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またたび  作者: 亜佳 頽
旅立ち
15/21

守るための

 「我らは昨日、そこの旅人によって偶然生き残りました。…しかし、それは奇跡、あるいは偶然に過ぎません。断言できますが、彼女がいなければここは地獄の様相になっていました。」


 「重要なのは、タネンは今戦える若者がいないことです。先の徴兵によって我々は莫大な援助を得ましたが、そのかわり剣を持てる若者を失いました。」


 「その旅人が来る数日前にもコンラートに騎士の常駐を求めましたが、かの伯は東方移住に熱心だ、そんなところに人員を割くくらいなら東方こい、という立場をとっています。」


 「ならば!我々は今こそ!移住を決意すべきなのです!」


 力強い言葉を残し、ヒューラ議員は辺りを軽く見渡している。所々から拍手が聞こえてくるけど、それより困惑の声が聞こえてくる。

 しかし、何やらテサロン一派どころか、ヒューラの近くにいた人間からも、円卓の外でバラバラに座っている議員の中からもざわめきが広がっている。


 ふと、そのバラバラに座っているうちの一人が手を挙げる。

 

 「ライスラー議員」

 ネベルクが名を呼び上げると、ガタイの良い農夫らしき男は円卓に近づき、深刻そうな顔で手に持っていた紙を軽く広げる。

 


 「率直に申し上げます。…タネンの議員の皆さんの中で、コンラートとの交渉が行われたことを知っていたものは、挙手を。」


 …ヒューラと、その周囲の数人しか手を挙げていない。ヒューラ議員は難しそうな顔でライスラーを見ている。

 ライスラーは不愉快そうに顔をしかめ、ヒューラ議員に真っ直ぐ視線を向ける。


 「ヒューラ議員、その件をタネンに秘匿していた理由或いは動機について、簡潔に述べてください。」


 ガタンッと音を立てて、あからさまに不愉快と言った様子でライスラーは円卓の椅子に座る。


 ヒューラ議員は静かに席を立って、慎重に、言葉を選ぶように発言を開始した。


 「…コンラートとの会合は、イースで、教会と領主の調整会議の場で、1シスターとして行われました。

 これを教会の会議の一部とみなす場合、緊急時を除き、外部への情報公開には適切な事務処理の段階を踏まねばならず、その処理に時間がかかったため、この場にて伝えることになりました。

 このような形での伝達になってしまって申し訳ありません。」


 「…回答感謝します。それでは。」


 …取り敢えず、これにて最初の一幕が終わったって感じなのかな…?

 

 

 すこし議会が静寂に包まれている。

 そんな中、ヒューラ議員が手を挙げる。


 「ヒューラ議員。」

 「はい。…情報の開示方法に問題があったことについて、改めて謝罪いたします。

 しかし、襲撃の緊急性についてご理解いただきたいです。

 そしてこの襲撃、ひいてはタネンの防衛能力の欠乏への根本的な対処としての東方移住について、今一度再考願いたい。」


 ここで、テサロンが手を挙げる。


 「テサロン議員。」

 「はい。…まず一つ、ヒューラ議員、今回の伝達ミスについての事情は理解した。今回の緊急性の高さも私は理解をするが、それ故に、貴殿は視野狭窄に陥ってるように見える。」


 「貴殿は現状の打破には移住しかない、とおっしゃられるが、その根拠は我々の知らない所で行われた会議で、記録にも残っていないコンラートの発言のみだ。

 それを証拠を確実なものとして受け入れたとしても、それでも我らが誇り高きタネンを捨てろと言うのは、余りにも事態を深刻に見過ぎているように思われる。」


 

 「よって私の下に集まってくれた議員21名、この議会に反対を表明する!」


 堂々とそう言い、近くにいる人間たちから拍手と、「よく言った!」「あのシスターによくぞ!」等、品のない言葉が飛んできている。

 …ヒューラさんは一瞬顔を歪ませたけど、元のすんとした顔に戻る。


 「ここは意見表明の場ではない。テサロンくん、座るように。」


 「申し訳ありません。」


 テサロンが軽く謝罪してから座り、また議会は静かな空気に包れる。

 …移住に対する賛成か反対かの対立軸としては、テサロンとヒューラのなるんだろうけど、空気的に取り敢えず反対で決まったように見える。

 けど移住の代替案が全く聞こえないのは大丈夫なのかな…

 と、ここでヒューラさんの隣にいる、若いシスターが、バッと手を挙げる。

 あまり見ない、珍しい赤い髪と褐色の肌をもつ人だ。…その顔には、少なくない怒りと、困惑が見て取れた。


 「ベルナ議員。」

 「感謝します。…皆様にひとつ。少なくとも、わたくしの認識では、この場は今回の危機への対処を話す場だと思っていたのですが、何を移住するかどうかの話をなさってるんですか…?」


 怒りで震え、感情の乗った声で続ける。


 「皆様です。ヒューラ議員も、テサロン議員も。わたくしが、移住に賛成なのは、子供たちの避難のためです。犬達の殲滅戦に、子供たちが、巻き込まれる可能性をなくす、ゼロにするためです。そして――


 「話をそらすんじゃない!この場はタネンを捨てるか否かの――


 円卓に座っているうちの一人から、大きなヤジが飛んでくる。ヒューラさんとネベルクが顔をしかめるバンッと立ち上がって、それは、テサロン、コンス、ライスラーなど、みんなに波及していく。


 「おだまりなさい!まだ彼女の―

「ノルマン議員、ヒューラ議員!発言の途中に割り込むことは――

「いいや!彼女の話はこれ以上続けるべきでは――

「テサロン!貴様にそれを決める権利は――「全員一度静かにしろ!」


 コンスの怒号が響き渡る。テサロンが机をドンッ、と叩き、コンスを睨みつける。


 「貴様は議員ではないだろ!この場を掻き乱すのならば今すぐその扉から――「おだまりなさい!」


 ――ベルナ議員が杖を取り出し、いつの間にか構築されていた、攻撃魔法をテサロンに向けた。


 「――グルートコーレ(焼却の炎)!」

 「ッ!ヴァファーデン(水蜘蛛)!」


 ――人ひとりが、ぽっかり入るくらいの炎球がテサロン一味の方に飛んでいく。それを遮るように、半透明の糸が蜘蛛の巣のように広がり、炎球を捕まえる。

 咄嗟にヴァファーデン(水蜘蛛)を出し、魔力から想定される被害範囲にいるテサロン、その他十二名を上に引っ張り上げ、残りの全力でその炎球を巻き取り、空中で固定する。


 …議会は、またしても静寂に包まれた。ただ、メラメラと音を立てる火の玉の熱と光に、全員が呆然としていた。

 柱に固定された、テサロン達は引っ張り上げられた勢いで数人気絶してるけど命に問題はない。テサロンも口をぽかんと開け、放心状態のようだ。


 「…全員、命に別条はありません。」


 杖に攻撃魔法を構築し、ベルナ議員に向ける。

 見た感じ激情に振り回され、力を使いすぎて既に息も絶え絶えだけど、油断できない。


 ネベルクが円卓を殴りつける、叩き割る。

 木片があちこちに飛び、石でてきた装飾品が炎球の方に弾け飛んでいく様を全員が見ていた。。

 全員がそちらを向いた所で、雷のような大きな声を出す。

 「閉廷!!旅人と数人を除き、この場から立ち去れ!!」

投稿遅れて申し訳ないです!

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