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またたび  作者: 亜佳 頽
旅立ち
17/21

好奇心

 ベルナさんは手を胸の前で両手を合わせて、祈りの動作をする。はらりと赤髪が落ちてきて褐色の肌と重なり合い、鮮烈な色彩を加える。


 見ていてもどうしょうもないし、特にやることもないから糸で手遊びしている。


 「あの…」


 しゅるしゅると指から半透明の、細かい水を糸のように細かく編んだ布が出来上がる。

 これは屋敷での暇つぶしで覚えたもので、最初はこんなふうに布を作るところからその布を加工していた。

 それを折り曲げて、裁断して、一部繊維レベルで融合させてしてフードにする。


 「すこし聞きたいことが…」


 でも最近はもう少し高度なことを覚えてきた。目に見えないくらい細い糸に絵の具を溶かして、特定の形になるよう重ねて重ねて、好きな形に…


 「あの!」

 「…んにゃ?」


 ベルナさんが突然大きな声を上げる。

 視線を向けと、体を乗り出してこっちに近づいているベルナさんがいた。

 目を合わせると、下を向いて指先を突き合わせてナヨナヨし始めた。


 「集中してるところすいません…あのぉ…お話してほしくぇ…」

 「…お話、」

 「いやお話というかぁ…あのぉ…なんかぁ…私にあったりとかってぇ…」 


 …こんな話し方だったかな?

 まぁ、議会の時は相当気が立っていたみたいだし、本来こういう人なのかもしれない。

 ベルナさんに何かあったり…?

 …あっ忘れてた。


 「そうだこれ、ヒューラさんからの伝言です。」

 「あっそれ!それです!やっぱりありますよね!それくださ――

 「止まってください、今すぐに。」


 こっちに飛び込もうとしたベルナさんに白磁の杖を向ける。子供のように目を輝かせ、ベットから足を踏み出したベルナさんは我に返ったように立ち止まる。


 「あっ…ごめんなさい…」

 「…」


 子供っぽいのは可愛らしくていいことだけど、癇癪で人を殺そうとしたのを見ると警戒しないわけにもいかない。

 ベルナさんはシュンとした様子でこちらを見てくる。


 「落ち着いてください、ほら渡しますから。」


 近づいて手のひら程度の小さな紙を手渡す。


 「ありがとうございます!」


 紙を開き、フンフンとヒューラさんの伝言を読む、目の前の若いシスターを見る。

 …キントはベル姉と呼んでたし、もしかしたら10代前半とか…そのくらいなのかもしれない。議会でも、行動の度合いはさておいて、動機自体は極めて善良なものだった。


 「伝言っていうのは…よくあることなんですか?」

 「あ、はい!そうなんですよ!お仕置き部屋に行く時は説教を紙で済ませるんです!」


 聞いたことないし…多分ここ特有の慣習なんだろう。


 「たがら…あのぉ…文句言える立場じゃないんですけど…もう少し早く欲しかったです!…見捨てられたのかと…」

 「すいません…祈りが終わるまで待とうかと…」

 「あっそうでしたか!それはすいません!」


 またまた紙に目を落とす。そんなに読むことがあるんだろうか?

 話すこともないし、簡単なおもちゃでも作ろう。もう会って話すのは無理かもだけど、もし次ノーンと会った時のためになにか作る練習でもしよう。


 ――そう思って視線を落とすと、壁の方からなにか聞こえてきた。なにか這うような…足音のような音だ。


 「ヴァサーシュライク(水の襲撃)…!」


 美しい水玉が浮かび上がり、部屋を覆う。

 飛び上がってから壁の方を向き直り、真っ直ぐ杖を構える。


 「えっあの」


 ベルナさんは怯えたように縮こまる。協力者の線は消えないけど、ベルナさんが魔力を扱おうとした感じはしない…

 音が近くなった。人でも何でも、未知な相手に手加減してる暇はない。杖に全力で術式を構築する…

 ―精神を落ち着け、確実に、ゆっくりと力を込め、杖の先にドス黒く濁った水の玉が創られ、それが膨らんでいく…


 「モルト(水殺)…」

 「わー!」

 「ぅんぁ!?」


 壁の塗装の一部が割れて、奥のハッチのように空いた穴からから赤褐色の髪を結った、小さな女の子が足から降りてきた。

 変な声が出てしまった。


 ――そんなことより!


 「ヴァファーデン(水蜘蛛)!」


 急いでその女の子、ノーンをその場に拘束する。飛び込んでこようとした私飲め前には攻撃魔法があるし、今この部屋はヴァサーシュライク(水の襲撃)で満たされてる。


 「なにこれ!」

 「ノーンちゃん!?何その穴!」


 ベルナさんも目を丸くして驚いてる。

 取り敢えず攻撃魔法を消して、一つずつ水玉を消していく。


 プチプチと音を鳴らしながら水玉がシャボンのように破裂していく。これの威力が弱ければ子供たちの遊び道具に最適なんだけどなぁ…


 「まじょさんそれなに!」

 「こら騒がないの!大人しくしなさい!」


 …やっと消し終えた。ノーンに巻きついていた糸を解き、静かに地面に下ろす。

 ベルナさんの方を向く。


 目が合ったベルナさんはビクッと跳ね上がり、心配そうにノーンを見る。


 「あの!この子は私とは関係ないですから!何も言わず…

 「かんけいあるもん!ベル姉とは…

 ノーンは黙って!!!」


 ベルナさんの大きな声に、ビクッと反応したノーンは涙を浮かべる。


 「別に取って食ったりしませんから…落ち着いてくださいベルナさん。」

 「ぅはい…ごめんなさい…」


 熱しやすく冷めやすい人なんだろう。要するに子供っぽいってことなんだけど。


 「…で、ノーン…ちゃんは、何しに来たの?」

 「えっとね!ベルねえがね!おしおきされてるってきいたの!」


 …好奇心は人を殺すなぁ。



(追記)タイトル間違えてました!ごめんなさい!

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