第十一話 雅子が大型免許取って
大型免許取れてパワーアップした雅子
バトルはなんと?
「ねえ、お兄ちゃん、大型免許取れちゃった。2種だよ。って言うかさ、またバス見つけちゃったの?情報網すごいよね。どこにそんなのがあるってわかるのかしらね」
「あ、雅子、おかえりー。もう取ったの?最小の時間じゃん。実はこれもレア車だからついつい買っちゃったんだよ。まさかフィンガーシフト車が出てくるなんて思わなかったから。早いと今日位に雅子が免許取れると思ってたから間に合ってよかったよ」
「ありがとうね、フィンガーシフトね。楽で良いよね。教習車がそうだったわよ。それにクラッチってポテンションメーターでしょ。メカでつながって無いから最初は違和感あったけど。ブレーキもエアーで慣れるまでちょっとかかっちゃったわよ」
「そうかもな。僕もちょっと時間かかったらね。慣れないとね」
僕が4台目のいい出物の元路線バスを見つけて、早速会社の整備工場に運び込んでリフトと天井クレーンを使って車を持ちあげてエンジンをおろしてボディの傷み具合確認のためばらしていた時のことだ。
妹の雅子が免許センターから帰って来た。
「まさかこんなに簡単に取れるとは思わなかったわよ」
「そうだね。あ、やべえまた夢中になりすぎた。午後半休でやってたからさ。これは短いからしばらくは雅子の教習車にしようと思って買ったよ。飽きたら整備してあとはうればいいからさ。雅子、ここ来るならつなぎに着替えてくれよ。会社の接客用のいいふく汚しちゃまずいだろ」
「そうね。ねえ、ところでこのバスってどんな仕様?えらく短いって感じなんだけど。でも幅はゴーゴー君とかと同じように見える。」
「ああ、このバスは大型9メートルって言われてて、元々川崎で走ってたんだけど排ガスの関係でやむなく地方に行ったんだよ。でもそこのバス会社がバスを入れ替えるんでツーステップしかなくて使い勝手があんまりよくないこれを廃車するって言うから買って来た。」
「はああ?そうなの?」
「なんでかって言うと、このバスは通称大型9メートルの路線バスでツーステップしかないからね、他のメーカーにはワンステップもあるんだよ。そこのバス会社では使う路線と時間帯が限られてて、他のバスが故障した時の交代予備なんだけどノンステップじゃなくって使い勝って悪いって言ってたんだよ。それもあって廃車するって言うから買っちゃったよ。車名はふそ○の○アロスターMM、エンジンは6D17の12バルブノンターボで210馬力。ミッションが5速だから高速はつらいかな?あ、そうかシートベルト無いから高速は首都高以外乗れないんだよ。下道専用、ボディは純正。良い時間だしそろそろアジトに帰るかな」
時計を見ると良い時間になっていたので、買ったばかりのバスの分解整備作業を切り上げ、アジトに帰ってリビングでご飯の準備しながら雅子にバスの仕様詳細を説明していた。
「ふーん、あのくらいの長さなら車幅感覚の練習用にはいいわね。定員は?また減らしたの?」
「うん。いまのところ23人にしてる。立ち席無くしてっていうか、つり革無かったでしょ。定員変更して重量計算してみた。そしたら11トンに収まったんで中型免許でも乗れちゃう、マイクロとおなじだからね。」
「そうなんだね。ところでエンジンまたいじるの?おろしてたってことは」
「あははは、実はだな、オーバーホールのついでにブロックとクランクを後期のD17の24バルブ用に交換する。クランクはバランス取りしてターボとインタークーラーとオイルクーラーつけて、ラジエターの容量アップしようかと。念のためだけどね。エンジンが古いから全部ばらしてシリンダーブロックは後期のクラックとか入ってないのを見つけたからそれに交換、ライナーとピストンは全部新品に入れ替えする。後はD16の部品使ってターボにしてタービンの容量の大きい大型用の純正品を装着して噴射ポンプもオーバーホール。できればミッションもワンサイズ大きいエンジン用にしようか?トラック用の6速にするか取り寄せた部品が先に来たほうだな」
「ホントお兄ちゃんは弄りだすと止まんないよね、そうだあの子って型式は?ふそ○だよね」
「うん、エアロスターM○で形式はエアサスだからU-MM618J、ホイールベースは4.39。ボディの銘板を見る限り純正ボディだね」
「うーん、なかなかニックネーム難しいわねー。ちょっと安直だけどエムエムくんにしよう。大型バスだよね」
「雅子ってニックネーム好きだよね。全部に付けちゃっって。一応大型9メートルってカテゴリーだよ。」
「えへへへ、そうすれば愛着わくジャン。ところでエンジンの排気量は?大型ってことは大きいの?」
「中型と同じエンジンだよ。この車は4メーカーの中で一番でかくって8.2リッターだよ。OHVの12V仕様、このエンジンのターボはないけど、排気量小さい方にターボあるよ。走りやすさを重視していじるならターボにしてパワーアップで290ps以上狙うかなー?」
「へー、このころの大型のエンジンってほとんどOHVね。獅子丸君もキューピーちゃんも全部そうだよね。最高出力290psっておとなしいように見えるかな?」
「まあな、このエンジンのブロックとクランクのポテンシャルわかんないからこの辺でやめとくんだよ。排気量との比率なら獅子丸君とほとんど同じだよ。それからこの車にもDPF無いから、すす焼きの手間がないんだよ。キューピーちゃんも、獅子丸君もロックンもナナちゃんもないんだけど」
「へーそうなんだね。それじゃあ結構黒煙出るのかな?」
「うん、ちょっと出るのは仕方ないね。でも少しでも減らしたいから全部過給圧目一杯上げて高圧噴射にして霧化良好にすることで何とかいけないかなって思うんだよ。」
「なるほどね。ナナちゃんもなかったのね。でもさほとんど煙出ないよね、何かやってるの?」
「ああ、アレは噴射装置変えてなくてスワールチャンバーそのままだからね。パワーは無いだろうけど高過給にして空気過剰率上げてる。ヘッド割れないように燃焼温度下げたいからね。後処理で酸化触媒はつけてるから煙は減ってる。ロックンは何もないからブーストかかってないと結構黒煙吐くけどそこはご愛敬で」
「お兄ちゃんはこうなると止まんないんだよね。ディーゼル迄いじっちゃうんだもんな」
「あははは、先にキューピーちゃん仕上げてかな?次はゴーゴー君。獅子丸君が思いのほかうまく行ったからよかったよ。そうだ、隆弘のところでキューピーちゃんのエンジン組んでもらったの戻って来たから午前中お店でそれをキューピーちゃんの車体に積んだよ。予想通り405ps出てるって。隆弘も嬉々としてやってたよ」
「お兄ちゃん、副社長がお仕事さぼって車いじり?だめじゃん。でもあんまり出すとブロックいくとか?」
「あはは、さすが雅子。そうだよね。でもさ、前に言っていた通り大型車の販売にも整備にも親父は力入れるってさ。それもあって大型のメンテの勉強だってやらせてくれたんだよ。ミッションノーマルだからクラッチ乱暴につながなければ行ける見込みだよ」
「そうか、やっぱり大型も売るの?会計大丈夫かな?ママったら査定は甘いし経理にしても甘いし?でもなー、大型免許も取ったしあたしも整備もしたいかな?」
「雅子が経理やってくれればしっかり者だから良いかもね」
「ところで、キューピーちゃんもV8だよね、ゴーゴー君と違ってクランクを削りだしにしなかったんだ」
「まあ、せっかく静かなエンジンだからオリジナルの良さを残したよ、この設計者は頑張ってフライホイールとクランクプーリーからアンバランスマス外したんだよ。国産でそれやったのはこのエンジンだけだからね。そのころV8でアンバランスマスなしのエンジンはBEN○だけ」
「へーすごいじゃん。他はいじってないんだよね」
「まあね。クランクはノーマルのままだから噴射量落としてパワー抑えてるよ。目一杯やれば450はいけるけどクランクとブロックが持たないって。それなら余裕見てこのくらいでやめた方がいいよ。ゴーゴー君は出来る限りクランクにマスを足してちょっとエンジン揺動増えてもフライホイールとクランクプーリーのマス取りたかったんだよ」
「ふーん、好きだよね。あたしも工学系の大学行けばよかったかな?それとも工業高校でも」
「まあ、それはそれで。それもありだね。雅子がしっかり勉強したら嵌るよ」
「うん、そうだよね。あたし、お兄ちゃんにいろんな意味で教えられてる。車って奥が深いよ」
「そうなんだけどね。僕もそう思うよ。知れば知るほど奥深いって」
雅子はニコニコしながらあれこれ聞いていた、自分でも運転するのでメカにも興味がわいているのだろう
そんな妹の佐野 雅子、つい一月程前まではナナちゃんと呼んでるKZJ77Wのチューニングカーで麓の市内にあるスーパーの本社に通っていた。
しかし、今は家業の中古車屋で経理担当の専務になっている。
入社して4年チョイ務めて係長にまでなったスーパーをあっさり退職してしまった23歳。
スーパーでは、いろんなシステムを組んでいて、その技能を駆使して組んだ効率化アイテムに両親も大助かりという。
妹は地元の商業高校を断トツの1番の成績で卒業して、商業簿記2級、電卓検定初段、キーボード早打ち選手権全国準優勝、エクセル1級、アクセス1級、ビジュアルベーシック1級と事務系なら引っ張りだこになるくらいの技能をもっていた。
それなので、進学せずに地元資本の大手スーパーの経理部に学校推薦で入って、高卒ながら5年目で大卒5年目と同じ給料をもらっていたが、もともと車に乗るのが大好きでいろんな車に乗れる家業に転職した。
スーパーでの実績は入社3年目で、各店舗から集まる情報処理集計システムを自分で組んでしまい、今まで買っていたソフトが不要になった。
しかも妹が作ったソフトのほうが勤めている会社に事情に合っているのと、パソコンになら大体標準で入っている○クセルを使うので、他に導入費とメンテナンス費用が浮いた。
万一、おかしなことが起きても、雅子がすぐに治せる。
それも褒美もあって、雅子は高卒では異例の速さで主任に昇格してしまったのだった。
それに集計の自動化を進めた結果、各店舗の仕入れと売上関連のほとんどが一目でわかるようになって社長も大喜び。
その成果が認められ、高卒の3年目の途中に主任に昇格して、部下を持ってその指導もするようになったという。
4年目の7月からは入ってきた自分より年上の大卒を部下にもってチームを組んで仕事していたのだから驚く。
所属は、経理部だったが、5年目の4月から係長に昇格して全社の業務効率化のリーダーに抜擢されて売り上げ仕入れ管理システムのソフトを雅子が自分のチームで組んでしまってさらに業務効率が上がったのだった。
当の雅子は出世には興味が全くなく、スーパーは給料のためと割り切っていたが、やっぱり好きな車の仕事がしたいといってあっさりとスーパーを辞めてしまった。
スーパーではなんと大卒でも10年はかかるという課長待遇にするから残ってくれと言われたらしいが出世に興味がない雅子はスパッと辞めたのだった。
もちろん、部下や同僚にシステムの使い方、直し方すべて引き継いでいるので大きな発展は無理かもしれないが、今後ビジネススタイルが変わっても最低限の対応はできる様にしてきたという。
雅子は峠を走り始めて既に5年がたっていて、僕の古くからの友人がリーダーを務めるチームでサブリーダーの一人になっている。
ホームグラウンドでは断トツトップの速さで時には新たにチームに加入してきた後輩たちの指導もするようになっていた。
得意なのはダウンヒルで、大Rコーナーにノーブレーキで入って全開のままドリフトさせっぱなしで抜けられるのは、チームの中ではいまだに雅子しかいない。
それにサーキットを走らせてもダウンヒルを走らせてもタイムはチームの中では一番だ。 この前はなんとバスを運転したいからといって大型免許と牽引免許を取りに行っている何でも乗りなのだ。
僕:佐野 悟瑠は妹より4学年上の26歳。
地元の大学を卒業して家業の中古車屋に就職して5年目、大学の頃は自動車部でラリーやジムカーナをやっていた。
今はそこで中古車の納車前整備や修理をしていて、時には中古車の買い取り査定もする。
大学のころから家業の手伝い=バイトしていてMIG溶接機やレーザー溶接機、フレーム修正機もバッチり使えるようになったし、板金も大分できるようになったし、○ントリペアも勉強して資格もとった。
それに、カラスリペアと危険物の乙4、玉掛けも資格を取っているので去年4月から整備工場の工場長兼副社長をしている。
大型免許は在学中にとってあってさらに就職してからけん引免許もとっているので、オークションに買い付けに行く時には自分でキャリアトレーラーを運転していくこともある。
そのキャリアカーも中古車で買ったものでもある
商売柄、中古車で市場では人気がないが、程度のいいFR車を見つけては整備して雅子の走り仲間へ売っている。
時にはミッションの換装もやっている。
改造車検も取って、合法的に乗れる仕様にして販売している。
3級整備士の資格もあるので自分で運行の管理士になれるのでバスも持ちたい放題だ。
「雅子、今日は悪いけど夕飯はピザとサラダね。買ってきてある。ピザは冷めちゃってるからレンジで温める」
「ありがと、クォーターね。お兄ちゃん力仕事したからお腹空いたでしょ」
「まあ、それはいいけど、ちょっと買いにいくのはやかったかな」
「まあ、仕方ないよ」
「隆弘と買った。エムエム君を回送するときに買って来たんだよ」
僕は手を洗ってキッチンに立って温めていく。
僕らが今住んでいるところは走りや仲間がアジトと呼んでいる、そこは祖父母が現役の頃、林業を営んでいた時にそこに住んでいたのだった。
祖父が節が多く売り物にならない木材にがっちり防腐剤と難燃剤を含侵させたのを100%使ってあり、しかも木材の倉庫、製材所も併設していたので、そこにピットを作り、リフトとクレーンは製材するのでもともとあったのを使っている。
それに加えて、材木のそりを修正したり、圧縮に使う大型の油圧プレス、それに加えて100トンのミニプレスもあったのだ。
残念な事に今は大型バスを持ち上げる装置が無いのでここでは整備せず会社の工場でやっている。
その夜、雅子に4台のバスの改造案を説明して休んでいた。
次の朝、一緒に朝食を取っていると
「そうだ、お兄ちゃん、今度のバトルってどこだっけ?」
「昨日隆文に奥多○周遊ってきいた。今日にはキューピーちゃんのセッティングが終わるから鳴らしも兼ねて乗って下見にいくのもいいかも」
「そうね。って言っても高速乗れないんじゃ」
「ずっと下道でいくよ。それにサービスパーツや計測器の積み込みはゴーゴー君より楽かも、中ドアから積めるから」
「そうよね、ゴーゴー君だとトランクあるけど低いからね。
ご飯を食べると風呂にいく、家のお風呂もおじいちゃんがヒノキの売りものにならない端材をつなぎ合わせて作ったもので湯船、窓の桟、洗い場がヒノキなので木のぬくもりがいい。
入った後は換気扇を回して乾かす必要があるが、おじいちゃんがしっかりと防腐剤を含侵させてくれたおかげでいまだに腐りが全くない。
その日、金曜日だが僕は休みをもらっていてキューピーちゃんのセッティングをしていた。
夕方雅子が帰ってきて、夕食を作ってくれた。
僕らは何時ものように一緒にご飯を食べていた、すると妹の雅子が言う。
「お兄ちゃん、次のバトル日が決まったって、再来週なんだって、今週一回下見行ったほうが良いよね」
「ああ、僕も昼間に隆弘からLINEで聞いたよ。今度は昼に行ってみようかって思うんだよ。夜から行って朝まで現地で仮眠して、早朝に走ってそれから帰るってパターン」
「ふーん、まあ、ってことはハハーンお兄ちゃんキューピーちゃんで行くんだよね。そうなると時間かかるもんね。現地であたしも運転していいかな?公道バスデビューってことで」
「そうだね、いいよ。慣れないとね。って言ってもあんまり運転する機会はないかな?お店の通勤ならいいか、そこならここからのっていけるよ、大型用の駐車場買ったとか言ってたからね」
「あはは、そうね。獅子丸くんみたくエムエム君も950登録すればママたちと一緒に出勤もできちゃう」
「そうなんだよね。エムエム君は既に登録してあるからそれは大丈夫」
「はああ、んもう、やること早いよね、ってことは今日はご飯食べて此の後に下見に出るの?」
「うん、明後日は午前中アポあるから明日は休みたい、今日ご飯食べ風呂に入ったら直ぐにキューピーちゃんに載せた計測器の確認してから出よ。動作確認が終わったら出る。遅くとも朝にはつくよ」
「そっか、あたしもやるから。そうすれば早く行けるでしょ」
「ありがとじゃあ、今日は風呂入って計測器セットだな」
「そうなのね。きゃははは、お兄ちゃん行く気満々」
「あのなー、まあいいや。準備しよう」
「じゃ、お風呂行こうね」
僕らはお風呂に行って、キューピーちゃんに積んである計測機器の確認と準備する。
燃料も十分あるし、エンジンはオーバーホールしたばかりなので慣らしが終わるまでそんなには回せないが丁度いい機会だろう。
慣らしも兼ねていくことにしていた。
エンジンをかけて計測器の動作確認しながら暖機していた。
「お兄ちゃん、なんかさエンジンの音がゴーゴー君とは違うよね。どっちもV8だよねゴーゴー君は重い感じがするしキューピーちゃんはドドドって言うけど軽い感じ?」
「あはは、さすが雅子だ。排気系が違うからそうなる。このエンジンはなかなか静かでいいよ。騒音と振動が上手な会社だからね。マフラーはキューピーちゃんは純正だからだよ。後でフルデュアルにするよ。ゴーゴー君とにた音になるよ」
「ふーん。そうなんだね」
「大体400PS出てるって言うから今日はクラッチいたわらないとね。あたりがついて無いから滑って動けなくなったらやばいから」
「へえそうなんだ。クラッチって交換したんじゃ?」
「うん、ガー○のV8用入れたから持つとは思うけどね。ガーラ用のFD上げたんだよ。それがどう出るかな?」
「そこまで弄ったんだね。やることこれだもんな」
「燃費に振ってみた。この辺結構みんな飛ばすから。この車は実質4速だからさ。今回は6速まだ手に入らなかったんだよ。OD付き6速が入れれば直結用のファイナルに変更して走りやすさ出してみようかと」
「だよねー、お兄ちゃんならそうするもんね」
だべっているうちに暖機を終えて計測器の動作確認も終わって出発した。
「雅子、明日の朝は上手くすればどっかお店入れるけど、今日の夜はコンビニがせいぜいだよ。バスの中で食べるのもの仕入れるにはコンビニがいいだろ」
「うん、そうね、じゃあそうしよ。朝なら開いてれば山田うど○入れるじゃん。街道沿いなら大型も入れるでしょ」
「うん、そうだな。それもいいか。じゃあ出るよ。調子見てよかったら運転交代ね」
「うん、お兄ちゃんって車なら何でも来いって感じだよね。あたしも早くなれよ」
「おう、じゃあ行くぜ」
「うん」
「下道で奥多○までしゅっぱーつ」
「ナビあるから楽でいいね」
僕らはバトルの場所に向けて出発した。
「ねえ、この子はゴーゴー君ほどじゃないけど結構ふけが軽いよね」
「このエンジンは国産って言うか世界で見てもこの会社とBEN○のOM50○しかない構造で、クランクプーリー、フライホイールに振動対策用のマスがついてないんだよ。」
「ふーん、ってどういうこと?ふけとどう関係があるの?」
「おう、バランス用マスをエンジン中心からなるべく遠いところに置くと結構効くんだけど、マスがあるところが片持ちになってクランクの剛性取りにくいんだよ。そうなるとどうしても端のベアリングに掛かる力が大きくなってクランクのウェブを曲げるのと端のベアリングの抵抗が増えちゃう。」
「へええ、そうなんだ。ってことはV8って振動的には完全バランスじゃないんだね、」
「一次と二次振動はバランスするけど、一次のモーメントはアンバランスが残るんだよ。それの対策なんだよ。エンジンが味噌擂り運動するから逆の力出すようにマスを付けて打ち消す」
「まあ、考えたわね。ゴーゴー君は?フラットプレーンとか」
「いいや、ゴーゴー君も同じだよ。出来る限りクランクのマス大きくして味噌擂り運動減らした。クランクプーリーとフライホイールは同じ会社のV10用にしているよ。ちょっと味噌摺り運動残るけどいいやと思ってる」
「お兄ちゃんってやるわねー、さすが大学をトップで卒業しただけあるわね」
「まあ、雅子も高校ダントツトップでいきなり簿記2級じゃん」
「そっかー、今って簿記使ってないんだよ。それなら工業高校でもよかったかもね」
「そうか、そうだよね」
雅子とだべりながら走ること2時間半、初めて運転する車で疲れてきたので休める場所を探しているとコンビニが見えてきた
「雅子、そこのコンビニなら入れそうだ。買い物しよう」
大きな駐車場があるのでそこにバスを停めて買い物。
缶コーヒーを5本ばかりとガムを仕入れてトイレを借りるとまたバトルの場所に向けてひた走る
大きな道を主に走って向かう。
「ねえ、お兄ちゃん。結構遠いよね。でもさ、意外に流れているから時間かからなくっていいかもね」
「そうなんだよ、高速乗っても20分しか変わらないってでるから下でもいいかと持っていた。高速はかなり遠回りなんだよ」
「ふーん、そうか、なんかさー、行く前から思うんだけどこの道じゃないよねバトルのところ。結構田舎道だね」
「うん、違うよ。もっと奥」
「あ、ほんとだナビで見るとすっげー山奥じゃん、人いるの?」
「雅子、それ言ったら僕らが住んでるところって結構山奥だぞ」
「まあ、そうね。キューピーちゃん調子はどう?」
「なんかエンジンのフケが軽くなってきた。大分慣れてきたからかな?家帰ったらオイル交換しようと思うんだ」
「そうね」
更に奥に行くと勾配がかなりきつくなって来ていた。
「お兄ちゃん、これってギヤ上げたんだよね?4速なのに登っていくのも楽勝って感じじゃん」
「うん、これもターボがいい具合に効いてて1000回転辺りからトルクが膨らんでて楽だし、いいことに燃調も濃すぎないね。各メーターもいい数値だ。この様子だとフルに回しても大丈夫そうだからバトルのところで回してみる。でもミッションがトルクに負けるから早く8TD1の6速買わないと」
「なんかお兄ちゃん好きだよね。いいなー楽しそうに乗ってて、あたしもどこかでいいかな?」
「いいよ、あ、いいことに止められる」
道の脇にバスを停めて雅子と運転を交代する。
「お兄ちゃん、行くよ」
雅子の運転で現地に向かう。
スムーズで快適だ。
「雅子、この先狭くなるから気を付けてよ」
「はい、へえ、なんかさ。ものすごいトルクっていうか、発進めっちゃ楽じゃん。踏まなくてもつなぐだけ」
「うん、15リッターあるからね」
「そうね。すごいじゃん、それだけあれば楽よね。ゴーゴー君は21リッターだよね」
「そう、発進のしやすさは大排気量にかなわないよ」
「だよね~」
山岳路に入り、線路わきの道から川を渡り新しくできたトンネルを二つ抜けて、どんどん進む、狭いワインディングで初めて乗る大型バスにも関わらずきちんと車体とタイヤの位置を把握して危なげなく走っていく。
雅子の速さの秘密はこの車両の位置把握のうまさにあるのだろう
天性の才能の様で、若いころ今でいうD○のドリコ○をやっていた両親の能力を引き継いでいる。
ぶばばー、バッシュン、がおおん、ギイッ、コーナ手前で排気を使って減速、5速から4速にシフトダウンしていた。
「この車4速に落とすときギヤなりするね」
「そうなんだよ、シンクロが傷んでるんだろう。それもあってミッション入れ替えようって思ったんだよ。フィンガーはロッドと違ってエアで強引にシフトするから。ダブルクラッチ使うしかないよ」
「あ、そうか、力加減でいたわってってできないんだよね」
「そうなんだよ、おっと、もうすぐだよ」
だべっているうちに、バトルの場所に着いた。
夜が丁度白み始めた頃だった。
橋の脇にバスを停めて、エンジンを止めると隆弘に聞いた番号に電話する
「初めまして、佐野です、来週の下見に来ました。」
『初めまして、長野です。はい、聞いてます。今、向かってるんでそこで待ってください』
「はい」
場所を言ってで待ってると白い○ードスターが来た。
車を探してキョロキョロしていたのでプッシューと音させてフロントのドアを開けて降りる
「はじめまして、佐野 悟瑠です、妹の雅子です。リーダーの加藤から連絡行ってるとおもいますが」
「初めまして、このチームのリーダーの長野と申します。え?バスなんですか?」
「ちょっと趣味で買っちゃいました」
「へー、実は僕、バスの運転手なんですよ。そうか、来週このバスで来れますか?」
「良いですけど」
「提案です。バスでスムーズドライブ競争っていかがですか?」
「判定方法は?」
「チームにデータオタクがいるんで計測器で測って」
「ああ、それならいいですよ。もう積んでるんでうちのでやりましょう」
「え?積んでるんですか?」
「まあ、見てください」
「うわ、すげえ。データオタクがよだれ垂らす、取れるデータは?」
「重心位置6自由度の加速度、ジャーク、舵角、車体4隅の3方向加速度、車速です。他にはエンジン関係全部とギヤ位置、舵角、スロットル開度も」
「これだけ取れればいけますよ。これでやりましょう」
「いいですよ。リーダーに言っておきます」
僕はリーダーの隆弘に言うと隆弘も面白いということでOKとなった。
データ取りに向かう
「雅子いいか。出るぞ。計測器のスイッチOKセンサーの調子もいいぞ」
「OK」
計測器のスイッチを入れて、長野さんを乗せて僕の運転でゆっくりと下っていく。
排気を使って4速、3速主体で下っていく。
折り返し地点でむこうのチームのドライバーともう一人が待っていた
「初めまして、チームの計測係をしている内海と申します。すごい計測器持ってるって聞いたので見せていただければ。実は計測メーカーに勤めてるんで興味あります」
「はいどうぞ」
「うわー、すごい、このデータはどうやって?」
「はい、ここのパソコンで同時処理してこのSSDに入れます。電波状態いいならWi-Fi経由で家の解析機に飛ばします」
雅子が説明する、解析ソフトを組んだのは雅子だ。
「計測状態見せていただいていいですか?」
「はい」
僕らは相手チームの計測係とリーダーの2名を乗せて運転していく
のぼりながらも全開で加速すると発進の2速、次の3速は簡単にリミットとしている1800迄回る。
スモークメーターも許容範囲だ。
ブーストはばっちり規定通りかかっている、ターボの調子もよさそうだ。
ギィッとギヤなりと共に4速にシフトアップして、全開で踏んでいくとややきつめのコーナーが迫る。
排気を使って減速すると同時に4速から3速に落とす。
タコメータは1200を指している、そこから全開にするとブーストメーターは少し遅れてフルブーストを指しその一瞬スモークメーターがレッドゾーンに入る。
しかし、ブーストがフルになるとクリーンゾーンに戻る。
これもゴーゴー君と同じでブーストがきちんとかかればスモークは問題ない
3速で回していくが、トルクピークの1400を超えてもグリーンのままだ、燃調はこれでよさそうだ。
エンジンを慣らしリミットの1800まで吹け切ったところで、ダブルクラッチ使って4速にシフトアップして走る。
水温計は85度で正常範囲、油温計も90度で安定している。
熱対策でオイルクーラーを追加してラジエターの容量をアップしたのも効いていそうだ。ゴーゴー君と同じく真夏の昼間に走ってみないと何とも言えないが、この気温なら全開で走っても全く問題なさそうだ。
またきつめのコーナーが迫る、3速に落とす、このコースは意外に高速の部分もあり、のぼりでも3速、4速、時に5速まで入った。
一気に登っていくと、ゴール地点に着いた。
「いやー、このバス古いのに速いですねえ、これって○士重の7○ボディでしょ。珍しい組あわせですね。ボディの手入れも良くって」
「そうですね。錆取りして亜鉛めっきして電子式の防錆装置入れてます。後で塗りなおすんで今は白にしました」
「エンジンは結構パワー出てそうですね。ターボでしょう」
「その通りです。黒煙対策で入れました。燃料系も高圧噴射に改造です」
「どのくらい出てるんですか?」
「大凡400PSです。ミッションがノーマルなんで後でガー○の6速に替える予定です」
「ですよね。方法はこの車で登り下りでやりましょう。もう一人は大型トラックのドライバーですのでやる前に一往復させてください。公平を期すためにドライバー全員乗ってやりましょうね。燃料は一往復したら満タンにします。重量変動も一緒でいかがでしょう」
「いいですよ」
「それでは来週」
僕らは更に二往復してデータを取ると来た道を戻って家に帰った。
着いた時既にお昼になっていた。
次の週、隆弘たちをのせ、エンジンの慣らしが完全に終わった獅子丸くんも連れてきた。
「え?2台持ってるんですか?」
むこうのリーダーが目を丸くする。
「実は4台です。これは計測用の車です」
「えええ?そうなんですね」
「この車はエンジンオーバーホールして慣らしが終わったので万一この車が故障したらけん引するんで持って来ました。燃料も積んで来ました」
「そうですね。確かに万一の時用ですね」
相手チームの二人が一度キューピーちゃんで走って完熟走行、燃料を補給して準備するとバトルの開始だった。
「では行きましょう。最初は下りから」
相手の先行で下る。
リーダーの長野さんと登りのドライバーの狩野さん、雅子、僕、そして相手の計測係と隆弘が乗っていく。
隆文は獅子丸くんを見張るため駐車場で待機だ。
ルールはスムーズドライブ競争でしかもこの道の制限速度30キロ平均に近い速度で走るという条件だ。
加速度、ジャークは積算していって少ない方が勝ち、速度は平均で30キロに近い方が勝ち、制限+10キロまで出していいルールだ。
計測中のデータはドライバーには見せないようにしていて見ていいのは車の計器だけだ。
リーダーの長野さんはさすがプロのバスドライバーでその運転は寝てしまうくらいスムーズだ。
これなら立ち席でつり革につかまっていても大丈夫そうだ。
下りのゴールで向きを変えて今度は僕が運転する。
登りで気を付けるのはシフトチェンジだ。
40キロまでならハイギヤにした3速で事足りる。
僕も道の荒れているところやきついコーナーをしっかり頭に入れてきて運転。
雅子曰くは相手の下りと僕の運転はスムーズ過ぎて寝ないようにするのが一苦労だったという。
スムーズドライブのコツが書いてある雑誌を参考に挙動の大きいゴーゴーくんで近くの峠のバイパスで練習してきたのをすべて吐き出した。
次は燃料を満タンにして下りの雅子だ。
雅子もゴーゴーくんとキューピーちゃんで下りの練習をしていた。
この運転もプロが真っ青になるくらいスムーズだ。
見ると相手の計測係と隆弘は既に寝入っている。
最後は登りで相手のトラックドライバーの番だ。
これもスムーズで荷物を崩さないように走るのに慣れているのだろう。
コーナーもしっかり減速して横加速度を減らす。
僕の体感ではスピード不足に思えていた。
終わってデータを見ると加速度でトップはさすがプロのバスドライバーだった。
しかし、速度が遅く30キロからの乖離が一番大きく平均26キロしか出てなかった。
他の3人は加速度ではほぼ互角で甲乙つけがたいがトラックのドライバーも同じく速度が足りずに28キロ
僕らは30キロにピッタリだった。
「速度が遅いなら加速度出ないからね。この加速度と平均速度で1キロあたりに直すと同じ土俵だよ」
相手の計測係が言う。
「では、計算しますね」
雅子が計算結果を出す。
トップはあろうことか雅子だった。
「えええ?イヤー参りました。制限速度ピッタリで下ってこの加速度。うちの会社に来ていただきたいくらいです。観光のほうで人手不足で」
「そうですね、お兄さんの方はうちの会社に。これなら荷物大事に運んでもらえるんで」
「狩野、うちでも欲しいよ。この二人に観光バス運転してほしい」
「この二人は家業の中古車屋さんが離さないよ。副社長と専務だから、今度から大型扱うんで」
隆弘が言う
「そうですか、残念です」
普段とは全く違う形のバトルが終わって帰路に就く
途中の山田うど○で駄弁る。
「悟瑠、雅子、お前たちって何やってもスゲーよ。バスで勝負してもプロに勝っちゃうなんて」
「あはは、雅子の作った解析ソフトのおかげだよ。計測機器もう一組作ってゴーゴーくんで練習したから」
「雅子って、走って良し、解析してよし、経理もよしか」
「隆弘さん、お兄ちゃんの才能もあるの。スムーズで練習の時あたしも寝ちゃうんだよ」
「そうか、勝てるのは二人のおかげか」
「チーム運営してる隆弘にも感謝だよ」
「ありがと。」
「最近、俺出てないなー。悟瑠さんに頼りっきりで」
「仕方ねーだろ、今回は大型免許無いだろ。バスで技能競争も面白いもんだ。寝ちゃうからな」
「うん、らしいね、俺も大型取ろうかな?面白そうで」
「そう思うよ、隆文。あたしが取れたんだから大丈夫」
その後は僕らはバス2台に分乗して帰っていた。
「お兄ちゃん、今度はドリ車お願いね。33Z見つけたよ。」
「お、おう。ドリ車かー」
どうやら雅子はドリフトやりたいらしい
天性ドライバー雅子
次は両親の後を追ってドリフト?
いつも読んで頂き、どうもありがとうございます。
今回はここで更新します。




