ。それに今回のメインはトレーラーのヘッドだから」
「そうだよね、あれは560だっけ?ゴーゴー君と同じくらいじゃん。」
「そうだよ、ゴーゴー君はこのV8のブロックのポテンシャルがわかんないから580馬力でやめたし、トルクもミッションの強度の関係で200kg・mで切ってるよ。その分高速が伸びる様になったけど、トレーラーより重量軽いからまあいいことにしよ。ゴーゴー君はクランクピンを太くしたんだけどいいことにコンロッドボルトがトルク法だったから塑性角度法にしてボルトの径を細くできたんだよ。ジャーナルも同じくトルク法だったから塑性角度法にしてボルト細くしてクランク太くできた。」
「すごいじゃん、ってことは結構速いかもね。お兄ちゃんトラクターもいじっちゃうんでしょ。それよりもゴーゴー君はそんなにすごいことしたの?」
「う、わかってるな?ブロックのポテンシャルから考えるとエンジンの出力関係はそのままかな?上手くターボいじって低速からターボ効かせるようにして乗りやすさ出そうと思うんだ。ゴーゴー君はエンジンの設計が古いからできたことなんだけどね。でもキューピーちゃんは同じような時期の設計だけど既に塑性角度法にしてあるからクランク周りはいじれなかった。念のためタフト加工はしたけどね」
「はああ、んもう、やること早いよね、頭の中にはいじるプランたっぷりね。もっとバス買っていじりそうじゃん」
「ううう、しまった」
「きゃはははは、午後は全開で回すからね」
お蕎麦を食べて出発した。
かなり急な坂道だが、ゴーゴー君のパワーなら全く苦にしないでガンガン登っていく。
しかし、キューピーちゃんやエムエムくんは喘ぎ喘ぎにならないと登れないだろう
「お兄ちゃん、観光バスだからかなー、ゴーゴー君って静かだよねー」
「まあ。それはそうだよ、ゆっくりくつろぐバスだからね。ゴーゴー君のブロックにも補強プレート入れたよ。このエンジンって良いことにクランクキャップはS2〇エンジンと同じで横からボルト入れて倒れ防止するんだ。そこのボルトが刺さる部分にも補強入れた。サンゴちゃんたちと同じようにブロックにプレートも入れたし、バンク間バーも入れてある。」
「そうなのね。きゃははは中でくつろぐバスね。走り終わったら爆睡にはいいかもね」
「あのなー、まあいいや」
「じゃ、トラクターが楽しみね。560馬力仕様だもんね」
僕らは雅子の運転で更に急坂になった道を登っていく、ゴーゴー君の200キロのトルクをもってしても14トンあるのでカーブ次第では3速迄落として登っていく
雅子は全開で登っているのだろう、ターボの音が車内に響き、制限速度は完全無視でガンガン回す。
このバスは初期のDPFがついているので詰まりやすい、ということは再生する回数が増えるのだ。
その再生する回数を減らしたくて黒煙を減らすためにターボを入れて、さらには霧化をよくしたいのもあり噴射圧を高圧にして空気に対する噴射量を減らしている。
それではパワーが出ないので過給圧は最新のターボ並みにあげている。
そのための大きめのタービンなのでアイドルプラスの回転ではターボの効きがよくないがそこは21リッターの排気量でカバーしている。
燃調が上手く行ったようで後ろの窓から見ても全開で走っているにも関わらず、黒煙ほとんど見えない。
狙った通りのようだ。
「お兄ちゃん、なんかさ前に乗った時よりも軽い感じになったよ。馴らし終わってるんだよね。それにしても気を付けないとレッドに簡単にいっちゃうよ。リミッター当てないようにするのが結構むずいよ。それよりもこのミッションワイドだけど苦にしないエンジンっていいよねえ。クロスミッションじゃなくてもエンジンでパワーバンド維持できるなんて」
僕がガイド席に戻ってくると雅子が言う、長めのストレートを全開で駆け上がっていくのでどうやら5速で80キロ超えているようだ、
「あはは、さすが雅子だ。クランクとピストン、ライナー、カムも変えてるからほとんど新品に近いよ。それだと1万キロくらいまで慣らしかかるかもね、ってことは慣らし完全には終わってないって。それにしてもこのミッションが良いんだよなー」
「ふーん。そうなんだね。そう、いいミッションじゃん」
「雅子、後ろで見てる限り黒煙全く見えないから狙った通りだし、水温計も油温計もいい具合だから燃調はピッタリだね。」
「へえ、そうなんだ。さすがお兄ちゃんね。速くっていいよね。バスがこんな速度で登っていくなんてないでしょ」
「うん、ないよねー」
「後ろの車が抜きたいけど登坂車線で抜けなくってびっくりしてるよ。抜こうとして脇に出ると空気抵抗で失速してる」
「このバスのパワーにはダイハ〇のリッターミニバンに大人4人のってしかもターボ無しじゃ無理でしょ。この勾配なら加速性能いい勝負だから、抜けないって。4人も乗ったら軽自動車とほとんど同じ動力性能だから」
「だよねー、お兄ちゃんがいじったエンジンだもんね」
だべっているうちに峠を登り切り下りに入った
「雅子、排気とリターダーしっかり使え、登りよりも難しいぞブレーキは一回で終わると思え。2軸しかないから」
「うん、そうね、ちょっと速度落とそう。うわー、すごい、排気めっちゃ効く。うっひゃーリターダーもすごすぎ。ブレーキ踏まなくっていいじゃん」
「うん、その調子。排気とリターダー効くからフットブレーキとにかく使わないで下れ」
「うん、お兄ちゃん任せて」
雅子が排気ブレーキ、リターダーを駆使して下っていく。
排気量が21リッターと大きい分排気ブレーキがしっかり効く、その上、リターダーも使えるのでフットブレーキはほとんど踏まない。
見事にほとんどブレーキを踏まないで下りきっていた。
目当てのお店にいく、お目当ての中古の3軸トラクターを契約して詳しく見ていると
「佐野さんたち?」
振り返るとこの前にバトルというかスムーズドライブバトルをやったときのドライバー二人が来ていた。
「あ、長野さんと、狩野さんですね」
「どうも、その節は。お上手でしたよ。二人とも、寝ないようにするのが精いっぱいで」
「いやいや、僕らも眠くって、あんなに眠かったバトルは初めてです。普段は緊張するんですが」
「そうですよねえ、うちの計測はあっという間に爆睡でしたよ」
「うちのはリーダーが爆睡ですよ。」
「「あははははは」」
と笑いあったあと、
「今日は?」
「うちで使うヘッドを買うんで見に来たんです。これにしようかと」
「おおお、ビッグサ○のRF8TBを積んだやつですね。最強の560psとH/L付き8MTで」
「ええ、さすがですね。そちらは?」
「実は僕もヘッドを探しに、いいことにV26C520馬力のスーパードルフィ○が見つかったんで買いました。ギ○の600馬力でもいいんですが、さすがに信頼性もあって、ちょっとパスです。ターボはいいんですが排気量ないと坂道の発進が鈍いんですよねー。この車は高速よりも山岳路で主に使うんで生のエンジンにしました。」
「ですよねー」
「あ、あのバスがこの前言ってたやつですね」
「はい」
「これも弄ってあるんでしょ」
「その通りです、目的は黒煙対策ですけどね。ターボつけて高圧噴射にして、後は自分の趣味でクランク弄ってます」
「やるなー」
「あれ?お兄ちゃん、あのバスって?日○」
「ああ、あれは日○のセレ○だな、あ?11.5メートルバージョン?雅子うちのゴーゴー君よりちょっと短いでしょ。レア車だよ。ここで売ってるのかな?」
「あれも売ってますよ、激レアですが11.5メートルです。見たらF20C積んでるバージョンですね」
「20リッター仕様ですか?」
「はい、ハイデッガーじゃないタイプですね。結構いいバスでした。置き場が有れば買うんですけどね」
「そうなんですね、僕も見て見よ」
「それで、大型車の性能見るのにいい道があってこれから行くんです。一緒にいかがですか?」
「良いですよ。僕らは契約も済んだし帰るだけなんで。でもあのバスもいいなあ」
「お兄ちゃん買うの?」
「かっちゃえ」
「あれは今朝お店に来たばっかりでまだ車検残ってるんですぐにも乗っても帰れますよ」
「雅子、決めた買うぞ。書類もらって乗って帰る」
「はああああ、お兄ちゃんのコレクション始まっちゃったよ」
僕は日〇 KC-RU3FPCB:純正ボディ にF20Cエンジンを積んだバスを契約して引き取るといって書類を貰って帰る。
ゴーゴー君は雅子に運転任せて僕は買ったばかりのバスにのっていた。
「佐野さん、案内します。ロードスターだとRU3FPCBがついてこれないんでこのバスを先頭にしましょう」
そう言っている案内役の狩野さんを脇に乗せて僕が引き取るバスを運転して3台は出発した。
国道を走って軽井沢に向う途中で左に曲がって県道に入った。
山田温○と書いてあってそのまま登って行くと僕らが朝来たルートにぶつかる。
平たんなところは結構カーブが緩くスピードがのる、しかし勾配がきつくなると道も狭くなり、しかもカーブもきついのでバスではせいぜい3速迄しか入らない。
上り坂がさらにきつくなって乗っているバスのエンジン音が轟音になってきた、20リッターといってもターボ無しでは結構苦しそうだ。
マフラーから吐き出される排ガスは平坦な道の時はミラーではほとんど黒煙が見えなかったがいまは結構濃くなってきた黒煙だ。
ちょっと燃調が濃いのか?それとも標高が高くなって空気が薄いから自然吸気では空気が不足気味なのか?中腹の時より明らかに黒煙が増えてきた。
僕のバスのスピードに合わせて後ろを走っているゴーゴー君の走りには余裕があるが、カーブと勾配がきついのでスピードが出せずに2速と3速を繰り返していたと雅子が言っていた。
スマートフォンが鳴る、ハンズフリーで出ると雅子だ。
『お兄ちゃん、ここすごいねー。ゴーゴー君のパワーだとこの急勾配でも結構平気っていうか』
「うん、結構楽だとおもうよ。少なくともこの程度なら問題ないってことか。」
『まあそうよね。ターボあるもんね。でもお兄ちゃんが運転してる日野RU3FPCBは黒煙すごいよ』
「そうか。ミラーでも見えるよ」
『だよね。ゴーゴー君は水温もOK、スモークメーターもグリーンだよ。燃調ピッタリってことね』
「良かったよかった」
ゴーゴー君は低速で回しても十分冷える性能があるのがわかった。
このバスもノーマルなら全く問題がなさそうだ。
『ねえ、このゴーゴー君とそっちのバスって重量どのくらいちがうのかな?キューピーちゃんって軽いでしょ。そっちのバスはゴーゴー君くらいかしらね?』
「どうなんだろう?車検証よく見てないからわかんないけど空車なら13トンから14トンかな?ゴーゴー君とあんまり変わんないよ」
『ふーん、っていうことはパワー差分ゴーゴー君が楽なのね』
「まあそうだな。あ。雅子。悪いけど後でRU3FPCB乗ってくれるか?ゴーゴー君でここを全開で登ってみたい」
『そうだよね、いいよ。どっかで交代しよ』
「このバス;RU3FPCBはすす焼き無いからいくら煙出してもいいよ、ガンガン回しても大丈夫。あ、ちょうど良いところ有る。ちょっと入るよ」
『あ、ハザード焚いたね。わかった、そこに入るのね』
「うん、ゴーゴー君は聞く限り大丈夫だけど、一回全開で走らせる。雅子は無理してついてこなくていいから。って言っても400ps無いからすぐに離れると思うよ。止めるよ」
『うん、良いよ。いいことに2台入れるじゃん。そこで車交換するんでしょ』
「うん。念のためゴーゴー君を前にしよう。そのほうが交代楽だよ」
『そうねえ、ゴーゴー君のパワーならあっという間に見えなくなりそう』
「よし。停める。雅子。前に出ろ」
バスの窓を開いて先に行けと合図を送る。
2台のバスは退避場に入って止まった。
雅子はゴーゴー君をそのバスの前に止めておりてRU3FPCBに向かってきた。
ドアを開けると雅子が入って来た
「お兄ちゃん、交代ね。ゴーゴー君で登って来たんだからこっちは短い分楽よね」
「うん、そうだね。ちょっと交代。雅子頼んだよ」
「佐野さん。僕もゴーゴー君に乗せてもらっていいですか?580psどんなのか体感したくて」
「いいですよ。雅子よろしくね」
「長野、ちょっと悪いけど僕はこのバス乗ってみるよ。どんなものか?」
ロードスターでついて来ている長野さんに声をかけた。
「おう、そうだな。トラクターでも520だろ、空のトラクターといい勝負だろ」
「そうだね。」
「お兄ちゃん、このバスすす焼きないんだよね。ってことはガンガン黒煙吐いても大丈夫ってことね」
「うん、気にしないで踏んでくれ。ノーマルだから全開の連続でも壊れることはないと思うよ」
「そうか、そうよね。ノーマルならこんな坂は全開走行だもんね。それで壊れたんじゃあお仕事になんないよね」
「よし、じゃあ出発するか。狩野さん。このコースはバトルには狭すぎですね」
「そうですね。大型の全開試験にはいいですね」
「確かにそうですね」
雅子と、バスの交換が終わったところでまた走り出した。
今度はゴーゴー君なので思い切り回す。
カーブを3つも処理しないうちにRU3FPCBは離れはじめ、登り切ったときには結構な差になっていた。
止められる所で待っていると雅子がモクモクと黒煙をはきながら登って来た
「お兄ちゃん、ゴーゴー君速すぎ。あっという間に見えなくなるんだもん」
「ですねえ、580は伊達じゃない。いじろうかな―トラクターを少し。600ほしいな」
「そのエンジンですけど、ミッションのポテンシャルわかんないから何とも言えませんが600は大丈夫かなと思います。このころの日〇のエンジンは黒煙からすると燃調が濃いのでタービンつけて過給かけると丁度よさそうです、できれば大容量のインタークーラーと大容量のオイルクーラーつけた方がいいと思います。マフラーもターボ用にするかワンオフで作るか。うちのチームのリーダーのいる工場紹介しますよ。面倒見てくれるんで。大型のエンジンチューンもやりますよ」
「そうですか、やってみよう。引き取りついでにこの坂で性能を見てみます。来週引き取りなんで引き取ったらここでどんなのかみて、帰りにその工場にお願いすると思います」
「言っておきますよ。それではまたどこかで」
長野さんたちが帰っていく、僕らも2台のバスで出発、お店に帰って来た。
親にはあきれられたが、父親もどうやら隠れバスオタで一発で仕様を見抜いていた。
あとは親父に見てきたヘッドの調子は申し分ないので契約してきたことと納車の日程を後で聞くことにしていたと報告した。
次の週、休みの予定だったが、親父をキューピーちゃんに乗せてゴーゴー君で行ったルートを使ってトラクターヘッドを引き取りに行った。
その時、雅子はエムエムくんでついてくることになっていた。
ターボで加給して290馬力迄アップしているとは言っても405馬力のキューピーちゃんにはちょっとついてこれないので登りきったところで待っていたのだ。
親父を中古車屋におろすと、僕と雅子はこの前狩野さんに教えてもらったバスの試験には適している道を走りに行った。
雅子が運転するエムエムくんが前で走る。
エムエムくんは減らした思っていたが、高回転でちょっと燃調が濃いめの様でリミットまで回すと高回転域で真っ黒い煙を吐く
それと比べればキューピーちゃんの走りはミラーではほとんど黒煙が見えず余裕だ。
しかし降りてみれば、キューピーちゃんのマフラーにもやはり出口には結構すすがついてしまうし、排気管の回りが煤けてしまうのは仕方ないかと思っていた。
登りきったところで一休みしていると。
「お兄ちゃん、エムエムくんバックミラーで見えるくらい黒煙出てるよね」
「うん、ちょっとブーコンシャフトで高回転域絞ってみよう。元々NAだからもうちょっと高回転よりのタービンでもいいかな?発進性能変わんないし。今の仕様は高回転で空気が不足するみたいだ。隆弘に言ってやってもらうよ。」
「そうなんだね」
「まあ、エムエムくんとキューピーちゃん、獅子丸くんにはDPF無いからちょっと煙が出るのはご愛敬だね」
「そうなのね。ゴーゴー君は?」
「ばっちりついてる。元々ターボにした目的は煙出ないようにってつけたんだから。そうしないと再生が面倒だから。エムエムくんと獅子丸君、キューピーちゃんは後処理無いからターボで少しでも吐かないようにって思ったんだ。だけど、隆弘の工場でどうも高回転で濃いめに振った燃調にしてきたようだ。ちょっと絞って過給圧上げてみたい」
「そうよだね。煙モクモクは今の時代よくないよね」
「うん、パワーはブーストあげてやるから燃調は相対的に薄めにするよ」
「お兄ちゃんらしいね」
僕らはお店に戻ってきた。
先に親父が戻っていてトラクターのキャプの塗りなおしとエンジンミッションの分解整備を考えているようだった。
僕は日〇 KC-RU3FPCBをいじってF20C+ターボで520ps 190kgにしていた。
雅子は呆れ返っていた。
そんな雅子はZ〇3でD〇GPデビューしていた。
初めて出た大会を終えて帰ってくる途中ローダーの中で
「お兄ちゃん、このドリ車すっごくいいよ。まさか5.2のV8OHVエンジンとは思わなかったけどね」
「ナンバー無しだからね。NAだから楽でしょ。エンジン重量軽いからいいでしょ」
「うん、500ps出すとはさすがお兄ちゃん。ターボより走りやすくって」
大きなトロフィーもらってにっこりの雅子だった。
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