タネン村議会②
翌朝、少し薄暗い時間帯に目が覚めた。
約束通りベットとシーツを片付けてから議会の外に出る。
「さて…どうするか…」
予定だともう出ていくところだけど、この村は今魔物への対処能力がない。これも何かの縁だ、移住の手伝いくらいはしてあげよう。さすがに村の護衛依頼は出してるだろうし、襲撃は問題ないだろうけど、護れる人は多いに越したことはないはず。
「見て見ぬふりするわけにもいかないし…」
ここは若い男性がいないだけで、未亡人とその子供は多いらしいし。
議会から出て、荷物を取りに馬車の方に向かっていく。
今後は議会か…まだ壊されていない空き家があればそこに泊まろう。
タネン村は入り口から見て手前に畑、その先に家や議会がある。議会の辺りになるとそこそこ道が整備されている。
評議会制が整えられているのを見るに、思ったより賑わってたのかも。
少しすると、家の影からネベルクの付き人の一人が駆け寄ってきた。
痩せ型で細い人だけど、やけに顔が濃ゆくて目力が強い人だ。
「カトゥーラ殿、少しよろしいか?」
「ん…?まぁ大丈夫だけど」
「感謝します。
私はネベルク様の秘書、ビッテです。単刀直入に言うと、議会で証言をしてもらいたいのです。
我々が移住についての議決を急いでいる根拠である、襲撃の脅威について話してもらう必要があるかもしれないのです。」
…まぁいっか。というか、そうかまだ議決がされない可能性があることがあるのかな…何にしろ、その手伝いになるなら喜ばしいことだ。
「いいですけど…その場合私はどんな立場で議会に立つんですか?」
「参考人として証言をしてもらいます。」
参考人…専門家みたいな?
「ところでビッテさん、私が泊まれる場所はありますか?空き家とか…」
「あぁ、ございますよ。そうだな…向こうの、石屋根の家ならば大丈夫です。
私の方で伝えておくのでそのまま荷物を詰め込んでください。」
家の中は少し埃っぽいけど、一人なら十分なスペースがあった。なにより馬小屋があるのがうれしい、外に放置しすぎて馬が疲労気味なのだ。
「にしても…巻き込まれたにゃねぇ〜」
若干憂鬱だけど、まぁ仕方ない。
荷物を直し、軽くご飯を食べて村を散策する。この時間になると人もぼちぼち見えてくる。
子供とその母親らしい人とか、畑を見回っている初老の男性は見えるけど、若い男性が一人もいない。
「まじょ!まじょだ!」
「ちがうよ!ねこだよ!」
「んにゃ…?」
振り向いてみると、小さな…十歳くらいの女の子達が、私のローブを引っ張っている。その背後には、同じくらいの子供を10人くらいを引き連れているヒューラ議員がいる。
人当たりのよい笑みを浮かべたシスターは、その子供に呼びかける。
「ノーン、ピラーほらこちらに戻りなさい。…あら、カトゥーラさん…」
私をみたヒューラ議員は、その笑みを引っ込めて困ったような顔をしている。
「…昨日ぶりです、その子達は?」
「…孤児です。ここから徴兵されたのは男性だけ。
…けれども、それについて行った妻も、既に都市に向かった者も多い。
…そして、往々にしてそのような時に、そのような者達は子供を連れる気なんてなかったのよ。
そのような子供は教会で保護することに決定されているのです。」
…そんなことがあったんだ。
ため息混じりにそういうヒューラ議員には疲れが見え隠れしている。
後ろでコソコソ話している小さな子達だけど、痩せ細ってる感じはしない。多分ここにいない子もいるだろうし、全員を教会だけで養うのは無理だと思う。
「それだけの食料はあるんですね…というかこの村に来て痩せてる人を見ていない気が…」
「貴方の…なんなのか知らないけれど、コンラート伯はきっちりと代償を支払ってくれてる。
…それこそ、ここら移住することを躊躇うほどに大量に、適切にね。」




