表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
またたび  作者: 亜佳 頽
屋敷編
8/21

そうして…

 入ってすぐの椅子に座って食事を待つ。

 すぐに使用人の人が皿をもって向かってくるけど、アナスタシアの姿を見て一瞬顔をゆがませる。

 …水浴びくらいは待つべきだったのかな、アナスタシアもこれを喜んだりしないと思うし。


 「申し訳ありません、こちら――」

 「いいよ別に。」


 そう謝罪されて皿を差し出されたアナスタシアの声には何も感じれなかった。


 「あの…ごめんなさい、その服のままここに来させて…」


 そう言って頭を下げる私に、アナスタシアは慰めるような声をかける。


 「別に大丈夫だよ、カトゥがやったことは理解できるし、お腹は空いてたからね。」


 「お世話を任されて初日で屋敷を空けた僕が悪いしね。」


 自嘲気味にそう言う彼女の声は、やっぱり疲れ気味だ。

 お互いに黙ってご飯を食べ始める。肉と豆を合わせたものをパンに乗せたものだ、とても美味しいけど横にいるアナスタシアに注意がそれて集中できてない。

 …ここに誘っておいて何も聞かないほうが失礼な気がするし、ここは覚悟を決めよう。


 「…あの、その血って何の血ですか…?」


 「…ん。あぁ、ちょっと面倒くさい魔物が出てさ。本来あり得ないんだけど、今戦闘員が総出で遠くにいるから僕が駆り出されたんだ。これはその過程でついたものだよ」


 魔物、たしか賢くて強い動物のことだった気がする。昨日の授業で聞いた聖書の序盤で、たしか、主の…主の何たらだって聞いた。

 つまるところ、服の血とか汚れはただ狩りをしてその中で着いたってことなのかな。


 「あ、そうなんですね…答えてくれてありがとうございます。」


 「いいよ別に。」


 そういってアナスタシアは席を立つ。私は半分も食べれてないけど、彼女はもう食べ終わったようだ。

 …もとから私の倍くらいあったんだけど、早く食べすぎじゃないかにゃ…?

 

 「それじゃまた明日ね。

 ごめんねカトゥ、まだ話したいけどさすがに疲れたから寝てくるよ」


 それだけ言って部屋を出た。 

 よく考えたら戦闘員の代わりに駆り出されるってどういうこと何だろう?

 気になることはあるけど、これ以上引き留めるのはだめだと思うしいつか聞くことにしよう。先生との授業が終わるまで結構あるんだろうし。



 「あら、あなただけ?」


 黙々と夕飯を食べていると、そんなことを言いながら先生が入ってくる。

 なんか嫌な言い方だ。口の中のパンをスープで流し込んでから、先生の方を向く。


 「アナスタシアさんは疲れたからもう寝るらしいです。」

 「そう、あの犬娘とはなんだかタイミングが合わないわね…」


 アナスタシアの呼び方はそれでいいのかな…?喧嘩とかはしないで欲しいんだけど…

 使用人に食事をもらって無言で食べ始める。


 「せんせい、魔物って何ですか?」


 暇だし、気になったことを片っ端から聞いてみる。

 先生は、こっちをちらっと見てすぐ食事に視線を戻してから口を開く。


 「【神秘を暴いた人間への主の怒り】、ってやつよ。生きるために生きてる動物たちと違って、人類と戦うために生きてる怪物たち。

 まぁ、中には賢すぎてなまけ始めた奴らもいるけどね。」


 思ったより、話のスケールがでかい。何の話かよく分からないけど、その中でも『面倒臭いやつ』と言われた魔物の狩りに選ばれたアナスタシアは、私が思ったより強いのかもしれない。

 先生はどうなんだろう…すごい魔法使いだとは思っているけど、狩りとかまでできるのかな…?


 「先生は魔物を狩ったことはありますか…?」

 「ええ、もちろん。

 というか、コンラートの下にいたときはそれが仕事だったわ。理由はそのうち授業で話すのだけれど、辺境伯の本職は魔物狩りよ。」


 辺境伯の本職…多分私もそのうち狩りの授業とかあるんだろう。

 というか先生は昔コンラート様に仕えてたらしい、初めて知った。


 そんな話をしているとご飯を食べ終わった。先生は目を皿に向けていて、ご飯に集中してる。


 「それじゃあ、また明日です、先生。」

 「また明日ね、カトゥーラ。」


 席を立つと真後ろから使用人が出てきて食器を片付け始める。

 …本当にびっくりした、いつの間にいたんだ。


 食事部屋を出て、そのまま水浴び場に入る。

 ぼーっとお湯を浴びていると、少し先について考えてみる。


 あと…五年?くらいは授業が続くらしいし、それまでこの屋敷で、あの二人と過ごすんだ。

 悪い人たちじゃないし、きっと大きな問題も起きない。

 教育が終わって、コンラート様の跡継ぎ…つまりは子供を貴族として問題ないように補佐する。まだ全くわからないけど、楽じゃないと思う。


 最後はなんか嫌な思考をしてたけど、悪い未来じゃないと思う。

 水を流して部屋に戻る。寝間着を着てベットに倒れこむ。明かりを消す。


 しばらくはこんな日が続くんだろう、少しずつ屋敷での生活に慣れていってるのを感じながら私は疲れから心地よい気持ちで深い眠りに入る。


 そんな日々を思った通り過ごして、二人とも仲を深めながら暫く過ごした。


―――そうして三年が経った。

光陰矢の如し…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ