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またたび  作者: 亜佳 頽
旅立ち
20/21

贖罪…?

  「はぁ?何言って──

 「あの火球!あれはまだ私が操作できます!」


 …あぁアレか。

 確かに、もう大分減衰したとはいえ込められた力はまだ十分大きいものだ。

 でも今回の相手は数で攻めくる相手だ。あの火力は必要になる気は全くしな──


 「議会へ向かって準備してください!!後で指示を出します!!」

 「は、はい!」


 今は話す余裕なんてないんだ。

 何か嬉しそうにしたベルナさんは議会の方へ走って行くベルナさんを横目に、盾を飛ばし続ける。いつの間にか子供達は地下の方へ行ったようだ。


 ……一先ず先鋒達は殲滅できた。けどもう糸の付いていない魔物達が村の中に侵入してる。それに犬じゃない魔物はかなり強い、盾を数発耐えきった個体もいた。たぶん…


 「……トカゲ…?いや…」


 今は正体なんてどうでもいい、盾程度ですり潰せる相手なら素手でも問題ない。村人たちにとっては素早い犬のほうが脅威だろう。


 魔力を込めて、手慣れた術式を構築する。


 「ヴァファーデン(水蜘蛛)


 半透明の水糸が天に伸びる。

 とある地点で糸が裂け、雨のように村全体に降り注ぐ。


 ──村全体のありとあらゆる情報が脳内に侵入してくる。


 「──ぐぁっ…!」


 頭が割れそうだ…!ここに来た時はそうでもなかったし…多分、水盾の残滓の情報が強いんだ…


 けどタグ付けは成功した…これで──


 「はぁ!?」


 子供が一人、村外れの森でトカゲ型の魔物──竜の幼体に襲われている。




 「ベルねえ…」


 その子供、キントという少年は森の中にある秘密の入り口の前にいた。


 「人を殺そうとしたなら…判決は一度じゃ決まらないはず…」


 賢き少年はシスターから事の顛末を聞き、ノーンからその後ベルナに付いて聞いて、とうとう飛び出すようにここへ来た。


 ここを見つけたのは、先の徴募で東方へ向かったバンデスという修道院の兄貴分的立場にいた人間だった。彼はベルナに結婚を申し込んで承諾され、もうすぐ結婚するという所で戦死した。

 贔屓目でもなんでもなく、この辺りでは最強だったバンデスの死は、ベルナは子供ながらに心配になるほど不安定にしてしまった。


 「避難…の、合図…?…っあ!?」


 ──連続で鐘が鳴ったかと思って村の方を向くと、巨大な青い空間ができていたかと思う、修道院が丸々入る程の水玉が創り出されてそれに空間が溶け出した。


 そして、この世の終わりのような光景が広がる。


 村の至る所で地面が破裂したように土が跳ね上がり、お腹に響くような衝撃が襲ってきた。


 「な、なに!?みず──


 ──何か水のようなものが飛んできたかと思った刹那、キントの後方で断続的な爆発が起こる。

 後ろから何か動物の声が聞こえたかと思うと、次の瞬間には何かをすり潰すような、ぐしゃ、プチッ、という音が聞こえてきた。


 「……はっ…?」


 何が、起きたのか、知らなければならない。キントはカサベラやノーン、ピラー達幼い子供達に、物を教えるのは自分だと、自分しかいないと確信を持っている。


 子供の、純粋で本能的な恐怖を抑え込み、責任感の強い勇敢な少年は、自ら死地へと歩む。

 重い足取りで近づいていくと、グッ…グッ…と何かを押し込むような音が聞こえてくる。


 ──その先は現実とは思えない光景が広がっていた。タイルのように透明の水板敷き詰められ、細かく振動し地面に押し付けて透けて見える臓物や肉、皮をすり潰していた。


 「…うっ…おぇぇ…!」


 誰でも気分が悪くなる。胃の中の酸っぱく鉄臭い液が喉を焼く。少年は地面に顔を向け思考が停止する。


 「はっ…はっ…ぅっ…!」


 逃げなければならない。そう分かっていても、足が震えて思考が止まり、ただそこに留まってしまう。


 ──そんな哀れで矮小な存在を、最強種は冷たく見下す。キントと同じく幼い存在だ。けれども、生物としての格が違う。

 金色の両翼と鱗を背に、ドン…ドン…と、四足歩行でキントに近づく。何もかもを怯えさせるように歪んだ顔に青い目を持つ最強種の子孫。ドラゴンだ。


 「ガァァ…」

 「……ぁ」


 最強に相応しい、生まれながらに鋭く硬い爪を羽虫を払うように軽くキントに振り下ろす。

 空間が歪むようにゴォォと音が鳴り、少年は終わりを直感する。


 「──ヴァファーデン(水蜘蛛)

 「ぐぁ…?」


 ゴッ、と大きな音が聞こえる。

 頭が真っ白になって額を地面についていた少年は、その音で正気を取り戻し、自分がまだ生きていることを認識する。


 「…?」

 「『蛇』からトンズラこいて逃げ去ったのに、その上人の子を襲うなんて…堕ちたものね。」


 少年が顔を上げると、その先には鮮血のように紅い髪を靡かせる、猫耳の魔女がいた。その目は水色に光っていて、目が混乱するほど色彩豊かだ。


 ──その後ろには、肉塊があった。原型を全く保っておらず、所々に砕け散った金色のナニカがある程度だ。


 「ここで待ってて。今度からはあんまり外でないほうが良いよ。」

 「な、なにを──


 肉塊からしゅるしゅると出てきた血みどろの糸が、少年の周りを、蚕のように覆い隠す。




 なんとか間に合った。

 糸で覆っておけば余程のことがない限り死にはしないだろう。


 「問題は…村の中に魔物が入ってきてること…」


 村を消し飛ばしていいならずっと盾で圧殺し続ければ良いんだけと、そういう訳にも行かない。

 となると他の方法だけど…

 まずあの火球は論外だ。範囲攻撃は不可能だし、なにより火力が高すぎて村への被害がでかくなりすぎる恐れがある。


 言っておいてアレだけど、ベルナさんにはずっと議会で待機してもらおう。少なくともあの火球があれば魔物はあそこに近づかないというメリットもあるにはある。


 ──鐘が鳴った。避難指示と同じように、連続的に大音量で。


 「…避難…完了…?」


 多分、それであってる気がする。


 「…みんな年の割に素早いにゃねぇ…」


 頬をつり上げてニヤリと、自分でも引くぐらい邪悪な笑みが浮かぶ。


 杖を天に向け、ヴァサー・ヴェガング(縦横無尽の水盾)を消去する。

 その力の一部を流用して、杖の先に術式を構築する。


 「…ヴァサーシュライク(水の襲撃)


 全員の避難場所、議会の入り口に向けて、ヴァサーシュライク(水の襲撃)を飛ばす。

 この魔法の正しい使用方法、罠魔法だ。

 これに触れたら、このトカゲ擬きでも十分なダメージを出せるはずだ。


 さて…


 「…ヴァファーデン(水蜘蛛)


 柔軟性を持たせた糸を木に括り付け、最大まで緊張させる。


 「…っ!」


 ガンッ!と音が鳴り、私は空に撃ち放たれる。

 村のちょうど真ん中辺りまで飛んだ所でまた術式を構築する。


 「バウマウアー(護りの水壁)


 透明の板を空中に創造する。


 「ふぅ……」


 ──杖を天に向けて術式を構築する。

 すでに魔物達は既に糸でのタグ付けが完了している。それに村人たちは避難を完了しているし、時間をかけて丁寧に一匹一匹狩っていこう。


 「ヴァファイル(水矢)


 杖の先に、私の腕程の大きさの矢が作られる。


 「ヴァローア(遠視)


 指で作った円の中にレンズを作り、その先にドラゴンの幼体を視る。


 ──水矢が、ドンッ、と爆音を立ててドラゴンの幼体の方に飛んでゆく。


 その矢が胴体に命中し、体の左半分が弾け飛んたのを見て、次の標的を遠視する。

 犬たちは危機を察して逃げ出し始めている。


 「でも…もう遅いんだにゃ」


 タグ付けが終わってる以上、矢の効果範囲内ならば確実に殺せる。そして、矢の効果範囲内は犬如きが数時間走った程度では振り切れない。



 ──3時間後、タネン村周辺から敵対的な生物は一匹残らず死亡した。

 

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